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熊本地震 建設中の立野ダムの直下に活断層か 熊本・西原

2016年5月13日
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熊本地震で決壊の恐れが生じて村民に避難指示が出た熊本・西原の大切畑ダムはダム本体が分断されるように横にずれていることが確認されました。この直下の活断層の延長線上に国交省の立野ダムの建設予定地があります。

熊本地震   建設中ダム直下に活断層か 熊本・西原

(毎日新聞

立野ダム建設予定地

専門家「造るべきでない」

 熊本地震で最大震度7を記録した熊本県西原村の大切畑ダムで、ダム本体が分断されるように横にずれているのを、産業技術総合研究所(茨城県つくば市)の吉見雅行主任研究員らの調査グループが確認した。

直下の活断層が原因とみられる。活断層の延長線上には、より大規模な立野(たての)ダムが建設中で、専門家はそこまで活断層が延びている可能性があると指摘。工法を見直すなど対策の必要性を訴えている。

 横ずれは、4月16日のマグニチュード(M)7.3の地震でできたとみられる。同グループは4月下旬、ダムを横切るように右に1.5?2メートルのずれを確認した。

 大切畑ダムは熊本県が1969年度に着工、84年度に完成させた農業用ダム(アース式)で、総貯水量は約85万立方メートル。16日の地震後、決壊の恐れがあるとして村が一時、104世帯319人に避難指示を出した一方、県が緊急排水をした。

いまだに水をためられない状態だ。県は今月中にも有識者会議を設置し、対応を検討する。ダムを廃止して活断層がない場所に移すかどうかなどが話し合われる見込みだ。

 さらに懸念されるのは、同ダムの北東約5.5キロの同県南阿蘇村と大津町の境に国土交通省が建設中の立野ダムだ。その2キロ先では阿蘇大橋が崩落し、近くで断層が見つかっている。

いずれの断層も16日の地震の震源となった布田川(ふたがわ)断層帯の一部とみられる。

吉見主任研究員は「立野ダム周辺では土砂崩れが起きており地表で活断層を確認できていない。だが、大切畑ダムと阿蘇大橋の中間に位置するため、近くに活断層がある可能性が高い」と指摘する。

 旧建設省は84年、活断層の真上にダムを建設しないとの指針を出している。国交省九州地方整備局はこれまで「布田川断層帯は建設予定地の近くまで連続しない」としている。

 立野ダムは治水用ダム(重力式)で総貯水量約1000万立方メートル。99年に起きたM7.7の台湾大地震では同型のダムが決壊した。

吉見主任研究員は「きちんと再調査することが必要。活断層があるなら、海外の例も参考にずれに強い工法を採用するなど対策を講じるべきだ」と指摘する。

日本活断層学会の宇根寛副会長は「いくら頑丈にしても、真下に活断層があればずれる。基本的に活断層がある場所には造るべきではない」と話している。【飯田和樹】

衆議院国土交通委員会での思川開発問題の質疑(4月19日)

2016年5月12日
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民進党の福田昭夫衆議院議員が4月19日の国土交通委員会で思川開発の問題を全面的に取り上げ、石井国交大臣に対して中止の判断を求めました。
 その議事録が衆議院HPに掲載されましたので、下記に転載します。
第190回国会 国土交通委員会 第8号(平成28年4月19日(火曜日))

