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流水型ダム「緊急治水」こそ急ぎたい(熊本日日新聞の社説)

2020年12月20日
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球磨川の治水対策について熊本日日新聞の社説を掲載します。

この社説に書かれている「それは、同じ国、県、自治体による「ダムによらない治水」の協議が、豪雨以前の12年にわたり一向に進まなかった過去であり、現在との著しいスピード感の落差だ。現在の対応がなぜ、多くの人命が失われた後でなければならなかったのか」はその通りだと思います。

蒲島郁夫・熊本県知事は2008年に川辺川ダムの中止を求めたのですから、その後、川辺川ダムなしの球磨川治水対策を早急に実施するようにリードしなければならかったはずです。

ところが、いたずらに12年間を浪費して、今年7月の球磨川水害で多くの方が亡くなる事態を招いてしまったのです。

 

流水型ダム「緊急治水」こそ急ぎたい

(熊本日日新聞社説2020年12月20日 09:58) https://kumanichi.com/opinion/syasetsu/id30101

人間は忘れやすい生き物だという。だが球磨川流域をはじめ県内に甚大な被害をもたらした7月の豪雨は、今も生々しい現実としてある。それから5カ月余りたった18日、国土交通省は熊本県や流域12市町村でつくる流域治水協議会に、蒲島郁夫知事が川辺川に建設を求めた流水型(穴あき)ダムの案を示した。国、県、12市町村の動きは、スピード感をもった対応と受け止めたい。

一方でもう一つ、記憶しておくべきことがある。それは、同じ国、県、自治体による「ダムによらない治水」の協議が、豪雨以前の12年にわたり一向に進まなかった過去であり、現在との著しいスピード感の落差だ。現在の対応がなぜ、多くの人命が失われた後でなければならなかったのか。深く、幅広く見つめ続けたい。

この日の流域治水協議会は、流水型ダムや県営市房ダムの貯水力増強など、ハード、ソフト事業を総動員して、7月豪雨の最大流量に対応できる治水対策を目標とすることを確認した。

このうち川辺川につくるとされるダムは、堤体下部の水路にゲートを付け、洪水時の流量を調節する。従来計画の川辺川ダムと同じ貯水量を維持すれば、従来の農業利水容量を振り替え、洪水調節容量を1億600万トンにできるという。実現すれば国内最大の流水型ダムになる。

半面、特定多目的ダム法に基づく従来計画から、河川法の下での治水ダムへの転換の道筋、建設予定地や工期など、具体的な見通しは示されず不透明なままだ。

加えて気になるのは、来年にも起きるかもしれない豪雨に備えた緊急治水対策が、年明けにしか示されないことである。復興はおろか復旧さえままならない被災者にとって、完成が見えないダムより、まず来年の安心を見込める緊急治水こそ急ぐべきだろう。中長期の治水を急ぐ行政と流域住民の間に、ここでも落差と「なぜ」が生じてはいないか。

11月にダムを含む球磨川の新治水方針を表明した蒲島知事は、その根拠を「民意」とした。しかし、新方針は今も多くの「なぜ」を抱えている。納得できる説明が尽くされ、民意が十分に共感したとは言い難い。

 

熊本、球磨川治水 国内最大規模の「流水型ダム」提案

2020年12月19日
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12月18日、「球磨川流域治水協議会」の第2回会合が開かれ、国交省は川辺川ダムを軸とする治水案を提示しました。その記事を掲載します。

治水対策のメニューにはいろいろと書いてありますが、ゲート付き流水型ダムの川辺川ダムを建設することがメインになっています。

 熊本、球磨川治水 国内最大規模の「流水型ダム」提案

(西日本新聞 2020/12/19 6:00) https://www.nishinippon.co.jp/item/n/674870/

球磨川の治水対策のメニュー地図

7月の熊本豪雨で氾濫した球磨川流域の治水策として、国土交通省九州地方整備局は18日、支流・川辺川への流水型ダム建設を含む素案を公表した。既存ダムの再開発や遊水地整備などを組み合わせた「流域治水」を実現することで、次に熊本豪雨級の雨が降った場合、大規模氾濫が発生した熊本県人吉市付近では、堤防の越水を防ぐほどの水位低減効果があるとする試算も明らかにした。

