水源連:Japan River Keeper Alliance

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石木ダム完成2022年度に 長崎県、時期延長の方針示す

2015年8月4日
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8月3日に開かれた長崎県公共事業評価監視委員会で、県は石木ダム完成を2022年度に変更する方針を示しました。委員会冒頭で、「工期変更が議題であることは石木ダムありきである。今必要なことは石木ダムの必要性を原点に返って再評価することではないのか」と住民サイドからクレームがつき、委員長は、「これまでにどのような検証がされてきたのか原点に返って評価する」という趣旨の発言をしました。実際、委員長は長崎県の説明に対して、私たちが問題として上げている点も含めて、長崎県にとっては厳しい質問を呈していました。
当日の資料・記事、住民側が委員会委員に送付した意見書を掲載します。

◎長崎県配付資料

 第2回長崎県公共事業再評価監視委員会資料 平成27年8月 長崎県土木部河川課  pdf 9,374kb
委員名簿  pdf 53kb   中村委員長は前回の石木ダム事業再評価監視委員会の副委員長で、石木ダム事業に異論を唱えた方です。今回の委員会冒頭で、「ゼロからの再評価」と言明していました。

◎市民団体と弁護団連名で連絡先不明の岡委員以外の全委員にあらかじめ送付した、意見書

平成27年度第2回長崎県公共事業評価監視委員会開催に際しての私たちの意見  pdf 453kb

 

県は、建設反対派の阻止行動などを受けて工事が計画通り進まないことを変更の理由に挙げていますが、実際には抗議行動がさらに高まり、工事が立ち往生することになるでしょう。

なお、石木ダムの検証報告では付替え道路工事に2010年度に着手してから2016年度に完成する予定となっていましたから、着手後の工期そのものは1年延びただけです。
http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/tisuinoarikata/dai22kai/dai22kai_siryou3-1_2.pdf の4-1ページを参照)

佐世保市水道の水需要が一層縮小していく状況において、この工期変更は石木ダムの不要性をさらに明確にするものになります。

https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2015/07/c2c8980e9c3f3049edaeec22c447f483.pdf をご覧ください。
監視委員会の委員が真っ当な判断をすることを強く期待します。

 

(読売新聞長崎版 2015年08月04日)http://www.yomiuri.co.jp/local/nagasaki/news/20150803-OYTNT50104.html
県は3日、県の事業内容をチェックする県公共事業評価監視委員会で、川棚町に計画している石木ダムの完成時期について、2016年度としていた当初計画を見直し、22年度に延長する方針を示した。評価監視委は今後、現地視察をした上で評価を行う方針。
県河川課によると、ダム建設に伴う付け替え道路の工事は10年度に着手したが、建設反対派の阻止行動などを受けて工事には入れず、今年度までずれ込んだ。さらに、本体工事では、昼夜2交代制で作業を行う予定にしていたが、「反対行動で夜間工事が安全に行えない恐れがある」として、昼間のみの工事に変更するという。このため、県では工期を延長することにしたという。
これに対し、評価監視委側からは「現地調査が必要」との意見が出て、10日に現地を視察することが決まった。中村聖三委員長は「委員会としては、ダム建設ありきで(審議を行うこと)はない」と前置きした上で、「(視察後)委員の意見を集約して中村知事に報告したい」と語った。
委員会を傍聴した反対地権者の岩下和雄さん(68)は「石木ダム建設が正当な事業かどうかを委員会が判断するということなので、地権者にも是非、聞き取りをしてほしい」と話した。

霞ケ浦、漁協の差し止め請求棄却 導水訴訟で水戸地裁

2015年7月18日
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7月17日、水戸地裁で那珂川流域の漁協が霞ケ浦導水事業の工事差し止めを求めた裁判の判決がありました。まことに残念ながら、原告側の全面敗訴でした。その記事と論説を掲載します。
この裁判では、被告(国交省)側の専門家証人が反対尋問で、原告側の主張を認めてしまうほど、国交省の主張はいい加減なもlのでしたが、判決には反映されませんでした。
この判決文は国交省に勝たせるように、原告側に求める実証責任のハードルを無茶苦茶高くしており、最初から原告敗訴の結論ありきのひどい不当判決でした。

