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九州豪雨から1年 治水対策、丁寧な情報を(球磨川水害被災地の現状)

2021年7月14日
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昨年の熊本豪雨による球磨川大氾濫から1年経ちました。被災地の現状を伝える記事を掲載します。

具体的な改善計画が示されない中、住民の間に不安が広がっています。

国と熊本県は完成が10年先になるという流水型川辺川ダムの建設よりも、球磨川流域の安全性を早く高める対策に力を注ぐべきです。

 

記者の目

九州豪雨から1年 治水対策、丁寧な情報を=城島勇人(熊本支局)

(毎日新聞 2021/7/14 東京朝刊) https://mainichi.jp/articles/20210714/ddm/005/070/002000c

九州豪雨から1年の4日、球磨川沿いで黙とうする住民たち=熊本県球磨村で、平川義之撮影

九州5県で79人が死亡、2人が行方不明になった2020年7月の九州豪雨から1年がたった。毎日新聞が6月、氾濫した球磨(くま)川の流域市町村(熊本県)の仮設住宅に住む108人にアンケートしたところ、7割が「住まい再建の見通しが立たない」と回答した。国は豪雨後に復活が決まった支流の川辺川でのダム建設に加え、宅地かさ上げや遊水地の整備など複数の治水対策を組み合わせて被害軽減を図る方針だが、整備場所や完成時期など具体的な計画が示されない中、住民の間に不安が広がっている。国や県は可能な限り情報を提供して不安払拭(ふっしょく)に努めるべきだ。

 

見通しが立たず、生活再建に不安

アンケートでは、74%(80人)が「住まい再建の見通しが立たない」と答え、再建するうえでの問題点として半数近い50人が「治水対策の不透明さ」を挙げた。球磨川や支流の氾濫で家屋の3割が全半壊した球磨村で、自宅が屋根まで水没した上蔀(うわしとみ)修さん(65)は「宅地のかさ上げがいつ終わるか分からないので、再建は難しい」と回答。14人が犠牲になった球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園(せんじゅえん)」近くの女性(51)は「自宅周辺が遊水地の候補地になっているが、造るのか、造らないのかはっきりしてほしい」と語った。

市街地が広範囲に浸水し約2400棟が全半壊した人吉市の被災者からも同様の悩みが数多く聞かれた。球磨川と支流の合流点近くの自宅が大規模半壊した40代女性は、資金面では現地での自宅再建が現実的だと考えているが、堤防がどの程度高くなるのか、あるいは宅地をかさ上げしなければならないのかなど、不透明なことが多く再建に踏み出せずにいる。「仮に転居するにしてもどこが安全なのかも分からない。早く具体的な計画を示してほしい」と訴える。

九州豪雨を受け国と自治体が3月に公表した球磨川水系の「流域治水プロジェクト」は、ダムや宅地かさ上げ、洪水時に水をあえて流し込んで一時的に水をためる遊水地の整備のほか、水田を活用する「田んぼダム」、川幅を広げる「引堤(ひきてい)」などを組み合わせ、流域全体で被害軽減を目指すものだ。遊水地や引堤などは住民の移転を伴う可能性があり、宅地かさ上げの対象になれば、かさ上げが終わるまで再建ができない。だが、現状は大まかな整備地域などが示されているだけで、それが住民の不安の原因になっている。

 

利害関係者の合意形成難しく

実現性への不透明感が住民の不安を増幅させている面も否めない。プロジェクトで示された遊水地や引堤などは今回初めて登場したわけではなく、09年に旧民主党政権が川辺川ダムの建設を中止した後も国や県などが代替の治水対策として検討してきた。しかし、優良農地を失うことになる自治体など、利害関係者の合意形成が進まないうちに時間がたち1年前の豪雨被害を招いた経緯がある。流域のある首長は、豪雨後に遊水地の候補地に名前が挙がった一部の地域で早くも反対や不安の声が出始めていると指摘し、地権者らの了解が前提となる対策の実現は今もなお難しいとの見方を示す。

私はダム中止後とは切迫度がまるで異なる今回は、国も県も本気で流域の治水対策を進めるだろうと信じているし、被災から1年で具体的な計画を示すのが難しいことも理解している。一方で国や県が、治水対策の行方が見通せず「住まいの再建ができない」と訴える住民の不安に十分に応えられているとは思えない。アンケートでは、そもそも球磨川流域の治水プロジェクトを「まったく知らない」(41%)と「ほとんど知らない」(40%)で8割を占めた。

アンケートに回答した上蔀さんの自宅があった球磨村神瀬(こうのせ)地区の住民らに対し、村は5月、宅地かさ上げなどのイメージ図を提示。土地が限られた同地区内で災害公営住宅(復興住宅)を建てたとしても、土砂災害警戒区域になるかもしれないといったマイナスの情報もオープンにした。情報が乏しく、村として現状で示しうる範囲内での将来像ではあったが、復興住宅への入居を検討する上蔀さんは「情報が示されたことで、考えることができた。行政は逃げずに知らせてほしい」と村の姿勢を評価する。

熊本県の蒲島郁夫知事は近く球磨川流域の治水対策を住民に説明する場を設ける方針を示している。その時に重要なのは、すべての利害関係者に対して都合のいい情報も、悪い情報も包み隠さず公開する姿勢だ。計画の途中段階であっても、国や県などがその時々で分かっている情報をできる限り示し、丁寧に説明することで、被災者も将来設計を描きやすくなるはずだ。

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