平成二十八年四月十九日(火曜日)
午前九時開議

…………………………………
国土交通大臣       石井 啓一君
厚生労働大臣政務官    太田 房江君
政府参考人
(厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部長)    福田 祐典君
政府参考人
(国土交通省水管理・国土保全局長)        金尾 健司君
谷委員長 次に、福田昭夫君。
福田(昭)委員 民進党の福田昭夫です。
本日は、国交委員会で質問の機会をいただきまして、大変ありがとうございます。
現在、ダムの検証、見直しが行われておりますけれども、平成二十四年六月から中断していた思川開発事業の検証が、昨年十一月から再開されました。三月二十九日に開かれた第六回検討の場で、ダム事業継続案が有利だとの提案がなされたと聞き、大変びっくりいたしました。
そこで、本日は、中止の提案をして石井大臣の決断を求めたいと思いますので、石井大臣、最後までよくお聞きいただければと思います。
平成十六年十一月九日、無駄な八ツ場ダムを中止させようと考えた一都五県の住民は、八ツ場ダムの負担金の支出差しとめを求めて、各地裁に公金支出差しとめの住民訴訟を一斉提訴しました。栃木県については、県内で計画されていた思川開発事業及び湯西川ダムの負担金の差しとめを求めましたので、三ダム訴訟と呼ばれています。その東京高等裁判所の判決は驚くべきものでありました。
参画判断の際に基礎とした事情に一部変更が生じていることや、水道用水供給事業としての今後の見通しなどに鑑みて、被控訴人、栃木県が思川開発事業から撤退するとの判断をすることも、政策的には選択肢の一つとして十分考え得るところではあるとまで言及しました。しかし、裁量権の範囲を逸脱または濫用した違法なものではないと判決を下しました。つまり、東京高裁は、栃木県の判断次第で思川開発事業から撤退するのは十分政策的にあり得るという判断をしたわけであります。
この高等裁判所判決と水問題の専門家であります嶋津先生の考えを参考にしながら国交省の考えをただしてまいりますので、簡潔にお答えをいただきたいと思います。
まず初めに、減り続ける水道用水、水余りの時代についてであります。
一つ目から三つ目、まとめてお話をして、お答えをいただきたいと思います。
資料の一をごらんいただきたいと思いますが、これは先ほど申し上げました嶋津氏が作成した資料であります。「減り続ける水道用水 水余りの時代へ」ということで、「六都県の水道用水は減少の一途」ということで、茨城、東京、千葉、埼玉、群馬、栃木の上水道の一日最大給水量は、一九九二年度から二〇一三年度までの二十一年間に二百三十二万立米も減りました。この減少量は思川開発事業の開発水量約二十六万立米の九倍にもなります。ところが、この表をごらんいただければわかりますように、国の第五次利根川・荒川フルプランの予測は実績の傾向とは逆方向に増加し続けるとしております。
「利根川流域六都県の一人あたり水道用水の推移」がその下の表でありますが、六都県の一人一日最大給水量が年々減少しておりまして、最近二十年間で一人当たり給水量は、一九九二年度の四百九十一リットルから二〇一三年度の三百六十四リットルと二六%も減っております。
そして、減っている理由として、その理由をこのように述べております。一つは、節水型機器の普及等による節水の進行、これが一人当たりの使用水量の減少をもたらした。そして二つ目として、漏水防止対策による漏水の減少、有収率の上昇。三点目として、一年を通しての生活様式の平準化で給水量の変動幅が縮小している、負荷率が上昇しているなどが挙げられております。
今後も、節水型機器の開発と普及などにより、一日最大給水量の減少傾向は確実に続くものと見込まれております。
そして、資料一の右の方、栃木県の水道用水の推移と「思川開発事業の開発水量」についてでありますが、栃木県の水道用水は、これまた同じように減り続けております。「栃木県上水道の給水量の推移」、平成十三年と平成二十五年で比較すると、十二年間で、一日に七万四千立米ですか、それだけ減少しております。一人当たりの給水量も、また同じように、平成六年から平成二十五年まで十九年間に九十一リットル減少している、そういう状況になっております。
そして、「思川開発事業の開発水量」でありますが、下の表にありますように、栃木県が毎秒〇・四〇三立米、以下、鹿沼市、小山市、古河市、五霞町、埼玉県、北千葉広域水道企業団、合計で二・九八四立米、まあ、トンということでございますかね。
その中で暫定水利権を二十五年度に取得しているところは小山市、古河市、五霞町、埼玉県で、合計〇・九〇一トンということですかね。ちなみに、国交省の資料によりますと、後ほど出てきますけれども、平成二十八年度では、これも少し減って、合計でコンマ七八四ということで、コンマ一一七トン、暫定水利権そのものも減少しているという状況になっております。
大変気の毒なのは、古河市等は思川開発事業を前提とした暫定水利権が許可されておりますが、実際に取水に支障を来したことはほとんどありません。その古河市の暫定水利権は、これは一九七四年と書いてありますけれども、実際には一九七一年、昭和四十六年から、何とことしを入れると四十五年間、暫定水利権で水を使い続けている、小山市は平成七年から二十一年間、五霞町は平成八年から二十年間、暫定水利権でそれぞれの市や町の水道水を取水して供給しているという大変気の毒な状況にございます。
前回の質問で、暫定水利権をこんなに長年認めているんだったら、ちゃんとした法定水利権を認めたらどうか、そんな提案もいたしましたけれども、これが実は現状であります。
こうした現状を見て、こうしたダムの開発をして、新規用水を開発する必要があると大臣は思われますか、いかがですか。
金尾政府参考人 お答え申し上げます。
現在、思川開発事業、ダム検証中でございます。その中で、このダムに利水の水源開発を求めております各利水者につきまして、継続して参画の意思があるかどうかということについてお伺いをしてございます。その結果、各利水者から、引き続きこのダムの利水開発に参画したいというふうな意向が示されたところでございます。
福田(昭)委員 それは、余りにも表面的な調査しかしないから、そういうことになるのであって、これからそれを打ち消していきますから。
それでは次に、水道計画が存在しなかった栃木県の思川開発事業の水利権についてであります。
一つ目は、慌ててつくった栃木県水道ビジョン、平成二十七年の三月につくったわけでありますが、ダム事業の水源確保は巨額の費用を負担するものであり、その水源を実際に使う、厚生労働大臣の認可を受けた水道用水供給事業計画が存在していることが実はダム事業の参画継続の必須条件であると思っております。
しかし、栃木県は、この検証の場の第三回の検討の場で、水道事業認可の状況について回答を求められ、満足な回答ができませんでした。それは、計画がなかったからであります。そして、検討の場は、先ほど、最初に申し上げましたように、三年半中断をされました。その間、平成二十七年三月に作成したものが栃木県の水道ビジョンであります。
