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長良川河口堰20年、止まらぬ論争 水利用低迷やアユ漁獲減少 減るシジミ 河口堰維持に239億円 

2015年7月6日
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7月6日で本格運用開始から丸20年となる長良川河口堰の問題を取り上げた中日新聞、日本経済新聞、毎日新聞の記事を掲載します。

 河口堰維持に239億円 「長良川」20年

(中日新聞2015年7月6日)http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2015070602000070.html

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 六日で本格運用開始から丸二十年となる長良川河口堰(ぜき)(三重県桑名市)の維持管理費が、来年三月末までに総額二百三十九億円に及ぶ見通しとなることが中日新聞社の調べで分かった。河口堰は約千五百億円で建設されたが、一九九五年の運用開始後も多額の税金が投じられている。造られると、莫大(ばくだい)な費用を必要とし続ける巨大公共事業の実態が浮き彫りになった。

 維持管理費二百三十九億円のうち、国を除く愛知、三重、岐阜の三県と名古屋市が全体の77%にあたる百八十三億円を負担。愛知、三重県と名古屋市は過去二十年間、河口堰で利用できるようになった工業用水や水道水をほとんど使っていないにもかかわらず、百七十四億円を払い、一部は水道料金に転嫁されている。

 堰を管理する水資源機構中部支社(名古屋市)によると維持管理費は定員二十二人の管理所職員の人件費や設備更新費など。年によって変動はあるが、年間八億~十六億円程度かかる。

 河口堰には治水と利水の目的があり、国と東海三県、名古屋市が負担を分け合う。治水分は二〇一〇年度まで国55%、愛知、岐阜、三重県が15%ずつで、一一年度以降は国が全額負担。利水分は愛知、三重県と名古屋市が分担している。

 だが、堰建設で新たに使えるようになった最大毎秒二二・五〇立方メートルの水のうち、実際の利用は、愛知県知多半島地域の水道に毎秒二・八六立方メートルと三重県中勢地域の水道に毎秒〇・七三立方メートルの毎秒計三・五九立方メートルで、全体の16%にとどまる。計画時の過大な需要予測が原因で大幅な水余りになっている。

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長良川河口堰20年、止まらぬ論争 水利用低迷やアユ漁獲減少

(日本経済新聞2015/7/4 2:07  ) http://www.nikkei.com/article/DGXLASFD29H3G_T00C15A7CN8000/

三重県桑名市の長良川河口堰(ぜき)が運用を始めて6日で20年の節目を迎える。4、5日に市民団体が今までを振り返るイベントを開くほか、開門調査を求めてきた愛知県も28日に有識者による検証委員会を実施する。
推進派と反対派の対立はその後の公共事業のあり方を見直す契機にもなったが、事業そのものの是非は結論が見えない。
「日本には大型公共事業を後で検証するシステムがない。我々は今後も粘り強く検証していく」。愛知県の大村秀章知事は有識者委を1年ぶりに開く意義をそう語る。
愛知県は1月、開門調査に向けて国に質問状を提出した。これに対し国は今年5月、400ページにのぼる回答を寄せた。7月末の検証会合では有識者が回答を検討し、今後の対応を話し合う。
河口堰の総工費は1500億円。国と愛知県や名古屋市、三重県、岐阜県が負担した。さらに毎年、維持費が約10億円かかる。そのコストに見合う事業なのか、今なお大きな争点になっている。
河口堰の目的の一つは利水だ。河口堰で毎秒最大22.5立方メートルの水資源が生まれた。しかし使われているのは同3.6立方メートルと16%にすぎない。
国が河口堰の構想を作ったのは1960年代の高度経済成長期。愛知や三重は日本を支える重工業地帯として発展し、水需要も大きく拡大するはずだった。その後、産業構造の変化や各企業の節水の取り組みで、もくろみは大きくはずれた。
一方で「夏の水不足を緩和させる効果は高い」との声も自治体の間では根強い。2005年の渇水時には長良川の水を愛知に供給し、悪影響の緩和に一役買った。
環境に与える影響でも意見が分かれる。
「魚道を流れる5センチほどの小さな魚がアユです」。河口堰を管理する水資源機構は5月下旬、報道陣向けに魚道の見学会を開いた。「今年のアユの遡上は多い。河口堰のアユへの影響はほぼない」と機構は胸を張る。
ただ、この20年をみると、河口堰の運用前の93年に激減し、その後回復がみられない。機構は「全国的にアユの漁獲は減った。長良川に限ったものではない」と説明するが、長良川市民学習会の武藤仁事務局長は「悪影響は明白だ」と反論する。
事実、岐阜市は今年天然アユを「準絶滅危惧」に選定した。「放流などの手助けがなければアユは絶滅の可能性すらある」(武藤氏)。双方の主張はかみ合っていない。
20年前、旧建設省の官僚として現場で河口堰にかかわった宮本博司氏(62)は言う。「事業の推進側は20年前に言っていたことがどこまで正しかったか検証し、逆に反対派は河口堰が生んだメリットを語らなければ、次の世代に何の教訓も残せない」。お互いの主張を繰り返すだけでは風化が進むだけだと危惧する。
河口堰問題をきっかけに、国は1997年に河川法を改正し、環境保全や住民参加の仕組みを取り入れた。公共事業への国民の目は厳しさを増し、政府の投資額は20年で半分近くに減った。国の財政が厳しい中でどう有用な社会インフラを整備するか。長良川河口堰は今も大きな問いを投げかけている。