素案は、県と流域12市町村などでつくる流域治水協議会で提示した。遊水地の整備範囲を、球磨川上流部や人吉市を流れる支流付近に設定。球磨村などの山間狭窄(きょうさく)部では河道の掘削・拡幅に加え、道路や宅地のかさ上げなどの対策を盛り込んだ。その上で、九地整は流水型ダム案の具体化に向けた地質調査や環境調査、構造の検討などに「速やかに着手する」と表明した。

また、熊本豪雨における人吉市付近のピーク時の流量毎秒7400トンに基づき、対策の効果を試算。流水型ダムで同2600トン、県営市房ダムの再開発で同200トン、遊水地で同300トンを貯水するなどして、最下流の八代市平野部や人吉市などでは越水を防ぐほどの効果がある一方で、狭窄部の八代市坂本町や球磨村付近での氾濫は完全に防げないという。

出席した首長からは「時間がかかる環境アセスメントをする必要があるのか」など、治水対策を急ぐよう求める意見もあった。

九地整は次回会合で、田んぼダムやため池の利用、土地の利用制限、避難対策など河川以外の対策案を提示する。流域治水の全体計画は来年3月に策定予定。 (古川努)

周辺環境に及ぼす影響未知数

球磨川流域の治水対策の一つである支流・川辺川へのダム計画で、国土交通省が素案で示した「流水型」は同形態としては国内最大になる。常に水をためる「貯留型」に比べて環境負荷は少ないとされるが、前例のない規模だけに周辺環境に及ぼす影響は未知数。国交省は熊本県の意向に沿い、環境影響評価(アセスメント)などの実施に前向きだが、法定通りに行う場合は最長5年近くを要することもあり、事業スケジュールを左右しそうだ。

1999年施行のアセス法に基づけば、国交省は本体着工に必要な河川整備計画を策定する際に、環境影響を調べる必要がある。主に(1)環境面で配慮すべき事項(水質や生態系、地質など)の検討(2)調査方法の決定・実施(3)結果-を各段階で公表し、住民からも意見を募る。知事は市町村長の意向を踏まえて意見を出せるほか、環境省も内容に問題がないかチェックする。

国交省が今回提示したダム案では、大雨時に洪水調節でたまる容量は1億600万立方メートル。国内最大の益田川ダム(島根県)など既存の流水型5基の72万~650万立方メートルを大きく超え、建設中の足羽川ダム(福井県・2820万立方メートル)の3倍以上ある。既存の流水型ダムは参考にしづらい面があり、「ダムの堤体が厚く、放流口が長いため、魚が遡上(そじょう)しにくくなる」など生態系への影響に対する専門家の懸念も根強い。

従来の川辺川ダム計画が発表された66年にはアセス制度はなく、旧建設省は独自に環境調査した結果を2000年に公表。専用設備によって貯水池の水質を保全し、下流への影響は軽減可能-などとした。

熊本県の蒲島郁夫知事は流水型ダムについて「客観的かつ科学的な環境への影響評価が必要」とし、アセス法に基づく調査または同等の調査を要望し、国交省も必要性を認めている。「時間を要しても厳密に法定通り行う」「法に準じながら過去の環境調査も参考にし、一部手順を省略する」などの選択肢が想定され、環境省と協議するとみられる。 (大坪拓也)

 

 川辺川ダム「流水型にゲート」 国交省提示、放流量を調節可能に

(熊本日日新聞2020/12/19 08:43) https://www.47news.jp/localnews/5622593.html

7月豪雨で氾濫した球磨川の治水対策に関し、国土交通省は18日、熊本県の蒲島郁夫知事が支流・川辺川への建設を要請した治水専用の流水型(穴あき)ダムについて、放流量が調節できるゲート付きとする案を県や流域12市町村でつくる流域治水協議会の第2回会合で提示した。流水型ダムは、現行の川辺川ダム(貯水容量1億600万トン)の規模を維持した場合の治水効果(試算)を示した。実現すれば国内最大となる。

流水型ダムは、洪水時のみに水をため、平時はためない構造。本体下部の穴あき部分にゲートを取り付ければ下流への放流量を操作できる。一方、ダムの規模について同省は「建設場所を含めて検討中」と説明した。

流水型ダム建設と合わせて県が実施を求めている環境影響評価(アセスメント)について、国交省は同協議会に「追加して必要となる環境調査や環境保全措置を検討する」と報告した。

この日の会合では、ハード・ソフト両面の対策を総動員し、7月豪雨の最大流量(人吉地点で毎秒7900トン)に対応できる治水対策を目標とすることを確認した。目標値は、人吉地点で7千トンとした国の「河川整備基本方針」(2007年策定)を上回った。