このような対応を国交省なりあるいは厚生労働省は認めているんですか、どうなんですか。
福田政府参考人 お答えいたします。
栃木県では、厚生労働省が策定いたしました新水道ビジョンを踏まえまして、今御指摘ございましたように、平成二十七年三月に栃木県水道ビジョンを策定いたしております。
栃木県水道ビジョンでは、五十年先を視野に入れまして、持続、安全、強靱の視点から、水道事業の広域化や危機管理の徹底等に取り組むこととしております。
その策定過程では、有識者からの意見聴取でございますとか、またビジョン案に対するパブリックコメントの募集などが行われておりまして、多面的な検討を経て取りまとめられたものであると認識をいたしているところでございます。
以上でございます。
福田(昭)委員 私もここに栃木県の水道ビジョンを持っております。これを読んでみましたけれども、どこにも全く具体性はありません。五十年後を見通していると言うけれども、五十年後は人口がさらに減って、一人当たりの水の使用量もどんどん減っていくわけですね。
二つ目の質問に入りますが、そうした中で、例えば県南の広域水道整備計画の策定及び県南の広域水道用水供給事業の実現性についてでありますけれども、これは全くありません。栃木市や下野市、野木町ですけれども、こうしたところが、もし県が、県営の県南広域水道用水供給事業をやると言っても、参加しますと言いませんよ。その辺まで確認していますか。
福田政府参考人 お答えいたします。
栃木県と同県県南地域の関係市、町は、平成十九年に、これらの関係市、町を対象といたしました広域的水道整備計画の策定に向けて協議等を行うため、県南広域的水道整備協議会を設立しているところでございます。
この協議会では、現在、地下水を水源としております関係市、町の水道事業につきまして、河川を水源とするものに変更するため、広域的水道整備計画を策定し、水道用水供給事業を設ける旨の議論がなされておるところでございまして、本年一月には、水道用水供給事業の事業主体を県企業局とすることが決定をされております。
引き続き、県南地域への給水実施に向けまして、広域的水道整備計画の策定の協議が進行されるものと認識をいたしてございます。
福田(昭)委員 会議は踊るという言葉がありますけれども、この協議会で幾ら議論しても、実際に計画はまとまりませんよ。現に、栃木市、鹿沼市、下野市の市議会では、それぞれこの県南広域水道計画について議会で質問が出て、それぞれの市長が何て答えているかというと、この計画に手を挙げたからといって、買えと言われているわけではありませんというところもある。できるだけ地下水が利用できるなら地下水の利用のままで終わらせたいという市長さんもいる。ですから、これは、幾ら県がやろうと言っても実際に手を挙げる自治体はありませんよ。
私、申しわけないけれども、全部の市、町を歩いてきました。茨城県の古河市も五霞町も含めて、全部歩いてきました。そうしたら、担当者と会ってきましたけれども、担当者は、どうするんですかね、こんな感じですよ、みんな。ですから、これは全く実現いたしません。
実際、私も実はこの見直しについては十三年前にかかわった経験がありますけれども、後でまた申し上げますが、これはあくまでも県が建設の負担金を納めてくれているから、ではとりあえず手を挙げておくか、その程度の問題です。本当に建設負担金も負担しろと言われたら、やめますと言いますよ。ですから、これは全く実現しない計画だということを申し上げておきます。
三つ目ですけれども、使う当てのない水源確保のため巨額の公費が浪費されているということであります。
平成二十一年二月に、独立行政法人水資源機構が行った「思川開発事業の水道事業に係る事業評価(再評価)」によりますと、栃木県が、先ほど申し上げた毎秒〇・四〇三トンの開発水を供給する水道用水供給事業を実施する場合には、先ほど、協議会ができたと言っていますが、その一連の水道施設の建設のため、水源負担金のほかに百九十二億円の追加投資が必要となると水機構が試算をいたしております。
また、国庫補助金を除く栃木県の利水負担金は六十四億円掛ける六〇%で約三十八億円、思川開発事業が推進された場合は、栃木県は、その完成後にこの負担金に利息を加えて水機構に支払っていくことになります。
そして、さらに、厚生労働省からは、国庫補助金、水道水源開発施設整備費補助金が水機構に支払われております。思川開発事業の栃木県分の国庫補助金は、総額で六十四億円掛ける今度は四割で約二十六億円にもなります。
このように、使う当てのない水源に国費や県費が浪費されているという現状にあります。国土交通省は見直し中ということでありますが、今後とも、こうした考えを厚労省としては推進させようというんですか、いかがですか。
太田大臣政務官 お答え申し上げます。
先ほど来、水需要の減少についてさまざまに言及がございましたが、私どもは、水源開発事業については、それぞれの地域の事情ごとに水需要の予測に基づいて計画をいたしております。
思川開発事業については、委員御指摘のように、確かに水需要自体は横ばいではありますけれども、少し言及ございましたように、地下水から河川水への転換等について勘案すべきだということで、代替水源の確保という必要性から、今回の開発水量は栃木県にとって必要なものというふうに判断をいたしております。
そして、補助金の件でございますけれども、私ども、この補助事業については、事業採択後一定期間を経過した後、事業評価を行っておりまして、思川の開発事業につきましても、平成二十五年度にこれを実施いたしました。
その結果、先ほど述べたような事情によりまして、栃木県も含めた各水道事業者の水需要に対応できる水源が確保できるものというふうに判断をいたしまして、継続という結論に達したものでございます。
厚生労働省といたしましては、今後とも適切に事業評価を実施しながら、この事業を進めてまいりたいと考えております。
福田(昭)委員 ここでは長い議論ができませんけれども、なぜ地下水から表流水に変えなくちゃならないんですか。これはダムをつくるために無理やりつけた理由じゃないですか。今地震の災害で苦労されておりますけれども、熊本市などは、地下水を使って一〇〇%水道を供給して、私たちのお水はおいしいんですと一生懸命PRしているんですよ。この栃木市もそうですよ。地下水がおいしくて、わざわざ表流水に変える必要はありません。高い水になって、まずい水になっちゃう、こんなばかなことをやる必要は全くないというふうに思います。
次に、喫緊の治水対策をおくらせる思川開発についてであります。
一つ目は、南摩ダムの治水効果は微々たるものについてであります。それから、二つ目と三つ目とまとめて私の方から申し上げておきたいと思います。
今回の第六回の検証の場でも、昨年九月の台風十八号による豪雨によって大変な被害をこうむった、だから、どうしても治水対策としても南摩ダムが必要だという宣伝をしておりますけれども、これは全くうそです。
