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石木ダムの情報

【小松泰信・地方の眼力】埋没しない、させない、諦めな(石木ダム問題)

2019年12月12日
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数日前に、ABCテレビ・テレビ朝日系列で、ドキュメンタリー番組「はるなの故郷(ふるさと)~ダムの里に生まれて~」が放映されました。

(テレビ朝日の放映時間は12月8日(日)午前4時30分~5時。放送局によって放映日、放映時間が異なりました。)

「はるなの故郷(ふるさと)~ダムの里に生まれて~」制作:長崎文化放送
https://www.tv-asahi.co.jp/telementary/

石木ダムの問題を伝える番組でした。
小松泰信・長野県農協地域開発機構研究所長がこの番組を見て書かれたコラムを掲載します。
石木ダムの問題をこのように全面的に受け止めて石木ダム事業の愚かさを語る方がおられることを心強く思います。


【小松泰信・(一社)長野県農協地域開発機構研究所長】

2019.12.11 【小松泰信・地方の眼力】埋没しない、させない、諦めない
(農業協同組合新聞 2019年12月12日) https://www.jacom.or.jp/column/2019/12/191211-39879.php

12月10日、政府は、反社会的勢力の定義について「その時々の社会情勢に応じて変化し得るものであり、限定的・統一的な定義は困難だ」とする答弁書を閣議決定した。驚きはしない、絶望的な気持ちを押し殺し、ただただ軽蔑するのみ。そもそも、反社政権に自分自身を定義することはできない相談。彼らの本音は、「安倍族とそれに尻尾を振る組織や人以外」が反社勢力ということだろう。自分らに不都合な用語を、速やかに勝手に解釈し閣議決定する。これが本当の「反社」神経。

◆涙の訴え、駄馬の耳に念仏
「テレメンタリー」は、ABCテレビ・テレビ朝日系列の全国24社が競作するドキュメンタリー番組。12月8日早朝に放送されたのは、長崎文化放送が制作した「はるなの故郷~ダムの里に生まれて~」。ダムとはこれまでも取り上げてきた長崎県川棚町に建設されようとしている石木ダムのこと。はるなとは、ダム建設に反対する松本家の長女晏奈(はるな)さん(17)。故郷と家を奪われる不安の中、ひたむきに青春を送る彼女に焦点を当て、公共事業と個人の権利のはざまで揺れる人々の思いに迫る、グッとくる内容であった。
9月19日、反対する人たちと一緒に長崎県庁を訪れた彼女は、「都会では味わうことができないことが川原(こうばる)では日常的に行われています」「思い出がたくさん詰まった川原の自然や風景が大好きです。ふるさと川原が奪われるのは絶対にいやです。帰る場所がなくなってしまうなんて考えたくもありません」と、涙ながらに訴えた。そして、「人口が減っているのに水が足りないというのは私には理解できません。きちんと説明すべきです。不要なダムのために私たちの家や土地を奪うのはおかしいと思います。私たちを含む、川原すべてのものを奪わないでください。私たちの思いをどうか受け取ってください」と、中村法道長崎県知事に読み上げた文書を手渡した。
この訴えから1時間後、中村氏は「これまで用地の提供等で協力いただいた多くの方もいらっしゃるわけですので、それぞれの方々の思いを大切にしながら、事業全体を進めていく必要がある。このことをあらためて感じたところです」と、報道陣に語る。典型的な、駄馬の耳に念仏。

◆石木ダムは科学的に見れば本当にいらないダム
長崎県があげてきた建設の目的は、「100年に一度の洪水対策」と「佐世保市の水確保」。しかし、専門家はそれを否定する。
今本博健氏(京都大学名誉教授、河川工学)は、「私はダムの全否定者ではありません。もともと土木の出身ですからダムのアレルギーもない。ただ、ダムができると環境が悪くなることがあるので、できるだけダムは最後の選択肢にしたい」と話す。2013年には全国の大学教授らに呼び掛け、125人で県や佐世保市に「石木ダムは不要」という申し入れをしている。
「ダムに費やすお金があれば河川改修はずいぶんできる。逆に、ダム計画のおかげで河川改修はなおざりにされている。川棚川(本流)の下流の方では結構改修が進んでいる。長崎県が言う以上に、(川棚の)河川は大丈夫。実は」と語り、人口の減少や節水機器の普及により佐世保市の水需要は予測を下回ることも指摘する。
よって、「治水にはいらない。利水には全然いらない。石木ダムは科学的に見れば本当にいらないダム」と断言する。

