報道
球磨川治水対策協議会 会合で国と県、10案示す 知事・流域首長会議で検討へ /熊本
熊本県・球磨川の川辺川ダムに代わる治水策を検討する球磨川治水対策協議会が6月7日に1年4カ月ぶりに開かれました。その記事を掲載します。
球磨川治水対策協議会などの一連の会議資料は国土交通省 九州地方整備局 八代河川国道事務所のHPに掲載されています。
http://www.qsr.mlit.go.jp/yatusiro/river/damuyora/index.html
そのうち、球磨川治水対策協議会第9回 令和元年6月7日開催 が今回の資料です。
【議事次第、 資料1、 資料2、 資料3、 資料4、 資料5、 資料6、 参考資料、 意見書1 2】
その中で、資料5 http://www.qsr.mlit.go.jp/yatusiro/site_files/file/activity/kaisaisiryo/20190607shiryou5.pdf
に10通りの治水案の概要が示され、事業費も示されています。
最も安いのは、組み合わせ案④「(C)堤防嵩上げを中心対策案とした組み合わせ」ですが、それでも約2800億円もかかり、引堤や堤防嵩上げなどで移転戸数が 約340戸にもなるというのですから、実現の可能性はないと思います。
国土交通省が考える枠組みの範囲ではこのような検討結果しかでてきません。
有効な治水策は川辺川ダムを中心するものしかないという結論になるように、国土交通省は長期的な策略を練っているのでないかと思います。
球磨川治水対策協議会
会合で国と県、10案示す 知事・流域首長会議で検討へ /熊本
(毎日新聞熊本版2019年6月9日)https://mainichi.jp/articles/20190609/ddl/k43/040/354000c?pid=14516
熊本県・球磨川水系の国営川辺川ダム(同県相良村)計画が白紙撤回された後、国と県、流域市町村がダムに替わる治水策を協議してきた「ダムによらない治水を検討する場」を引き継いだ「球磨川治水対策協議会」の第9回会合が7日、同県人吉市であり、事務局を務める国土交通省九州地方整備局と県が複数の対策を組み合わせた10通りの治水案を提示した。
提示したのは、球磨川本流を3区間、支流の川辺川を3区間の計6区間に分け、引堤(ひきてい)(堤防を移動させて川幅を広げる)▽河道掘削▽堤防かさ上げ▽遊水地▽市房ダムのかさ上げ▽放水路--などの対策を組み合わせた数百通りの治水策の中から、概算事業費や環境・地域社会への影響、実現可能性などを考慮して絞り込んだ10案。
堤防のかさ上げをメインに川辺川上流と球磨川上流の河道を掘削し、球磨川中流に造る輪中堤(わじゅうてい)や宅地かさ上げを組み合わせる案は事業費が約2800億円で最も安上がりではある。しかし人吉地区の景観を損ねる上、移転戸数が340戸に上る難点がある。
川辺川上流部から直接、八代海に水を流す放水路の整備をメインに、球磨川上流部の河道掘削を組み合わせる案は家屋移転の必要がない。しかし事業費が約8200億円に上る上、関係漁協などとの調整が必要。このようにそれぞれの案の利点と課題も報告された。
示された10案は流域市町村が持ち帰って意見をまとめ、その結果を踏まえて国交省九州地方整備局長や蒲島郁夫知事、流域首長らのトップ会議で検討する。【福岡賢正】
治水策10案提示 国交省と熊本県が球磨川対策協で
(熊本日日新聞2019年6月8日 09:57) https://kumanichi.com/feature/kawabegawa/1069569/
(写真)治水対策の組み合わせ10案が提示された第9回球磨川治水対策協議会=人吉市
川辺川ダムに代わる球磨川水系の治水対策を国と県、流域12市町村が検討する「球磨川治水対策協議会」の第9回会合が7日、人吉市であり、事務局の国交省九州地方整備局と県が、河川を6区間に分けて複数の対策を組み合わせる10案を提示した。
