長崎県知事・佐世保市長・川棚町長 合同説明会 (石木ダム事業)
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2014年7月11日 こうばる公民館における説明会の報告
2014年7月11日夕方7時から、石木ダム予定地内で居住されている13世帯の皆さんがいつも活用されている「こうばる公民館」で、長崎県知事(中村法道氏)・佐世保市長(朝長則夫氏)・川棚町長(山口文夫氏)を招いての「石木ダムの必要性に関する公開質問状への回答説明会」が開催されました。
行政側は、事業認定非保留地の収用裁決申請期限を9月8日に控えていることから、収用対象としている13世帯に「自主交渉で協力を取り付けたい」として面会願いを提出していた経緯があり、この説明会を13世帯への「協力お願いの場」という位置づけがありました。
当方側は石木ダム建設絶対同盟の皆さん・支援4団体・石木ダム対策弁護団が出席しました。
行政側は、各首長をはじめとし、説明役として長崎県からは浅野河川部長・野口河川課長・浦瀬企画監・古川石木ダム事務所長ほか、佐世保市からは谷本水道局長・河野計画室長ほかが出席しました。
弁護団事務局長の平山弁護士が進行役を務めました。
最初は長崎県と佐世保市からの出席者に自己紹介をお願いしました。
知事は「ダム事業への理解をお願いする」という主旨の話しに入ったので、参加者たちから「ダムありきの話しはナシにして欲しい」「話しが長くなるから短く」との声が上がり、持ち時間2分と言うことになり、「裁決申請までわずかしかない、話合いで解決していきたい。」等と述べました。
佐世保市長は「佐世保市はほんとうに水に困っている。ダムが必要」と発言。「今は水に困っていない」と会場から多くの声が上がりました。
次いで、実質的な質疑に入りました。
3自治体からの全出席者の自己紹介を終えてから、岩下氏が挨拶をかねて、この日の説明会の意義を話しました。
これまでにダムの必要性についての話合いを知事たちは拒否してきたこと、石木ダムがほんとうに必要であるかについて住民と一緒に検証することが不可欠であると述べ、今日をきっかけに検証作業を続けていくことを強く要請しました。
最初は利水に関した質問です。
質問:佐世保市は今現在、困っているのか?
平成19年度から現時点まで一日平均給水量も一日最大給水量も1万㎥/日も下がっているではないか。
今は困っているんですか?
答え(水道局長):水道法に基づく常時必要とする水源(佐世保市が言う安定水源)が足りない。
リスク管理上水源が不足している。
蛇口をひねれば水が出ているから今日は足りている。
法律論的には原水は不足している。
いかなる時でもユーザーが必要とする豊富な水量を供給するのが水道事業者の責務である。
解説(遠藤):「法律論的には原水は不足している」とは、「佐世保市の言う安定水利権では不足」という意味で実際には「慣行水利権は水道水源として認めない」などという法律はありません。
豊富という言葉は、水道法第1条の「清浄にして豊富低廉な水の供給を図り」の「豊富」を意味しているようです。しかしこの「豊富」には10年に一度の渇水に対応できる水量であることが水道法5条の解釈とされ、渇水時には適用しないことが水道法15条にもられています。
質問:ダム計画が出された昭和50年に佐世保市は「昭和60年に水需要は16万㎥/日になる。
保有水源は10.5万㎥/日なので6万㎥/日不足する。よって石木ダムが必要」としていた。
現在の一日最大給水量は8万㎥/日たらず。昭和50年予測から見ても不足予定水量6万㎥/日より2万㎥/日も給水量が減少しているのであるから、ダムはいらないことになるではないか。
答え(知事):不安定水源を活用していたから給水できている。不安定分を安定化させるには四万㎥/日不足している。
解説(遠藤):慣行水利権分をゼロとみなすのは法的にも実態としても全くの誤り。慣行水利権の能力について疑義がある場合は、科学的検証が必要。
質問:2013年度予測では2014年度から急激に使用量が上がるとしている。その結果として2007年度予測と同じ水量になっている。数字あわせではないか?
実際は不足はないのではないか?
H11,H13年度は一日最大給水量が10万㎥/日を超えていた。それをまかなうの原水があったのに、今は原水が足りないという。どこへ行ってしまったのか?
水需要が増えると言っていたのに実際は減少している。
この二つについて説明されたい。
答え(水道局長):2013年度予測は「同規模の他都市と比べて水の使い方が少ない。
渇水による節水で我慢している状況にある。この我慢状況がなくなれば水使用量が増える」、と考えた。
質問:今は足りているんですね。
生活の質を落とすほど我慢をしているんですか?そうではないでしょ。
一人あたりの水使用量が少ないというのは誇るべきことではないのか?
