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石木ダム事業で反対住民と大石知事が初めての話し合い

2022年8月12日
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8月10日、長崎県の大石賢吾知事は、石木ダム建設を計画している東彼・川棚町を訪れ、水没予定地で暮らす反対住民約20人と意見を交わしました。その記事、ニュースを掲載します。

長崎放送のニュースが意見交換の様子を伝えていますので、動画も是非、ご覧ください。

しかし、石木ダム建設工事の関連工事が始まったので、反対住民が座り込みを8月17日に再開しました。そのニュース記事も末尾に掲載します。

大石知事は石木ダム建設工事を中断して話し合いをすることがなぜできないのでしょうか。

 

石木ダム事業で反対住民と大石知事が初めての話し合い

(長崎放送2022年8月11日(木) 12:44)https://newsdig.tbs.co.jp/articles/nbc/121376?display=1

(動画)

県と佐世保市が東彼・川棚町に計画している石木ダムをめぐり、事業に反対する住民と大石知事が10日、初めて事業について本格的な話し合いをしました。
大石知事からの要望で開かれた話し合いには、ダム建設に反対する住民およそ20人が参加しました。

知事と住民が事業について本格的に話し合うのは2014年7月以来8年ぶりで、住民らは佐世保市の水の需要予測を示すなどしてダムの必要性について議論を求めました。

(反対住民)「これを見てですよ、佐世保市が本当に水が要るかというのが考えられんでしょう?」
(反対住民)「石木ダムは本当に必要かどうかということを議論ばせんばでしょう、まず」
(大石知事)「必要性についての説明が必要だということは全くその通りだと思います。我々も隠れてやるつもりは全くありませんので」

ダムについて大石知事は住民の理解を得たうえで建設を進めたいとして、住民と面会したのはきのうで3回目となりました。

(反対住民)「知事と直接言い合うというのは今までなかったですよね、やっぱり納得いくまで話し合いを続けていきたいと思います」

住民を強制的に立ち退かせる行政代執行も可能な立場の大石知事ですが、当面、住民との話し合いを重ねる方針です。

 

大石知事、住民と対話継続を確認 石木ダム3回目訪問 工事中断には難色

(長崎新聞2022/8/11 10:30 )https://nordot.app/930271862148071424?c=174761113988793844

大石知事(手前)の説明を聞く反対住民ら=東彼川棚町東部地区コミュニティーセンター

長崎県の大石賢吾知事は10日、県と佐世保市が石木ダム建設を計画している東彼川棚町を訪れ、水没予定地で暮らす反対住民約20人と意見を交わした。両者はできるだけ早く次の対話の機会を設けることを確認したが、住民が求める工事中断について、知事は「県民の安心安全を守るのが行政の責任」として難色を示した。
両者の面会は4月以来3回目。知事は自然災害への備えや、地権者の8割が既に移転している現状を理由に、早期完成への理解を求めた。これに対し住民の岩下和雄さん(75)は「私たちの立場に県が立つことが必要。押さえつけるのではなく、ダムの必要性について納得いく話し合いを続けて」と要望。家屋などを強制撤去する行政代執行について、知事は「(ダムを)無理やりつくるのではなく、しっかり理解を得た上で進めたい」と述べた。
住民は、建設反対で同調する佐世保の市民団体との意見交換も求めたが、知事は「(工事差し止め)訴訟が継続中なので控えたい」とした。住民は県との公開討論会も提案したが、知事は明言を避けた。住民の岩下すみ子さん(73)は1982年の強制測量時に機動隊が出動した写真を知事に見せ、「私たちはこの地で住み続けたい」と建設中止を求めた。
終了後、知事は「意見の食い違いがあった。丁寧に対応し一つ一つ解決したい」と話した。

 

【長崎県】石木ダム 知事と地元住民の面会は平行線

(テレビ長崎2022年8月11日 木曜 午後0:20)https://www.fnn.jp/articles/-/401943

(動画)

