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球磨川治水検証、豪雨被災者参加を 川辺川ダム反対派、熊本県に要請

2020年9月24日
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川辺川ダムに反対する三つの市民団体は昨日(9月23日)、熊本県が球磨川治水の方針を示す前に、多様な視点からの検証と、被災者も参加できる意見交換会の開催を求める要請書を県に提出しました。その記事とニュースをお送りします。

要請書は熊本県知事検証委宛て「民意を問う」意見書20200923の通りです。

 

球磨川治水検証、豪雨被災者参加を 川辺川ダム反対派、熊本県に要請

(熊本日日新聞2020/9/24(木) 10:25配信)https://news.yahoo.co.jp/articles/3a834f49ec0d0d38aec4d42037a64fa807a64721

(写真)多様な視点からの豪雨の検証などを求める要請書を県に提出する市民団体の代表ら=23日、県庁

川辺川ダムに反対する三つの市民団体は23日、7月の豪雨災害を受けて、熊本県が球磨川治水の方針を示す前に、多様な視点からの検証と、被災者も参加できる意見交換会の開催を求める蒲島郁夫知事ら宛ての要請書を県に提出した。

「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」(熊本市)、「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会」(人吉市)、「美しい球磨川を守る市民の会」(八代市)の3団体。

3団体は、国と県、流域12市町村長が進める現在の検証では「被災者が置いてけぼりになっている」と主張。また、川辺川ダムが「治水に最も有効」とする国土交通省主体の検証では「中立性、公平性が保たれない」として、異なる視点の専門家や市民グループの検証参加を求めた。

知事が球磨川治水について「民意を問う」と表明した点は評価する一方、「方針がまとまってから民意を問うのでは遅い」として、被災者らが参加できる意見交換会や説明会の開催を求めている。

県民の会の中島康代表(80)は「国に頼らず、県主体の検証と方針決定を」と迫った。

国、県などの豪雨検証委は次回会合を10月上旬開催で調整している。(太路秀紀)

 

 九州豪雨 球磨川の治水検証に住民の声を 市民団体が委員会に要望書 /熊本

(毎日新聞熊本版2020年9月24日)https://mainichi.jp/articles/20200924/ddl/k43/040/297000c

 

川辺川ダム建設に反対する熊本県の市民団体「子守唄(うた)の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」(中島康代表)など3団体が23日、7月の九州豪雨で甚大な被害をもたらした球磨川の治水対策を考える国と県の検証委員会に対し、専門家や住民の意見も取り入れて検証するよう求める要望書を提出した。

要望書では、ダム建設を推進してきた国土交通省主体の検証では中立性、公平性が保たれないと指摘。蒲島郁夫知事や検証委に対し、多角的に専門家や住民の意見を交えて検証するよう要請。流域住民向けの説明会や意見交換会の開催も求めた。応対した県担当者は「要望は知事に伝える」と述べた。【城島勇人】

 

 球磨川治水対策 市民団体「民意を問うよう」要請(熊本)

(テレビ熊本2020年9月23日 水曜 午後0:31)https://www.fnn.jp/articles/-/87732

7月の豪雨で氾濫した球磨川の治水対策について『川辺川を守る県民の会』など3団体は23日、熊本県に対してダム建設ありきの国以外の民意を問うよう要請しました。球磨川の治水をめぐっては過去に白紙撤回した川辺川ダムの想定も含めて国や県・流域市町村で作る委員会が検証を進めています。要請では「ダムと連続堤防を中心として川を制御する従来型の国交省の治水対策は通用しない時代になっている」として国交省とは異なる視点を持つ専門家や住民グループの意見を加えること。また、住民が参加可能な説明会などを開催することや十分な情報公開などを求めています。

 

ダム、最善策でない 知事の「選択肢」発言疑問 元人吉市長・田中信孝氏

2020年9月23日
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2008年9月、当時の田中信孝・人吉市長が川辺川ダム計画の白紙撤回を表明し、蒲島郁夫知事の白紙撤回表明、前原誠司国土交通大臣の中止表明につながりました。

