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平成の記憶・岡山 苫田ダム 多くの犠牲の上に建つ 反対運動40年、立ち退き504世帯 /岡山

2019年4月24日
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2004年11月に完成した国土交通省の苫田ダム(岡山県)についての記事を掲載します。
504世帯を立ち退かせ、強権を行使してつくられたダムですが、利水者である岡山県広域水道企業団は水が有り余っています。
現在、企業団は苫田ダムの水源を少し使っていますが,それは他の水源の使用量を減らしているからであり、苫田ダムの水源は企業団にとっては不要なものでした。

 

平成の記憶・岡山
苫田ダム 多くの犠牲の上に建つ 反対運動40年、立ち退き504世帯 /岡山
(毎日新聞岡山版2019年4月24日)https://mainichi.jp/articles/20190424/ddl/k33/040/397000c

(写真)苫田ダムの前で当時を振り返る宮本博司さん=岡山県鏡野町久田下原で2018年10月、林田奈々撮影
「大きな歯車」暮らしのみ込む
建設まで約40年に及ぶ反対運動があった苫田ダム(鏡野町)。深い水をたたえる湖の底にはかつて、立ち退きにあった504世帯の人々が住んでいた。苫田ダム工事事務所長を経験した国土交通省の元官僚、宮本博司さん(66)は「このダムに関わったことが私の人生を変えた」と振り返った。
国による苫田ダム建設計画が表面化したのは1957年の山陽新聞の記事だった。計画では苫田村(現鏡野町)の数百の家屋が水没するとされた。住民たちは集会でダム建設反対を決議し、役場も「苫田ダム絶対阻止」の看板を掲げた。
宮本さんが苫田ダム工事事務所長に着任したのは90年7月。その前は、建設省河川局開発課で働いていた。各地から持ち込まれるダムの計画を精査し、予算を取り付けるのが仕事だ。「ダムのことは全て分かっているような気になっていた」。そんな「おごり」を壊したのが苫田ダムだったという。

着任して見た水没予定地は、山あいの田園地帯。水没予定の504世帯のうち430世帯程度が移転に同意済みで、住人が立ち退いた跡は草がぼうぼうに茂っていた。その間に瓦ぶきの家がぽつりぽつりと残り、田畑の手入れをする人々がいた。
建設計画を推進する県などは86年から、ダム建設に同意した地権者に「協力感謝金」を手渡し、住民らの切り崩しを始めた。そして建設反対派だった地元・奥津町(苫田村など3村合併で誕生。現鏡野町)の森元三郎町長が90年、建設を前提とする町政への転換を表明する。
「出て行ってくれ」。建設反対の立場を崩さない住民の家を宮本さんが訪ねても、初めのうちは門前払いだった。けれど何かと用事をつけて通うと、座布団を出してくれるようになった。「みんな、いい人たちだったんです」。ダムのことでは烈火のごとく怒る男性も、何気ない話をする時には朗らかな笑顔を見せる気のいいおじさんだった。
心に焼き付いている出来事がある。津山市での夏祭りに建設省としてブースを出した数日後、移転に同意していたある地権者の男性が事務所を訪ねてきた。「建設省は奥津をこんなにも苦しめて、よそでは祭りに参加しているのか」。穏やかな付き合いをしていたはずの男性の絞り出すような声にはっとした。
同じく移転に同意した別の女性は、取り壊される家の中を片付けている途中で涙があふれて作業ができなくなった。「奥津の人たちは最後まで建設反対だった。『しょうがない』と自分で自分を納得させて出て行った」。宮本さんは今でもそう思っている。
93年6月に宮本さんは所長の任を終える。翌94年、奥津町議会はダム建設協力の方針を決定。2001年、最後の水没地権者が立ち退きの契約に応じ、03年に全ての地権者の移転が完了した。04年11月、苫田ダムの完成式が開かれた。
あの時何か自分はできなかったのか--。そうした負い目を今も感じ続けている。「『ダムをやめよう』と言おうと思えば言えた。けれど、苦渋の決断で同意した人のことを考えるとそれは違うと思った」。県や国の職員たちもしんどい思いを抱えながら、「とにかくダムを進める」という原理に従っていた。個人がどうにもできない「大きな歯車」が動き、もはや事業中止は現実的な選択肢ではなかった。それは、次に赴任した長良川河口堰(かこうぜき)(三重県)の建設現場でも同じことだった。
「同じようなことになる前にブレーキを掛けられる仕組みを」。宮本さんは官僚として1997年の河川法改正に関わり、ダム建設に環境保全や住民参加の考え方を導入した。淀川河川事務所長だった2001年には、大津市で計画されている大戸川(だいどがわ)ダム建設について国から独立した委員会を設置した。しかし、16年8月、国交省は大戸川ダム建設事業を継続すると発表。建設に反対してきた滋賀県知事も今月、容認する考えを表明した。宮本さんは「物事を変えるというのは、本当に難しい」とため息をつく。
昨年10月、約10年ぶりに苫田ダムを訪れた宮本さん。「責められているような気がする」とつぶやいた。「今あるダムを否定するわけではないが、犠牲を払ってでも造る必要があるものなのか考えないといけない。奥津であったことは、忘れてはならない記憶です」【林田奈々】=随時掲載