◆埋没費用に埋没するな
専門家がここまでその必要性を否定するのに、建設を進めようとするのはなぜか。その答えのヒントは、中村知事の「これまで用地の提供等で協力いただいた多くの方もいらっしゃるわけで」と、言うところにある。ダムを建設しないと、これまで投入した資金や労力、あるいは地元住民に強いてきた犠牲、そして半世紀にも及ぶ年月等々が無駄になる。それらを無駄にしないために、とにかく完成させる。そのためには、新たな資金や労力、そして犠牲はやむを得ない、ということである。
経済学では、「事業や行為に投下した資金・労力のうち、事業や行為の撤退・縮小・中止をしても戻って来ない資金や労力のこと」を「埋没費用(sunk cost)」と言う。ダム建設のように、初期投資が大きく他に転用ができない事業ほど埋没費用は大きくなる。だから、やめる決断ができない。ダムに限らず「止まらない大規模公共事業」の一因はこの費用にある。
「これだけ費用をかけた。8割の住民に地元を離れてもらった。あと2割が出て行ってくれたら……」と考えて、不要なダム建設に向かうのは、埋没費用を増加させるだけではなく、何物にも代えがたい自然と、そこを故郷として平穏に生活している人々の幸せな生活までをもダム底に埋没させるという、取り返しのつかない大罪を犯すこと。
埋没費用に埋没しない、埋没させないためには、回収不能な費用であることを潔く認め、勇気をもって撤退することである。
辺野古基地建設も原発も同じ構造。事業をすこしずつでも進めるのは、既成事実を積み重ね、当該費用を大きくし、反対しづらい世論を形成していくためである。このことを見抜き、世論操作には乗らぬこと。深傷を負うだけである。
なぜ、こんなことができるのか? それは、税金だから。何のためにやるのか? 政治家と役人のメンツを守るために。
このような状況は石木ダムに限ったことではない。全国でこれまでにも起こったこと、そしてこれからも起こること。我々にできることは、埋没費用に埋没させられぬよう、事業等の是非を見抜く眼力と、だめなものにはだめと言い続ける胆力を鍛えること。
反対住民らが、国に事業認定取り消しを求めた訴訟において、11月29日に福岡高裁は、「事業による公共の利益は原告らの失われる利益を優越している」と、理解しがたい判断により住民側の請求を棄却した。しかし、住民側は10日、判決を不服として上告した。決して、諦めてはいない。

◆反社政権と埋没するのはまっぴらごめんなすって
毎日新聞(12月11日付)によれば、麻生太郎副総理兼財務相は10日の記者会見で、安倍晋三首相が目指す憲法改正に関し、「自分でやるという覚悟を決めてやらないといけない。(総裁)任期中にできる当てがないなら、対策を考えるのが当たり前ではないか」と述べ、総裁4選を検討すべきだとの考えを示した。また、自民党の二階敏弘幹事長も10日、2021年9月末までの首相の総裁任期中の改憲について「任期中に成し遂げるべく努力をすることは当然だが、かなわない場合は、そのときの政治情勢や国会日程をにらんで対応することが大事だ」と述べ、4選の可能性に含みを残した。
麻生氏の会見を見たが、親分とでも呼んで欲しそうな、反社政権№2の顔つき目つき。こんな連中に憲法を触らせてはいけないが、お頭の4選の可能性は大。4選なくとも院政を敷くはず。なぜなら、権力を手放したとたんに、安倍族は司直の手にかかるから。もちろん、国民に司直を動かす力があればの話だが。
「地方の眼力」なめんなよ

石木ダム事業認定取り消し訴訟 住民が上告 長崎

2019年12月12日
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石木ダムの事業認定の取り消しを住民が国に求めた裁判で、住民側が最高裁に上告しました。
そのニュースと記事を掲載します。

石木ダム事業認定取り消し訴訟 住民が上告 長崎
(テレビ長崎2019年12月10日19:16) http://www.ktn.co.jp/news/20191210285135/

東彼杵郡川棚町での石木ダムの事業認定の取り消しを住民が国に求めた裁判で、福岡高裁の判決を不服として、住民側が最高裁に上告しました。
長崎県と佐世保市が川棚町に建設を予定している石木ダムをめぐっては、住民が国に事業認定の取り消しを求める裁判を起こしていますが、11月29日、福岡高裁は、利水と治水の面でのダムの必要性を認め、請求を棄却しました。
これを不服として、住民側が10日、最高裁に上告しました。
建設予定地には13世帯が暮らしていて、すでに家屋を含む土地の明け渡し期限は過ぎていますが、住民は応じていません。