前回の会合で、(1)引き堤(2)河道掘削(3)堤防かさ上げ(4)遊水地の設置(5)市房ダム再開発(6)放水路の整備-の6対策を軸に、組み合わせ案を検討することを申し合わせていた。
今回の10案では「引き堤」を柱に、球磨川上流部と川辺川の県管理区間上流部は「河道掘削」とするなど、複数の対策を組み合わせた。国交省は対策の組み合わせについて「費用や地域への影響などを踏まえ選んだ」と説明。市町村長会議を開催して報告し、意見を聴く。一昨年の意見公募で提案されたコンクリートと鋼矢板による堤防のかさ上げと地下遊水地の設置は、10案の対象外となった。
同協議会は昨年2月以来の開催。12市町村の副首長ら約50人が出席した。(小山智史)
10案提示、方向性検討へ/中心対策に放水路整備など/球磨川治水対策協
(建設通信新聞 2019-06-11 8面) https://www.kensetsunews.com/archives/330187
川辺川ダム(熊本県)に代わる治水対策を検討している球磨川治水対策協議会の第9回会合で、事務局の九州地方整備局と熊本県は、複数の治水対策を組み合わせた10案を提示し、概算事業費や実現性、おおむねの工期など課題ごとに評価した。
今後、整備局長・知事・市町村長会議などを通して、議論の方向性を検討する。
同協議会は、球磨川流域において「戦後最大の洪水被害をもたらした1965年7月洪水と同規模の洪水を安全に流下させる」を治水安全度に設定し、ダムによらない治水対策を検討している。
球磨川本川、川辺川筋の各3区間に分け、中心対策となる▽引堤▽河道掘削など▽堤防かさ上げ▽遊水地(17カ所)▽ダム再開発▽放水路ルート1▽放水路ルート4--の6案に、補完対策を組み合わせて計10案とした。
完成までの費用が最も高いのは遊水地(17カ所)を中心に、人吉地区と川辺川筋の直轄管理区間で引堤(両岸)などを組み合わせる案で1兆2000億円。最低額は堤防かさ上げを中心とする案で2800億円となる。
最短で効果発現するのは、川辺川上流部から球磨川中流部(八代市)に放水する放水路ルート1(長さ15㎞)、川辺川上流部から八代海に放水するルート4(長さ25㎞)をそれぞれ中心とする2案で、いずれも45年となる。
2案は、用地買収面積や、移転戸数も最も少なくなる。
ただ、地質調査を実施していないため技術的な実現性は判断できないとした。
残り8案は50年以上となり、引堤を中心とする案は200年となる。
会議では、堤防のかさ上げ案について、水位の上昇を許容するため氾濫した場合のリスクが拡大するなどといった意見や、放水路ルート1案では放流地点の八代市から懸念が示され、ルート4についても漁業への十分な説明が必要などとした。
洪水調節容量1.4倍に増強 鹿野川ダム改造、全事業完成 しかし、その事業費を肱川の河道整備を回していれば
愛媛県・肱川の治水対策として国土交通省が進めてきた鹿野川ダム改造事業が完成し、6月9日、完成式が開かれました。その記事とニュースを掲載します。
この改造事業の主たる内容はトンネル洪水吐を設置して、治水容量1650万㎥を2300万㎥に増やすものです(発電容量を転用)。
しかし、昨年7月の西日本豪雨では鹿野川ダムは発電用放流管を使って事前放流を行い,下図の通り、治水容量を2980万㎥-749.8万㎥=2230万㎥に増やしていました。それでも、流入量の急増で満水になり、緊急放流が行われ、大変な被害をもたらしました。
改造によって2230万㎥が2300万㎥に増えるだけですから、あまり変わりません。
鹿野川ダム改造の事業費は420億円にもなります。肱川ではダム優先の河川行政が進められて河道整備がなおざりにされ、かなり長い無堤区間が放置されてきました。必要性が希薄な鹿野川鹿野川ダム改造の事業費を肱川の河道整備を回していれば、西日本豪雨の被害を大きく軽減することができたと思います。
洪水調整容量1.4倍に増強 鹿野川ダム改造、全事業完成 大洲で式典
(愛媛新聞2019年6月9日(日))https://www.ehime-np.co.jp/article/news201906090053?utm_medium=social&utm_content=%2Farticle%2Fnews201906090053