茨城新聞がこの判決の問題と限界に触れた論説を書いています。

全面敗訴の判決を下した裁判官は後ろめたさがあったからだと思いますが、判決文の終わりに「導水事業は運用次第では漁業権を侵害する具体的危険の可能性がある」という文言を加えています。

霞ケ浦導水差止請求事件 判決文の一部 20150717(121KB)をご覧ください。

判決文の全体は

霞ケ浦導水裁判の判決文20150717(22MB)をご覧ください。

論説  霞ケ浦導水事業判決 具体的成果、事業者に責任
(茨城新聞 2015年7月18日) )http://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=14371456324508霞ケ浦導水事業の工事差し止めを那珂川、涸沼流域の4漁協と栃木県の漁連が求めた訴訟の判決が17日あり、水戸地裁(日下部克通裁判長)は「漁業権侵害の具体的な危険があるとまではいえない」として漁協側の訴えを棄却した。

霞ケ浦導水事業は、総額約1900億円を投じる本県に残された“最後のビッグプロジェクト”といわれる。同日の判決は導水事業の公共性・公益性については国側の言い分を全面的に認めたが、既に事業化から30年超。延々と終わりの見えないまま続く建設工事と、完成後の具体的効果も見えにくいことから、県民の間にも導水事業を疑問視する声は少なくない。関係者は導水事業を一刻も早く、より低コストで完遂し、具体的な成果を県民に示す責任があると言えよう。
公共事業差し止めのハードルはもともと低くない。司法は差し止めの要件として、事業によって生じる被害の具体的な立証を請求側に求めるためだ。
水戸地裁も同日の判決で、差し止めの適否を判断する基準として「(霞ケ浦導水事業の運用開始による)漁獲量の有意な減少、漁獲品質の具体的な悪化の客観的危険があるかどうか」を挙げている。漁獲量は通常でもさまざまな要因で一定ではない。ましてや漁協側が差し止めの理由の一つに挙げた「那珂川取水口にアユの稚魚が迷い込む」恐れについて、稚魚が導水完成後の将来どの程度迷い込むかを具体的に立証することなど、ほぼ不可能に近いだろう。
漁協側が差し止めを求める最大理由に挙げた導水事業の効果や公共性についても、判決は「霞ケ浦の水質は導水の希釈効果によって浄化が期待できる」と国側の主張を全面的に認めた。
差し止めを求めた漁業者らには極めて酷な判決とはなったが、司法はもともと被害を事後的に救済する機能を担う。判決は、公共事業の事前差し止めを司法に求める限界も示したともいえる。
ただ、水戸地裁は判決理由の最後に「導水事業は運用次第では漁業権を侵害する具体的危険の可能性がある」として、事業開始後は国に対し漁業者らに十分な説明を尽くし、その意見を真摯(しんし)に受け止めるよう求めた。また、漁獲量の減少が見られた場合には調査体制を確立し、運用を随時見直すなど不断の努力をするよう求めた。
かなり踏み込んだ付言とも言え、導水事業の関係者は是非とも裁判所の率直な提言を受け止め、漁業者の声に最大限の配慮をしてほしい。
霞ケ浦導水事業の着工はバブル期入り口の1984年。霞ケ浦の水質浄化や首都圏の都市用水確保が狙いだったが、計画はこれまでに4回変更され、この約30年のうちに人口減少など社会環境は様変わりした。一時は無駄な公共事業批判の矢面になり、事実、民主党政権時代には工事が凍結された。
橋本昌知事は先月の県議会で、世界湖沼会議を95年に続き再び霞ケ浦に誘致する考えを表明した。誘致が正式に決まれば、霞ケ浦や河川の水質への県民の関心は再び高まるだろう。
判決は結果的に国側の主張を全面的に認めたが、事業の行方や成果を疑問視する声は県民の中にも少なくない。事業者は一刻も早く具体的な成果を示す責任がある。導水事業に最後に審判を下すのは生活者・納税者である県民だ。