石木ダム訴訟 原告側が上告
(NHK 2019年12月10日 12時49分) https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20191210/5030006225.html

川棚町で建設が進められている石木ダムについて、建設に反対する元地権者の住民などが国に事業認定の取り消しを求めた裁判で、住民側の訴えを退けた福岡高等裁判所の判決を不服として10日、原告側が最高裁判所に上告しました。
石木ダムは、長崎県と佐世保市が水道水の確保や洪水対策を目的に、285億円をかけて川棚町に建設を進めているダムで、反対する住民など100人余りが「ふるさとが奪われる」などとして、国に事業認定の取り消しを求める訴えを起こしています。
1審の長崎地方裁判所は「石木ダム事業は水道用水の確保や洪水調整のため必要がある」として訴えを退け、2審の福岡高等裁判所も「国の事業認定の判断に裁量を逸脱し、乱用した違法はない」などとして住民の訴えを退けました。
この判決を不服として10日、原告側が最高裁判所に上告しました。

石木ダム 認定取り消し訴訟 住民側が上告
(長崎新聞2019/12/11 09:49) https://www.oricon.co.jp/article/1020314/

長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、建設に反対する住民らが国に事業認定取り消しを求めた訴訟で、住民側が10日、請求を棄却した福岡高裁判決を不服として、最高裁に上告した。
訴訟で住民側は、同ダムの目的である佐世保市の利水や川棚川の治水は合理性を欠き、建設予定地に暮らす13世帯の土地を強制的に収用するだけの公益性はないと主張。
一審の長崎地裁は昨年7月、ダムの必要性を一定認め、事業認定は適法と結論付けた。福岡地裁も今年11月、原判決を支持した。
同日、代理人弁護士らと上告状などを提出した住民の岩下和雄さん(72)は「控訴審判決は、長崎地裁の判決をそのままなぞっただけ。最高裁でしっかり審理してもらわないといけない」と話した。

福岡高裁、不当判決を繰り返す。 石木ダム

2019年12月6日
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11月29日、石木ダム事業認定取消訴訟控訴審、判決主文を読み上げて、数秒で閉廷

石木ダム事業事業認定の取消訴訟に対する長崎地方裁判所による判決は、審理過程で私たち原告側が明らかにした事実と被告処分庁の釈明を科学的に検証することなく、「原告の主張からは、『被告の主張が裁量権を超えて違法』と判断できない。」として、原告の取消請求を棄却するものでした。原告側が明らかにした事実に対して、被告側が何らかの言葉を発していれば、裁判所はその真偽を検証することなく採用して、「被告の主張に違法性があるとは言えない」、の積み重ねでした。

そのようないわばデタラメな判決を正すことが控訴審の目的でした。
しかし裁判所の訴訟指揮は3回目の口頭弁論で、当方が一審判決の違法性を明らかにするべく立証作業に入るべく提案をしたところ、裁判長は突如、「その必要はない。本日を以て審理を終了し、結審とする。判決は11月29日13時10分」と言い渡して閉廷となってしまったのが7月3日のことでした。

そのような訴訟指揮から、「控訴人を敗訴させる」は分かっていたことではありますが、11月29日の法廷は、「裁判長が判決主文を読み上げて、二人の裁判官と共に立ち去る」という瞬間の出来事で終えてしまったのです。7月3日、11月29日、裁判長は控訴人に恨みでもあるかのような対応しかできなかったのは何故なのでしょうか?

判決骨子と判決

判決では「判決骨子」と「判決」が手渡されました。

控訴審判決
控訴審判決骨子

裁判長が読み上げた判決は、

本件各控訴をいずれも棄却する。
控訴費用は控訴人らの負担とする。

です。

報告集会

判決終了後に裁判所隣の弁護士会館で報告集会が持たれました。

その様子は「石木川まもり隊」の下記ページに報告されていますので、参照願います。
二審の判決は一審のコピペ!?