人吉市は川辺川ダムの最大の受益地とされていたところですので、人吉市長の白紙撤回表明は大きな影響を与えました。

当時の市長であった田中信孝氏のインタビュー記事を掲載します。

田中氏の見解「ダムよりも河道拡幅や河床掘削、堤防強化の方が安上がりだし、清流が残せる」に耳を傾けるべきです。

 ダム、最善策でない 知事の「選択肢」発言疑問 元人吉市長・田中信孝氏<再興 あなたに聞きたい>

(熊本日日新聞2020年9月23日 09:59) https://kumanichi.com/feature/kawatotomoni/1617841/

(写真)◇たなか・のぶたか 2007年、人吉市長に初当選。08年9月、川辺川ダムについて「計画そのものを白紙撤回すべき」と表明し、蒲島郁夫知事の白紙撤回、前原誠司国土交通相(当時)の中止表明につながった。市長を2期8年務めた。熊本大大学院で防災をテーマに研究し、19年に修了した。葬祭会社社長。同市在住。73歳。

7月の豪雨を受け、再び川辺川ダム建設の議論が浮上した。2008年に白紙撤回を表明した蒲島郁夫知事はダム建設を「選択肢の一つ」と発言。被災した球磨川流域の再興を目指す過程で避けて通れないテーマだ。最大受益地である人吉市の市長として反対姿勢を打ち出した田中信孝氏は知事の発言を「評価できない」と批判。「ダムの功罪を検証し、しっかり民意を捉えるべきだ」とくぎを刺す。(聞き手・臼杵大介)

-今回の災害をどう受け止めていますか。
「地球温暖化による豪雨災害が各地で頻発しており、環境変化がもたらした災害の一つと捉えている。気候変動によって大水害が起きるだろうというのは白紙撤回を表明した時も述べた。そうした中で今回、線状降水帯が人吉球磨を襲った」

-なぜ、白紙撤回に至ったのですか。
「半年間、いろんな人の意見を聞き、文献を読んだ。重要視したのは住民の意識がどこにあるか。生の声を聞く公聴会を開き、来られなかった人には文書で意見を述べる機会を設けた。公聴会も文書もダム反対だった」

-国土交通省は、川辺川ダムがあれば人吉地点の流量を約4割カットできたと推計しています。
「ダムを造れば流量は軽減できるが、限定的な地域、予測した雨量にしか対応できない。ダムがあったとしても今回、氾濫は防げなかった。大雨を降らす今の気象現象で、ダムがベストということはあり得ない」
「ダムは緊急放流という危険な欠点がある。西日本豪雨では愛媛県・肱川[ひじかわ]がダムの緊急放流の後にあふれ、死者が出た。今回を超える豪雨に襲われた時、ダムがあれば緊急放流せざるを得ず、より多大な被害が出るはずだ。河道拡幅や河床掘削、堤防強化であれば、人は亡くならない。この違いは大きい」

-未曽有の水害にどう対応すればいいのでしょうか。
「降水量が限界を超えると、ダムも、河道拡幅も、河床掘削も、堤防強化も役に立たないことがある。人間は天災を防ぐ手だてを持っていない。天災から逃れる方法は最終的に事前の避難しかなく、人命を守るために一番大切なのはそのシステムだ。前日の夕方までに避難を促すのが首長の重要な行動だが、今回、これがなかった」
「山の斜面のずれやゆがみ、川の水位などを監視するシステムを構築し、科学的データを根拠に避難させる防災センターの設置が急務だ」

-豪雨を受け、蒲島知事はダムも選択肢の一つと発言しました。
「ダムよりも河道拡幅や河床掘削、堤防強化の方が安上がりだし、清流が残せる。知事は球磨川を『地域の宝』と発言しておきながら、なぜ川を濁らすようなことをするのか。大いに疑問だ」
「私が白紙撤回を表明して一番安堵[あんど]したのは、住民の対立、分断が止められたこと。ダム復活の議論になると、再び住民が賛成、反対に分かれ、対立が始まる。私はそれを一番恐れている」

