報道
会計検査院が堤防整備の遅れを指摘する報告を11月8日に内閣に送付しました。
「河川整備計画等により堤防等を整備することとしている区間において、一部未整備の箇所又は改築が必要な橋りょうが残存していて、整備済みの堤防等の整備効果を十分に発現させる方策を講ずる必要がある事態について」
国交省はダム建設を優先し、堤防整備を後まわしにするような河川行政を続けてきています。
2015年9月の鬼怒川水害は、国交省が上流に四基の大型ダムを建設する一方で(最後の湯西川ダムは2012年完成)、下流部の河川改修をなおざりにしてきたことによって引き起こされたものでした。今年7月下旬と8月下旬に起きた秋田・雄物川の氾濫も、国交省が上流で成瀬ダム(総貯水容量7,850万㎥、2024年度末完成予定)の建設にまい進する一方で、雄物川中下流部において流下能力が極めて低い状態を放置してきたことに起因するものです。起きるべくして起きた氾濫でした。の問題を成瀬ダム差し止め住民訴訟で証言しましたが、残念ながら、判決には反映されませんでした。
会計検査院の報告に関する記事を掲載します。
堤防、不完全20カ所超 豪雨時、水害の恐れ 途切れや高さ不足 検査院調べ
(朝日新聞2017年10月27日)
「大曲の花火」雄物川に不完全な堤防 7月に氾濫
(朝日新聞2017/ 10/27)
堤防未整備で洪水の恐れ 佐賀など11道県24カ所
(写真)堤防の未整備区間から水があふれ、住宅などに浸水被害が出た雄物川=7月(国交省東北地方整備局提供)
豪雨に伴う洪水を防ぐため堤防をかさ上げしたり、川幅を広げたりする国土交通省の事業を会計検査院が調べた結果、未整備区間が残っているため十分な効果が見込めない場所が11道県で24カ所あることが8日分かった。実際、未整備部分から水があふれ、被害が生じた地域もあった。
地権者や周辺住民の理解が得られなかったり、幹線道路と交差するため工事が難しかったりすることが主な原因で、検査院は交渉・対策を急ぐよう要求。国交省は「調整を引き続き進め、地域の安全の向上に努める」としている。
検査院は2012~16年度の国の直轄事業、地方自治体が国から補助金を受け取って行う補助事業の対象である計857河川の状況を調べた。その結果、未整備区間で堤防の高さが予想水位を下回っている場所が佐賀県の巨勢川(1カ所)、浜川(1カ所)など12河川で14カ所あった。
このうち国交省東北地方整備局湯沢河川国道事務所が工事を担った秋田県大仙市の雄物川では、堤防予定地にある事業所の移転先が決まらなかったことから未整備の区間が430メートル残り、07、11、17年度には実際に水が堤防を越え、住宅や農地が浸水した。
また、堤防の整備予定地に橋があれば、堤防の整備と同時に橋も高くしたり延ばしたりする必要がある。しかし主にコスト面で鉄道会社などの橋の管理者と歩調が合わず、10カ所の橋で対応が後手に回っていた。【共同】
資源の採掘やダム建設などの人為的な要因も地震の原因になっているというナショナル ジオグラフィックの記事を掲載します。
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人為的な地震は150年間で728件発生、最新報告
四川大地震とネパール大地震も、主な原因は資源採掘とダム
地震は予測のできない天災だと考えられているが、最近ではそうとばかりは限らないようだ。
10月4日付けの学術誌「Seismological Research Letters」に発表された研究によると、過去約150年の間に、人間の活動が原因の地震が728カ所で起こったという。人間が地震活動に影響を及ぼす例があることは以前から知られていたものの、マグニチュード7.9という大地震も引き起こしたという発表は、他の研究者らを驚かせている。(参考記事:「【動画】奇怪!「呼吸」する道路を撮影」)
地震の回数は現在、世界の一部地域で明確な増加を見せている。自然に起こる地震と同じく、人為的な地震も命に関わる危険をはらんでいる。そうした地震が人間や環境に及ぼす影響については、今ようやく解明が始まったばかりだ。(参考記事:「ネパール大地震、現場の写真20点」)
人為的な地震の原因はさまざま