今後のこと   上告に向けて

  • 控訴審判決から2週間以内に上告手続きをとることになります。
  • 上告の手続き概要と、最高裁への要請行動 の説明
    • 上告又は上告受理申立ての期間は,第二審判決正本が送達された日(現実に受け取った日とは限りません。)の翌日から起算して2週間
    • 「上告提起」の場合には「上告状」を,「上告受理申立て」の場合には上告受理申立書を,両方を同時に申し立てする場合には上告状兼上告受理申立書を,第二審判決をした裁判所(福岡高等裁判所)に提出。
    • 高裁は上記書類を審査の上、50日以内に、上告を認めた場合は「上告状」「上告受理申立書」を最高裁に送付。
  • 最高裁への要請行動 と 要請行動・決起集会
    • 最高裁ではいわゆる口頭弁論はありません。要請行動は部屋を用意して受け付ける。ただし、部屋はせいぜい上告側は20人程度。
    • 今回は2月13日午後1時から最高裁判所への要請行動を予定しています。
    • 最高裁判所が用意する部屋に、入りきれない大多数の参加者は、外で決起集会を持って気勢を上げます。
    • 3時頃から、国会議員会館内の会議室にて、国土交通省と厚生労働省の担当者を招致して、要請行動を持ちます。
    • 17時頃から同会議室にて、国会議員と首都圏の皆さんと共に、「石木ダム中止実現」に向けた決起集会を持ちます。

マスコミ報道など

  • 長崎新聞
    • 石木ダム 二審も事業取り消し認めず 原告住民ら憤りと落胆
      (長崎新聞2019/11/30 11:50)
    • 石木ダム 二審も住民側敗訴 福岡高裁「公共の利益優越」
      (長崎新聞2019年11/30(土) 12:00)
      (写真)高裁判決を報告する馬奈木弁護団長(右)=福岡高裁前

      長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、反対住民ら1
      06人が国に事業認定の取り消しを求めた訴訟の控訴審で、福岡高裁(西井和徒裁判
      長)は29日、ダムの公益性を認めた一審長崎地裁判決を支持し、原告側の請求を棄
      却した。原告側は上告する方針。
      西井裁判長は判決で「ダム建設事業によって得られる公共の利益は、失われる利
      益に優越する」と認め、国土交通省九州地方整備局(九地整)の判断に「裁量の逸
      脱や濫用はない」と原判決をほぼ全面的に踏襲した。利水に関する専門家の意見
      書は「判断を左右しない」と退けた。
      一審は、同市の利水と川棚川の治水を主目的とする同ダムの必要性などが争点と
      なった。原告側は利水、治水、いずれの面でも建設の必要性はなく、水没予定地
      の反対住民13世帯の土地を強制的に収用する公共性を欠くと主張。これに対し、
      長崎地裁は昨年7月、県の治水計画や同市の水需要予測などは合理性を欠くとは言
      えず、事業認定した九地整の判断は適法と結論付けた。
      控訴審で原告側は引き続き、ダムは不要と訴えた。利水面では、同市の水需要予
      測や保有水源の評価の問題点を指摘した専門家2人の意見書を新たに提出。国側は
      原判決が適正として棄却を求めていた。
      判決後の集会で、住民の岩下和雄さん(72)は「約50年間闘ってきた私たちに対
      し、判決(の読み上げ)はたった3秒間だった」と憤り、「古里を離れるつもりはな
      い。上告し、事業の不当性をただしていく」と言葉に力を込めた。
      石木ダムを巡っては、住民らが県と同市に工事の差し止めを求めた訴訟も長崎地
      裁佐世保支部で係争中。3月24日に判決が言い渡される予定。
      ◎馬奈木昭雄・原告弁護団長の話
      国民の声に耳を傾ける裁判所の役割を放棄した不当判決。最高裁では必ず勝てる
      と確信し、土地収用法の運用の仕方の違憲性などを訴える。
      ◎国土交通省九州地方整備局担当者の話
      国の主張が認められたものと理解している。住民側が上告し、最高裁で争うこと
      になった場合も、関係機関と協議して適切に対応していく。