南摩ダムの効果はほとんどありません。南摩ダムの流域面積は十二・四平方キロと小さくて、南摩ダムの予定地の比率は、思川の乙女地点に対して一・六%、利根川栗橋地点に対して〇・一四%であります。思川や利根川の洪水に対する効果は微々たるものだと思います。利根川に対しては、思川最下流部にある巨大な渡良瀬遊水地、洪水調節容量約一億七千万トンがあって、その洪水調節作用が働くので南摩ダムの治水効果はゼロであります。
そして、思川下流の今回の災害での水位異常上昇の原因は、河床の上昇であります。思川地域の河床が上昇したために今回大きく溢水をしたということで、そのことがしっかり、はっきりと平成二十七年九月の関東・東北豪雨出水報告会で示されております。
そして、そうした思川開発事業をやるという前提になっておりまして、喫緊の治水対策が実はおくれているというのが現状であります。
今回の台風十八号の被害は、私どもの日光市も鹿沼市も大変な被害を受けました。私も全ての小河川の地域を歩いてまいりましたが、そこで地元の人たちの意見は異口同音、みんな河床が上がっているという話でありました。
そこで、日光土木事務所や鹿沼土木事務所の所長たちとも意見交換しましたけれども、そのとおりですと。残念ながら、お金がなくなってきちゃったので、河川の砂利等を除去する作業というのが今ほとんど進んでおりません。業者に売ろうと思っても、土まじりの砂利は経費がかかって要らないと言われちゃっているので、多少のお金を出して買ってもらっているというのが、河床の堀ざらいといいますか、そういう作業になっているというのが実は最近の現状であります。
ですから、南摩ダムがあれば、治水効果が発揮できて、水害が防げるなんというのは全くのでたらめだということを申し上げておきたいと思います。
次に、ダムの見直しの基本的な問題点については時間の関係で省略をして、五番目の、思川開発事業の目的と問題点の方に行きたいと思います。
まず、思川開発事業の目的と目的別事業費負担額でありますけれども、思川開発事業の目的は、思川及び利根川中下流の洪水被害の減少となっておりますが、先ほど申し上げたように、これは全く効果が発揮できない。
それから、流水の正常な機能の維持、異常渇水時の緊急水の補給、水道用水の供給、毎秒二・九八四トンとなっておりますが、既に申し上げましたとおり、治水効果は微々たるものであり、栃木県南の広域水道計画はいまだに具体的に策定されるめどもなく、栃木県が撤退するとの判断も選択肢となっておりますので、ダムの必要性が問われることになっております。
そうしたダムに、残事業費千四十億円を参画者にこれからも負担させるということで進められているということであります。
時間の関係で、先に行きます。
そしてさらに、頻繁に貯水量が底をつく南摩ダムについてであります。
先ほどの嶋津先生の御指摘ですと、国交省による南摩ダムの運用計算の結果も、たびたびダムが空になってもゴーサインが出る大変不可解なものだと指摘をしております。そして、このことは、裁判の中でもしっかりと指摘をされております。
そして三つ目の、思川開発事業検討の場第六回の幹事会に提出された「総合的な評価(案)」についてであります。それは、ぜひ資料二の一と二の二をごらんください。
これを見ると、四案ですかね、費用を比較して、総合的な評価をして、最も有利な案がダム案と結論されているわけでありますが、これを見ればおわかりのように、現状のダム案は残事業費千四十億円。その下の、三目的ダム案、単独案、多目的遊水地案は、それぞれ新規にやるわけですから当然費用が大きくなるわけでありまして、これを見せられれば、どこの県もダム案がいいという結論になってしまうということであります。ですから、ダムの見直しのシステムそのものが実は間違っているということであります。
そこで、今度は、私の考え方をぜひ提示をしたいというふうに思います。
括弧四に行きたいと思います。概略評価による新たな対策案の抽出、これは全てというわけにいきませんが、新たな対策案をぜひ見ていただきたいと思います。
一つ目の、ダムの新規利水対策案の概要、資料の三を見ていただきますと、ケース四というのが国土交通省の案に出ておりまして、「ダム使用権等の振替+ダム再開発(湯西川ダムかさ上げ)」となっているんですね。
しかし、実は、全部使用権の振りかえのみで本当に必要とする新規利水の水は確保されちゃうということを皆さんにも御理解いただきたいと思います。
例えばでありますけれども、今、新規利水で本当に必要なところは、小山市、古河市、五霞町かなというふうに思っておりますが、それらは全て渡良瀬水系の下流にあります、思川水系の下流にもありますけれども。
実際、こうしたその位置図をごらんいただいて、次に行きたいと思いますが、時間の関係で、六番の、思川開発事業、ダム中止の提案についてに行きたいと思います。
まず一つ目、思川開発事業の検証に係るダムの開発量、許可水量について、そして二つ目、思川開発事業の水道用水の配分量等と中止対策案についてであります。
資料の六と七をごらんいただきたいと思います。
資料の六は、利根川水系全体で開発した水、毎秒の水のうち、実はここに差し引きで書いてありますが、鬼怒川水系川治ダム、湯西川ダムで毎秒一トンの都市用水、〇・三三トンの特定かんがい用水が実は余っております。それから、渡良瀬水系では毎秒一・〇六トンの都市用水が余っております。奈良俣ダム以降、利根川本流系では毎秒〇・二七三トンの水が余っております。利根川水系全体で毎秒二・三三トンの都市用水、そして毎秒〇・三三トンの特定かんがい用水が実は残っているということであります。開発した水のですね。
その後ろ、資料の七をごらんください。
思川開発事業、南摩ダムを中止した場合に、もしかして本当に必要だと思われるところに水が供給できなければ困るなということでまとめたのがこの対策案であります。
ごらんいただきますと、まず、ダムを中止すれば毎秒二・九八四トンの水はなくなるということであります。
そこで、栃木県が、毎秒〇・四〇三トン取水をしたいと言っている下野、壬生、栃木、野木町でありますが、現在、県南の広域水道計画はありません。今後、県の水道ビジョンに基づいて県南広域水道計画を策定するということでありますが、多分、策定するということになったら、みんな逃げちゃうと思います。実際、下野市、壬生町は思川に隣接しておりませんから、どこから導水していいかわからない。もし栃木県の企業局がやるとなったら、宇都宮の方から持っていく、あるいは鬼怒川から持っていく、そういうことでも考えないと、とてもとても費用がかかって、栃木県の企業局でもやれないと思います。位置的に非常に難しいと思います。
鹿沼市でありますが、鹿沼市は市長さんができるだけ地下水でやりたいと言っておりますが、もし必要ならば、日光市または宇都宮市から水道水を購入するということも可能であります。
さらに小山市でありますが、小山市は、平成七年から暫定水利権で取水している。別途、渡良瀬からもとっているという話でありますが、聞くところによりますと、ほとんど思川から取水をしているようであります。
