5月17日に国土交通省で「第3回 ダム再生ビジョン検討会」が開かれました
。http://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo05_hh_000025.html
その配布資料が国土交通省のHPに掲載されました。
第3回 ダム再生ビジョン検討会 配布資料一覧 2017年5月17日(水)
http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/dam_saisei_vision/dai03kai/index.html
ダムの長寿命化などを理由にして既設ダムの改造を進めていくというものです。
新しいダムの建設が困難になってきたので、ダム建設部門の仕事を維持するためにダム再生ビジョンをつくろうということではないでしょうか。
この検討会についての記事も掲載します。
国交省、防災強化へダム再生ビジョン
既存を有効活用、改修を効果的に
(リスク対策.com2017年5月18日)/記者 斯波 祐介 http://www.risktaisaku.com/articles/-/2859
国土交通省は17日、「ダム再生ビジョン検討会」の第3回会合を開催。「ダム再生ビジョン」の案を取りまとめた。近く正式決定する。既存ダムの最大限有効活用を進め、治水機能の向上に向け下流河道とダム改良を一体で行うといった施策を推進する。
ビジョン案ではダムの洪水防止効果に触れ、厳しい財政状況や生産人口減少の中、既存ダムの最大限活用をうたった。災害防止の観点では、ダム下流河道に放水できるだけの流下能力の不足のほか、気候変動の影響で流入量が増加し特別な放水操作を緊急で行うことが増加。操作を行う職員の負担軽減が課題に挙げられた。
治水能力の向上に向け、ダムの放流設備増強の際に下流河道の改修を一体で推進。また、既存ダムのゲート増設や運用の改善を行う。ダム建設の際には気候変動への対応をしやすいよう、将来の改修を見込んで柔軟性を持った構造の研究も進めていく。
(了)
5月18日(木)に国土交通省で「高規格堤防の効率的な整備に関する検討会」が開かれました。
~高規格堤防の効率的な整備に向けて~
その配布資料が国土交通省のHPに掲載されました。
今回が第一回で、あと2回、検討会を開いて「高規格堤防の効率的な整備」の方針をまとめることになっています。
とにかく、高規格堤防の整備は遅々として進んでいません。
荒川、江戸川、多摩川、淀川、大和川の下流部、延べ119kmが対象になっていますが、現在までの進捗速度ですと、整備完了まで700~1000年以上かかると思われます。
国土交通省の高規格堤防整備の年間予算は5河川合わせて最近は40~50億円にとどまっています。
この整備のスピードを上げるため、検討会が開かれました。
しかし、人の住んでいるところを堤防にするという考え方そのものが間違っていますので、うまく行くとは思われません、
昨日の検討会についての記事もお送りします。
スーパー堤防の事業化促進へ改善探る
国交省、街づくりとの協力円滑化など
(リスク対策.com2017/05/19)http://www.risktaisaku.com/articles/-/2874
記者 斯波 祐介
国土交通省は18日、「高規格堤防の効率的な整備に関する検討会」の第1回会合を開催した。「スーパー堤防」とも呼ばれる高規格堤防整備の効率化に向け、事業化に向けた手続きの改善、コスト縮減や工期短縮といった課題改善を図っていく。
高規格堤防とは土でできた緩やかな勾配を持つ堤防。堤防の高さの30倍程度の幅があり、防災機能強化以外に堤防の上を利用した街づくりも可能という利点がある。しかし2010年の民主党政権下での事業仕分けによりいったん廃止が決定。その後に検討会が開かれ、従来計画の約873㎞を、ゼロメートル地帯を中心とした約120㎞に縮小し整備を進めることとなった。