(写真)石木ダム訴訟の高裁判決を前に横断幕を掲げて裁判所に向かう水没予定地の住民ら=福岡市中央区で2019年11月29日午後0時38分、浅野孝仁撮影

長崎県と同県佐世保市が計画する石木ダム事業(同県川棚町)を巡り、反対する住
民ら106人が国に事業認定の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁(西
井和徒裁判長)は29日、「国の判断に裁量の逸脱など違法はない」として1審・長崎
地裁判決を支持し、住民らの控訴を棄却した。住民側は上告する方針。
石木ダムは佐世保市の水不足解消と治水を目的に建設が計画され1975年に国が事
業採択。2013年に国が土地収用法に基づき事業認定した。水没予定地の住民らが
提訴し、「(人口減の中で)市の水需要予測は過大で、治水面も河川改修などで対
応できる」などと主張していた。
(写真)控訴棄却を受けて「石木ダムNO」とカードを掲げて不満をあらわにする水没予定地の住民ら=福岡市中央区で2019年11月29日午後1時24分、浅野孝仁撮影

判決は、生活用水や工業用水などで需要が増え、24年度に1日4万トンが不足する
とした市の予測(12年度算出)について、市民1人の使用水量を全国平均(09年度)よ
り低く設定しているなどと指摘し「明らかに不合理な点があるとはいえない」と
した。県の洪水想定についても国の基準などに従っているとし、石木ダムを必要
とした判断を妥当とした。
また、移転が必要となる住宅の代替宅地が造成され、地域コミュニティーを一定
程度再現することも不可能ではないとし「ダム建設の利益より、失われる利益が
大きいとはいえない」と判断した。【宗岡敬介】
(写真)石木ダム訴訟の高裁判決を前に裁判所
前で集会を開いた水没予定地の住民ら=福岡市中央区で2019年11月29日午後0時35分、浅野孝仁撮影

原告怒りあらわに「ダムは必要ない」
1審に続く敗訴に、原告らは怒りをあらわにした。
原告団は判決後に記者会見。水没予定地の住民で原告代表の岩下和雄さん(72)は
「佐世保市の水需要予測は(算出のたびに)大幅に変わっていて信用できない。ダ
ムは必要ないと確信している」と訴えた。水没予定地は今月18日の明け渡し期限
が過ぎ、県による強制排除も可能な状況となっているが、「私たちはこれからも
闘い抜き、ふるさとを離れるつもりはない。ただちに上告して、判断を正しても
らいたい」と力を込めた。
(写真)判決後、報告集会で話す原告の岩下さん(中央)=福岡市の福岡高裁で2019年11月29日午後1時56分、松村真友撮影

馬奈木昭雄・弁護団長は「高裁の判断は事実誤認で合理性を欠いている。1審判決
を上書きしたようで、自分たちの判断はない。極めて不当な判決だ」と批判し
た。
原告の住民や支援者ら約60人は判決後の集会で、今後も工事現場などでの抗議活
動を続けることを誓い合った。【浅野孝仁】

 

  • 石木ダム、二審も住民敗訴 福岡高裁「事業利益、損失上回る」(西日本新聞2019/11/30 6:00) https://www.nishinippon.co.jp/item/n/564042/

    (写真)判決後、福岡高裁前で「石木ダムNO」をアピールする原告や支援者=29日午後1時20分ごろ、福岡市中央区

    長崎県と同県佐世保市が計画している石木ダム(同県川棚町)を巡り、反対する住
    民ら106人が国に事業認定取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が29日、福岡高裁で
    あり、西井和徒裁判長は「事業認定の判断に裁量を逸脱した違法はない」とし
    て、一審長崎地裁判決を支持し、原告側の控訴を棄却した。原告側は上告する方
    針。
    石木ダムは1975年に事業採択されたが、移転対象のうち13世帯は土地の買収に応
    じず、建設予定地に残った。国は2013年に事業認定。今月18日には全ての事業予
    定地が明け渡し期限を迎え、行政による強制撤去が可能な状態となっている。
    判決で西井裁判長は、佐世保市が生活用水や工業用水の需要が増加すると見込ん
    だ試算について「不合理な点があるとはいえない」との一審判決を踏襲。また、
    移転対象の住民には代替宅地が用意されていることを踏まえ「事業による公共の
    利益は生活用水の確保や洪水調節という地元住民の生命に関わるもので、原告ら
    の失われる利益を優越している」と述べた。
    石木ダムを巡っては、水没予定地の住民ら約600人が長崎県と佐世保市に工事差し
    止めを求める訴訟を起こしており、来年3月に判決が言い渡される。 (鶴善行)
    ■住民落胆「撤回まで闘う」
    石木ダム建設予定地の住民らが国の事業認定取り消しを求めた訴訟で、控訴棄却
    の判断を示した福岡高裁前に集まった住民たちは、落胆しつつも「建設撤回まで
    闘おう」と意気込んだ。
    ダム予定地を巡っては今月19日から、長崎県による行政代執行の手続きが可能に
    なったばかり。高裁前では判決後も原告や支援者ら約70人が「石木ダムNO!」の
    プラカードを掲げた。その後の集会では原告の一人、ダム予定地の川原(こうば
    る)地区で暮らす岩下和雄さん(72)が「50年闘ってきて判決は3秒。判決がいかに
    不当かを最高裁に正してもらいたい」と訴えた。
    弁護団の馬奈木昭雄弁護士は上告する方針を示しており、原告の石丸キム子さ
    ん(69)は「裁判がどうあっても川原に住み続ける」。岩本菊枝さん(70)は「また
    月曜日に弁当を持って頑張りましょう」と述べ、週明けも予定地で座り込みを続
    ける意向だ。
    一方、事業主体の長崎県の中村法道知事は判決について「事業の公益上の必要性
    が認められた。地元住民の理解が得られるように粘り強く取り組みたい」と述べ
    るにとどめた。 (平山成美、岡部由佳里)