国交省は、7月豪雨の流量に対し、新たな対策を実施した場合の水位低減効果の試算も公表した。人吉地点(7900トン)では流水型ダムで2600トン、既存の県営市房ダムで500トンをカット。さらに市房ダムに放流口を増設し、貯水容量を増やす改良で200トン、遊水地整備で300トンを削減し、4300トンまで減らせるとした。

河道掘削や引き堤を加えると、人吉地区の水位は概ね堤防の高さを数十センチから2メートル下回るとした。ただ、中流域の八代市坂本町付近では堤防を最大1メートル越える地点もあった。

国交省と県はこの日提案された治水対策メニューについて、河川工学など専門家から意見を聴く場を23日に設ける。来年の梅雨時期に備えて直ちに実施する「緊急治水対策」を年明けに公表した上で、流域全体で推進する「球磨川流域治水プロジェクト」を年度内にまとめる方針。(高宗亮輔)

 

川辺川ダム、開閉式のゲート備えた流水型に 国交省が案

(朝日新聞2020年12月18日 21時42分)

 

川辺川に流水型ダム建設、国が提案 熊本県知事「速やかな対応を」

(毎日新聞2020年12月18日 20時21分) https://mainichi.jp/articles/20201218/k00/00m/040/310000c

(写真)熊本県のあさぎり町、多良木町などにまたがって田畑が広がる球磨川流域=2020年11月17日午前10時50分、本社ヘリから津村豊和撮影

7月の九州豪雨で氾濫した球磨川の治水対策として、国土交通省は18日、従来の川辺川ダム計画の貯水規模を維持した治水専用の流水型ダムを建設する案を、熊本県や流域の12市町村に示した。実現すれば流水型ダムとしては国内最大となる。2009年に旧民主党政権が計画を中止した後、国はダムによらない治水を検討してきたが、九州豪雨後に蒲島郁夫知事がダム容認に転じたのを受け、11年ぶりにダムによる治水に回帰した。

18日に熊本県庁であった「球磨川流域治水協議会」の第2回会合で、国交省はダムを軸に遊水地や河川掘削などを組み合わせて氾濫を抑止する流域治水の案を提示した。蒲島知事は「必要な予算措置を含めて、速やかな対応をお願いしたい」と支持し、市町村からも異論は出なかった。国交省は今後、有識者から意見を聞くなどして具体的検討に入り、年度内に治水策を決める。

国交省案は、貯水型の多目的ダムから水をためない流水型ダムに変える。その上で不要になる農業や発電の利水容量をすべて治水に活用することで、洪水調節容量は従来計画に比べ少なくとも約1・2倍の1億600万トンになるとした。国交省の担当者は会合で「(従来計画の容量を)最大限活用する観点で考えたもの」と説明した。国交省は豪雨後、仮に川辺川ダムがあれば人吉地区の浸水面積が6割減らせたが、球磨川の氾濫自体は防げなかったとの推計を示していた。

国交省案ではまた、ダム本体にゲート付きの水路を設置。ゲートを開閉することで放水量を調整し、豪雨時に水をためられるようにする。国交省は流水型であれば水質を維持しやすく、魚の遡上(そじょう)など河川の連続性を確保しやすいと強調した。一方、蒲島知事が求めている環境影響評価(アセスメント)を実施するかどうかについては明言を避け、ダムの完成時期のめどや概算事業費も示さなかった。【城島勇人、平川昌範】

2020くまもとこの1年「4」川辺川ダム流水型建設へ方針転換

2020年12月18日
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川辺川ダム問題についてテレビ熊本の配信記事を掲載します。

「完成から14年が経過した益田川ダムですが、ダム完成後、ダムが満たされるほどの大雨は一度も降っておらず、現時点で治水面でどのような効果をもたらすのかまだ検証できていません。 また、そもそも計画されていた川辺川ダムは、堤の高さが108メートルと益田川ダムの2倍以上、これほどの規模の流水型ダムが建設された例は全国でもまだないのです。

また、島根県が行った環境調査では、ダムの下流側、上流側にそれぞれにアユの食み跡が確認されたものの、食み跡は下流側に比べて上流側は少なく、ダムがアユ遡上の阻害要因の一つと考えられています。」

は重要な指摘であると思います。

 