現状の課題として、デベロッパーなど民間事業者が高規格堤防整備に合わせて街づくりを行うメリットがあまり感じられない、民間事業者が共同で事業を実施したいと思っても基本協定締結までに1年かかり、断念するといったケースが挙げられた。このため税制をはじめとしたでのインセンティブ導入や、高規格堤防の予定区域の明示による公募や事業調整の仕組みづくりと打った手続きの改善を検討する。
また工期短縮や費用縮減へ、新技術活用や盛り土と上面整備の一体施工といった対応も示された。国交省では投資効率性の確認手法についても検討をしていく方針。
(了)
ミャンマーの巨大ダム建設問題に関する記事を掲載します。
ミャンマー巨大ダム建設、中止か再開か スー・チー氏、中国の“圧力”に沈黙
(写真)ミャンマー・ミッソンで、建設途中のまま放置されたダム工事用の橋脚=3月(共同)【拡大】
ミャンマー北部で、中国が主導した巨大ダム建設が中断されてから5年余り。軍政時代に進められたダム計画に地元では完全破棄を求める声が広がるが、中国は駐ミャンマー大使を建設予定地に派遣するなど再開に向け働き掛けを強めている。中止か再開か。現政権を率いるアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相は国内世論と中国の圧力との間で板挟みになり、沈黙したままだ。
北部カチン州で2本の川が合流し、国土を南へと貫くイラワジ川が始まるミッソン。ダムができれば水没する河原には、観光客を目当てにした茶屋が並んでいた。ツアーで友人と訪れたイ・イ・モンさんは「ミャンマー人にとって特別な場所。感激」と話す。
イラワジ川は流行歌にも登場するなど、ミャンマーの人々に愛されてきた。ミッソンは風光明媚(めいび)な名所として知られるが、茶店の対岸の山肌は削られ、工事が進んだ様子が分かる。工事用の橋脚は建設途中のまま、さび付いていた。
ダムは水力発電用で、中国国有企業が36億ドル(約4020億円)を投資、ミャンマー企業と合同で2009年に建設を始めた。中国の全面支援を受けてきた軍政が建設を後押ししたが、発電量の9割が中国向けとされ、環境破壊への懸念もあり、地元で反対運動が巻き起こった。民政移管から約半年後の11年9月、テイン・セイン前大統領が中断を決定した。
スー・チー氏は野党時代に下流の稲作地帯に悪影響を与えると懸念を表明し、反対運動を支えた。だが、政権を率いる立場になると、最大の貿易相手国である中国への配慮から、ダム問題に関して一切の発言を控えるようになった。
中国にはダムでつくった電力を南部の雲南省の開発に生かす狙いがある。習近平国家主席は昨年のスー・チー氏との会談で「現行の大型プロジェクトの安全な運営の保障」が必要と訴え、再開を要求した。水面下では工事中断による損害賠償金の支払いを求める構えも示しており、ミャンマー側に圧力をかけ続けている。
川の合流地点の三角地にある村からは住民の大半が移転。キリスト教徒の多い少数民族カチンの教会も移ったが、聖母マリア像は残された。教会の世話人ラサンノン・トゥイさんは「ダムができれば聖母像は水没してしまう。計画を破棄してほしい」と訴えた。
牧師のボクソンさんは「現政権は国民のための政府を掲げるが、国民は既に(中止を求める)態度を示した」とスー・チー氏に中止の決断を求めた。(ミッソン 共同)
岡山県の直轄ダム「苫田ダム」の利水容量の一部を治水容量に転用する話がご破算になったという記事を掲載します。
苫田ダムといえば、地元の奥津町(現・鏡野町)に対して建設省等が行政圧迫を行って、ダム反対の町長が予算を組めないようにして3期にわたって辞任に追い込んだ強権行使の象徴的なダムです。
ダム反対の予定地住民に対しては子息の勤め先まで手を回して、翻意を迫ることまで行いました。
しかし、苫田ダムの必要性はありませんでした。
苫田ダムの水利権を持つ岡山広域水道企業団の水源構成は苫田ダム40万㎥/日、既得水源が9.3万㎥/日ですが、現在の1日最大取水量は10万㎥/日少しにとどまっています。