東彼・川棚町の石木ダムをめぐり、大石 知事は10日、建設反対の住民と面会しました。
住民側は工事の中断を求めましたが、大石 知事は難色を示しています。

大石知事と石木ダム建設に反対する住民は10日夕方、川棚町で約2時間にわたり意見交換しました。

県民の安心・安全を守る責任があるとしてダムの早期完成を目指したいとあいさつした知事に対して、住民は工事の中断を迫りました。

石木ダム建設絶対反対同盟 岩下 和雄 さん 「話し合いを続けていきましょう。工事はしませんのでと言ってくれたら私たちも座り込みに出ていく必要がない」

大石 賢吾 知事 「しっかりと検討はしたいがこの場で約束はできない」

住民側は水需要予測を含めてダムの必要性に疑問があるとして公開討論会も提案しましたが、知事は明言を避けました。

その上で住民側は16日まで工事現場での座り込みを見送るとしていて、県側の対応が注目されています。

 

「石木ダム工事中断」を要請 反対派住民が知事に

(西日本新聞2022/8/12 11:30) https://www.nishinippon.co.jp/item/n/971534/

石木ダム建設を巡って反対派住民と意見交換する大石賢吾知事(中央)

長崎県と佐世保市が川棚町川原地区で進める石木ダム建設事業を巡り、大石賢吾知事は10日夜、同町を訪れ、今も建設予定地に住む13世帯の反対派住民と面会し、意見交換した。住民らは県との協議継続と、その間の建設工事を中断するよう改めて要請。知事は終了後の取材に、協議は続けるものの、工事中断には応じない考えを示した。

冒頭、知事は「一刻も早くこの問題を解決したい。皆さまのお気持ちを聞かせてほしい」とあいさつした。その後の意見交換では、住民から「ダムの必要性を住民にも分かりやすく説明する機会を設けてほしい」「話し合いはパフォーマンスではないか」などという怒号が飛ぶ一方、「(建設予定地で毎日行っている)座り込みを一時中断して様子を見たい」との声も出た。

約2時間にわたった面会後、住民の岩下すみ子さん(73)は「話せただけでもよかった。今後の話し合いの中で、(ダム建設)中止に持っていきたい」。大石知事は「皆さまのふるさとへの思いを聞けたのと同時に、多くの宿題をもらった。近いうちに次の話し合いの機会を設けて、対応していきたい」と述べた。 (才木希)

 

石木ダム 知事が反対住民と対話 「県は強行策ばかり」批判噴出 /長崎

(毎日新聞 2022/8/12) https://mainichi.jp/articles/20220812/ddl/k42/040/257000c

大石知事(左)に県への不信感をあらわにする住民

県が川棚町に建設を進める石木ダムを巡り大石賢吾知事は10日夜、同町を訪れ、建設に反対する水没予定地に暮らす13世帯の住民約20人と約2時間対話した。住民からは半世紀に及ぶ県への不信感が噴出し、県が防戦に回るやり取りとなった。

大石知事が現地を訪れ反対住民と会うのは3回目だが、本格的な意見交換は初めて。知事は冒頭「住み慣れた故郷を思う気持ちから事業に協力できないお考えは十分理解している」としながらも「渇水、洪水という自然災害から県民の安全を守ることは行政に課せられた責任」と述べた。

住民はダム建設着手について県と住民間で交わした覚書(1972年)がほごにされたこと、82年の機動隊を使った強制測量など、県の行動を列挙。岩下和雄さん(75)は「県は住民をいじめる強行策ばかり。強行手段は伝統なのか」と怒りをあらわにした。住民は建設現場に連日座り込んでおり「行政代執行するならやればいい。座り込む必要がなくなる」という声や「工事の排水が田んぼにつながる用水路に流れ込んでいる。嫌がらせではないか」などの意見が相次いだ。

知事「丁寧に対応」

大石知事は「心苦しく思っており丁寧に対応していきたい」「今後も話し合いを続けていきたい」と守勢を強いられた。対話を終えた知事は「厳しい意見もあったが、話し合いを続けたいと言ってもらえたことがありがたかった。誠意を持って理解を得られるよう進めていきたい」と語った。【綿貫洋】