霞ケ浦導水訴訟で水戸地裁 漁協の差し止め請求棄却
(東京新聞茨城版2015年7月18日)http://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/20150718/CK2015071802000149.html?ref=rank

県内の霞ケ浦と那珂川、利根川を地下トンネルで結び水を行き来させる霞ケ浦導水事業をめぐり、那珂川流域の県内の四漁協と栃木県の漁連が「漁業権を侵害する」として国に取水口建設工事の差し止めを求めた訴訟の判決で、水戸地裁は十七日、請求を棄却した。
日下部克通裁判長は判決理由で「漁業権が侵害される具体的危険があるとまではいえない。被害の未然の防止措置が一応講じられ、事業には公共性がある」とした。原告側は控訴する方針。
事業は霞ケ浦の水質浄化や首都圏への水の安定供給が目的で一九八四年に着工。二〇一〇年に中断したが、民主党政権の指示で実施された事業検証の結果、国は昨年八月に継続を決めた。地下トンネル二本は、利根導水路(長さ約二・六キロ)が既に完成、那珂導水路(同約四十三キロ)は三十キロ近くが未完成となっている。
原告は〇九年三月に提訴。那珂川の取水口からアユの稚魚が吸い込まれるほか、水質や流量の変化で水産資源に深刻な被害が出ると訴えていた。
公共性について判決は「霞ケ浦と那珂川、利根川の化学物質の濃度差により希釈効果が期待でき、都市用水の確保のため必要」と認定した。一方で「事業の運用次第で漁業権が侵害される可能性がある。漁業環境への影響が最小限に抑制されるよう努力をすることが切に望まれる」と国に促した。
<霞ケ浦導水事業> 全国で2番目に広い湖沼・霞ケ浦と、渇水期が異なる那珂川、利根川を地下トンネルで結び、水を行き来させる国直轄の公共事業。霞ケ浦の水質浄化と茨城、埼玉、千葉、東京の1都3県への水の安定供給を目的に計画され、1984年に着工。当初は93年度の完成予定だったが用地取得が遅れ、地下トンネル2本のうち利根導水路(長さ約2・6キロ)は完成したものの那珂導水路(同約43キロ)は30キロ近くが未完成となっている。事業費約1900億円のうち約8割を使っている。

漁協の差し止め請求棄却 水浄化など公共性を認定 那珂川取水口差し止め訴訟
(下野新聞 2015年7月18日 朝刊)http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/local/news/20150718/2024531

アユなど那珂川水系の水産資源に悪影響を及ぼす恐れがあるとして、栃木、茨城両県の漁連・漁協5団体が国に霞ケ浦導水事業の那珂川取水口建設差し止めを求めた訴訟の判決公判が17日、水戸地裁で開かれ、日下部(くさかべ)克通(かつゆき)裁判長は、漁協側の請求を棄却した。漁業権侵害の訴えについて「具体的危険があるとまでは言えない」などとして退けた上で、国側が主張した事業の公益性を認めた。漁協側は控訴する方針。

取水口建設が不可欠である事業が漁業権を侵害するか、公益性のある事業かどうか、主に二つが争点だった。
アユの漁業権について漁協側は、稚魚が取水口に吸い込まれ、減少するなどと訴えていた。しかし、判決は「認めるに足りる証拠がない」と指摘。アユの減少について「具体的危険があるとまでは言えない」と判断した。
事業の公益性をめぐっては(1)霞ケ浦などの水質浄化(2)那珂川と利根川の渇水対策(3)都市部の水道・工業用水確保-という導水事業の目的が妥当かどうかが争われた。判決は国側の主張を全面的に認め、「公共性がある」とした。
漁協側は「不可能な立証を強いる判決だ」として控訴する方針。
事業は霞ケ浦と両河川を地下導水路で結び、水を行き来させる計画で着工は1984年。民主党政権下で一時中断されたが、国土交通省は昨年8月、継続を決定した。霞ケ浦と那珂川を結ぶ那珂導水路の進捗(しんちょく)は3割にとどまるが、既に総事業費約1900億円の約8割を執行している。