それも、岡山市などが自己水源の一部を企業団水に切り替えた結果であって、苫田ダムなしで水需給に不足をきたすことはありませんでした。
この記事では40万㎥/日のうち、10.5万㎥/日が買い手がないと書かれていますが、実態は責任水量制を岡山市等に押し付けたものであって、岡山市等は企業団の水を持て余しています。
余剰の利水容量を国が買い取って治水容量に転用する交渉が行われていましたが、買い取り額が5億円で安すぎるということでご破算になりました。
苫田ダムの治水転用「対応困難」 県広域水道企業団 国打診断る方針
(山陽新聞2017年03月30日 22時51分 更新)http://www.sanyonews.jp/article/509980/1/
苫田ダム(岡山県鏡野町)の利水容量を保有する岡山県広域水道企業団(県と関係17市町で構成)は30日、岡山市内で開いた運営協議会で、利水容量の一部を治水転用するため買い取りを打診している国に対し、「現時点では対応は困難」として断る方針を決めた。
国側の提示価格が低いことなどが理由という。
同企業団は31日にも国土交通省中国地方整備局に文書で回答する。ただ、国側から再度の転用依頼があった場合は再検討するとの内容も盛り込む。
苫田ダムの利水容量は日量約40万トン。このうち10・5万トンは買い手が付かず、県が調整水量として引き受けている。
同整備局は2015年8月、洪水調整に活用するため、11・7万トンを約5億円で買い取ると打診。
県と関係市町で協議を重ねていたが、約5億円で売却すると同企業団に約84億円の帳簿上の差損が生じることなどから、「国の買い取り価格が資産価格に見合わず、将来の企業団経営に悪影響を与える」「異常渇水が起きた場合に対応できるのか」といった慎重意見が出ていた。
アイヌ民族を司法の場で初めて先住民族と認定し、国の事業認定と北海道収用委員会裁決をいずれも違法とした二風谷(にぶたに)ダム訴訟の札幌地裁判決があってから20年になります。
ダム本体が完成していたことを理由に、二風谷ダム建設差し止めの請求は棄却されましたが、先住民族と認定した判決は画期的でした。
その記事を掲載します。
なお、二風谷ダムは堆砂がひどく進行し、2015年3月末現在で堆砂率は総貯水容量の約4割に達しています。
溜まった泥の濁りがダムの下流域から河口沿岸域までおよび、シシャモの繁殖に多大な影響を与えているとされています。
「沙流川の今。2016年7月29日」 http://protectingecology.org/report/6462
土砂供給量が非常に大きい沙流川はダムを造ってはいけない河川であるにもかかわらず、現在、二風谷ダムの上流で平取(びらとり)ダムの建設が進められています。
二風谷ダム訴訟 判決20年 父から子へ「闘い」今も 権利回復、道半ば /北海道
(毎日新聞北海道版2017年3月25日 )http://mainichi.jp/articles/20170325/ddl/k01/040/232000c
アイヌ民族を初めて先住民族と認め、独自の文化への配慮を欠いた事業認定を違法とした二風谷ダム訴訟の札幌地裁判決から27日で20年。
父の遺志を継いで訴訟を起こした貝沢耕一さん(71)と、もう一人の原告でアイヌ民族初の国会議員、故萱野茂さんの次男志朗さん(58)が胸に抱くのは、先住民族としての権利回復は、道半ばとの思いだ。民族の誇りをかけた闘いは、父から子へと受け継がれ、今も続く。
差別の歴史問う
雪が残る3月上旬の、平取町二風谷地区。穏やかに流れる沙流川に、二風谷ダムの巨大な水門が立つ。「子どものころ、向こう岸の畑に行くための丸木舟がいくつもあった。川遊びもできたよ」。貝沢さんは、ダムができる前の思い出を語った。
住民の7割がアイヌ民族の血を引くとされる二風谷では1970年代からほぼ毎年、舟下ろしの伝統儀式「チプサンケ」を再現してきた。82年にダム建設事業が始まり、北海道開発局が進めた用地買収に対し、文化継承が途絶えるとして土地明け渡しを拒否したのが貝沢さんの父正さんと、萱野茂さんだった。