◇  ◇
7月の豪雨災害から間もなく3カ月。被災地では、街や暮らしの再生に向けた動きが始まっている。「再興 あなたに聞きたい」では、復興の動きが本格化する中、被災地の真の現状や、これからの課題について、地元の人たちやそれぞれの分野の専門家らにインタビューする。

 

連載記事【検証再び 球磨川治水㊤、㊥、㊦】

2020年9月21日
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球磨川の治水について熊本日日新聞の連載記事の㊤、㊥、㊦を掲載します。

 

川辺川ダム必要論、急拡大 自民「当然」野党は警戒 熊本県議会【検証再び 球磨川治水㊤】

(熊本日日新聞2020/9/19 09:25) https://this.kiji.is/679872507206091873?c=92619697908483575

(写真)県議会代表質問で球磨川の治水対策について答弁する蒲島郁夫知事=18日、県議会棟 ​

「川辺川ダムが一つの有力候補として再び浮上してきたのは至極当然だ」-。18日の9月熊本県議会代表質問。自民党県連幹事長の松田三郎氏(球磨郡区)は7月豪雨の甚大な被害を引き合いにダム建設の必要性を強くにじませた。

2008年9月の蒲島郁夫知事による白紙撤回表明を受け、民主党政権が09年に中止を宣言した川辺川ダム計画。国土交通省は特定多目的ダム法に基づく廃止手続きは取らず、計画は連綿と生き続けた。そして今回、球磨川流域で60人が犠牲となった被害を機に、支流川辺川の「ダムの是非」が県政最大の課題として再燃した。

県議会最大会派の自民党内には、「必要論」が急速に広がる。「ダム以外に現実的な治水対策はない」と複数の県議。自民は08年以降、4度の知事選で一貫して蒲島氏を全面支援してきた。ただ、着々と蜜月関係を築く中で、川辺川ダム問題は喉元に刺さった“とげ”だった。

近年は声高に主張してこなかったものの、自民県議団の見解は変わらず「ダムは必要」。過去の県議会では、所属県議が「流域住民の生命財産をどう考えているのか」と知事に詰め寄る場面も度々あった。

「知事に、まずは『中立』の立ち位置まで来てもらいたい」と語っていた松田氏。この日の代表質問では「気象状況や大災害を境に12年間で民意は大きく変わった。(ダムに反対した)人吉市長と相良村長も顔触れが代わった」と強調。知事が、流域の民意を主な撤回理由とした過去の判断に縛られないよう、“地ならし”をしてみせた。

一方、自民と共に蒲島県政を支え、知事の白紙撤回表明を尊重してきた公明党県議団の城下広作氏(熊本市1区)は「検証委の結果を踏まえて冷静に判断する。ダムによって洪水被害が抑えられることが明らかであれば、反対しない」と話す。

自民や流域首長らから日増しに強まる「必要論」に、県議会の野党系会派は警戒感を隠さない。この日代表質問に登壇した第2会派・くまもと民主連合代表の鎌田聡氏(熊本市2区)は「検証委ではダムによらない治水対策10案の効果も明らかにすべきだ。ダムに慎重な立場の専門家も含めて多様な視点で検証する必要がある」と検証委の在り方自体を見直すよう知事に迫った。

共産党の山本伸裕氏(熊本市1区)も「ダムには緊急放流などのリスクもある。拙速な議論は避けるべきだ」との立場だ。

代表質問の答弁で蒲島知事は川辺川ダムも含めた「あらゆる選択肢を排除せずに検討する」と重ねて表明した上でこう続けた。「将来にわたって球磨川流域の安全安心を確保することが、天命だと覚悟を持って取り組む」(内田裕之、野方信助)