(写真)トンネル洪水吐(左)の新設で、国が進めてきた改造事業が完成した鹿野川ダム=9日、大洲市肱川町山鳥坂
肱川流域の治水対策として国が進めてきた愛媛県大洲市肱川町山鳥坂の鹿野川ダム改造事業で、最後に残っていた「トンネル洪水吐(こうずいばき)」がこのほど完成し、9日、同町予子林の風の博物館で全事業の完成式が開かれた。改造でダムの洪水調整容量を2390万トンと従来の約1.4倍に増強。トンネルの運用で洪水をため始める水位を従来より4.7メートル下げ、下流の洪水被害軽減を図る。
国土交通省山鳥坂ダム工事事務所によると、改造事業は洪水調整機能の増強や貯水池の水質改善などを目的に、2006年度着手。下流の状況を見ながらよりきめ細かな放流量の増減(開閉操作)を可能にするクレストゲートの改良や、水質悪化の原因となるアオコの発生を抑制する曝気(ばっき)循環装置の設置、任意の深さの水を放流できる選択取水設備の新設などの工事を実施した。総事業費は487億円。
洪水吐のトンネル部分は全長457メートル、内径11.5メートルで、高い水圧に耐えられる鉄筋コンクリート部分と、世界最大級の鋼製放流管からなる。低い水位の放流能力が向上し、増強した洪水調整容量を有効活用できるようになった。
完成式には国や流域自治体の関係者ら約200人が出席。大洲市の二宮隆久市長は「鹿野川ダム改造事業の完成で、肱川流域住民の生活を守る治水対策が一歩進んだ」と述べた。
鹿野川ダム改造事業完成式 洪水対策が強化
(テレビ愛媛2019/06/09 18:51:00) http://www.ebc.co.jp/news/data/index.asp?sn=7259
肱川の洪水対策として進められていた大洲市にある鹿野川ダムの改造事業がこのほど完成し、9日、記念の式典が行われました。大洲市肱川町で行われた完成式には関係者約100人が出席、事業の完成を祝いました。鹿野川ダムの改造事業は洪水調節機能を強化するため国が2006年から進めてきたものです。このうち新たに設置された「トンネル洪水吐」は大雨の際などにあらかじめトンネルを使い放流することでダムの空き容量をこれまでの1.4倍に増やすものです。この事業の完成に伴い鹿野川ダムと野村ダムでは操作ルールを変更、西日本豪雨クラスの大雨が降っても洪水被害は大幅に軽減できるとしています。
石木ダム事業で収用裁決書 「ここを守りたい」反対40年 住民の岩下さん 決意固く
石木ダム問題についての長崎新聞の記事を二つ掲載します。一つは反対地権者の岩下すみ子さんのインタビュー記事、もう一つは収用裁決についての長崎県の発表に関する記事です。
6月3日、共有地運動に参加している人にも長崎県収用委員会の裁決書が郵送されてきました。長崎県の圧力を跳ねのけて頑張りましょう。
石木ダム事業で収用裁決書 「ここを守りたい」反対40年 住民の岩下さん 決意固く
(長崎新聞2019/6/4 09:43)updatedhttps://this.kiji.is/508441654460499041?c=174761113988793844
(写真)「さよなら…ダム」などと書かれた看板の前で故郷を守る決意を新たにする岩下さん=川棚町岩屋郷
長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業で、県収用委員会が反対住民13世帯の宅地を含む未買収地の明け渡しを求めた裁決書は3日、建設予定地の川原地区に暮らす地権者の元にも届いた。「お金はいらない。この場所に住み続けることが一番のぜいたくだから」。裁決書を受け取った岩下すみ子さん(70)はこう言い切った。自然豊かな同地区に嫁いで40年余り。「ここを守りたい」と変わらない決意を口にした。