豊富な水を供給してもっと水を使いましょうよ、というのは本末転倒ではないのか。
答え(水道局長):いつ何時でも水を供給する義務がある。渇水時には不足する。
解説(遠藤):水道供給義務として平常時は不足を来さないことが水道法5条と15条で求められています。水源については10年に一度の渇水に対応できる水量であることが水道法5条の解釈とされ、渇水時には適用しないことが水道法15条にもられています。
質問:H19年渇水以降は貯水池の貯水率は93%以上を維持している。水は足りている証拠ではないのか。
不安定水源・安定水源という言葉は水道法にはない。
10.5万㎥/日を7.7万㎥/日にしなければならない法的根拠はない。
これを戻せばすむ話しでないか。
質問:「現状は足りているが、10年後に不足する可能性がある」というのではないのか。
答え(水道局長):私はそれを答える立場にない。
答え(市長):平成6年の渇水が原点。危機管理として是非ともお願いしたい。
質問:それは現在は水が足りていることを言っている。
H6渇水が再来したらどうなるのか、しっかりと検証しよう。
市長はH6渇水が今再来したときどうなると考えているのか?
答え(市長):状況が違うから簡単には言えない。しっかりしなければならない。
質問:H6渇水時より現在は水の使用量が大幅に減少している。殆ど問題にならないのではないか。
シミュレーションを行ってその結果を知らせて欲しい。
答え(計画室長):シミュレーションに取りかかったが、きちんとシミュレーションに足りるデータが欠落しているので、シミュレーションはできない。
質問;それでは「H6年渇水再来対応としての石木ダム」は根拠がないことになる。
答え(市長):H6渇水時で陥ったようなことはなくしたい、それは市長としての責任。
答え(水道局長):事業認定申請書に書いたのは渇水の例示としてあげた。
安定水源だけでは現在も不足し、将来は不足する。
質問・意見に耳を傾ける首長たち。痛いことを言われているのでどうしても顔がこわばる。 佐世保市水道局長 佐世保市長朝長氏 長崎県知事中村氏 川棚町長山口氏
質問:安定水源の法的根拠は? 何十年に一度の渇水時にも豊富な水の供給が義務付けられているとする法的根拠も示されたい。
答え(水道局長):供給義務は水道技術指針。
解説(遠藤):異常渇水による給水停止は水道法第15条で認められています。
添付の水道法逐条解説15条第2項中の但し書き(216ページ)を参照ください。
同書220ページには、“常時給水の義務を解除する「正当な理由」とは、給水の停止が異常渇水によるもののほか・・・・”と記されています。
水道施設として備える条件は水道法5条に記されています。逐条解説には「1/10渇水対応」と記されています。
質問:慣行水利権は安定水利権ではないのか?
答え(計画室長):慣行水利権にも安定と不安定があるのでは。佐世保市は不安定水利権としている。
当方:そんな解釈はあり得ない。著しく反している。許可水利権も届出水利権(慣行水利権)も効力は同じ。
以上が利水に関する質疑応答でした。
利水質疑 筆者のまとめ
① 2007年度以降、水使用量は減少が続き2013年度には1万㎥/日も少なくなっている。
② 2008年度以降、貯水池の貯水率は93%を割ったことがない。
③ 以上から、2008年度以降は水不足で困っていることはない。
④ 佐世保市の言い分:法的には(=安定水源だけでは)、水源が不足状態にある。
⑤ 当方:不安定水源・安定水源の区分には法的根拠はない。あるというのであれば、その根拠を示すこと。
⑥ 佐世保市の言い分:何十年に一度という渇水時にも豊富な水を供給する義務が水道事業体に課せられている。
⑦ 当方:そのようなことがあるならば、法的根拠を示すこと。(異常渇水による給水停止は水道法第15条で認められています。)
⑧ 佐世保市:H6年渇水を現在に置き換えるシミュレーションは当時のデータ不足で不可能。
⑨ 当方:それであるならば「H6年渇水再来対応のため」に科学的根拠ナシ。石木ダムの必要性としてH6渇水は口実にできないではないか。
H6渇水が再来しても水使用量が大幅に減少しているので、殆ど影響はないと考えるが、リスク対策として、きちんと検証することが不可欠。
治水に関する質疑
問:現在の川棚川は過去の洪水に対応できるか?知事の認識は?
答え(知事):下流部で一部の河道整備が遅れているが、それが完成すれば1130㎥/秒の流下能力があるので、過去の洪水は石木ダムナシで流すことができる。狭窄部である城山地点の河道整備を早期に行いたい。
問:100年に1回の降雨量を400mm/24hrとしたときの流量を1400㎥/秒としているが。
答え(知事):雨の降り方によって流量は変わる。
問:雨量400mm/24hrを9パターンの洪水に当てはめ、その最大値を取って1,400㎥/秒としている。他の8パターンは1400㎥/秒より小さい。そうであれば100年に1回の洪水が1,400㎥/秒になる確率は更に低いのではないか?