球磨川の治水対策について蒲島知事は、7月豪雨の検証を経て年内に方向性を示す方針だ。止まったはずのダム計画は再び動き出すのか。県政界や流域関係者の思惑を探る。

 

川辺川ダム、空白の時間 市町村の利害対立 議論膠着【検証再び 球磨川治水㊥】

(熊本日日新聞 2020年9月21日 12:42)https://kumanichi.com/feature/kawabegawa/1614121/

(写真)2009年1月に開かれた「ダムによらない治水を検討する場」の第1回会合。球磨川の治水協議は、流域市町村の思いが複雑に絡み、難航を極めた=県庁

「10年余におよぶ『ダムによらない治水』の検討の場は、結論さえも見いだせない空白の時間であったと考える」
8月20日、球磨川流域12市町村でつくる「川辺川ダム建設促進協議会」は、7月の豪雨災害で氾濫した球磨川治水に関する決議を取りまとめた。
ダム建設を含めた検証を速やかに実施し、抜本的な治水対策を求める狙いだが、蒲島郁夫知事が2008年にダム計画の白紙撤回を表明して以降、国と熊本県、流域市町村で続けられた治水協議への痛烈な批判も盛り込まれていた。

09年1月に始まった協議の場は「ダムによらない治水対策を極限まで追求する」(蒲島知事)スタンスを取った。しかし、流域の首長にはダムへの賛否が交錯。協議を主導する県と国は、具体的な治水安全度の目標を定められないまま、ダムに代わる現実的な対策を積み上げる手法を余儀なくされた。
当時、県川辺川ダム総合対策課のメンバーだった水谷孝司・県球磨川流域復興局長は「ダムで多くの水量をカットする大前提が変わり、技術的な代替策を流域に示すのは容易ではなかった」と振り返る。
一定の結論がまとまったのは6年後の15年2月。「ただちに実施する対策」として八代市萩原地区の堤防強化や人吉市での築堤など11項目を掲げたが、全てを実現しても球磨川の治水安全度は全国の国管理河川の中で低い水準にとどまった。

仕切り直しを目指して3者が15年3月に設立した「球磨川治水対策協議会」は、治水安全度の目標を「1965年大水害レベルに対応」と設定。国と県は昨年11月、ようやく「引き堤」「河道掘削」「堤防かさ上げ」「遊水地の設置」「市房ダムの再開発」「放水路」を組み合わせた10案を抜本策として提示した。
しかし、今度は流域市町村間の利害対立という大きな壁が立ちはだかった。引き堤には「市中心部の大規模移転を伴い、地域の理解を得がたい」(人吉市)との声が上がり、遊水地は相良村やあさぎり町などが「優良農地が失われる」と懸念した。上流からトンネルで水を流す放水路についても「下流域の水位が高くなる」(八代市)との指摘も。議論は膠着[こうちゃく]状態に陥った。

県幹部は「(12年の)阿蘇の大水害で被災水田を調整池にした経験もあり、ある程度は理解が得られると思っていた。見立てが甘かった」と漏らす。概算事業費2800億~1兆2千億円、工期は45~200年とする試算も、流域には「非現実的な案」(森本完一錦町長)と映った。
国土交通省は、10月上旬にも開かれる「球磨川豪雨検証委員会」の次回会合で、川辺川ダムがあった場合の浸水軽減効果などの試算を示す。そのテーブルに着く流域首長12人は促進協と全く同じ顔触れだ。

建設予定地の相良村長として08年にダム反対を表明した徳田正臣・前村長は疑問を投げ掛ける。「検証前から既に『ダム建設』の言葉が飛び交っている。この12年間結論が出なかったのは、多くの関係者の頭からダムの意識が抜けなかったからではないか。この状況で中立的な検証を期待できるのだろうか」(内田裕之、小山智史)

 