〔長崎版〕

 

【長崎】大石知事と石木ダム反対住民3回目話し合い

(長崎文化放送2022年08月11日) https://www.ncctv.co.jp/news/104802.html

(動画)

長崎県と佐世保市が東彼・川棚町で進める石木ダム建設事業について大石知事は10日夜、水没予定地で暮らす「反対住民」と意見を交わしました。

反対住民と大石知事の面会は3月以降3回目です。知事は13世帯約20人にダムの「早期完成」への理解を求めました。

これに対し反対住民は「工事の中断」を要望、「私たちが納得できる話をしてほしい」と訴えました。

住民の岩下すみ子さん(73)は「本当にもううんざりです。この問題を早く片付けて石木ダムの建設がいらないということがはっきりしている訳です。中止してほしいと思います」と話しました。

大石知事は「我々のなぜ、続けなきゃいけないかという考えもしっかりともう一度改めて説明しなくてはいけないと思いますし、どういった形で折り合いをつけられるかというのは今後取り組んでいきたいと思います」と話しました。知事は反対住民との話し合いは続けたいとしています。

 

石木ダム反対の住民と意見交換 川棚で知事

(読売新聞2022/8/12 05:00) https://www.yomiuri.co.jp/local/nagasaki/news/20220811-OYTNT50109/

県と佐世保市が川棚町に建設を計画している石木ダムについて、大石知事は10日、建設に反対する地元住民と同町内で意見交換した。

住民約20人が出席し、「話し合いの間は絶対に工事を強行しないと約束してほしい」「住民の同意を得られない場合は行政代執行してでも造るのか」などと要望、質問した。

大石知事は「皆さんと話し合いを続け、どうやったら折り合いをつけられるかしっかりと検討したい」「行政代執行は最終的な手段。私は皆さんの理解を得た上で解決を目指したい」と回答。「いただいた指摘は、しっかりと県庁内で精査する」と述べた。

県は2025年度の完成を目指しているが、事業用地には今も13世帯が暮らしている。大石知事は3月にダムの予定地で反対派の住民と面会し、4月に反対派の住民と現地を視察。7月には佐世保市と川棚町で建設を求める団体と意見交換した。

 

川棚町の石木ダム建設工事 住民による座り込み再開

(テレビ長崎2022年8月17日 水曜 午後7:32 )https://www.fnn.jp/articles/-/404611

(映像)

東彼・川棚町の石木ダムをめぐり、建設に反対する地元住民は、知事に工事の中断を求めました。
ただ知事は要望に応じておらず、住民による座り込みが「再開」しました。

東彼・川棚町の石木ダム建設予定地です。

午前8時前から重機が運び込まれ、関連工事が始まりました。

これに対し建設に反対する住民やその支援者たちは、抗議の意思を示すため座り込みを「再開」しました。

福岡の支援者「無理やり、強引に進めるやり方そのものを変えていかないといけない。お金の無駄遣いです」

石木ダムの建設工事をめぐり大石 知事は先週地元住民と意見交換し、今後も話し合いを続ける方針を示しました。

一方、住民側が話し合いの条件として求めた「工事中断」には応じておらず、今後の話し合いの予定も明らかになっていません。

地元住民 「どこも行くところない。ここが一番、いいもんね。川原が一番、よかもんね。どこさ出ていくね、今さら」

ダム建設をめぐる県と住民側の溝は埋まっていません。

石木ダム問題に対する1万人の声を「手紙」で長崎県議会に届けよう!

2022年8月10日
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ダム予定地の人たちの生活を奪い、かけがえのない自然を喪失させる「石木ダム」、利水治水の両面で必要性がない「石木ダム」の建設を中止させるために、

「石木ダム問題に対する1万人の声を「手紙」で長崎県議会に届けよう!」の活動が始まりました。

https://rescuex.jp/project/12232 をお読みください。

「石木ダム問題を知る会」の呼びかけページから一部を転載します。

あなたの声を県知事・県議会に届けよう!