反対地権者でつくる石木ダム建設絶対反対同盟で長年、中心的な役割を担う和雄さん(72)の妻。24歳で結婚し、佐世保から移り住んで間もない1975年、国がダム事業を採択した。82年には、県警機動隊が猛抗議する住民を排除する中、県が強制測量。激しい反対運動に身を投じたが苦にはならなかった。「川原の人たちが好きになっていたし、権力に負けとうなかったけんね」と笑う。
運動の先頭に立つ夫を支えながら、3人の息子を育て上げた。中でも次男の和美さんは、ダム問題に熱心に取り組み、若い世代の中核となっていたが、2004年、事故で他界。30歳だった。「生きていれば、頼もしかっただろうね」。今も夫婦で、そんな会話を交わすことがある。
玄関には、集落の中心にある看板の前で撮った和美さんの写真を飾っている。「さよなら…ダム」。今もかなうことがない住民たちの願いが書かれた看板を見上げ、すみ子さんはつぶやいた。「人が始めたダムだから、人の手で止められるはずなのにね」
「ここに住み続けるためにはどうしたらいいのか。その方法を教えてください」。立ち入り調査に来た県職員の前で膝を突き、悲痛な叫びを吐露したこともあった。県職員や知事の口から、その答えが示されることもなく、住み慣れた土地を取り上げる裁決書が一方的に送られてきた。
本音で語り合える地域の仲間たち、四季折々の花と野菜、小川のせせらぎ、ホタルの光。そのどれもがお金に替えることはできない。「人はそれを古里というのかもしれない」と思う。そして、あらためて言った。「諦めない限り、私たちが県に負けることはない」
石木ダム 補償額11.8億円 長崎県、収用裁決書を受理
(長崎新聞2019/6/4 09:39) https://this.kiji.is/508440718199358561?c=174761113988793844
(写真)裁決内容について説明する県職員=県庁
長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、県収用委員会が反対地権者13世帯の宅地を含む未買収地約12万平方メートルの明け渡しを求めた裁決について、長崎県は3日、県収用委の裁決書を同日受理したとして、明け渡し期限や総額約11億8千万円の損失補償額など裁決の内容を明らかにした。地権者らが明け渡しを拒否していることについて、中村法道知事は報道陣に「円満な解決に至らず残念。(家屋の撤去や住民の排除など)行政代執行の手法を除外することは考えていない。あらゆる選択肢の中から総合的に判断する」と述べた。
県庁で会見した県河川課によると、反対地権者の家屋13世帯や公民館1軒、小屋1軒を含む約12万平方メートルの明け渡しを地権者らに求める裁決を、県収用委(弁護士ら委員7人)が5月21日付で出した。同事業で宅地を含む明け渡し裁決が出たのは初めて。
裁決書に示された損失補償額は総額約11億8千万円で、地権者数は支援者ら“一坪地主”を含め計376人。地権者からの土地の権利取得の時期は9月19日とした。県は同日までに地権者に補償金を支払うか、地権者が受け取らない場合は法務局に供託することで、土地の所有権が国に移ることになる。県収用委への県の裁決申請では、権利取得の時期は「裁決の翌日から60日」だったが、県収用委は対象が膨大だとして「120日」に延期した。
明け渡し期限は、家屋などの物件がない土地が9月19日、物件がある土地が11月18日。地権者が期限までに明け渡しに応じなければ、県と佐世保市は知事に行政代執行を請求でき、知事が対応を判断することになる。
会見した県土木部の天野俊男次長は「(県収用委には)丁寧、慎重に審査いただいた。地権者に丁寧に説明する努力は継続する」とした。佐世保市の朝長則男市長は「(ダム建設は)市の水源不足解消に必要不可欠。今後も事業推進に取り組む」とのコメントを発表した。
地球温暖化 豪雨増 「100年に1度」最大1.4倍 国交省、治水見直し
5月末に国土交通省で「第4回 気候変動を踏まえた治水計画に係る技術検討会」が開かれました。最近の気候変動を踏まえて、治水計画を見直していくための検討会です。
その記事を掲載します。