球磨川治水 熊本豪雨受け、揺れる知事発言 民意の行方 再び鍵握る【検証再び 球磨川治水㊦】

(熊本日日新聞 2020年9月21日 14:00) https://kumanichi.com/feature/kawabegawa/1614078/

(写真)川辺川ダムを含めた抜本的な治水対策を蒲島郁夫知事に要望する川辺川ダム建設促進協議会の森本完一会長(右から2人目)ら流域市町村の首長たち=県庁

「私が知事の間は計画の復活はない。改めてダムによらない治水を極限まで追求する」(7月5日)
「どういう治水対策をやっていくべきか。新しいダムの在り方についても考える」(同6日)
「川辺川ダムも選択肢の一つ。ダムの洪水調整機能を排除せずに検討していく」(8月26日)
死者65人、行方不明者2人という大きな犠牲を払った7月の豪雨災害。被害が明らかになるにつれ、蒲島郁夫知事の発言は揺れ動いた。
2008年、川辺川ダム計画の白紙撤回を表明した蒲島知事。災害発生直後は、この方針を維持する姿勢を強調したものの、翌6日には、治水対策にダムも含まれるとも取れる発言に軌道修正した。その後、「ダムも選択肢」という方向に方針転換。その発言の裏には何があったのか。

県幹部の1人は「目に焼き付いた壮絶な光景があるのではないか」とみる。7月中旬、蒲島知事が視察で訪れた八代市坂本町の光景は、流木が住宅に突き刺さり、県道の橋が流失した惨状。知事は「ひどい被害だね…」と絶句していたという。
ダムの有用性を示すデータもこの間、明らかになった。8月25日に開かれた国土交通省と県、球磨川流域12市町村でつくる検証委員会の初会合。国はこの日、人吉市で最大8千トンに上るとする流量推計を公表。川辺川ダムがあれば、最大流量を約4割減らせたとする試算を初めて示し、ダム効果を顕示した。
流域市町村の“民意”も大きく変わった。蒲島知事がダム計画を白紙撤回した当時は、建設地の相良村長や治水の最大受益地の人吉市長が反対を表明。蒲島知事は計画の白紙撤回を表明した県議会で、「民意がダムによらない治水を追求し、今ある球磨川を守ることを選択しようとしている」と強調した。
しかし、ダム反対を明確に打ち出した首長は表舞台を去り、ダム建設を容認する川辺川ダム建設促進協議会には8月、相良村が復帰。表向きには、流域12市町村の足並みがそろう形となった。

促進協は、すでにダム建設を含めた抜本的な治水対策を求める決議を採択し、要望書と共に県に突きつけた。促進協の竹崎一成芦北町長は「ダムありきではない」と前置きした上で「宅地を5~6メートルかさ上げした地域も水が来た。強度をさらに高めた治水策が必要だ」と知事に迫った。要望書を受け取った蒲島知事は「促進協の総意として重く受け止める」と応じざるを得なかった。
ただ、前のめり気味のダム建設論議に違和感を示す首長もいる。建設予定地を抱える相良村の吉松啓一村長は、堤防や遊水地整備が進まない中、ダム建設の議論が再浮上することに「時期尚早」と首をかしげる。「ダム建設に関しては村民の中にもさまざまな思いがあることを分かってほしい」と複雑な心境ものぞかせた。

県が目指す治水対策の方針決定は11月。一方で、ダム計画に反対してきた市民グループは「住民不在の検証が進められている」として、県に抗議文を提出した。識者も含め、ダム建設を巡る多様な意見が、県に寄せられているという。
「民意は変わる可能性もある」という蒲島知事。その民意をどのような手段でくみ取るのか。ダム建設計画の白紙撤回から12年。再び民意の行方が鍵を握る。(高宗亮輔、小山智史、野方信助)

 

石木ダム全用地収用から1年 計画の妥当性 論争続く

2020年9月21日
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石木ダム問題に関して長崎新聞の記事を2点掲載します。