2020くまもとこの1年「4」川辺川ダム流水型建設へ方針転換

(テレビ熊本2020/12/17(木) 18:55)https://news.yahoo.co.jp/articles/32036d42a76b37d2bb8c88f2a05c974efd25a15a

『2020くまもとこの一年』、

17日は、再燃した川辺川ダム問題です。 蒲島知事は、12年前の白紙撤回から方針転換し新たな流水型のダム建設を国に求めると表明しました。 流水型ダムとはどのようなものか、島根県のダムを訪ねました。 11月19日、蒲島知事は議会で大きな決断を表明します。

【蒲島知事】

「私はここに、貯留型特定多目的ダム法に基づく現行の川辺川ダム計画の完全な廃止を国に求めます。その上で」

「新たな流水型のダムを国に求めることを表明いたします」

計画発表から54年が経過した川辺川ダム計画の廃止と、新たな流水型ダムの建設を国に求めるというものでした。

【蒲島知事ON

「命と環境、これを守ること」 「それを考えたときに流水型の洪水調整機能、そして流水型でありますから環境への負荷がとても最少化できる。この両方守るために新しい形のダムをお願いした」

流水型ダムは、命と環境の両方を守る切り札となるのか、本格的な流水型ダムとしては国内で初めて建設された島根県の益田川ダムを訪ねました。

【郡司&島根県益田県土整備事務所 管理第二課 井下 和壽課長】

「近づいてみると、その大きさというのが分かりますよね」

「そうですね、上から見られるのと比べて迫力の方は違うかと思います」

「ここのダムは一番ダムの下側に『洪水吐』という穴が開いておりまして上流から流れてきた水は、そのまま下流の方へ流れているということで 水をためないようになっております」

「貯留型のダムであれば、私たちが今立っているこの場所は水没している可能性が…」

「そうですね、おそらく通常の貯留型ダムであれば、ここらあたりは平常時から水没している高さになると思われますね」

流水型ダムの最大の特徴は、通常ダムの中上部にある水を通すための穴『常用洪水吐』が川底にあること。 平常時は川の流れを妨げません。 穴の高さは3.4メートルと大人の身長の2倍ほどです。 大雨の際は、この2つの穴で流れきれない分が自然とたまり、下流の流量を抑えます。 もし満水になれば上の穴から水が落ちていくため、人為的な、いわゆる緊急放流を行うことはありません。

島根県西部に位置する益田市は、益田川の氾濫による水害に見舞われ、特に昭和58年、1983年の水害では死者39人という未曽有の被害となりました。 益田川ダムは当初、利水も兼ねた多目的ダムとして計画されました。 しかし水没地域で反対運動が起きたため、上流にある農地防災用の笹倉ダムを利水ダムに改修。 益田川ダムは治水専用のダムに計画変更。 また、流水型にすることで砂の堆積がなくなり、高さを下げることで水没地域を減らし2006年に完成しました。 益田川ダムでは、流水型ならではの特徴がいくつかあります。

【郡司&井下さん】

「こちらは何になるんですかね」

「これは『流木捕捉工』と申しまして、洪水が発生するときには上流の方で土砂崩れとかによって木が倒れて、それが流れてくる場合があるんですが、そういった木を構造物でせき止めるとダムの『洪水吐』穴の方に向かって大きな木が流れていかないように止める構造物になっています」 また益田川ダムの2キロほど上流にも。

【郡司&井下さん】

「ここはどういった施設になるんでしょうか」

「ここはグラウンドゴルフ場ですね」

「満水になるくらいの大雨になった場合はここは水没してしまうと」

「そうなります」

「それを前提にして、利活用が図られているということなんですか」

「はいそうです」

しかし、いくつか気になる点もあります。 完成から14年が経過した益田川ダムですが、ダム完成後、ダムが満たされるほどの大雨は一度も降っておらず、現時点で治水面でどのような効果をもたらすのかまだ検証できていません。 また、そもそも計画されていた川辺川ダムは、堤の高さが108メートルと益田川ダムの2倍以上、これほどの規模の流水型ダムが建設された例は全国でもまだないのです。

また、島根県が行った環境調査では、ダムの下流側、上流側にそれぞれにアユの食み跡が確認されたものの、食み跡は下流側に比べて上流側は少なく、ダムがアユ遡上の阻害要因の一つと考えられています。