手紙でダム建設を止めたい

「手紙」を届ける理由

「直接的」かつ「継続的」に声を届けたい

これまで「石木川まもり隊」や「#いしきをかえよう実行委員会」など、さまざまな活動団体が啓発活動や署名活動を行ってきましたが、今もなお解決されていません。

そこで、今回のプロジェクトではよりダイレクトに声が届くよう、「意思決定者に直接送付」する“手紙”という手段にこだわりました。

また一瞬のムーブメントで終わらせないことも重要です。そのため皆さんの声を「継続的」に送り続けます。

プロジェクトで集まった手紙を運営スタッフが発送のスケジュールを組み、県知事と県議会議員の事務所に「直接」そして「継続的」に送ります。

いただいたメッセージは、マスコミにも届け、メディアを巻き込んでこの問題をひろめていきます。

あなたの声が現地・こうばるの方々の支えになる

集まったメッセージを冊子にして、ダム建設予定地で反対運動を続ける13世帯の方々にもお送りします。

40年という月日が経ち住民の方の高齢化や長期化による疲弊や苦悩が増す中、あなたの声がこうばるの方々を支える大きな力になります。

ダム建設を止めるための鍵は、一人でも多くの「民意」が集まること。あなたの声が手紙となり届くことが何よりも大切です。

40年にわたるこの問題を終わらせるため、私たちの仲間になっていただけないでしょうか。

 

目指すは1万人の声を届けること

私たちのプロジェクトのゴールは、1万人の声をお手紙にして、一方的に進む石木ダム建設を止めることです。

その最初の一歩として、このクラウドファンディングを通して200人の声を集めます。

今後、上映会の定期開催、意見広告などを通して、この活動を広め、1万人の声を県議会議員に届けます。

 

【このプロジェクトに協力いただいた企業・団体】

・株式会社ボーダレス・ジャパン

・パタゴニア 日本支社

・石木川守り隊

・#いしきをかえよう実行委員会

 

詳しくは、https://rescuex.jp/project/12232 をお読みください。

 

 

佐世保市水道の古いダムを改修するために石木ダムが必要という話の虚構

2022年6月5日
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佐世保市水道の古いダムを改修するためにも石木ダムが必要だという話がネット上でも見られるようになりました。

例えば、次のツィッターがそうです。

佐世保市北部のダム現況|星野夕陽|note  https://note.com/choidamnet/n/n81e9ce58978c

「佐世保市北部の水道用ダム、山の田ダム、転石ダム、菰田ダム、相当ダム、川谷ダムが非常に古くて、改修したいけど水に余裕がない、石木ダムが重要だ」という主張です。

しかし、この主張は佐世保市水道の現状を踏まえない誤った主張であって、石木ダム推進の世論を拡げていくために書かれたものです。

そこで、その誤りを指摘しておくことにします。

佐世保市の水道水源を整理した表を下記に示します。

上表において河川慣行水利権と湧水は許可水利権ではないということで、佐世保市は保有水源から除外しています。しかし、これらの水源は渇水時も安定取水が可能であって、実際に2007年度渇水でも許可水利権と同程度の取水がされていました。また、長崎市水道は河川慣行水利権(矢上水源12,000㎥/日)も水源として計上していますので、佐世保市による保有水源からの慣行水利権の除外は恣意的なものです。

上表の数字は取水量ベースなので、給水量と比較するためには利用量率〈1-浄水場ロス率〉を乗じなければなりません。佐世保市は現在の保有水源をなるべく小さくするために、利用量率を90%としていますが、実際は下図の通り、95%以上あります。

なお、下図の通り、佐世保市も2004年度予測では95%を使っていました。

佐世保市の一日最大給水量は下図の通り、減少傾向が続き、2021年度は69901㎥/日になりました。利用量率を実績を踏まえて95%とすれば、取水量ベースで73580㎥/日です(69901÷0.95)。現在の保有水源の計は100500㎥/日ですから、2.5万㎥/日以上の余裕があります。