上の記事に石木ダムが治水利水の両面で不要であると、私たちが指摘する理由も紹介されていますが、記述が十分ではないので、補足しておきます。

まず、治水については次の通りです。

川棚川流域における石木ダムの対象地域は計画上も8.8%に過ぎないし、さらに、その対象地域には石木ダム完成後も氾濫する可能性が高い地域が二つ含まれています。

一つは内水はん濫の可能性が高い川棚川下流部の公共下水道計画区域の低地部であり、もぅ一つは川棚川最下流部の川棚大橋より下流の区間です。後者は河川管理者ではなく、港湾管理者の管理区間であるので、堤防整備時期が未定のままになっています。

この二つを除くと、川棚川流域において実際に石木ダムで対応できる面積は4~5%にとどまり、治水面での石木ダムの必要性はきわめて希薄です。

また、1/100の降雨のために、石木ダムが必要という治水計画になっています。この1/100は、石木ダムが事業採択された1975年当時の河道データによる氾濫計算結果を長崎県の基準に当てはめて導いたことになっています。しかし、この1975年当時という河道データを点検すると、それは虚偽のものであって、実際の河道データを使うと、川棚川で使うべき降雨規模は1/50が妥当となります。1/50では石木ダムが不要となるので、県は河道データをねつ造して、1/100になるようにしたのです。

次に利水については、佐世保市水道の一日最大給水量は1999年度をピークとしてその後は確実な減少傾向になっています。これは一人当たり一日最大給水量が最近20年間で、2割以上も減ってきたことによるものです。今後は佐世保市の人口が次第に減少し、2045年には現在の8割以下になり、その後も減っていくのですから、給水量の規模がますます縮小していくことは必至です。佐世保市水道は既得の水源のままで水余りが一層進行していくのですから、石木ダムの新規水源が必要であるはずがありません。

このように。石木ダムが治水利水の両面で不要であることは明白な事実なのですが、残念ながら、現在までの裁判の判決には反映されていません。

 

石木ダム全用地収用から1年 計画の妥当性 論争続く

(長崎新聞2020/09/21 12:00 )https://this.kiji.is/680584265152087137?c=39546741839462401

(写真) 石木川と川棚川の合流地点からやや下流に位置する「山道橋」付近=川棚町中組郷

長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業。同町の治水と同市の利水を目的としたダム事業は、1975年の国の事業採択から45年たった今も完成していない。推進派と反対派の主張は平行線をたどり、法廷での論争も続く。なぜ、ここまで混迷を極めているのか。治水、利水の争点や訴訟の経過をあらためて整理する。

【治水・利水】意見かみ合わず

石木ダム建設の目的の一つが川棚川下流域の治水。つまり災害対策だ。石木ダムと既存の野々川ダム(東彼波佐見町)、河川改修によって、県は「100年に1度の大雨」にも対応できると説明する。

「100年に1度」とはどれほどの量なのか。県は過去の雨量などを基に、「山道橋」(石木川と川棚川の合流地点からやや下流)で毎秒1400トン。1時間雨量110ミリ、3時間雨量203ミリ、24時間雨量400ミリと想定する。毎秒1400トンは90年に同町に降った集中豪雨時の1・8倍の量だ。

山道橋で流せる水の量(流下能力)は現在、毎秒1130トン。「100年に1度」の際には270トン分があふれる計算になるが、それを二つのダムにため、流量を低下させる計画だ。

7月10日正午すぎ、川棚町で1時間90ミリ超(町雨量計)の猛烈な雨を観測した。ただ、前後の時間の雨量が少なかったこともあり、川棚川に大幅な流量の変化はなかった。県はダム事業と並行し、河川改修も進めており「これまでの改修の効果もあった」との見解を示す。

進行中の河川改修が完了すれば、川棚川で過去発生したような洪水被害は起きなくなるとしている。そうなれば「河川改修で十分」との理屈も成り立ちそうだが、「河川改修とダムはセット。どちらか一方を止めることはできない」と県の担当者。