人間が引き起こす地震の影響は、自然地震のそれと似ているが、過去に地震活動がほとんど、あるいはまったくない地域で起こる場合が多い。自然地震の大半は、地殻を構成するプレートが集まる場所に多い断層沿いで発生する。しかし人間の活動が原因の地震は、プレートの境界から遠く離れた場所でも起こることがある。(参考記事:「地震を引き起こす断層とは?」)
地震を引き起こす人間の活動はさまざまだ。
発表されたデータによると、世界中で最も多い人為的地震の原因は資源の採掘だ(271カ所の採掘現場周辺に多くの地震が集中している)。地中から資源を取り出すことによって安定性が失われ、あるとき突然に崩壊して地震が引き起こされる。
ダムの建設も、167カ所の現場で地震を引き起こしている。しかもその規模は、数ある地震の原因の中でも群を抜いて大きい。
2008年、中国四川省でマグニチュード7.9の地震によっておよそ8万人の死者・行方不明者が出た。研究者らは、この四川大地震は紫坪埔ダムに貯えられた3億2000万トンの水の重量が引き金になったと考えている。紫坪埔ダムの下に断層線が通っているのは広く知られている事実だ。(参考記事:「四川大地震の影響で消えた中国のダム計画」)
米国の場合、人為的な地震は主に、近年多くの州で導入されつつある石油・天然ガス採掘のための水圧破砕法が原因と言われている。米地質調査所によると、水圧破砕法が引き起こす地震には、直接的なものと、作業の過程で排出される廃水によるものがある。この廃水は再び地中に高圧で戻されるので、さらに奥深くにある岩盤の断層を滑りやすくしてしまう。(参考記事:「米オクラホマ州で人為的な地震が増加」)
今回の研究では、水圧破砕自体による地震が29カ所、水圧破砕後に起こる廃水の注入によるものが36カ所、また何らかの石油・ガス掘削に関わる廃水による小規模な揺れが12カ所で生じていたことがわかった。水圧破砕法による掘削が盛んに行われてきたオクラホマ州の場合、以前は比較的地震が少なかった地域において、年間数百回にのぼる小規模の地震が起こっている。
この他にも、核爆発による地震が22カ所、工事現場での地震も2カ所で確認されている。(参考記事:「北朝鮮の聖なる火山「白頭山」に噴火の兆候」)
「人間が行う事業はすべて、地殻の活動に影響を及ぼします」。データを収集した英ダラム大学の地球物理学者マイルズ・ウィルソン氏はそう語る。「たとえば、地中に大量の物質を加えたり取り去ったりすれば、地球がその変化に反応するのは当然のことで、その反応が地震になることもあるわけです」(参考記事:「地中へのCO2隔離で地震が増加?」)
「人為的な地震は世界中で増加していくでしょう」
ウィルソン氏が収集した人為的地震の記録は、古いものでは1868年前まで遡る。この記録をまとめたデータベース「HiQuake(Human-Induced Earthquake)」では、地震の日付、地域、マグニチュード、場所、原因などを確認できる。
HiQuakeでは、ユーザーが加えるべきケースを報告する窓口も用意されている。
データベースによると、過去10年間では人為的地震が108カ所で発生しており、その規模は比較的小さいものからマグニチュード5.8までさまざまだ。こうした地震の大半が発生しているのは米国とカナダで、原因は地中への廃水の注入だという。
「長期的には、人為的な地震は世界中で増加していくでしょう。地球に影響を及ぼす事業の数と規模は増えていますから」とウィルソン氏は言う。
鉱石や石炭の採掘も大規模化が予想される。現在、採掘坑の規模はますます大きくなり、地下深くへと伸びている。こうした活動が地中を不安定にし、さらに多くの大規模な揺れを誘発するだろうとウィルソン氏は警告する。
「人間の活動が、蓄積された力を解き放つ最後の一撃になることもあるのです」(参考記事:「地震前の謎の発光現象、ついに解明か?」)
この研究は、自社の事業が環境に与える影響を調べたいというオランダのネーデルランセ・アールドオイリー・マートスカパイ社の委託も受けて行われたものだ。ウィルソン氏は、地震をより深く理解することが、その影響を最小限に抑えることにつながると考えている。
地面を掘り返したり、廃水を地中に注入したりすることをすぐにやめることはできないだろう。それでも、2008年の四川大地震のような大災害に対する備えを充実させることはできるとウィルソン氏は言う。(参考記事:「【動画】ゆで釜のような「泥火山」は噴火の予兆?」)
文=Sarah Gibbens/訳=北村京子