検討会の配布資料はhttp://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/chisui_kentoukai/dai04kai/index.html に掲載されています。
気候変動といってもどこまで科学的な予測ができるのか、わからないところがありますが、国土交通省は次のように河川整備計画の目標を見直していくことを考えています。
「目標の見直し ○ 河川整備計画では、多くの一級河川で過去(主に戦後)に発生した最大の豪雨が発生しても被害の発生を防止することを目標にしているが、 気候変動の影響があっても目標とする治水安全度が確保できるよう、河川整備の目標を見直し、河川整備のメニュー充実と加速を図ることが必要。 」(資料6 気候変動を踏まえた治水計画のあり方 提言骨子(案))
国土交通省の今後の動きを注視していく必要があります。
地球温暖化 豪雨増 「100年に1度」最大1.4倍 国交省、治水見直し
(毎日新聞2019年6月1日 東京朝刊)https://mainichi.jp/articles/20190601/ddm/001/040/109000c
国土交通省の有識者検討会は31日、地球温暖化によって将来の豪雨時の降水量が全国平均で1・1倍になるとの試算を示し、これを国管理の河川の治水計画に反映すべきだとする提言骨子案をまとめた。これまで河川整備計画は、各地域で過去に起きた最大の豪雨を基に、河川の系統ごとに作られてきたが、気候変動の将来予測を取り入れる方法に転換する。
昨年7月の西日本豪雨など、近年、大規模水害が頻発していることなどを受け、検討会は気候変動の影響があっても安全が確保できるように議論を進めていた。今夏にもまとまる提言を基に、国交省は河川整備計画を見直していく。
政府は現在、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」に基づき、産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑えることを目標に温室効果ガス排出削減に取り組む。既に世界の平均気温は約1度上昇しており、大規模水害が頻発している。
このため検討会は、2度上昇したと想定して「100年に1度」の頻度で起きる豪雨の降水量を試算し、全国平均で現在の1・1倍になると予測。温暖化対策を全く取らない場合は4度上昇するとの想定でも試算し、降水量は1・3倍、地域別では1・1~1・4倍になるなどとした。
骨子案は、2度上昇の降水量予測に基づいて河川流量を算出し、河川整備計画を変更するよう求めた。また、4度上昇の試算も考慮し、堰(せき)などの施設設計をするよう提言している。
河川整備計画を見直すと、堤防の設計やダム計画、排水設備などの変更が各地で必要になる。検討会委員の山田朋人・北海道大准教授(河川工学・水文(すいもん)学)は「今後は将来予測を含めた治水計画が必要だ」と話した。【斎藤有香】
岐路に立つ「ホタルの里」 石木ダム事業と川棚町 採択から44年 住民翻弄
石木ダム問題について長崎新聞の記事3点と長崎放送のニュースを掲載します。
一つ目の記事で、「県は川棚川の改修が完了すれば、過去と同規模の大雨に対応できるようになるが、これは、おおむね「60年に1度」起こると想定している。整備計画で定めた「100年に1度」の大雨に対応するためには、石木ダムが必要というのが県の考えだ。」と書かれていますが、川棚川は1990年の洪水のあと、河川改修が進められて県の計画によるものはほぼ終わっており、県がいう「60年に1度」の洪水にはすでに対応できるようになっています。
そして、県がいう「100年に1度」の大雨の洪水は机上の計算によるきわめて過大なものです。
さらに、石木ダムができても、県がいう「100年に1度」の洪水が来れば、川棚川流域において石木ダムで対応できるのは流域全体の数%に過ぎず、石木ダムは利水面だけではなく、治水面でも無意味なダムです。
7月17日に石木ダム差し止め訴訟の裁判が長崎地裁佐世保支部であります。そこで、それらの事実を水源連の嶋津が証言する予定です。