霞ケ浦導水事業 漁協の差し止め請求棄却 水戸地裁「公益性ある」
(産経新聞 2015.7.18)http://www.sankei.com/region/news/150718/rgn1507180017-n1.html

霞ケ浦と那珂川、利根川を地下トンネルで結び、水を往来させる霞ケ浦導水事業で、「工事により漁業権が侵害される」として、茨城と栃木の那珂川流域の8漁協が那珂川取水口の建設差し止めを求めた訴訟の判決公判が17日開かれ、水戸地裁(日下部克通裁判長)は原告の請求を棄却した。原告側は控訴する方針。
訴訟では漁協側が那珂川の取水口からアユの稚魚が吸い込まれるほか、水質や流量が変化したり、霞ケ浦からの外来種が侵入したりして水産資源が深刻な被害を受けると主張。
これに対し国側は、取水口に魚の迷い込みを防ぐ網を設置するほか、生まれたばかりのアユの吸い込みは、遡上(そじょう)が多い時間帯に取水しないことでほぼ防げると反論していた。
判決理由で日下部裁判長は「アユの資源量が減少する具体的危険があるとまでは認められない」と述べた。
工事の公益性をどう判断するかも注目された今回の裁判。日下部裁判長は「霞ケ浦の水質保全対策の一つとして必要であり、公益性がある」としたほか、「新規都市用水など水利権確保上必要であり公益性がある」などと国側の主張をほぼ全面的に認めた。
その上で「今後の運用次第では共同漁業権が侵害される危険が発生する可能性もある」と指摘。漁業環境への影響が最小限に抑制されるよう努力することを国側に求めた。
判決を受け、橋本昌知事は「基本的に国の主張が認められたと聞いている。国に(工事の)早期再開を働きかけたい」と述べる一方、「漁協側に丁寧な説明をして理解を得ながら進めていくことが一番肝心だ」と語った。
霞ケ浦導水事業 国の直轄事業で、霞ケ浦の水質浄化や首都圏への水の安定供給などが目的。昭和59年に工事に着工し進捗(しんちょく)率は事業費(1900億円)ベースで約8割。地下トンネル2本のうち利根導水路(約2・6キロ)は完成したが、那珂導水路(約43キロ)は約7割が未完成。民主党政権下で事業は一時凍結されたが、昨年8月、事業継続が決まった。

霞ケ浦導水事業:漁協の請求棄却…水戸地裁判決
(毎日新聞 2015年07月17日 19時47分)http://mainichi.jp/select/news/20150718k0000m040044000c.html

水質浄化を目的に、茨城県の霞ケ浦と那珂川、利根川を地下トンネルで結ぶ国の霞ケ浦導水事業を巡り、取水口が建設される那珂川の流域8漁協が漁業権侵害を訴え工事差し止めを求めた訴訟の判決で、水戸地裁は17日、請求を棄却した。漁協側は控訴する方針。
漁協側は「取水口にアユなどの魚が吸い込まれ漁獲量が減る」などと主張していたが、日下部克通(かつゆき)裁判長は判決理由で「資源量が減少する具体的危険があるとまで認められない」と述べた。【松本尚也】