今年7月の九州北部豪雨では大量の流木が発生し、被害を拡大しました。この流木の回収作業が難航しています。その記事を掲載します。
山の流木回収難航 作業に手間、二次災害懸念 九州豪雨3ヵ月
(写真)川底から掘り出した流木などが積まれた妙見川の上流部では、回収作業が続く=2日午前10時半ごろ、福岡県朝倉市写真を見る
九州豪雨では大量の流木発生が被害を大きくしたが、福岡県内ではその撤去が難航している。20万トン超(ダム内を除く)とされる流木を、県は2019年3月までに処理する計画を立てているものの、山間部を中心に回収に時間がかかっている。作業が長引けば台風や大雨で下流域に流れ出す二次災害の懸念も大きくなるが、課題は多い。
大分自動車道・朝倉インターチェンジから、山側へ約3キロ入った福岡県朝倉市の妙見川上流部。雨に見舞われた2日、九州豪雨で岸辺が削られ川幅が数十メートルに広がった川底で、5台ほどの重機がうなりを上げた。
川底には、豪雨でなぎ倒され押し寄せてきた大量の流木が土砂に埋もれている。幅10メートルほどで蛇行する濁り水の脇で、重機が流木を掘り出し、大型ダンプで搬出する作業が続く。
「木材を搬出するだけの作業に比べると効率が格段に悪い」。重機を操縦していた男性作業員はそう言い、汗を拭った。
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県は流木20万トン超のうち、国道沿いなど国処理分などを除いた7万トンを県処理分と想定し、補正予算を組んで回収を実施。しかし9月末時点でも約4万トンの回収にとどまっている。朝倉市は未集計で、東峰村は約6割を回収できたと推計しているが、まだ全体で数万トン以上の流木が被災地に残っているとみられる。
さらに、これまで回収が済んだのは幹線道路沿いや平地に近い場所にある河川敷が中心。今後は妙見川上流部のような山間部、急傾斜地などで進められ、これまでよりスピードが遅くなることが予想される。
そもそも20万トン超の推計量は、被災地の二つの河川を撮影した航空写真で見つかった流木の範囲を基に算出されている。地中に埋まった流木は基本的に数えられておらず、処理すべき量が増える可能性もある。
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回収後の流木は、県が既に処理、活用方針を公表している。
計画では、まず県内12カ所の1次仮置き場に集積。10月中旬からは、筑後市の下水道施設「矢部川浄化センター」の敷地に確保している2次仮置き場に運び出す。ここに破砕機を設置してチップ化し、火力発電などに11万トン▽セメント燃料・原料用に3万トン-として有効活用する。このほか焼却(チップ化)は6万トン、木材のまま利用が0・5万トンと見込んでいる。
チップなどの受け入れ先は、県の呼び掛けに九州内の31カ所の施設が応じており、19年3月末までに処理を終える予定だ。
一方で、31施設のうち、どこに、いつから受け入れてもらうか、運搬方法をどうするかといった具体的な計画は「今まさに詰めている段階」という。県は運搬費、処理費などで約65億円を計上しているが、処理量が増えれば、費用がさらに膨らむ恐れがある。
県は、65億円でも不足する場合、新たに予算を組んで対応する方針。ただ流木撤去が終わらなければ、河川や道路の復興工事が進まない面もあり、県廃棄物対策課の担当者は「流木撤去は優先事項で、処理完了時期をずらすつもりはない」と強調する。
=2017/10/05付 西日本新聞朝刊=
国土交通省は秋田県・子吉川の由利本荘市に鳥海ダムの建設を進めようとしています。この鳥海ダムに関する記事を掲載します。
鳥海ダムはダム検証が始まるまでは休眠状態であったダムですが、ダム検証で動き出しました。
秋田県下では、国土交通省が現在、雄物川上流で成瀬ダムの本体基礎掘削工事を進めています。この成瀬ダムに続く大型ダムとして、鳥海ダム事業を進めようというものです。
しかし、今年7月、8月の記録的豪雨で、雄物川は大氾濫し、多大な被害が生じました。治水効果がほとんどない成瀬ダムの建設に河川予算をつぎ込み、雄物川の河川改修をなおざりにしてきたことによるものです。
国土交通省は鳥海ダムで同じ轍を踏もうとしています。
水没予定地の歴史を記録に
由利本荘・百宅地区で委員会を発足