一方、県が設定する「100年に1度」の計画規模に疑問を呈するのは、水源開発問題全国連絡会共同代表の嶋津暉之氏だ。

県は、計画規模を決める際の根拠の一つとなる「氾濫計算」で、石木ダム建設が事業採択された75年当時の河道データを採用している。嶋津氏は、現在のデータに置き換えて計算すると「50年に1度」が妥当だと指摘する。

「石木ダムの効果が及ぶ範囲は流域のわずか数%。そこに多額の税金をつぎ込んでいいのか」と嶋津氏。石木ダムがどれほどの治水効果を生み出すのか。係争中の事業認定取り消し訴訟でも論点となったが、1、2審判決は県の計画規模は「合理性を欠くとは言えない」と判断した。

◆  ◆

もう一つの目的が、石木ダムから佐世保市に水を供給する「利水」。この点でも、推進派と反対派の論争はやまない。

佐世保市は今年3月、2038年度までの「水需要予測」をまとめた。市民生活や企業活動を維持するため、1日の計画取水量を11万8388トンと見積もっている。六つのダムなどから一日計7万7千トンを取水できるが、必要量には4万1388トン足りない。この分を石木ダムで穴埋めする計画だ。

これに対し、石木ダム建設に反対する市民団体「石木川まもり隊」の松本美智恵代表は「水は十分足りている」と反論する。実際の水使用量は市の予測を下回って推移。人口減少や節水機器の普及で水需要はさらに減り続けるとし、市の予測を「過大」と批判する。

この意見について、市はどう考えるのか。

市は「水需要予測は渇水など非常時の備えを加味して算出している。通常は水の使用量が予測値を下回るものだ。人口減少も考慮しているが、市民1人当たりの水使用量は増加傾向にあるため、水不足は続く」と説明し、予測は「必要最低限」とした。

石木ダム以外で水を賄える方法はないのか。

市は、これまでに19カ所を調査した結果、石木ダム以外に適地はなく、既存のダムのかさ上げや掘削で容量を増やす方法も「限界まで再開発した」。海水淡水化装置の導入も技術的に困難。石木ダム以外に「方策はない」との立場だ。

反対派は、老朽化した水道管の漏水対策などをすれば給水の有効率を高められるとみており、ここでも意見はかみ合わない。

【裁判】反対派主張退ける

石木ダムを巡っては現在も複数の訴訟が係争中。これまでの司法判断はいずれも「ダムは利水、治水両面で不要」とする反対住民側の主張を退けている。

論争の舞台が法廷に移ったのは15年11月。「必要性のないダムで土地を強制収用するのは違法」。住民らが国に事業認定の取り消しを求め、長崎地裁に提訴した。主な争点は利水、治水両面でのダムの必要性。裁判官は現地も視察した。

判決は、佐世保市の水需要予測や県の治水計画を「不合理とは言えない」と判断。ダムの公益性を一定認め、原告側の請求を棄却した。控訴審の福岡高裁も一審判決を支持。住民側は最高裁に上告している。

この訴訟と並行し、住民らは17年3月、県と同市に工事差し止めを求める訴えを長崎地裁佐世保支部に起こした。ダムの必要性に加え、工事による生活の影響や権利侵害の有無も争われたが、同支部は今年3月、「生命・身体の安全が侵害される恐れは認められない」と判決。住民側が敗訴した。ダムの必要性の判断は示されなかった。住民側は福岡高裁に控訴中。

一方で起業者の県は、ダム建設に伴う県道付け替え道路の工事現場で座り込みを続ける住民らへの法的措置として、14年8月と16年10月の2回、延べ42人の通行妨害禁止の仮処分を同支部に申し立て、17年9月までに計26人に対して通行妨害禁止命令が出された。