 

  • 石木ダム2審も住民側訴え退ける(NHK 2019年11月29日17時45)

    https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20191129/5030006145.html

長崎県川棚町で建設が進められている石木ダムについて、建設に反対する元地権
者の住民などが国に事業認定の取り消しを求めた裁判の2審で、29日、福岡高等裁
判所は「国の事業認定の判断に裁量を逸脱し、乱用した違法はない」として、1審
判決に続いて住民側の訴えを退ける判決を言い渡しました。
石木ダムは、長崎県と佐世保市が水道水の確保や洪水対策を目的に285億円をかけ
て長崎県川棚町に建設を進めているダムで、4年前、反対する住民など100人余り
が、「ふるさとが奪われる」などと国に事業認定の取り消しを求める訴えを起こ
しました。
1審の長崎地方裁判所は「石木ダム事業は水道用水の確保や洪水調整のため必要が
ある」として訴えを退ける判決を言い渡し、住民側が控訴していました。
2審では、これまで住民側が「石木ダム事業は、建設に必要な費用に対して、実際
に生じる社会的利益が非常に乏しい」などと主張する一方、国側は請求を棄却す
るよう求めていました。
29日の判決で、福岡高等裁判所の西井和徒裁判長は「石木ダム事業は公益性の必
要性があるうえ、経済性と社会性の両面で最も優れているとした長崎県と佐世保
市の判断は不合理とはいえないことから国の事業認定の判断に裁量を逸脱し、乱
用した違法はない」などとして、1審に続いて住民側の訴えを退ける判決を言い渡
しました。
判決のあとに開かれた会見で、住民側の馬奈木昭雄弁護士は「きわめて不当な判
決だ。おかしいことはおかしいと世間に声を上げていく」と話していました。
また、住民の岩下和雄さんは「判決は受け入れられず、ふるさとを離れるつもり
は少しもない。これからも住民たちと力を合わせていく」として、引き続きダム
建設に反対していく考えを強調していました。
住民側の弁護士によりますと、原告側は判決を不服として最高裁判所に上告する
方針だということです。
判決を受けて中村知事は、報道陣に対して「第1審に続き、石木ダム事業について
の公益上の必要性が認められたものと受け止めている」と話しました。
そしてダム事業の進捗を引き続き、図っていかなければいけないとしたうえで
「皆様の理解が得られるように努力していく」と話していました。
また、事業をめぐっては、強制的な家屋の撤去などを伴う行政代執行の手続きに
入れるようになっていることについて「ほかに方法がないという段階で、慎重に
判断をしなければいけないものなので、今後の事業の推移や進捗状況などを総合
的に判断していく必要がある」と述べました。
【石木ダムとは】
石木ダムは、川棚町の洪水対策や佐世保市の水道水確保を目的に40年余り前の昭
和50年度に旧建設省が事業を採択し、建設が決まりました。
ダム本体の高さは55.4メートル、総貯水量は548万立方メートルで、完成すれば県
が管理するダムの中で、3番目に大きいダムになります。
総事業費は285億円。
長崎県と佐世保市が国土交通省や厚生労働省の補助を受けて川棚町に建設を進め
ています。
一方、県と佐世保市は建設に反対する住民との土地の買収交渉が難航したことか
ら、土地を強制的に収用しようと、県の収用委員会に「裁決申請」を行いまし
た。
ことし5月、県の収用委員会は、ダム建設に必要なすべての土地を強制的に収用で
きるようにする裁決を下し、今月18日、すべての土地の明け渡し期限を迎えまし
た。
これにより県は、すでに強制的な家屋の撤去などを伴う行政代執行の手続きに入
れるようになっています。
県によりますと、建設予定地には、いまも13世帯・およそ60人が住んでいて、こう
した大規模の家屋の撤去などを伴う行政代執行は、全国的にも例がないと見られ
るということです。
行政代執行について、中村知事はこれまでに「最後の手段だと思っている。事業
の進み具合などの事情も考えて慎重に判断すべき課題だ」と述べています。
一方、建設に反対する住民らによる座り込みの影響などで、ダムに水没する県道
の付け替え工事などに遅れが出ています。
このため、県はダムの完成時期を3年延期し、令和7年度に見直す方針を有識者ら
による「県公共事業評価監視委員会」で説明。
治水の面から事業の再評価を行った結果、「継続すべき」とした対応方針案を示
しました。
これに対し、委員会はこの方針案を認める意見書を中村知事に手渡したことか
ら、県は、27日、ダムの完成時期を3年延期し令和7年度に見直す方針を正式に決
定しました。
県によりますと、令和7年度にダムを完成させるためには、遅くとも来年中には本
体工事を始める必要があるということで、今回の判決が県の判断にどのように影
響を与えるか注目が集まります。