蒲島知事は、川辺川に建設を要請した新たなダムについて来年3月までに完成までの全体像を示すとしています。

【郡司】

「今後ダム本体着工まで時間がかかることが予想される中で再び民意が『ダムではない』と『流水型でも造ってほしくないんだ』というような民意になった場合には、再度の方針転換というのは有りうるのか。それとも11月の判断が最後の判断だとお考えなんでしょうか?」

【蒲島知事ON】 「この判断についてこれ以上の判断はないと自分で考えておりますので(方針転換は)ないと思います」 (少なくとも知事自身が今後判断を変えることはない?) 「わたくしはありません」

「7月の球磨川氾濫は、支流から始まる」ダム反対団体が独自に調査

2020年12月12日
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7月の球磨川氾濫は、支流から始まったのであって、球磨川本流のはん濫によるものではなく、支流の氾濫で亡くなったのであるから、川辺川ダムがあっても救うことはできなかったという調査結果を市民団体が発表しました。

その記事とニュースを掲載します。

詳しくは、水源連総会資料の次の報告をお読みください。

水源開発問題全国連絡会 2020年総会資料 daa694c1763436981a4817adbf533fd2.pdf  14~16ページ

子守歌の里五木を育む清流川辺川を守る県民の会 中島 康さんの報告「7月4日球磨川水害報告」

水源連でも球磨川氾濫の解析を行って、同様な視点の意見書を提出しています。

水源開発問題全国連絡会 2020年総会資料 daa694c1763436981a4817adbf533fd2.pdf  63~74ページ(右上のページ数は29~40ページ)

「球磨川水害と治水対策に関する水源連の意見書」をお読みください。

 

豪雨の犠牲者20人中19人「支流氾濫が原因」 川辺川ダム反対派が独自調査 人吉市

(熊本日日新聞2020/12/12 11:00) https://this.kiji.is/710321834496999424?c=39546741839462401

(写真) 人吉市の地図などを手に説明する「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会」の木本雅己事務局長(右)ら=11日、県庁

川辺川へのダム建設に反対する市民団体が11日、熊本県庁で記者会見し、7月の豪雨による人吉市の死者20人のうち、19人は「球磨川本流が氾濫する前に、支流の氾濫が原因で亡くなった」とする独自の調査結果を発表した。

清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会(人吉市)を中心に、災害の直後から調査。犠牲者の近所の人や浸水被害者約50人から話を聞き、防犯カメラの映像なども集め、水の流れと被害の実態を調べた。

その結果、支流から氾濫した水が、市内の低地である球磨川本流沿いに向かって急激に流れたため、19人は本流から水があふれる前の午前7時半すぎごろまでに亡くなったとした。支流別では万江川などが原因で4人、胸川などで2人、山田川や御溝(川)などの氾濫で13人が亡くなったとした。

猫を助けに自宅に戻ったとみられる女性(61)は亡くなった時間が推定できておらず、今後調べるという。

流域郡市民の会の木本雅己事務局長(69)は「支流が原因である以上、川辺川上流にダムを造って球磨川本流のピーク流量を下げても犠牲は減らない」と主張した。

これに対し、県球磨川流域復興局は「本流の水位が上がっていたため、支流の水が本流に流れ込めず、氾濫した」と分析。さらに、支流で氾濫した水の量は本流との比較では少量であり、「本流の水位を下げることが犠牲を減らすことにつながる」と説明した。(太路秀紀、堀江利雅)

 

人吉の犠牲「原因は支流氾濫」市民団体が調査結果公表

(西日本新聞 2020/12/12 11:00)https://www.nishinippon.co.jp/item/n/672688/

人吉の地図

7月の熊本豪雨で氾濫した球磨川流域の被害について、熊本県人吉市の市民団体は11日、同市内の犠牲者20人のほとんどが中小支流の氾濫が原因だったとする現地調査結果を公表した。団体は「ダムがあっても命は守れない」と主張し、中小支流対策の重要性を訴えた。

調査は「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会」などが豪雨直後から継続的に実施。約50人から証言を得たほか、痕跡から氾濫流の水位や流れの方向を調べた。

調査結果によると、20人が濁流にのまれた時間帯は7月4日午前6時半~同7時半ごろで、発見された場所は屋外と屋内が半々だった。球磨川本流よりも先に、支流の山田川や万江(まえ)川などが氾濫。犠牲者は低地に向かって勢いを増した強い流れにのまれたり、急激に水位が上がって逃げ遅れたりしたとみられるという。