古河市でありますが、古河市は本当に気の毒に、昭和四十六年から暫定水利権で対応している。
さらに五霞町は、思川に隣接しておりませんから、思川からとれずに利根川から取水をさせている。そういった意味では、既に使用権の振りかえで対応しているというのが五霞町ということになります。
問題は小山市と古河市の水をどうするかということでありますが、先ほど申し上げましたように、渡良瀬水系で使用権が実際あるのに利用されていない水が、毎秒一・〇六トンの都市用水があります。これを振りかえるということで対応することが十分可能だと思っております。
振りかえるに当たってはいろいろ方法があるかと思います。既に水利権を持っているところから買うということもあるでしょうし、それから導水の仕方も、思川から今まで四十五年も取水して全く影響がないんだから思川からそのまま取水をしてもらうということもあるでしょうし、あるいは、どうしてもそれじゃだめだ、国土交通省が豊水条件で暫定水利権を許可しているというものですから、もしそれがだめだというときには、渡良瀬川あるいは渡良瀬遊水地から小山市が上水を取水しているちょっと上に導水管を設けて導水をしてやれば、古河市はその下流で取水しておりますから、小山市と古河市の水は供給することは可能になるというふうに思います。
埼玉県の非かんがい期の水でありますが、埼玉県は暫定水利権もだんだん減らしてきましたけれども、しかし、この埼玉県の非かんがい期の取水は、八ツ場ダムにも大変大きく参画しておりますし、八ツ場ダムが完成すれば、埼玉県の暫定水利権は多分要らなくなるのかなというふうに思っておりますし、さらには、利根川水系には、渡良瀬も含めて、たくさんのかんがい用水がありますので、非かんがい期にはとることは十分可能なのかなと思っております。
また、北千葉広域水道企業団は暫定水利権で取水しておりません。千葉県も湯西川ダムに大きく参画をしておりますので、湯西川ダムからたくさんの水を取水することが可能になっておりますから、多分もうそろそろ千葉県も要らなくなっているのかなと思っておりますが、もし必要ならば、利根川水系への使用権等での振りかえも可能だ、このように思っております。
こうしたことを考えると、もし最大限かかったとしても、渡良瀬川あるいは渡良瀬遊水地から小山市の取水している地点、ちょっと上に導水路を設けて水を供給してあげれば、小山市と古河市の水も十分確保できる。五霞町の水は利根川から取水をさせてあげるようにすれば、この思川開発事業、南摩ダムはやめることは十分可能だと思います。
これができるのは、残念ながら、石井大臣、石井大臣しかおりません、役人たちはもうつくる方向でしか考えておりませんから。これは政治家が判断するほかありませんけれども、大臣、いかがでしょうか。
石井国務大臣 ダム検証に際しては、利水に関する全国共通のルールに沿いまして、いずれの利水参画者からも参画継続の意思表示があったこと、あわせて、他の代替案では対応できないとの回答があったこと、未利用水の所有者からは引き続き所有する等との回答があったことを確認しております。
したがいまして、利根川水系の未利用水を転用すれば、思川開発事業を中止できるのではないかという御提案は、なかなか採用するのは難しいのではないかと推察をしております。
いずれにいたしましても、ダム検証中でございますので、引き続き、予断なく検証を進めてまいります。
福田(昭)委員 大臣、先ほど申し上げたように、ダム見直しのシステムそのものが間違っているんです。ダムの原案と同じようなダム案を比較すれば、現状のダム案は残事業費なんだ。一番安いから、そうなってしまう。だから、ダム見直しのシステムそのものが間違っているということをまず御認識いただきたいと思います。
そしてさらに、水道事業計画ができませんよ。一番最後の資料につけておきましたけれども、資料の八をごらんください。
思川開発事業を中止するべき理由が、一番、水利用の面で有害無益、それから二つ目、水害対策の面で有害無益、三つ目、環境にとって有害ということで、これはムダなダムをストップさせる栃木の会、思川開発事業を考える流域の会、市民オンブズパーソン栃木が作成したものであります。
ここにちょっとありますけれども、1の(7)番。「いつ使うか分からない水源を確保することは違法です。栃木市、下野市、鹿沼市は、思川開発に参画はしていますが、ダムの水をいつ使うかを決めておらず、このことは地方公営企業法第三条に違反します。」と書いてありますけれども、三条は何て書いてあるか。「経営の基本原則」、「地方公営企業は、常に企業の経済性を発揮するとともに、その本来の目的である公共の福祉を増進するように運営されなければならない。」。第五条、「地方公営企業に関する法令並びに条例、規則及びその他の規程は、すべて第三条に規定する基本原則に合致するものでなければならない。」
先ほど来申し上げているように、ダムで水を開発しても使うところがない。栃木県は、事情が変わったんだから、やめるという選択肢もあると裁判所に指摘されているんですよ。もしこのまま強行して、本当に水道事業計画が実現できなかったら、住民訴訟に遭ったら、今度こそお金返せよですよ。
実はこういうことが栃木県では別な件でありました。株式会社エコシティ宇都宮という、国庫補助金返還問題がありまして、つい先日、住民訴訟で宇都宮地裁が、栃木県が国に返した一億九千七百万、これは違法であるから、しかも、知事が管理監督責任を怠ったから、一億九千七百万、知事個人が県に返せという判決が出ました。知事は控訴しましたけれども、判決文を私は読んでみましたけれども、完全敗訴です。これは多分勝てないと思います。
実際、もう一つの裁判があって、知事自身が宇都宮市長に返せと言っていた補助金については、ついこの間、最高裁から判断が出て、宇都宮市が勝ってしまって、宇都宮市から県に補助金が返還されることはないことになりました。
これは、もう一度住民訴訟されたら今度は負けますよ。そのことをしっかり認識して、今までのシステムではだめだということを大臣、大臣しかこれは決断できないんですよ。改めて申し上げますが、いかがですか。
石井国務大臣 一般論としては、委員御指摘のように、未利用水を活用する観点も重要でありまして、未利用水の権利者への確認も丁寧に行っていくべきであると考えております。
一方で、水資源開発には長い年月と大変な利害調整、多くの費用を要するものでありまして、各利水者は、そうした負担を負いながら、水源として使える安定的な水の権利の確保に努めてきたものと承知をしております。
こうした水資源開発の経緯に鑑みれば、利水者が確保した水の権利そのものはもちろん、利水者の意向も尊重すべきものと考えております。
いずれにいたしましても、本事業については現在検証中でありますので、引き続き、予断なく検証を進め、その結果に沿って適切に対応してまいりたいと思います。
福田(昭)委員 終わりますが、百年貸し出すということだってできるんですよ。それぐらいの長期的なスパンで考えるべきだということを申し上げて、終わります。