三重・長良川河口堰:稼働20年 減るシジミ、嘆きの漁師 「自然はむちゃ微妙や」
(毎日新聞 2015年07月06日 中部朝刊)http://mainichi.jp/area/news/20150706ddq041040004000c.html

長良川河口堰(ぜき)(三重県桑名市)のゲートが閉められ、本格運用が始まって6日で20年。建設を巡って反対運動が起こり、運用後も河川水の利用が最大取水量の2割に満たない中で、生態系への悪影響やその必要性を問い直す声は今も絶えない。
この間、河口堰を日々見つめながら、シジミ漁などで生計をつないできたのが地元の漁師たちだ。劣化する漁場、変化する生態系??。「造ってくれと頼んだわけやないのに」。複雑な思いを抱きながら、節目を迎える一人の漁師を追った。【松本宣良】

6月22日午前5時過ぎ。朝日が川面を照らす中、赤須賀漁協(同市)に所属する漁船十数隻が次々とシジミ漁へ出ていく。「最初の頃は異様に映った。今は見慣れたけどな」。漁師歴50年のベテラン、伊藤順次さん(67)は眼前の河口堰を見やった。
向かう先は長良川と並行して流れる揖斐(いび)川だ。元々、堰の上下流は海水と淡水が混じる汽水域でシジミ漁の好漁場だった。が、堰建設に伴うしゅんせつで泥がたまるなどして、稼働後3年目ぐらいから極端に取れなくなったという。「もうあかん、と見切って川を変えたんさ」
網の付いた鉄棒を巧みに操って川底を引き、一定の量がたまると船に引き上げ、選別機にかけてかごへ入れる。資源保護などのため、漁協が漁獲量を1日140キロまでに制限しているが、「最近はそれだけ取るのに以前より時間がかかる」とこぼす。砂利やごみが多く、実入りが悪いのだ。
「絶対量が減ってきている気がする。そりゃ、木曽三川(揖斐・長良・木曽川)のうち1本(長良川)がなくなったような状態で20年やろ。繁殖する分より取る分が徐々に勝り、利息どころか元金まで消えつつある感じや」
長良川と揖斐川を隔てるヨシ原の変化も気になる。「堰の下流で段々削られている。昔はもっと河口部まであったんや」。伊藤さんは堰の影響と考え、「自然はむちゃ微妙や。川に人工物を造れば何か起こるわな」。深いため息をついた。
ただ、堰を管理する独立行政法人・水資源機構は「治水、利水のため人為的に河川を改修し、構造物を造ったことは事実」と述べるだけで、因果関係には言及しない。
午前8時半ごろ、約3時間の漁を終え、港に戻った。「この先、漁がどうなるか……恐らく好転は望めんやろ。おいらは年金もあるでボチボチやればいいけど、若い衆は困ると思うよ」。伊藤さんは堤防から見慣れた光景を見つめながら、うらめしそうにつぶやいた。
◇河口堰開門調査求める宣言採択 市民グループ
愛知、岐阜県の長良川流域の約20の市民グループでつくる「よみがえれ長良川実行委員会」は5日、岐阜市でシンポジウムを開き、河口堰の開門調査を求める宣言を採択した。
宣言は「川の恵みを未来につなぐためにも海とつながる豊かな川に再生しなければならない」と強調。「一日も早い開門調査の開始を切望する」としている。
開門調査を巡っては、愛知県の大村秀章知事が2011年の初当選時に開門調査を公約に掲げ、県が調査方法などの検討を続ける一方、岐阜、三重両県は海水の遡上(そじょう)による塩害を懸念し、開門に難色を示している。【岡正勝】
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■ことば
◇長良川河口堰
長良川河口から約5・4キロ上流の三重県桑名市にある全長661メートルの国内最大級の可動式堰。水資源開発公団(現・水資源機構)が建設し、1995年7月6日、10あるゲートを全閉して本格運用を始めた。大規模なしゅんせつによる治水、堰上流の淡水化による愛知・三重両県と名古屋市の利水開発、塩水遡上(そじょう)防止を目的としている。総事業費は約1500億円。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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