信濃川遡上のサケ 県内回帰低調、なぜ 国や長野・新潟両県が調査へ

2015年7月15日
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信濃川・千曲川においてJR東日本の宮中ダムを遡上するサケは2014年は736匹になりました。一方、その上流にある東京電力の西大滝ダムは同年は8匹しか確認されていません。
その原因を国や長野・新潟両県が調査するという記事を掲載します。
西大滝ダムの魚道の放流量はかつては0.26㎥/秒だけでしたが、2011年から維持流量が20㎥/秒に増えています。http://www.hrr.mlit.go.jp/shinage/shinano-plan/gakushiki/zentai/3kai/san5.pdf
しかし、西大滝ダムのサケ遡上数は増えません。西大滝ダムの構造的な問題があるのでしょうか。
信濃川遡上のサケ 県内回帰低調、なぜ 国や長野・新潟両県が調査へ
(信濃毎日新聞 2015根 07月15日(水)
(写真) 飯山市・野沢温泉村境にある千曲川の西大滝ダムの魚道に遡上したサケ=2014年10月9日
http://www.shinmai.co.jp/news/20150715/KT150714ATI090013000.php
国や長野、新潟両県などでつくる信濃川中流域水環境改善検討協議会は9月、信濃川水系を遡上(そじょう)するサケの移動経路などを調べる「行動調査」に着手する。
信濃川の宮中取水ダム(新潟県十日町市)までの遡上数は増加傾向で、2014年は700匹を超えた。一方、約30キロ上流の千曲川の西大滝ダム(飯山市、下高井郡野沢温泉村境)は、同年に8匹しか確認されないなど少ない状態が続いており、調査でその要因を探る。
同協議会事務局の国土交通省信濃川河川事務所(新潟県長岡市)によると、西大滝ダムの遡上数の低迷を探る調査は初めてで、長野県が提言した。
県河川課は、新潟県側に比べて遡上促進の取り組みが長野県内では活発ではなかったとし、「信濃川水系の水環境の良さを象徴する存在として遡上の促進に取り組む」としている。
同協議会などによると、宮中取水ダムの魚道では近年、遡上が増加傾向で、14年は前年の1・8倍の736匹に上った。一方、西大滝は11年の35匹がピークで10匹に満たない年が多い=表。原因は分かっていない。
県は1979(昭和54)年から稚魚の放流事業を実施。計約900万匹を放流したが遡上の実績は上がらず、事業は2000年で打ち切られた。
現在は新潟県のNPO法人新潟水辺の会(新潟市)が新潟、長野両県で放流事業を続けており、07年から計190万匹の稚魚や卵を放流した。
宮中取水ダムで遡上が増加傾向にある一つの要因とみられている。
行動調査は、遡上期の9~11月に試験的に実施し、来年の遡上期から本格調査する方針。宮中取水ダムを上った後のサケがどこへ向かうかを確認するため、支流も含めて複数地点で遡上数を調べる。
海の魚介類の行動調査では、魚体に発信機を付ける手法もあり、導入の可能性を検討する。8月の協議会で識者を交えた調査手法の検討会を立ち上げて詳細を詰める。

県は強硬姿勢をやめよ 石木ダム計画 長崎新聞社説

2015年7月11日
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7月10日の長崎新聞の社説を掲載します。
石木ダム問題についてまさしく正論を述べた社説です。