ダム計画検証完了遠く 旧民主主導公共事業見直し

2016年4月4日
カテゴリー:
民主党政権下で始まったダム検証について神戸新聞の記事を掲載します。
最近になって、結論が出ていないダム事業の検証が急ピッチで進められるようになりました。記事の表では検証ダムの1/3が中止になっていますが、その大半はダム事業者の都合で中止になったもので、問題ダムのほとんどは推進になっています。

ダム計画検証完了遠く 旧民主主導公共事業見直し

(神戸新聞2016年4月4日)http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201604/0008955520.shtml
八ツ場ダム建設中止問題で、水没予定地の住民が移り住む代替地を視察する当時の前原国交相(左)。結局、整備継続が決まった=2009年9月23日、群馬県長野原町
(写真)八ツ場ダム建設中止問題で、水没予定地の住民が移り住む代替地を視察する当時の前原国交相(左)。結局、整備継続が決まった=2009年9月23日、群馬県長野原町
神戸新聞NEXT
 民進党結成に伴い、20年近く掲げた看板を下ろした民主党。その“最盛期”の2009年秋、政権の座についた直後に華々しく打ち出した「ダム検証」を覚えているだろうか。「コンクリートから人へ」の掛け声の下、公共事業見直しの象徴として兵庫県内3カ所を含む全国84カ所の計画で始まった必要性の再検討。政権運営の行き詰まりと党勢低迷で国民の関心を失ったが、6年半たった今も作業は完了していない。(小川 晶)

 「地元から早期終了を求める動きもあり、対応方針素案をまとめました」。2月初旬ごろ、兵庫県総合治水課に、国土交通省近畿地方整備局の担当者から丹生(にう)ダム(滋賀県)の検証作業について連絡があった。

 事業主体は、独立行政法人「水資源機構」で、兵庫県は渇水対策の分野で関係自治体に加わる。検証に主体的に関わる立場ではなかったが、具体的なやりとりがあったのは約2年ぶりだった。

 従来の方針にとらわれないダム検証は、民主党政権が政治主導で打ち出した“目玉施策”だった。12年に政権が自民、公明両党に戻ってからも検証は継続。国交省によると、対象となった84カ所のダムのうち、12カ所でまだ結論が出ていない。

 治水、流水維持、渇水対策の三つの機能が想定される丹生ダムもその一つ。同整備局などによると、関係自治体の意見を集約する会合を14年1月まで5回開き、「建設は有利ではない」とする中止寄りの方向性を出した。その後、地元説明を経て、機能別の評価などを盛り込んだ対応方針素案を固めたという。