利水計画、見通し甘く
苫田ダムは、約2035億円をかけて建設された県内3番目の規模の多目的ダム。大雨の際に水をためる「治水」に加え、生活用水などを確保する「利水」の役割が期待された。しかし予想より水需要が伸びず、使わない水の料金を自治体が支払い続ける事態に陥っている。
苫田ダムが供給できる水は日量40万トン。ダム設計時、将来必要になる水量としてはじき出された数字だ。県や市町村でつくる県広域水道企業団が、県内の市町村に水を売る仕組みとなっている。
だが現在、購入されているのは3割の約13万トンに過ぎない。しかも、実際の使用量はもっと少ない。日量約6・5万トンを買う岡山市の場合、使用量は2・6万トンにとどまる。年間約5億円を過大に払っている計算だ。
一方、水が買われないとダム建設費の一部を借金して負担した企業団の経営が苦しくなり、水道料金の値上げにもつながりかねない。今後水需要が大きく増えることは考えにくく、ダム設計当時の見通しの甘さが浮き彫りになっている。
住み慣れた故郷、莫大(ばくだい)な予算や時間、労力--。大きな対価と引き替えに建設された苫田ダムという「遺産」をどのように将来に生かすのか。目を反らさずに考えなければならない。

苫田ダムの治水転用「対応困難」 県広域水道企業団 国打診断る方針

2017年3月31日
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岡山県の直轄ダム「苫田ダム」の利水容量の一部を治水容量に転用する話がご破算になったという記事を掲載します。

苫田ダムといえば、地元の奥津町(現・鏡野町)に対して建設省等が行政圧迫を行って、ダム反対の町長が予算を組めないようにして3期にわたって辞任に追い込んだ強権行使の象徴的なダムです。

ダム反対の予定地住民に対しては子息の勤め先まで手を回して、翻意を迫ることまで行いました。

しかし、苫田ダムの必要性はありませんでした。

苫田ダムの水利権を持つ岡山広域水道企業団の水源構成は苫田ダム40万㎥/日、既得水源が9.3万㎥/日ですが、現在の1日最大取水量は10万㎥/日少しにとどまっています。

それも、岡山市などが自己水源の一部を企業団水に切り替えた結果であって、苫田ダムなしで水需給に不足をきたすことはありませんでした。

この記事では40万㎥/日のうち、10.5万㎥/日が買い手がないと書かれていますが、実態は責任水量制を岡山市等に押し付けたものであって、岡山市等は企業団の水を持て余しています。

