八ツ場ダムは本格運用されていれば、今回の豪雨で緊急放流を行う事態になっていた
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関東地方整備局の発表によれば、今回の豪雨で、八ッ場ダムに貯留した洪水は7500万㎥です。
(関東地方整備局「令和元年台風19号における八ッ場ダムの試験湛水状況について」http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/kyoku_s_00000334.html )
八ッ場ダムの洪水調節容量は6500万㎥ですから、1000万㎥も上回っていました。
試験湛水の初期段階であったので、1000万㎥オーバーの貯留が可能でした。
八ツ場ダムの貯水池容量の配分は下図の通りで、下の方から計画堆砂容量1750万㎥、洪水期利水容量2500万㎥、洪水調節容量6500万㎥で、総貯水容量は10750万㎥です。貯水池の運用で使う有効貯水容量は、堆砂容量より上の部分で、9000万㎥です。
今回の豪雨では関東地方整備局の発表によれば、貯水位が54m上昇し、573.2mになったということです。
豪雨前の貯水位573.2mー54m=約519mは下記の貯水池容量配分図をみると、計画堆砂容量の上端(最低水位)536.3mより17mも低いレベルです。
すなわち、今回の豪雨では、本格運用では使用しない計画堆砂容量のかなりの部分を使い、さらに、利水のために貯水しておかなければならない洪水期利水容量2500万㎥も使ったから、7500万㎥の洪水貯留が可能であったのです。
本格運用で使える洪水貯水容量の上限は6500万㎥ですから、今回の豪雨で八ツ場ダムが本格運用されていれば、満杯になり、緊急放流(流入水をそののまま放流)をしなければならない事態になっていました。
そして、利根川の場合は7月1日~10月5日が洪水期で、八ッ場ダムは10月6日から水位を上げて、洪水調節容量の空きを減らしていく時期ですから、10月中旬の台風時には洪水を調節できる容量が6500万㎥よりもっと小さくなっています。
雨の降り方によりますが、10月に入って雨が降り続いて、貯水位がかなり上昇した後に今回のような台風がくれば、八ッ場ダムが緊急放流を行う時間はかなり早まることになります。
国交省による八ツ場ダムの貯水池運用の計算例(2004年)を示します。この例では10月中頃には貯水量が5500万㎥になっており、満水の9000万㎥までの空き容量は3500万㎥に減っています。
このような状態で今回のような豪雨が来れば、八ツ場ダムは短時間で緊急放流する事態になり、ダムの治水機能はゼロになっていました。
以上のように、今回の豪雨は、八ツ場ダムが治水面で役立たないことを示す例になりました。
八ツ場ダム
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