同会は、犠牲者の状況も聞き取り調査。「山田川から水が来て避難の途中に流れ溺死」(屋外、下薩摩瀬町)▽「7時半頃、万江川から浸水。犬を助けようとして流れる」(屋外、下林町)-など詳細に記録している。木本雅己事務局長は「1人を除いて球磨川本流の流れで亡くなった人はいない。この1人も球磨川の氾濫か、事故かは不明」としている。

山田川については、県も10月に時系列の検証結果を公表。おおむね同会の調査結果と整合しているが、県は「下流から上流域に越水が進行」とする一方、同会は「上流から氾濫が始まった」と食い違う。

県河川課は山田川の氾濫は、本流の水位が上昇したことで支流の流れがはけきれず、下流からあふれ出す「バックウオーター現象」の影響を指摘。同会は「バックウオーターの形跡はみられない」とする。

蒲島郁夫知事は「命と環境を両立する」として最大の支流川辺川への流水型ダム建設を進める方針だが、木本事務局長は「大事なのは、死者を出さないためにどうしたらいいのかの検証。ダムで本流の水位を下げても命は救えない」と主張している。 (古川努)

 

犠牲者は支流の氾濫で 市民調査

(NHK2020年12月11日 16時40分) https://www3.nhk.or.jp/lnews/kumamoto/20201211/5000010829.html

7月の豪雨で人吉市内で犠牲になった20人について、市民団体が状況を調べたところ、全員が球磨川のはん濫によるものではなく、支流の氾濫で亡くなっていたなどとする調査結果をまとめました。
この調査は人吉市の市民団体、「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す会」のメンバーらが、市内の浸水地域の監視カメラの映像や、およそ50人の住民などへの聞き取りをもとに、市内で犠牲になった20人全員の状況を調べました。
それによりますと、球磨川の流量がピークとなる3時間前の午前6時半から7時すぎの間に、支流の山田川や万江川などが急激に氾濫したのが原因で亡くなり、支流の水がせきとめられて水位が上がる「バックウォーター」の形跡は見られなかったとしています。
そのうえで、「人吉市の犠牲者は全員、球磨川のはん濫によるものでなく、支流のはん濫によるものだ。川辺川ダムが建設されて治水効果を発揮したとしても犠牲者を救うことは出来ない」としています。
これに対し、熊本県は、人吉市の犠牲者との因果関係は不明だが、球磨川の洪水によるバックウォーターで、山田川や万江川が氾濫したことはこれまでの検証で確認されているとしています。
市民団体の木本雅己事務局長は「今後、洪水による死者を出さないための検証がまず最初にあるべきで、それをせずに川辺川ダム建設を進めるのは不合理だ」と話していました。

 

 「支流から氾濫始まる」ダム反対団体が独自に調査

(熊本放送2020/12/11(金) 18:33配信)https://news.yahoo.co.jp/articles/af7cc56fcc3e62941b60f302072f9c147184b215

動画:RKK熊本放送

7月豪雨でなぜ多くの人が亡くなったのか。 市民団体が支流の氾濫が原因だったとする調査結果を公表しました。

「球磨川本流の流れで亡くなった人はいない」(市民団体)

ダム建設に反対する市民団体は、これまでに約50人に聞き取り調査を実施。

その結果、人吉市で死亡した20人のうちほぼ全ての人が、球磨川がピーク流量となる数時間前には、支流の山田川や万江川の氾濫で避難中に流されたり、逃げ遅れたりしていたとの証言を得たということです。

市民団体は、知事が県議会で「人吉の死者は球磨川のバックウォーターで氾濫した山田川が原因」とする主旨の答弁を、ダムを作るための口実と非難しています。

“悪夢”が繰り返される可能性は? 1994年 「佐世保大渇水」 答はゼロ 

2020年12月11日
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1994年の「佐世保大渇水」の悪夢が繰り返される可能性?という記事をお送りしますが、この記事は問題の問いかけだけで、答が書いてありません。

その答は「繰り返される可能性はゼロ」です。

それは下図のとおり、佐世保市水道の給水量が1994年当時と比べて、大幅に小さくなっていて、同程度の渇水では給水制限をほとんど行わなくてもよいレベルになっているからです。


悪夢が繰り返される可能性は? 1994年 「佐世保大渇水」 石木ダム建設事業と水不足

(長崎新聞2020/12/6 11:00) https://this.kiji.is/708120468955774976?c=174761113988793844

 

