全国の河川改修事業による堤防の整備状況を会計検査院が調べたところ、途切れていたり高さが不足していたりして堤防の役割を十分に果たせない恐れのある場所が、計二十数カ所あることが分かった。豪雨の際に水害が発生する危険性が高いとして、検査院は国土交通省に事態を早めに解消するよう指摘する。

 国交省と各自治体が進める河川整備計画は、過去の豪雨時の水位や流域人口などを勘案して堤防の高さを定めている。検査院が指摘する二十数カ所の整備事業には約500億円が投じられている。

 検査院が進行中の河川改修事業を調べたところ、関東や東北、九州、四国、北陸、中国の地方整備局管内の事業で、一部の区間だけ堤防が完成していない場所が10カ所以上見つかった。また、河川に橋が架かっているため、計画した堤防の高さまで「かさ上げ工事」ができない場所も約10カ所あった。こうした箇所のなかには、豪雨の際に実際に洪水の被害が発生した場所もあった。

 整備が進まない主な原因は、堤防が途切れているケースでは必要な用地の買収ができないことで、高さが足りないケースは橋のかさ上げ工事に高額な費用がかかるためだった。

 検査院は国交省に対し、関係者との協議を進めるよう指摘するほか、自治体に早期完成を促すよう助言することを求める。

 ■430メートルだけ土嚢…川あふれた 用地買収・工事費、壁に

 秋田県南部に位置する大仙市。河畔で行われる「大曲の花火」で知られる雄物(おもの)川は、たびたび水害に見舞われる。今年7月の豪雨でも、堤防の数カ所で水が氾濫(はんらん)し、市内の住宅852棟で浸水などの被害が出た。

 その雄物川の中流域に、造成が済んだ堤防に挟まれて約430メートルにわたって土嚢(どのう)を積み上げた仮設の堤防が続く区間がある。完成済みの堤防より2~3メートルほど低く、幅が狭い。7月の豪雨ではこの場所からも川の水があふれ出た。

 堤防の計画地の脇には企業がある。当初、この企業が移転したあとで堤防を完成させることになっていた。しかし、企業の移転先が見つからなかったため、国は造成に着手できなかった。企業は来春にも移転するめどが立ったが、堤防の完成には移転からさらに1~2年かかりそうだという。

 人口が集中する首都圏でも、同様に不完全な堤防が見つかった。

 埼玉県から東京都内を流れる荒川。川にかかる橋によって計画通りの堤防の高さが確保できていない場所が埼玉県内にある。堤防を高くするには橋のかけ替えが必要だが、工事費用などがネックとなって整備できていないという。

 荒川では、先行してかさ上げ工事が進む橋もある。京成本線が通る橋は周辺の堤防より約3・7メートル低く、2004年度から橋をかけ替える事業を進めている。総工費は現時点の概算で約400億円。しかし、用地買収はこれからで、工事が本格化するのはまだ先になりそうだ。

 国土交通省荒川下流河川事務所によると、低い橋がかかっていて堤防の高さが足りない場所では、橋の周囲に応急的にコンクリートの壁を設置し、水が堤防を越えないように対策を進めている。しかし、橋の上には壁をつくれないため、いざという時は土嚢を積んで浸水を防ぐしかないという。(小林太一、末崎毅)

 ■急場しのぐ策を

 京都大学防災研究所の中川一教授の話 堤防にすき間があったり、十分な高さがなかったりするなら、持ち運びができる仮設の堤防を増水時に配置するなどして急場をしぐための対策を進めるべきだ。用地の買収にあたっては、堤防をつなげることで多くの命や財産を守れることを地権者に伝え、協力を得ることが大事だろう。

「大曲の花火」雄物川に不完全な堤防 7月に氾濫

 全国の河川で、高さが不足している堤防が二十数カ所見つかった。会計検査院は国土交通省に事態の早期解消を求める。

秋田県南部に位置する大仙市。河畔で行われる「大曲の花火」で知られる雄物(おもの)川は、たびたび水害に見舞われる。今年7月の豪雨でも、堤防の数カ所で水が氾濫(はんらん)し、市内の住宅852棟で浸水などの被害が出た。

その雄物川の中流域に、造成が済んだ堤防に挟まれて約430メートルにわたって土囊(どのう)を積み上げた仮設の堤防が続く区間がある。完成済みの堤防より2~3メートルほど低く、幅が狭い。7月の豪雨ではこの場所からも川の水があふれ出た。

仮設の堤防のそばに住む高橋絹子さん(63)は自宅玄関が水没し、押し寄せた水で庭の小屋が流された。「怖かった。堤防が途切れていなければ、すごく安心できるのに」。