裁判で問われたのは、差別の歴史そのものだ。アイヌ民族は明治以降の同化政策でアイヌ語や固有の習慣、生活の基盤だった狩猟や漁労を否定され、北海道旧土人保護法により、不慣れな農業が奨励された。
森、本来の姿に
「政府にアイヌの声を届けたい」。92年に亡くなった正さんの言葉は今も、貝沢さんの胸に残る。97年3月の判決後、同7月に旧土人保護法は廃止、アイヌ文化振興法が施行された。
貝沢さんは現在、開拓の名の下に切り倒された森を本来の姿に戻そうと、山林を買い取り、木を育てるNPO法人「ナショナルトラスト・チコロナイ」の理事長を務める。チコロナイは「私たちの沢」を意味するアイヌ語で、萱野茂さんが名付けた。買い取った土地約30ヘクタールに、伝統的な衣服の材料になるオヒョウなどを植えてきた。
この20年で「若い世代がアイヌ文化に関心を持ち始めた」と変化を感じるものの、「民族の権利や生活を改善しようと裁判を闘ったが、状況は変わらない。振興法はアイヌの権利を一切うたわず、文化を博物館に押し込むようなものだ」と、貝沢さんは批判する。
アイヌ語伝える
大学進学後、東京で暮らしていた萱野志朗さんは、カナダの先住民族との出会いをきっかけに、民族の言葉の大切さに気付いた。故郷に戻って父の下で一からアイヌ語を学び、現在は「萱野茂二風谷アイヌ資料館」の館長を務める。
2006年に亡くなった父に代わって地元の小中学生にアイヌ語を教え、現在も大人向けの教室を続ける志朗さん。「アイヌ語を失えば、民族が長年培ってきた価値観や知識も伝わらない。子どもや孫の世代に文化をどう受け継いでもらうのか、アイヌ自身もビジョンを持たなければならない」と強調した。
政府施策、文化振興に偏り
海外で先住民族の権利を認める流れが広がる中、政府は二風谷ダム訴訟の札幌地裁判決から10年余り過ぎた2008年6月、官房長官談話で初めてアイヌ民族を先住民族と認めた。だが政府のアイヌ施策は文化振興に偏っており、先住民族としてのアイヌの権利は具体化していない。
1997年3月の札幌地裁判決はアイヌ民族を「わが国の統治が及ぶ前から北海道に居住し、なお独自の文化およびアイデンティティーを喪失していない社会的な集団」として、先住民族と認定した。
07年9月に日本も賛成して国連総会で採択された「先住民族の権利に関する宣言」は、先住民族に自決権や文化的伝統を実践する権利、土地や資源に対する権利などを広い範囲で認めている。
権利宣言の採択に加え、北海道洞爺湖サミット(08年7月)の開催を控えてアイヌ民族が海外からも注目されるようになったことが、政府にアイヌを先住民族と認めるよう求める衆参両院の決議と、決議を受けた官房長官談話につながった。
政府は白老町に整備する「民族共生の象徴となる空間」の基本方針を14年6月に閣議決定。20年の東京五輪・パラリンピックに合わせた国立アイヌ民族博物館の開館のほか、生活や教育を支援する新法制定も検討されているものの、民族の権利についての議論は深まっていない。
二風谷ダム訴訟で原告側弁護団長だった田中宏弁護士は「単なるハコモノ造りではなく、同化政策の歴史に向き合わなければならない」と語る。
恵泉女学園大の上村英明教授(先住民族論)は「過去の政策や歴史に理解を深めないまま、日本社会がどう責任を取るかが定まっていないため、権利が実現していない。行政主導ではなく、政治や司法の場でもアイヌ民族への政策を問い直すべきだ」と強調した。
■ことば
二風谷ダム訴訟
平取町の二風谷ダム建設を巡り、地権者である故萱野茂さんと貝沢耕一さんが北海道収用委員会に、土地強制収用の裁決取り消しを求めた行政訴訟。札幌地裁は1997年3月27日の判決で、アイヌ民族を司法の場で初めて先住民族と認定。ダム建設がアイヌ文化に与える影響について調査を怠り、アイヌ民族の文化享有権を軽視したと指摘し、国の事業認定と道収用委裁決をいずれも違法とした。ダム本体が完成していたことを考慮し、請求は棄却した。