 同機構は「多目的ダムで検討すべき項目が多く、地元への周知も丁寧に進めた」と経緯を説明する。まだ事業評価監視委員会や国交省有識者会議の審議などが必要で、完了のめどは定まっていない。

 一方、結論が出ていないダムの中には、関係自治体の会合が今年3月末まで約5年間も途絶えていた利賀(とが)ダム(富山県)のようなケースもある。

 検証に携わった経験がある国交省関係者は検証の意義や基準の厳格さは変わっていないと強調する一方、「民主党が政権を失い、事業の優先順位が低下した可能性は少なからずある」と指摘。同党がマニフェスト(政権公約)に建設中止を明記し、検証の象徴だった八ツ場(やんば)ダム(群馬県)が11年度に「継続」と結論付けられ、検証全体がトーンダウンした影響もあるとみる。

 ダム検証を所管する国交省水管理・国土保全局は「早期に結論を出すよう指導する立場ではあるが、急がせると予断を与える恐れがあり、特に期限も決めていない」としている。

 ダム検証 国の有識者会議が定めた基準に基づき、国や都道府県などの事業主体が関係自治体などの意見を「検討の場」で集約して方針を決定する。有識者会議での再検討を経て、最終的に国土交通大臣が継続か中止かを判断する。兵庫県内では3カ所の県営ダムが対象となり、武庫川(西宮、宝塚市)は中止、金出地(かなじ、上郡町)と西紀(篠山市)が建設継続と決まったが、いずれも事前に県がまとめた方針通りだった。

全国初!前例のないコンクリートダム撤去はどう行われたのか 熊本県・球磨川の荒瀬ダムの撤去

2016年3月7日
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熊本県・球磨川の荒瀬ダムの撤去工事に関する記事を掲載します。経過が詳しく述べられていて、大変参考になります。

全国初!前例のないコンクリートダム撤去はどう行われたのか

 ニュースイッチ 2016年3月6日(日)9時14分配信) http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160306-00010001-newswitch-bus_all&p=1
熊本県荒瀬ダム、鮎の棲む川を守る

 大きくて美味しい鮎が釣れることで有名な川が熊本県にある。球磨川(くまがわ)だ。春先、球磨川には10センチほどに育った鮎の成魚が、産卵のために遡上する。鮎釣りの愛好家らの間では有名な球磨川だが、2010年ごろから、別の側面でも注目を集めるようになった。この川に建設された荒瀬ダムが撤去されることになったのだ。国内のダムは2700基を超えるが、本格的なコンクリートダムの撤去工事は初めて。国内では前例のない方針決定に対し、熊本県荒瀬ダム撤去室は、さまざまな関係先と連携し、工事完了まで最善を尽くしている。

<なぜダムを撤去するのか>
ダムはそれぞれ、洪水の調整、かんがい用水・上水道用水・工業用水の確保、もしくは水力発電用に建設されている。
戦後復興のさなか、熊本県内は深刻な電力不足にみまわれていた。それを補う目的で荒瀬ダムは1953年に着工し、55年に竣工した。湛水(たんすい)面積は123ヘクタール、総貯水容量は1013万7000立方メートルで、2キロメートルほどダムの下流にある県営藤本発電所では、年間供給電力量7468万キロワット時を維持し、ダム建設当時は県内の電力需要のうち16%を補っていた。
ではなぜダムを撤去することになったのか。ダム建設当時から自然環境に対する不安は上がっていたが、ダム建設後にはアオコによる水質障害が確認されるようになり、鮎が釣れることで「宝の川」と呼ばれた球磨川近隣の住人からはダム反対運動が起こるきっかけとなった。
また、ダムは定期的にメンテナンスを行う必要がある。そのための資金が、ダムを管理する熊本県にとって、大きな財政問題となった。さらに、電力自由化に対する問題もある。電力自由化の中で今後の電力収入はますます厳しくなることが予想された。
さらに追い打ちをかけたのが、水利権の問題だ。ダムを稼働させるには、国土交通省に対して河川への水利権を申請し、定期的に更新手続きを行う必要がある。
03年に更新を迎えた荒瀬ダムは、04年から10年までの7年間の水利権更新を最後として、次の更新を迎える前にダム撤去を本格化させる方向で舵(かじ)を切ることになる。ダム存続か撤去か、長い間県内で議論されてきた問題は、10年2月に「撤去」の方向で固まった。

<荒瀬ダムが全国のモデルへ>
実際の撤去工事に先立ち、まず熊本県が実施したのが学識経験者や関係機関・団体、地元代表をメンバーに迎えた「荒瀬ダム対策検討委員会」の設置(03年)だ。ダム撤去に伴い、環境対策やダム撤去工法などについて慎重に協議された。
撤去が確定した後は「荒瀬ダム撤去技術研究委員会」を設置(10年)。同時に熊本県は「撤去にあたっては安全の確保、撤去技術の確立、環境問題等さまざまな課題があるが、本格的なコンクリートダム撤去として、荒瀬ダムが全国のモデルとなるよう取り組む」と表明し、本格的な撤去計画策定が始まった。