【強制収用】解決の方策なければ…

膠着(こうちゃく)状態を打破しようと動いたのは金子原二郎知事(当時)だった。

県と佐世保市は09年11月、土地の強制収用を可能にする「事業認定」を国に申請。「話し合いを進める」(金子知事)のが目的で13年9月に認定された。反対する13世帯が建設予定地に住み続ける中、予備調査着手から41年を経て重大局面を迎えたかに見えた。

しかし、その後も膠着は解けず、中村法道知事は14年8月26日、土地収用法に基づき強制的に土地の明け渡しを求める「裁決申請」の手続きを始めると表明。ダム事業の公益性を認めた事業認定の効力切れが同年9月8日に迫っていた。

県収用委員会への裁決申請は、16年までに3回に分けて行われた。同委員会は15年6月に最初の「裁決」を出し、迂回(うかい)道路用地約5500平方メートルの土地を明け渡すよう地権者に求めた。19年5月には、反対地権者13世帯の宅地を含む未買収地約12万平方メートルも裁決。同年11月18日、法に基づく明け渡し期限を迎えた。

県と市は、収用した全ての用地について家屋の撤去などの行政代執行を中村知事に請求することが可能となっている。県は「住民の方々の理解のもと、円満に解決できることが一番望ましい」として代執行によらない解決を目指しているが進展は見通せない。

県用地課によると、県内のダム建設事業で収用の裁決まで進んだのは、石木ダムを除き、地権者と補償額で合意できなかった1988年の西山ダム建設工事(長崎市)のみ。代執行までには至っていない。

“最終手段”に踏み切るのか。踏み切るとしたら、いつなのか。8月25日、県庁での定例記者会見。「代執行はそれ以外に解決の方策がない段階で、総合的に、かつ慎重に判断する。反対住民の皆さまに引き続き全力でお願いしていく」。中村知事はこれまでと同じコメントを繰り返した。

© 長崎新聞社 石木ダム事業の経過

© 長崎新聞社 石木ダムを巡る法廷闘争

 

石木ダム全用地収用から1年 続く闘争 見通せぬ解決

行政代執行、判断示されず

(長崎新聞2020/9/21 12:00)https://this.kiji.is/680586847587992673?c=174761113988793844

(写真)石木ダム建設予定地周辺。左側の集落が川原地区。現在も13世帯約50人が暮らしている。手前は付け替え道路工事の現場=東彼川棚町(小型無人機ドローン「空彩4号」で撮影)

長崎県東彼川棚町に計画されている石木ダム建設事業で、事業主体の県と佐世保市が土地収用法に基づき、反対住民13世帯約50人の宅地を含む全ての建設予定地を取得してから20日で1年を迎えた。知事権限で家屋などを撤去できる行政代執行も可能な状況にあるが、対応の明確な判断は示されず、反対住民は今も変わらず暮らしている。事業認定を巡る法廷闘争も続いており、解決は見通せない。
昨年9月19日に住民と中村法道知事が約5年ぶりに面会。知事は「事業を進めていく必要がある」と改めて推進の考えを強調した。「将来」の話し合いを求める県側に対し、住民側は「ダムありきの議論には応じられない」との立場。面会以降、両者の対話はないという。焦点の行政代執行について、知事は「それ以外に解決の方策がない段階で慎重に判断する」と繰り返し、選択肢の一つとする。
事業の完成時期について県は昨年11月、水没する県道の付け替え道路工事が反対派の抵抗などにより遅れたとして、2022年度から25年度に延期した。県によると、付け替え道路工事は全長約3.1キロのうち約1.1キロの区間を進め、約600メートルは舗装工事まで終えている。本年度中にダム本体工事の一部に着手したい考えだ。
同町の治水と同市の利水を目的とした石木ダムの建設計画は、1975年の事業採択から45年が経過。当時から治水、利水の両面で主張に隔たりがあり、現在も二つの裁判が係争中。そのうち事業認定取り消し訴訟は1審、2審で住民側の請求を棄却。住民側は最高裁に上告している。最高裁判決が「一つの節目になる」と見る向きもある。

 

 

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