地元新聞が長崎県に対して「強硬姿勢をやめよ」という見解を突き付けた意味はきわめて大きいと思います。

県は強硬姿勢をやめよ 石木ダム計画

長崎新聞社説 2015年7月10日

県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業で県は8日、反対地権者13世帯が現住する家屋などを含む土地(約12万平方㍍)の裁決申請などを実施。
これで未買収地すべてが強制収用に向けた手続きに入ったが、県はこの強硬姿勢をやめるべきだ。
1982年5月、県は土地収用法に基づく測量を計画地で実施したが、反対住民の抵抗に遭い、県警機動隊を出動させた。
現場では、道路に座り込んだ住民が実力で排除される事態に。以降、反対住民は態度を硬化させ、このダム計画が数十年も迷走する端緒となった。
県は、反対住民の理解を得ようと説得を続けたが、有効な対話は成り立たないまま、今日に至る。途中、公共事業削減の嵐が吹き、ダム不要論も台頭したが、この計画は生き残った。
今も公共事業に対する国民の視線は厳しい。
国民生活に資する基盤整備は今後も必要だが、無駄な出費は厳しくチェックされなけれぱならないし、過剰な環境破壊や政官業による不正が疑われる事業も当然許されない。
そのうえで、個々の必要性に対する国民の理解と支持がなければ、事業が持ちこたえることはできない。
事業主体は、慎重に丁寧に穏当に手順を進める必要がある。法に従って粛々と進めるだけでは不十分だ。
石木ダム計画は、その悪い見本のような経過をたどっている。
まして今後、強制収用という手法で、自分の家で生活を営んでいる住民たちを無理やり引きはがしてまで作業をするなど、現代の日本においてまともな光景ではない。
県は立ち止まってほしい。そして、出直してほしい。
佐世保市はどれぐらい水が足りていないのか、人口減少局面で水需要は将来どれぐらい増大するのか、本当に他の解決策はないのか、治水効果はどう発揮されるのか、反対住民と有効な対話ができないまま何十年も過ぎた責任はいずれにあるのかー。
40年の時間とコストをかけて完了しない公共事業が、それでも必要であることの説得力のある説明をし直したほうがいい。
「もう十分説明してきた」という答えが返ってくるのかもしれない。だが現実はどうか。

「石木ダムとは必要なのか」と疑問に思っている県民がいかに多いことか。県民にこれほど理解されない不幸な県事業をほかに知らない。
県は強硬手段をとる構えをやめるべきだ。手法の誤りは将来に禍根を残す。利害関係者との対話に失敗する代償の大きさは、国営諌早湾干拓事業を見れば分かる。
形は完成しても泥沼の裁判闘争が続き、対立がどこまでも終わらない悲劇の典型だ。
このダム計画でも、そうなることが分かっていて、手順だけを進めるのは合理的でない。(森永玲)

アマゾンの巨大ダムが7割の動物を絶滅させる恐れ 水力発電用の巨大ダムは誰のため?

2015年7月10日
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アマゾンなどでの水力発電の巨大ダム建設が哺乳類や鳥類等の生息に深刻な影響を与えているという報告を掲載します。

 

アマゾンの巨大ダムが7割の動物を絶滅させる恐れ

水力発電用の巨大ダムは誰のため?

(NATIONAL GEOGRAPHIC 2015.07.10) http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/070900178/?bpnet
ブラジルのバルビナダム建設により、かつては一続きの熱帯雨林だったこの地が、3546の島に分かれてしまった。そのほとんどが小さな島で、周囲の陸から孤立している。(PHOTOGRAPH BY EDUARDO M. VENTICINQUE)
[画像のクリックで拡大表示]

 世界の国々が水力発電施設の建設計画を推し進める中、巨大なダムによって哺乳類や鳥類、カメなどが絶滅の危機に直面していると警告する最新の研究報告が出された。少なくともアマゾンでは、その不安が現実になっているという。(参考記事:特集「ダム建設に揺れるメコン川」

 今月1日に英国イーストアングリア大学の研究グループが「PLOS ONE」に発表した論文によると、ブラジルに建設されたバルビナダムは、かつて手つかずの森林が広がっていた地域を、3546の島々が浮かぶ人工湖へと変貌させた。その結果、そこに生息していた数多くの脊椎動物が姿を消してしまった。

「私たちのまさに目の前で、動物が次々に絶滅しているのです」。論文を共同執筆したカルロス・ペレス氏はブラジル出身で、同大学環境科学部の教授だ。「現地では、非常に高い確率で局所絶滅が起きていることが明らかになりました」と語る。しかもそれは、禁猟区や生物保護区域でも起きているという。

 2年に及ぶ調査をまとめた論文が発表された前日、ブラジルは米国との共同声明を出し、イングランドの面積にほぼ匹敵する1200万ヘクタールの森林を2030年までに回復させると誓約した。また、太陽光、風力、地熱発電の利用を大幅に拡大することも約束した。すでに、ブラジル北西部の熱帯雨林を流れるウアトゥマ川のバルビナダムにも、水上に浮かべるフロート式の太陽光パネルを設置する計画がある。