岐路に立つ「ホタルの里」 石木ダム事業と川棚町 採択から44年 住民翻弄
(長崎新聞社 2019/06/02 16:29 )https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190602-00000008-nagasaki-l42
(写真)石木ダム建設予定地
川のせせらぎとウシガエルの鳴き声が響く田園風景に、夜のとばりが下りた。川沿いの茂みで小さな光の粒が明滅し始める。光は徐々に増え、夏の夜空を縦横無尽に乱舞した。東彼川棚町岩屋郷川原(こうばる)地区を流れる石木川で、今年もホタルが見ごろを迎えている。
町のホームページや広報紙では紹介されないが、連日多くの見物客が訪れる。5月25日は住民が恒例の「こうばるほたる祭り」を開き、にぎわった。
大村市から訪れたカップルは「初めて来たけど、思った以上にホタルが多くて驚いた」とうっとり見入っていた。男性が思い出したように記者に尋ねてきた。「ここって本当にダムに沈むんですか」
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県と佐世保市が川棚町に計画する石木ダム建設事業。5月21日、反対地権者13世帯の宅地を含む土地を強制収用できる県収用委員会の裁決が出た。一方4月の川棚町議選では反対地権者が最多得票で初当選。事業に疑問を持つ町民の世論も浮き彫りになった。事業採択から40年余り。岐路に立つ町で、揺れ動く住民の思いに耳を傾けた。
◎川原「ほたる祭り来年も」 上流域 分断し「心にしこり」 下流域 大雨不安「でも…」
石木ダムの水没予定地、東彼川棚町岩屋郷の川原地区。5月25日朝、住民らは夜の「ほたる祭り」を前に慌ただしく準備に追われていた。広場では男性陣がステージや屋台の設営に汗を流し、公民館では女性陣と支援者らが家庭料理や菓子をこしらえる。間を縫うように、子どもたちが自由に駆け回っていた。
祭りは、石木川に集まるホタルを呼び物に地域活性化を図ろうと、住民が1988年から開く。ダム問題は前面に出さず、自然豊かな集落の原風景や住民との触れ合いを通し、地区の「ファン」を増やすのが目的だ。今年は、住民らの日常生活を追ったドキュメンタリー映画の全国公開も影響し、県内外から見物客が訪れ、会場はにぎにぎしい雰囲気に包まれた。
だがほんの3日前、住民らの宅地を含む一帯の土地を強制収用できる県収用委の裁決が伝わった。地権者らは「明け渡しには応じない」と固い決意を口にするが、手続き上は今年中に全ての土地が「公有地」となる可能性が高い。そんな状況を知ってか知らずか、ある来場者はこう言って会場を後にした。「来年もまた来ます」
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川原地区より上流に位置する木場地区。日本の棚田百選の一つ「日向の棚田」の石垣には「ダム反対」の看板がちらほらと見える。反対地権者以外は県との補償契約に応じ、集落を去った川原と異なり、この地区はダムの賛成と反対の住民が混在する。かつてはダムの賛否を巡ってコミュニティーが分裂。20年以上にわたり郷が機能不全に陥った歴史もある。
15年ほど前、伝統芸能の復活などをきっかけに関係は修復した。「今、地区内でダムの話をする者はいない」と郷総代の長尾俊明さん(70)は言う。それでも「心には、わだかまりは残っている」。
ダムが完成すると、木場地区と町の中心部をつなぐ県道は沈み、住民はダム湖を迂回(うかい)する付け替え道路を使うことになる。高齢化が進む中、長尾さんは「ダムができれば、郷はさらに衰退するのでは」と懸念する。「ダムは造らずそのままにしてほしいのが、大半の住民の本音ではないか」と明かす。4月の川棚町議選で反対地権者がトップ当選したのも町民の「見えない本音」の表れとみる。
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ダムで治水の恩恵を受けるとされる下流域の住民は現状をどう見ているのか。