古いダム(山の田ダム、転石ダム、菰田ダム、相当ダム、川谷ダム)の改修で、ダムの休止が仮に必要であったとしても、保有水源が最大の川谷ダムでも水源量は13300㎥/日ですから、現在の余裕水源の範囲で順次、改修を進めていけばよいのであって、その改修のために石木ダムが必要だというのは、根拠のない話です。

すなわち、佐世保市水道は水需要の減少傾向が続いてきていて、十分な余裕水源を抱えるようになったのですから、その余裕水源の範囲で古いダムの改修を順次進めていけばよいということです。

佐世保市水道の古いダムを改修するために石木ダムが必要という主張は、石木ダム推進の世論を拡げていくためにつくられた話でしかありません。

 

「皆さんと同じような普通の暮らしをしたい」石木ダム強制測量から40年【長崎・川棚】

2022年5月29日
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石木ダム問題の40年間を振り返った長崎放送のニュース記事を掲載します。

なかなかの力作で、素晴らしい記事だと思います。31枚の写真で経過も知ることができます。

この記事を読んで、事業者に対して心底からの怒りが込み上げてきます。

40年間という本当に長い間、地元の人たちは、必要性が乏しい石木ダム事業によって苦しめられ続けてきました。

無意味な石木ダムは、何としても事業を中止させなければなりません。

 

「皆さんと同じような普通の暮らしをしたい」石木ダム強制測量から40年【長崎・川棚】

(長崎放送2022/5/24(火) 12:41) https://news.yahoo.co.jp/articles/0b9f624e3e295c40d3414b2c2cdd653342f7a681

長崎県川棚町に計画されている石木ダム事業で、40年前に県が行った機動隊を伴う現地測量は反対住民と行政との間に大きな溝を作る結果となりました。

今も続く反対運動の起点ともなった強制測量について振り返ります。

【写真を見る】「皆さんと同じような普通の暮らしをしたい」石木ダム強制測量から40年【長崎・川棚】

(31枚の写真を見ることができます。https://newsdig.tbs.co.jp/articles/gallery/52729?station=nbc )

今年3月、石木ダム建設予定地を訪問した大石 賢吾 知事。 ダム反対派の住民に就任の挨拶するためでした。

大石 知事「ダム建設では皆様に本当に大変な思いをさせてしまっていることに、私も知事として心苦しく思っております」

 

「話し合いをせずに強制執行した」刻まれた県に対する”不信感”

なぜ知事が心苦しく思うのか。

それは住民によるダム反対運動を激化させた要因が県の側にもあるからです。

「強制測量、阻止~」 強制測量が始まったのは1982年5月21日。 その1週間前に知事と話し合いをしたばかりでした。

「帰れ、帰れ」 県はおよそ150人の機動隊員を動員。ダムの測量を目指す県職員はバスの中にいました。

機動隊員「どきなさい、諸君の行為は違法行為だ」 道路に座り込み、行く手を阻む住民。 激しいもみ合いが続きながらも、県の測量班がじわじわとダム予定地に近づきます。 県職員「押していけ、押していけ」 反対住民との話し合いが進まず、業を煮やした県側の強硬策でした。

測量用の杭を打ち込む音「カンカンカンカン」 岩下 和雄さん(当時35)「県の方が自分たちから話し合いを言い出しておいて、話し合いをせずに強制執行してきたわけだから、県の方が話し合いを断ってしまったわけです。私達じゃなくて」 抗議活動に参加した岩下すみ子さんは、当時33歳。佐世保から嫁いで10年目でした。

今も反対派の櫓が残るこの道を歩いて現場に向かいました。

岩下 すみ子 さん「(当時の)写真を見てわかるごと、悲壮感溢れてますよね。何しろ初めてのことでしょ」 機動隊と向き合うのはこの日が初めてでしたが、強気の姿勢は崩しませんでした。 (当時の音声)「私たちを妨害しないでください」