余剰の利水容量を国が買い取って治水容量に転用する交渉が行われていましたが、買い取り額が5億円で安すぎるということでご破算になりました。

苫田ダムの治水転用「対応困難」 県広域水道企業団 国打診断る方針

(山陽新聞2017年03月30日 22時51分 更新)http://www.sanyonews.jp/article/509980/1/

苫田ダム(岡山県鏡野町)の利水容量を保有する岡山県広域水道企業団(県と関係17市町で構成)は30日、岡山市内で開いた運営協議会で、利水容量の一部を治水転用するため買い取りを打診している国に対し、「現時点では対応は困難」として断る方針を決めた。

国側の提示価格が低いことなどが理由という。

同企業団は31日にも国土交通省中国地方整備局に文書で回答する。ただ、国側から再度の転用依頼があった場合は再検討するとの内容も盛り込む。

苫田ダムの利水容量は日量約40万トン。このうち10・5万トンは買い手が付かず、県が調整水量として引き受けている。

同整備局は2015年8月、洪水調整に活用するため、11・7万トンを約5億円で買い取ると打診。

県と関係市町で協議を重ねていたが、約5億円で売却すると同企業団に約84億円の帳簿上の差損が生じることなどから、「国の買い取り価格が資産価格に見合わず、将来の企業団経営に悪影響を与える」「異常渇水が起きた場合に対応できるのか」といった慎重意見が出ていた。

苫田ダムの異常な水余りの問題 苫田ダム利水 治水対策へ転用検討 県企業団保有の一部、整備局が依頼

2015年8月21日
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2005年4月から運用が開始された苫田ダムで、異常な水余りの問題が浮上してきました。
苫田ダムの水源を使うのは水道用水供給事業の岡山県広域水道企業団です。
この企業団は苫田ダム等を水源として、岡山市等の16市町の水道に水道水を供給しています。
岡山県広域水道企業団の保有水源は、 苫田ダム40万㎥/日(水利権として許可を受けているのは13.452万㎥/日)、その他9.39万㎥/日  計49.39万㎥/日です。
それに対して企業団の1日最大供給量は約10万㎥/日(2012年度)ですから、8割近く余っています。
http://www.water-okayama.jp/jigyou/vision/vision_all.pdf
苫田ダムの費用負担があるため、企業団の供給料金の値上げが繰り返されているようです。
http://www.gikai.city.soja.okayama.jp/html/pdf/iinnkai/%E7%94%A3%E6%A5%AD%E6%B0%B4%E9%81%93%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A/23.11.15sanngyousuidou_tyousa.pdf
この企業団の費用負担を軽減するためではないかと推測されますが、苫田ダムの利水容量の一部を治水容量に転用する動きがでてきました。
苫田ダムが利水面で不要であることは住民側が裁判で明らかにしてきたことですが、そのとおりの結果になってきています。

岡山県9月補正予算案5.1億円 CLT普及へ貸付金に4億円計上

(山陽新聞2015年08月19日 21時27分 更新)http://www.sanyonews.jp/article/218266
岡山県は19日、5億1600万円の2015年度一般会計補正予算案を発表した。9月7日開会予定の定例県議会に提出する。
新建材・CLT(直交集成板)の普及支援で、県営真庭産業団地へ専用工場を整備中の集成材メーカーに対する無利子貸付金4億円を計上。苫田ダムの利水容量の一部を治水に転用することを検討するよう国から依頼されたのを受け、全県的な水道水の需給見通しを調査する経費770万円を盛り込んだ。
国からの委託で、首都圏の人材を県内中小企業とマッチングする事業には2800万円を充てた。
補正後の一般会計総額は7061億3900万円で、前年度同期比6・5%増。

苫田ダム利水 治水対策へ転用検討 県企業団保有の一部、整備局が依頼

(山陽新聞2015年08月12日 21時42分 更新)http://www.sanyonews.jp/article/218266
岡山県は12日、苫田ダム(岡山県鏡野町)を管理する国土交通省中国地方整備局から県と県広域水道企業団に対し、同ダムで企業団が保有している利水容量の一部について、治水対策への転用を検討するよう依頼があっ …

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