県によると、川棚川流域では豪雨による洪水被害が戦後4回発生。川棚川の改修が完了すれば、過去と同規模の大雨に対応できるようになるが、これは、おおむね「60年に1度」起こると想定している。整備計画で定めた「100年に1度」の大雨に対応するためには、石木ダムが必要というのが県の考えだ。
町中心部の栄町で洋服店を営む川尻省三さん(72)は90年7月の洪水被害を鮮明に覚えている。車を高台に運び、客から預かった服や貴重品、仏壇などを家族と2階に運んだ。あっという間に浸水。1階の畳やフローリングは台無しになった。店のシャッターの裏側には冠水した時の汚れが生々しく残る。「あのころは、私も若かったし、息子や両親もいた。ここ数年で全国的にゲリラ豪雨も増え、いつまた起こるかと思うと…」と不安を口にする。
昨年7月、県内初の大雨特別警報が発表された際も、心配で川棚川の様子を見に行った。氾濫には至らなかったが不安はぬぐえない。一方で「やはりダムは必要と思うか」との問いには「うーん」と苦渋の表情をした。「正直、ダムがすぐにできるとは思えない。どんな方法であれ、早く安心できる治水対策を整えてほしいだけなのだが」
他の店主も洪水時の苦労や今後の大雨への不安を口にするものの、ダムについては一様に言葉を濁した。ある店主は「川原の住民に『犠牲になってほしい』とまではとても言えない」と声をひそめた。
75年の事業採択から44年、ダム計画に引き裂かれ、翻弄され続けた地元民たち。それぞれの葛藤と苦悩に折り合いを付けられないまま、13世帯もの宅地を強制収用する前代未聞の事態は、現実味を増しつつある。
(写真) 石木ダム建設予定地の川原地区で乱舞するホタルの群れ=川棚町岩屋郷
石木ダム反対派が長崎市で抗議行動 署名活動、勉強会開催
(長崎新聞2019/6/2 14:45) https://this.kiji.is/507733814079603809?c=39546741839462401
(写真)石木ダムの建設中止を訴え、署名を呼び掛ける会員ら=長崎市浜町
長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画している石木ダム建設事業に反対する長崎市の市民団体「石木川の清流とホタルを守る市民の会」は1日、同市浜町のアーケードで抗議行動をした。
同事業を巡っては、反対地権者13世帯の宅地を含む未買収地について、5月21日、県収用委員会が明け渡しを求める裁決を出した。そのため、県はダム建設に必要な全ての土地を強制的に収用できる状況となっている。
この日は会員10人が買い物客らに建設反対の署名を呼び掛け、「『合意の上での着工』の約束を守ろう」などと書かれたビラを配布した。
一方、同市興善町の市立図書館多目的ホールでは、ダム問題への関心を高めるための学習会が開かれ、約80人が参加。熊本県で建設中止となった川辺川ダムの事例を通じ、反対世論を高める住民運動の在り方などについて意見を交わした。
4月の町議選でトップ当選した反対地権者の炭谷猛さん(68)は「石木ダムが必要ないことを町民目線で訴え、議会の中でも議論し、世論を形成していきたい」と話した。
石木ダム事業と川棚町 地権者トップ当選 議会は変わるのか 両町議に聞く
(長崎新聞2019/06/02 16:27) https://this.kiji.is/507805605105910881?c=174761113988793844
(写真)町議選の投票結果は『ダム不要』の民意だ」と語る炭谷さん=川棚町
4月の川棚町議選で、石木ダム反対地権者の炭谷猛氏(68)が、16人の候補者のうち最多となる795票を獲得し初当選した。過去3回、石木ダム事業推進の決議案を可決するなど長年にわたり「推進派」が多勢を占めてきた町議会は、地権者の参入で変わるのか。炭谷氏と、選挙戦でダムの必要性を訴えた田口一信氏(70)=3期目=に聞いた。
◎炭谷猛氏(68)/「民意」を甘く見るな