 ブラジルは現在、電力の大半を水力発電に頼り、増え続けるエネルギー需要を満たすために数百という新規ダムの建設を計画している。他の多くの発展途上国同様だ。水力発電はしばしば、「グリーンな」エネルギーとして称えられ、再生可能エネルギーのなかでは発電量が世界中で最も多い。(参考記事:「アマゾンでダムの建設ラッシュ、今後も数百カ所に」

 ペレス氏は、「多くの場所において、水力発電は効果的な発電方法です」としながらも、その効果のほどは地形に大きく左右されることも指摘する。ブラジルの低地では、落差のある水流を作るために水位を上昇させる必要があり、すなわち巨大なダムが必要となる。一方急峻な山地であれば、小さなダム湖で事足りる。

 つまり、水没面積に対する発電量は、平地にある水力発電所の方が、山の中の発電所よりもはるかに少ない。おまけに、ダム湖が大きくなれば二酸化炭素を吸収する樹木や植物も多く失われてしまうため、支払われる環境的代価も大きい。

「地域社会ではなく、大手エンジニアリング会社のため」

 これまでも、漁業の収入減や先住民立ち退き問題などを含め、ダム建設で引き起こされる様々な影響が調査されてきたが、今回のペレス氏らの研究は、より広い範囲を対象に、多様な脊椎動物への影響を調べたものだ。

VIRGINIA W. MASON, NG STAFF SOURCES: INTERNATIONAL RIVERS; FUNDACIÓN PROTEGER; ECOA; RED AMAZÓNICA DE INFORMACIÓN SOCIOAMBIENTAL GEORREFERENCIADA
[画像のクリックで拡大表示]

 調査対象となった生物は36種。「1ポンド(450グラム)以上の生物は全て調べた」という。250メガワットの発電能力を持つバルビナダムは、1989年に操業を開始した。その結果、3129平方キロの原生林が湖底に沈み、3000以上の小島が誕生した。

 その中で、今も多様な生物が生息している島はわずかである。研究チームは36の比較的面積の広い島へ調査に入り、そこに生息する動物の絶滅率が42%にもなっていることをつきとめた。ダム湖全体では、その数字は70%に達すると推定する。

 米カリフォルニア大学バークレー校の再生可能・適正エネルギー研究所所長ダニエル・カメン氏は、調査結果について「驚くべき内容ではない」としながらも、大規模ダムが生物多様性に与える実際の影響を「綿密に検証したすばらしい」研究であると評価する。

 カメン氏自身も、マレーシア東部に建設中の大規模水力発電ダムが、ボルネオの鳥類や哺乳類の多くを脅かそうとしているという調査結果をまとめており、論文が今月発表される。また、6月に発表された別の共同研究では、低コストの代替エネルギーとして、水力を利用した小規模な発電プロジェクトやバイオガス発電について報告している。(参考記事:「マレーシアのダム建設、抗議活動が激化」

 カメン氏は、巨大水力発電計画が次々に出てくる背景について、「国際的な投資を呼び寄せることに関心が集まってしまっているためです」と説明した。発展途上国は、規模の大きなプロジェクトの方が、小規模なものよりも投資を集めやすいと考えているのだという。

 ペレス氏も同意見だ。大規模ダムは「地域社会ではなく、大手エンジニアリング会社のためにあるようなものです」。こうしたメガダムはしばしば、遠くへ電力を送る送電線が必要となるが、これも非効率的であると指摘する。

 中には、地域社会が巨大ダムの計画に反対して勝利したケースもある。昨年、チリ政府は国民の強い反対に遭った結果、パタゴニアの最も豊かな自然を誇る2本の川に計画されていた5基のダム建設を中止した。(参考記事:「チリ、パタゴニアのダム計画を白紙に」

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