岩下 すみ子 さん「怖かったですよ、みんな。どういうことが起きるんだろうかっていうような恐ろしさがありましたね」

自分たちの住む土地に県職員を入れないためのギリギリの抵抗が ”道路での座り込み” でした。

岩下 すみ子さん「人が途絶えないようにずっと並んでいましたね。排除されても排除されても、またやってくるっていう感じですね。私たちがね」 のべ7日間続いた強制測量。 抜き打ちだったうえ、年寄り・子どもにも容赦のない対応。 行政への不信感は一気に高まり、負の歴史として住民の心に深く刻みこまれました。

岩下 すみ子さん「かわいそうやったですね。子供たちにも小さい時から大変な思いをさせたねと思いますね。今思えばね」

ダム反対を訴える住民の中で最高齢の松本マツさん95歳です。

反対運動の拠点の1つ『団結小屋』に今も通い、ダム反対の意思を示しています。

松本マツさん「みんなは山でも頑張りよらすけん、(私も)頑張らんばねと思って、来れる間ですね。気持ちだけでもしっかりしていかんばねと思って」

40年前の強制測量の際には体を張って闘った松本さん。その時の痛みは今も忘れていません。

松本さん「機動隊って荒かもんね、いっぱい(人が)並んどるとに、踏みつけたごとして通って行きよったですもんね」

団結小屋の窓からは、県が去年からはじめた本体関連工事の現場が見えます。

徐々に削られていく山の姿を見て、怒りがこみ上げてくるといいます。

松本さん「コンクリート塀(堰堤)ばはめるとかねと思って、でもどこさん出ていくですね」

 

「普通の暮らしがしたい」反対活動を続けて40年

岩下さんも毎日、石木ダム関連の工事現場で座り込みを続けています。強制測量から40年、住民らはずっと反対運動を続けているのです。

岩下すみ子さん「私たちも普通の暮らしができてないですもんね、皆さんと同じような普通の暮らしをしたいと思いますね」

ダム予定地内にある住民らの土地・建物は、3年前、県に強制収用されました。

しかし住民らは補償金の受け取りを拒否。立ち退くことなく、そのまま住み続けています。

岩下すみ子「もう強制、強制で権力をかざしたような、こういう事業のあり方っていうのはね、考え直して欲しいですね。考え直す時期が来てると思います」

こうした中、今年、12年ぶりに新しい知事が誕生しました。

就任後、すでに2回、現地を訪れています。

住民「ここからずっとですよ、ホタルだらけ。ホタル川なんです」

大石知事「子供たちにもホタルが思い出ですね」

選挙の際は、石木ダム推進の立場を明らかにしていた大石知事ですが、先月は反対住民とともに水没予定地域を視察しました。

これまでの知事には見られなかった行動だけに、周囲には “戸惑い” とともに “期待感” も広がっています。

大石知事「まずはしっかりと、この地域で川原の皆様方が守られていらっしゃるもの…それをまずしっかりと見て感じてですね。そこを拝見したうえでしっかりとお話し合いをさせていただきたいと思ってますので」

岩下すみ子さん「ここをそんなにまでして強制的に奪ってまでもダムが必要かっていうことですよね。何回も話し合いを続けるとおっしゃったから、それに期待したいと思います」

住民と行政との亀裂を生んだ強制測量から40年を迎えた今年、住民が望む「ダムの必要性」に立ち返っての話し合いが実現するのか。

今後の動向が注目されます。

 

※今回の記事のため、大石 長崎県知事へ取材を申し込みましたが「今は住民との関係を構築している途中の大事な時期なので、今回の取材は遠慮させてほしい」として、考えを個別に聞くことはできませんでした。

各都市で進行する水道用水の減少、佐世保市が架空予測を続ける真の理由

2022年4月23日
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最近、某所で石木ダムが利水治水の両面で必要性が失われているという報告をする機会がありました。(嶋津暉之)