答え(土木部長):400mm/24hrは100年に1回。降雨パターンに確率はない。だから1,400㎥/秒は100年に1回。
それはおかしいと反論続出。
400mm/24hr降ったときに必ず1400㎥/秒になるというのではなく、最大で1400㎥/秒になるのであるから、100年に1回と言い切ることはできない。「1400㎥/秒は確固とした値ではなく架空の値でないか」の指摘有り。
解説(遠藤):雨が降る量と雨の降り方が各々独立していれば、両方の確率を掛け合わせた値がある降雨量である振り方が重なる確率になる。今の場合、降雨量が400mm/24hrになる確率は1/100,採用した降雨パターンは9ケース。その中の最大値一つだけが1400㎥/秒となっている。よって、1400㎥/秒になる確率は1/100ではなく、1/100×1/9=1/900になるのではないか?という議論。
統計学で降雨パターンの分布の独立性が認められているならば1400㎥/秒の確率は1/900となるが、そうでないと1/900とは断言できない。
いずれにせよ、1/100よりは遙かに小さい確率であることは確か。
問:過去100年に戦後最大とされている大きな洪水はあったのか?
答え(河川課長):実績として残されているのは川棚町史しかない。そこで一番大きな洪水は昭和23年洪水。
問:過去100年程度までに大きな洪水があったかを調べるのがよい。流域の人に聞けば分かるでしょ。 過去100年程度で最大の洪水は昭和23年洪水であった、ということになるのではないか?
川棚町長、河道改修が終われば過去の洪水は石木ダムがなくてもすべて流せる、という説明は県から受けていますか?認識は?
答え(川棚町長):そのように説明を受け、理解している。
問:残りの改修工事を早期に完了させるということでこの場は一致した。ところで何時になるのか?
答え(河川課長):城山地点の関係者と調整を進めたい。
以上で治水の質疑応答終了
治水質疑 筆者のまとめ
① 下流域現在の流下能力は1,000㎥/秒。
② 計画高水流量1,130㎥/秒流下に向けた河道改修を早期に完了させる。
③ 河道改修が完了すれば、戦後洪水は石木ダムがなくても安全に流下できる。
④ 100年に1回の洪水流量1,400㎥/秒は、100年に1回の計画降雨量400mm/24hrと202mm/3hrを9つの降雨パターンに当てはめた時に算出された最大値。
100年に1回の計画降雨量400mm/24hrと202mm/3hrが降ったとき、降り方による違いがあるので流量も変化する。
⑤ 過去100年程度の期間の洪水調査をしよう。おそらく昭和23年洪水が過去100年程度の最大洪水であろう。
参加者からの意見
13世帯の一員:針尾工業団地計画中止に伴い、工業用水計画6万㎥/日が削除された。その後人口減少で2万㎥/日差し引いた。このあたりの説明が不足している。
石木ダムサイトの地質調査:透水性が高い、湧水がある、採石場のダイナマイト使用によるヒビ割れ等で安全性に問題ある。
多目的ダムとすることで災害を引き起こす恐れ。洪水によっては多目的ダムが洪水被害を拡大する。
これまで石木ダム反対を言い続けてきた。いじめられ苦しめられ続けてきた。権力と金の力で平和で安住の地がめちゃくちゃに破壊された。
事業認定されても話合いが進むことにはならない。裁決申請は片手に強制収用、片手に交渉の姿勢でしかない。
どうしても必要であるならば、石切場採石跡地の活用があるではないか。
住民を追い出し、不幸のどん底に陥れるのは違法とは言えないとしても人のやることではない。
13世帯の一員:夢の紹介
平山弁護士 :全体のまとめ
- 今回初めて知事・市長・町長の参加を得られた。
- 担当者でなければ答えられない質問、首長でなければ答えられない質問があることが分かった。
- これからは長崎県・佐世保市一緒の説明会とし、これに知事・市長・町長に参加願う、ということで約束されたい。
知事
毎回出るとなると説明会を開く日程が入らなくなる可能性がある。必要に応じて土木課長に伝えて欲しい。石木ダムを判断するのは私と認識している。その都度、よく聞いて出席を判断する。
終了は21時30分でした。
実況ビデオ
撮影 いしまるほずみさん
2014年7月11日知事面会
http://youtu.be/7vHcEJL4cms
2014年7月11日知事面会つづき
http://youtu.be/IvyApLZEztQ
参考資料
マスコミ報道
長崎新聞
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