社説  石木ダム事業 必要性の説明が不十分だ

2019年12月4日
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石木ダム問題に関する西日本新聞の社説を掲載します。
真っ当な意見であると思います。

社説  石木ダム事業 必要性の説明が不十分だ
(西日本新聞2019/12/4 10:45) https://www.nishinippon.co.jp/item/n/565146/

一度動きだしたら、状況が変わっても止められない。大型公共事業を巡って散々指摘されてきた問題ではないだろうか。私有地の強制収用まで準備しているのなら、慎重な上にも慎重な判断を求めたい。
長崎県川棚町に県と佐世保市が計画する石木ダム建設(事業費約285億円)である。同市の利水と川棚川流域の治水を目的に1975年、国に事業採択されて44年になるが、本体に着工できていない。予定地の一部住民が反対し、立ち退きにも応じないことが最大の理由だ。
反対住民らは「水の需要予測が実態とかけ離れている」「治水も河川改修で対応可能だ」として、ダムは必要ないと主張している。
国の事業認定取り消しを求めた訴訟で、福岡高裁は先週末、一審長崎地裁に続き住民側の訴えを退けた。国や長崎県の判断に不合理はないとの理由だ。
住民側は上告する方針で、工事差し止めを求める別の訴訟も係争中である。知事の判断で予定地を強制収用する代執行が可能な状態だが、着工はまだまだ見通せないと言える。
反対がここまで強硬になった理由の一つに、県が82年、予定地の測量に県警機動隊を投入し住民を力ずくで排除した経緯がある。県はまず、信頼関係を損なった事実を重く受け止め、交渉の前提となる信頼回復に努めるべきだ。そうした意味で、県が交渉期間を確保するため工期を2025年度まで3年延長したことは評価できる。
その上で再検討すべきは、反対住民が問う「水の需要予測」「治水の代替策」についてだ。豪雨災害が相次ぐようになり水害対策は重要で、渇水の不安を解消することも大切である。ただ、人口減少や経済情勢の変化など44年前とは諸条件が大きく異なることもまた明らかだ。
国立社会保障・人口問題研究所によると佐世保市の人口推計は20年24万8千人、30年23万1千人で、10年の26万1千人から大きく減少する。水需要も比例すると考えるのが妥当だろう。
石木ダムを造って日量約4万トンの水を新たに確保する必要性が実際にあるのか。佐世保市は水需要予測を含む利水の事業再評価を、予定を早めて実施する方針という。透明性を確保し、丁寧な評価を望みたい。
治水面でも、県側は「100年に1度の規模の洪水に対応するためのダム」としてきたが、他の手段は本当にないのか。反対住民に限らず誰もが納得できる形で説明すべきだ。
石木ダム建設は強制収用に反対する国会議員らの組織も発足し、全国的関心も集めている。一度立ち止まる勇気も必要だ。