「減り続ける佐世保市水道の給水量  石木ダムは利水治水の両面で必要性が希薄

https://suigenren.jp/news/2022/04/15/15995/

利水の面では下記の佐世保市のグラフを示し、水需要(一日最大給水量)の実績が減少の一途をたどるようになってきているのに、佐世保市が実績とかけ離れた架空予測を行って石木ダムの水源が必要だとしているおかしな実態について報告しました。

この報告について二つの質問がありました。

(1) 水道用水の需要が減ってきているのはなぜか。佐世保市のみに見られる現象なのか。

(2) 佐世保市が水需要の実績とかけ離れた架空の水需要予測をなぜ続けるのか。

それぞれについて下記の通り、説明しました。

 

(1)について(水道用水の近年の給水量の減少傾向は、日本の各地で見られる現象であって一極集中が進む東京都の水道も例外ではない。)

水道用水の需要の減少傾向は近年、日本の各都市で見られる現象です。漏水防止対策の推進、節水機器の普及、節水意識の浸透などによって水道用水の需要が明確な減少傾向を示すようになりました。

日本で一極集中が進む東京都の水道用水も例外ではありません。東京都は今年はコロナ禍により、人口が少し減りましたが、昨年までは人口が増加の一途を辿ってきました。

その東京都について下記の東京都のグラフを示し、近年は確実に水需要が減ってきています。1992年度には600万㎥/日を超えていましたが、その後はどんどん減って2020年度は461万㎥/日まで下がりました。この間の減少率は25%にもなっています。

なお、この東京都は下記のグラフの通り、利根川・荒川水系のダム等の水源開発事業に貪欲に参画してきたため、大量の余剰水源を抱えています。2020年度の八ツ場ダムの完成で東京都は現在、270万㎥/日以上という極めて大きな余剰水源を保有しています。使いもしない大量の余剰水源は何の意味もないのですが、関東地方でもこのように全く無駄な水源開発事業が続けられてきています。

このように水道用水の需要の減少傾向は日本の各地で見られる確実な現象になってきているのですから、その事実を踏まえて予測を行うのが当たり前のことであるにもかかわらず、佐世保市は、実績を無視した架空予測を続けているのです。

 

 

(2)について(ダムができれば、架空予測は用無し(札幌市と神奈川県営水道の例))

佐世保市が水需要の実績を無視した架空予測を続ける理由は、石木ダム事業にあります。

このことに関して二つの実例を示します。

札幌市の例

当別ダム(貯水容量745万㎥)は北海道が建設したダムで、2012年度に完成しました。

札幌市水道がこの当別ダム事業に参画しました。当別ダムが完成するまでは札幌市水道は給水量がどんどん増えるので、下記のグラフの通り、当別ダムの水源が必要だとしていました。

ところが、同グラフの通り、当別ダム完成後の札幌市水道の予測は大きく変わりました。新予測は給水量が漸減していくというもので、2035年度の一日最大給水量は従前の87万㎥/日から62万㎥/日へと、25万㎥/日もの大幅な方修正を行いました。

札幌市水道は当別ダムの完成により、架空予測を続ける理由がなくなったので、臆面もなく、実績重視の予測に切り替えたのです。

神奈川県営水道の例

神奈川県営水道は国土交通省の宮ケ瀬ダム事業に参画しました。宮ケ瀬ダム(貯水容量19300万㎥)は2000年度に完成しました。

宮ケ瀬ダムが完成するまでは神奈川県営水道は下記のグラフの通り、水需要がどんどん伸びるから、宮ケ瀬ダムの水源が必要だとしていました。ところが、宮ケ瀬ダムが完成すると、がらりと変わりました。水需要は今後は減っていく予測になったのです。

宮ケ瀬ダムの水源が必要ということを言う必要性がなくなったので、神奈川県営水道の水需要予測は、同グラフの通り、実績重視の予測に変ったのです。

 

この二つの例を見れば、佐世保市が水需要の実績を無視した架空予測を続ける理由は、石木ダム事業にあることは明白です。

石木ダムの水源が佐世保市に必要であるとするために架空予測を続けているのです。石木ダム事業がなければ、佐世保市もまともな予測に変わるに違いありません。

 

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