工事完了への道と撤去とともに守るべきもの
 <鮎の生息育成に配慮>
まず最初に取り組んだのが、河川内工事の期間設定だ。鮎の生息育成に配慮し、渇水期にあたる11―2月の冬場の4カ月間だけ、撤去工事を行うと決定。このスケジュールにのっとり、工事期間を12年度から17年度末に設定した。
また、ダム撤去にあたっては、環境モニタリングを実施し、治水や環境の変化についてダム撤去による影響を確認していくとともに、各種専門家で構成される荒瀬ダム撤去フォローアップ専門委員会における助言などを踏まえながら撤去工事を進めるように計画を立てた。
ダム貯水池内に堆積している土砂、礫石(れきせき―小石)、泥土(シルト)への対策も検討された。ダム撤去に伴い、ダム上流の滞留物がそのまま下流に流れ堆積すれば、治水面・環境面に影響を与えることが懸念される。
土砂・礫石は、堆積している70万立方メートル中、10万立方メートルを除去し、残りは自然流下で状況を観察するとした。シルトは砂よりも粒子が細かく、岩や礫石に付着しているコケ・藻に絡まり、河川に堆積する可能性がある。コケを主食とする鮎にも大きな影響が出ると判断し、ダム撤去開始までに全量を除去すると決められた。
<工事完了は18年3月末>
実際の撤去工程だが、荒瀬ダムは可動堰(ぜき)付き重力式越流型コンクリートダムだ。工法は「右岸先行スリット撤去工法」を採用し、フジタ・中山建設工事共同企業体が請け負う。12年度はダムのゲート部分の撤去と水位低下設備の設置から始まった。
ダム本体の撤去工事に伴い、貯水位を下げる必要がある。ダム堤体に「FONドリル工法」を用いて高さ4メートル、幅5メートル、長さ17メートルの矩形(くけい)トンネルを掘削し、ダムの放流口を確保した。
そこへ重さ30トンの水位低下ゲートを設置。この水位低下設備は貯水位を徐々に低下させるための流量調節機能を持たせ、また緊急時にはゲートを開閉できるようにすることで、円滑な放水を確保した。同時に右岸側にある門(ゲート)が撤去されたが、ゲートは一度にクレーンでつり出せないため、16分割する必要があった。
13年度は中央部の4ゲートと、右岸の門柱、管理橋の撤去が行われた。門柱には内部に鉄筋が入っている。鉄筋を切断し、爆薬を挿入するために削孔する。そこに装薬した上で制御発破し破砕塊を搬出する作業を繰り返し、3門柱を撤去した。
また、門柱は高さが20メートル以上あることから高所作業を減らすため、門柱を倒壊させた後に小割する方法を採用した。14年度は右岸みお筋部の堤体を、門柱撤去時同様の制御発破により撤去した。15年度は左岸側の管理橋と5門柱を撤去しているところだ。
16年度はダム建設前の河床を基準に左岸側の堤体を撤去し、17年度は残っている右岸部を撤去していく。工事完了は18年3月末を予定している。

<ダム撤去で水質改善>
12年から始まった撤去工事だが、工事完了後、2年間は環境モニタリングを続け、フォローアップ専門委員会に報告していく方針だ。
ダム撤去に伴い影響を受けると予想される底生動物(ウスイロオカチグサやモノアライガイ)は別の場所への移植を実施している。また、工事に伴う廃棄物(コンクリート殻)は発電に使用していた導水トンネルの埋戻しに活用し、処分量を抑えている。
滞留水がダム撤去によって流水状態になったことで、「水質面での改善が確認された」と地域住民から歓迎の声が熊本県に多く寄せられている。実際、鮎のエサとなるコケや藻、他生物についても増えつつある状況が確認されている。
工事完了まで残り2年あまり。「安全面、環境面に配慮しながら、確実な撤去を遂行していく」(吉ヶ嶋雅純熊本県企業局荒瀬ダム撤去室長)と決意を新たにしている。

「ダム生態系影響重視を」 大戸川「継続」チームしが反対集会

2016年2月29日
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2月28日に大津で開かれた大戸川ダム反対の市民集会についての記事を掲載します。

関西で脱ダムの機運を再度盛り上げて、大戸川ダムの事業再開にストップをかけなければなりません。

「ダム生態系影響重視を」 大戸川「継続」チームしが反対集会
(京都新聞2016年02月28日 22時00分)http://kyoto-np.co.jp/politics/article/20160228000137

大戸川ダムが瀬田川や宇治川の生態系に与える影響などが報告された集会(大津市打出浜・コラボしが21)

(写真)大戸川ダムが瀬田川や宇治川の生態系に与える影響などが報告された集会(大津市打出浜・コラボしが21)
国が検証手続きで事実上の事業継続方針を示した大津市の大戸川ダムについて、政治団体のチームしが(代表・嘉田由紀子前滋賀県知事)が28日、同市内で集会を開いた。
大戸川が注ぐ瀬田川と下流の宇治川には固有種が生息しており、ダム建設が与える生態系への影響を重視すべきとの研究者の報告があった。
河川生態学が専門の竹門康弘・京都大准教授は、琵琶湖から流れ出る瀬田川から宇治川ではカワニナやトビケラの固有種が確認されていると説明。
「流域に貴重な生態系があり、すでに堤防や洗堰(あらいぜき)の運用で劣化しているとの認識で改善策を検討すべき」と述べた。
その上で、治水対策は「川の流下能力よりも、どれだけ被害を軽減できるかで考えるべき」として、下流の流量を重視する国の方針に批判的な見方を示した。
知事時代にダム凍結を主張した嘉田氏は「検証はダム建設のコストを重視したが、環境への影響で失われるコストも評価すべき」と指摘した。
かつて専門家会議の淀川水系流域委員会で委員長を務めた今本博健・京大名誉教授は、近畿地方整備局が検証で示した流量の前提について「だましのテクニックを使っている」と批判し、「技術的に考えてもダムは要らない」と中止を求めた。

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