(写真)少雨が続いた佐世保市では1994年8月1日に南部地区から給水制限が始まった。住民はバケツに水をため、節水を強いられた=同市大塔町

長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業。市は慢性的な水不足を理由にダムの必要性を訴える。引き合いに出されるのが1994年の「佐世保大渇水」。給水制限が264日間に及び、「佐世保砂漠」と呼ばれる事態に陥った。当時を振り返り、“悪夢”が繰り返される可能性はあるのか探った。

1994年8月1日。佐世保市には、目に見えない南北の“境界線”が引かれた。
空梅雨の影響で、水源に乏しい南部地区では貯水量が見る見る減った。市は水の供給を一定時間に制限する対策を決行。市職員ら約160人が、約8万1100人が暮らす南部地区へ向かい、各家庭や商店の止水栓を閉めて回った。
給水時間は1日10時間に設定。8月7日以降は5~6時間に短縮した。住民はこぞってポリタンクを購入。水が出る時間帯には職場を離れ、自宅の浴槽やバケツなどに水をためる姿もあった。シャワーや洗濯の残り水はトイレにも使い回し、節水を強いられた。
飲食店やホテルは大型タンクを設置するなどして営業を継続。学校や福祉施設、観光地…。あらゆる場所に影響は広がった。
住民の苦労や不安をよそに、太陽は容赦なく照り続けた。南部地区唯一の水がめ、下の原ダムの貯水率は20%を割り、さらに危険な水域へと入っていった。

■給水 1日わずか3時間 直近26年間は制限なし

佐世保の水不足は、急激に深刻さの度合いを増していった。
1994年8月24、25両日の計48時間、佐世保市は給水をわずか5時間に絞る措置を断行。さらに、26日以降は1日3~4時間に減らした。各地で渇水が問題化していたが、市の対策は「全国一厳しい」と言われた。水が出る時間帯は猫の目のように変わり、住民は困惑した。

(写真)給水時間に合わせた止水栓開閉作業の様子=1994年10月、佐世保市京坪町

市内の水道網は南部と北部で別々に敷設され、双方で融通ができなかった。
その境界にある稲荷町の理髪店は、わずか数百メートルの距離で南部に区分けされた。店長の瀬脇勝一さん(87)は「バケツのお湯を電動ポンプでくみ上げて洗髪していた。同じ市民なのに南北で生活環境がまるで違った」。店先から見える北部の町並みをうらやみながら眺めていた。
9月6日。給水制限はいよいよ15万1300人が住む北部地区に広がり、市内全域が対象に。市職員だけでは止水栓の開閉作業が間に合わず、10月25日からは各町内会に作業を委託した。祇園町一組の町内会長だった林俊孝さん(75)は「開栓が遅れると地域住民の関係が悪化しかねない。いやな仕事だった」。苦々しい表情を浮かべた。
水不足は消防活動にも影を落とした。各地の貯水池が干上がる可能性があり、消防隊員は担当区域を回り、消火に使えそうな水源を各自のノートにまとめ、警戒感を強めた。
給水制限下で惨事は起きた。12月4日早朝、市中心部の住宅地で火災が発生。いち早く駆け付けた60代男性は、ためていた水を掛けたが、「どうにもならなかった」。消防隊によって鎮火されたが、計4棟が全焼し、焼け跡から家族4人の遺体が見つかった。
当時消火栓は使用できる状態だったため、市消防局は「給水制限の影響はない」との認識を示した。ただ火災記録には初期消火は「なし」と記載された。現場にいた職員は言う。「放水は初期消火の基本。水道が使えない状況はリスクになる」
給水制限は翌年4月26日に解除され、市民はようやく渇水の長いトンネルを抜けた。市が投じた緊急対策費は約50億円に上った。その後も水不足の恐れは度々あったが、この26年間で、止水栓を閉める事態には至っていない。大渇水を教訓に南部と北部の水道管は一部連結され、一定量の融通が可能になった。
それでも、石木ダムの建設を推進する市民団体の寺山燎二会長(82)は「水源が乏しいことに変わりはない。ダムは暮らしの安心感になる」と訴える。
美容室を営み、当時、子育て中だった50代女性は「水がないと衛生環境を守れない。もし今渇水が起きたら、新型コロナウイルス対策との二重苦になる」と心配する。
石木ダムの建設で問題は解決するのか-。そう問い掛けると、女性は首をかしげて言った。
「それは分からない」

 

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