-「石木ダム反対」を明確に打ち出しトップ当選した。ダムに対する町民の関心は高まったと言えるか。
選挙結果で「ダムは要らない」という町民の民意が示されたと受け止めた。2016年に「石木ダム建設に反対する川棚町民の会」を結成。町内各地での学習会やビラ配りを通じ町民にダム問題について啓発してきたが、事業への疑問や反対意見を持っている町民は少なくなかった。
石木ダムができると川棚町の水道水は今より水質が悪くなるのではないか。ダムに依存した治水は本当に安全なのか。こうした疑問や不信感が町民に存在する。一方で、町議会の反応は鈍く、学習会に顔を出す議員は少なかった。出馬を決意したのは、町民の声をしっかり示したかったからだ。
-議員として、どのように活動していくのか。
石木ダムは、人口規模も、経済状況も、環境への考え方も、今と全く異なる前時代の計画。時代に応じて町民の考えが変わっているのに、政治の世界だけが旧態依然としている。「民意」をしっかり訴えていくつもりだ。
-そんな中、県収用委員会が地権者13世帯の宅地を含む用地の収用を裁決した。
今更、地権者側の反感をあおるようなことをして何になるのだろう。求められているのは、法的な手続きではなく政治判断。県や佐世保市、川棚町には、今回の選挙結果が示した「民意」を甘く見ないでほしい。
◎田口一信氏(70)/説明不足、町にも責任
-選挙戦ではダムの必要性を重点的に訴えた。
「佐世保市の水需要が減少しているから石木ダムは要らない」という論調を見かけるが、仮に利水目的がなくなったとしても、川棚川流域の治水の課題は残る。県が行政の責任として流域の治水対策を検討した結果、石木ダムが最も合理的と判断した。そもそも町民の安全の問題は、賛成、反対で論じるような性質のものではない。こうしたことを町民に理解してもらう必要があった。
-反対地権者のトップ当選をどう見たのか。
予想以上の得票で驚いた。「大型公共事業は無駄」と考えるムードがあったのだろうか。私も選挙戦を通じて、石木ダムの必要性が十分に理解されていないと感じた。きちんと説明してこなかった町にも責任の一端はあると思う。
-改選前には議会の石木ダム対策調査特別委の委員長を務めていた。ダムを巡る今後の町議会の動きは。
特別委で反対地権者と対話をしたかったが、かなわなかった。地権者が議会に入ったことで状況が変わると期待している。特別委は6月の定例会で再び設置されると思うが、私は地権者の炭谷議員にも入ってもらいたい。徹底的に意見を言ってほしい。
町は「事業主体は県と佐世保市」との立場で、この問題から逃げてきたが、地権者が議員になった以上はそうもいかない。同時に私は推進の立場から、これまで消極的だった町の姿勢をただしていくつもりだ。
(写真)「町民の安全の問題は賛成、反対で論じる性質のものではない」と語る田口さん=川棚町
長崎市の市民団体「石木ダム」収用裁決に抗議の街頭活動
(NBC長崎放送 2019/6/2(日) 12:28配信) https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190602-00002507-nbcv-l42
東彼・川棚町に計画されている石木ダムをめぐり、反対地権者の土地を強制的に収用できるようになる「裁決」が出されたことをうけ、長崎市の市民団体が抗議の街頭活動を行いました。
抗議したのは「石木川の清流とホタルを守る市民の会」のメンバー約10人で「佐世保の水は足りており石木ダムは不要だ」などと訴えました。
石木ダムをめぐっては建設に反対する13世帯およそ60人が今も水没予定地に住み続けていますが、県の収用委員会が先月21日収用裁決を出したため期限内に退去しなければ県による強制的な収用も可能となります。
市民の会の西中須盈代表は「公共のために役立つものなら理解もするが石木ダムは利水の面でも治水の面でも必要のないダムだ。世論の力で建設中止に持ち込みましょう」と道行く市民に呼びかけていました。
守る会では今後、収用委員会に対し収用裁決の取り消しを求める活動などを計画しています