国土交通省鳥海ダム工事事務所は2日、ダム建設に伴い水没する由利本荘市鳥海町百宅地区の歴史を記録として残すため、有識者による「百宅地区の記録保存委員会」を発足させる。
同地区は平家伝説や鳥海修験、マタギといった独特の伝承や文化で知られる。委員会は3年ほどかけて歴史学や考古学、民俗芸能、美術、建築、地質、教育などの視点から、調査と研究の光を当てる。
委員会は13人の有識者で構成され、初会合が開かれる2日には早速、現地に入り、史跡「弘法平」や猿倉人形芝居の創始者・池田与八の顕彰碑、雷神社などを視察する。
百宅地区は子吉川源流部の鳥海山麓にある。平家の落人伝説に加えて、弘法伝承も色濃く残り、「法体の滝」入り口には、空海が修行したと伝わる弘法平がある。
洞窟の奥に弘法大師像が安置され、古くから鳥海修験者の修行の場とされてきた。国指定史跡・鳥海山への追加指定が期待されたが、ダムの建設で水没するため、見送られた経緯がある。
国指定重要無形民俗文化財・本海番楽の里としても知られ、下百宅講中の舞は番楽の原形を最も忠実にとどめるとされる。しかし、ダム建設への対応で住民の足並みが乱れたといい、10年前から休止状態にある。
今回の調査を機に復活を期待する声も強い。鳥海ダムは洪水調節や水道用水の確保、安定した川の流れの維持が狙いの多目的ダムだ。
流域面積約84平方キロで、総貯水容量は約4700万立方メートル。百宅地区を中心に310ヘクタールが水没、48戸が移転を余儀なくされる。
栃木県は、必要性がない思川開発事業の水源を無理矢理使うため、栃木市、下野市、壬生町水道の地下水源を大幅に減らす県南水道用水供給事業を推進しつつあります。
このことに関する記事を掲載します。
県南水道用水供給事業によって栃木市、下野市、壬生町水道は地下水源が大幅に減り、まずくて料金が高い水道になることは必至ですので、この事業に反対する運動が進められています。署名活動も始まりました。
実現可能な施設計画抽出へ 県南3市町の水道水 南摩ダム再開で調査着手(県生活衛生課)
南摩ダム建設に伴う思川開発事業の再開が決まり、県と栃木・下野・壬生の3市町は、水道施設の整備に向け調査や検討が始まった。7月に県南広域的水道整備事業検討部会が開かれ、施設計画等の基礎的な調査検討に着手。県生活衛生課によると、一級河川思川にある取水堰など既存施設の活用に向けた調査検討や施設配置を検討、今年度末を目途に取水候補地を選定し、実現可能な施設計画を抽出していくとしている。施設計画の抽出に伴う水道施設広域化調査検討業務は、日水コン(東京都新宿区)が担当している。
南摩ダムに保有する県水は、毎秒0.403立方m。県は思川の取水位置を決め、取水施設や導水施設、浄水場などを整備し、参画の3市町に供給する計画。3市町は現在、全量を地下水で水道水を賄っており、24年度末にまとめた「栃木県南地域における水道水源確保に関する検討報告書」では、野木町を合わせ平成42年度を目標に表流水の比率を35%、日量3万5000立方mまで高めていくとしている。
地下水の代替水源として表流水の比率を高めていくことは、県南地域における地盤沈下や地下水汚染が危惧されるためで、同報告書では水道水源を地下水のみに依存し続けることは望ましくないとしている。また、異常気象による渇水リスクが高まる中、県南地域には水道水源として水資源開発施設がないことに危機感を示し、水資源開発には相当な期間を必要とすることから、長期的な展望に立って、事前対策を講じていく必要性に言及した。
今年度の調査では、水道水を供給するに当たって、取水先の思川から3市町のエリアに、活用可能な施設がどこにどのような形で存在しているか、既存施設の資料を収集し把握するとした。具体的には、取水・導水施設、浄水施設、配水施設等その他関連施設としている。
調査では、資料による把握が可能な範囲内で、新設や既存設備の活用など複合型の可能性を検討し、考えられる組み合わせを整理する。また、組み合わせの中で実現可能な施設計画を3パターン程度抽出するとしている。
実現可能な施設計画を抽出した上で、30年度以降は最適案を抽出。最適案による施設の概略設計をまとめ、概算事業費を試算するとした。
思川開発事業は、30年度に導水路工、31年度には南摩ダム本体工を公告。導水路工は取水放流工を含め35年度まで、南摩ダムは基礎掘削や盛立工を経て36年度に試験湛水を行うとしており、計画では37年度にも表流水への転換が可能になる。