石木ダム 二審も事業取り消し認めず 原告住民ら憤りと落胆

2019年12月1日
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11月29日、石木ダム事業の事業認定の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁(西井和徒裁判長)は住民らの控訴を棄却しました。住民側は上告する方針です。その記事とニュースをお送り掲載します。
行政の誤りを正すのが司法の役目であるはずなのですが、司法は本当に無力ですね。
特に、福岡高裁の西井和徒裁判長は2018年7月30日の諫早干拓訴訟で、潮受け堤防排水門の開門命令を無効にする判決を出した裁判官ですので、最初から期待することができない人物でした。
何とも悔しいですが、引き続き頑張りましょう。


石木ダム 二審も事業取り消し認めず 原告住民ら憤りと落胆

(長崎新聞2019/11/30 11:50) https://this.kiji.is/573339196492432481?c=39546741839462401

(写真)報告集会で判決内容を批判する原告の岩下和雄さん(左)=福岡市、福岡県弁護士会館
石木ダムの事業認定を巡る訴訟で、福岡高裁は29日、原告の請求を退けた一審判決を支持した。水没予定地で暮らす13世帯は、土地収用法に基づく手続きで先祖代々の土地の所有権を失い、明け渡し期限も過ぎている。公権力による行政代執行が現実味を帯びる中での高裁の判断に、原告や支援者らの間には憤りと落胆が広がった。一方、事業推進の行政や市民は「必要性が認められた」と安堵(あんど)した。
控訴棄却の短い主文を読み上げ、裁判官たちは足早に法廷を後にした。わずか数秒で言い渡された判決。「これで終わり?」「こんなのおかしい」。マイクロバスに乗り合わせ、朝から2時間近くかけて裁判所にやってきた住民や支援者らは口々に不満をもらした。
住民の岩下すみ子さん(71)は「これが裁判って言えるのか」と肩を落とし、傍聴席から立ち上がった。厳しい判決は予想していた。昨年12月に口頭弁論が始まった控訴審。今度こそは、という願いとは裏腹に、原告側が求めた証人尋問などはことごとく却下され、わずか3回の弁論で結審。代理人弁護士からも「勝てる見込みは少ない」と聞いていた。
ダム建設に伴う付け替え道路工事現場で毎日抗議の座り込みをしていたが、股関節を痛め、手術のために約1カ月入院した。退院後も本調子とはいかないが、いちるの望みを託して裁判所に足を運んだ。結果は再びの敗訴。それでも、「裁判官に理解してもらえなくても、古里に住み続ける私たちの気持ちは変わらない」と固い決意を口にする。
「まるで私たちから逃げているようだった」。住民の川原千枝子さん(71)は裁判官たちの態度を当てこすった。生活の基盤である土地の権利を失った今、「もう少し丁寧に向き合ってくれてもいいのでは」。判決に納得はできない。
石丸勇さん(70)は控訴審第1回口頭弁論で意見陳述に立った。事業で地域コミュニティーが破壊され、住民が翻弄(ほんろう)された歴史を語り、「代替地に移れば、地域コミュニティーは再現できる」とした長崎地裁の判決を「事実から目を背けている」と批判した。だが高裁判決も全く同じだった。「自分の頭で考えていない。多くの住民が暮らしている土地を強制収用した、過去(のダム事業)にも例がない事態。住民の心の痛みや問題の大きさを見ているのか」と吐き捨てた。
「上告に向け、みんなで引き続き頑張っていこう」。判決後の反対派の集会。弁護団の一人が声を上げると、原告や支援者らから大きな拍手が起きた。


石木ダム 二審も住民側敗訴 福岡高裁「公共の利益優越」

(長崎新聞2019年11/30(土) 12:00) https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191130-00000005-nagasaki-l42

(写真)高裁判決を報告する馬奈木弁護団長(右)=福岡高裁前
長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、反対住民ら106人が国に事業認定の取り消しを求めた訴訟の控訴審で、福岡高裁(西井和徒裁判長)は29日、ダムの公益性を認めた一審長崎地裁判決を支持し、原告側の請求を棄却した。原告側は上告する方針。
西井裁判長は判決で「ダム建設事業によって得られる公共の利益は、失われる利益に優越する」と認め、国土交通省九州地方整備局(九地整)の判断に「裁量の逸脱や濫用はない」と原判決をほぼ全面的に踏襲した。利水に関する専門家の意見書は「判断を左右しない」と退けた。
一審は、同市の利水と川棚川の治水を主目的とする同ダムの必要性などが争点となった。原告側は利水、治水、いずれの面でも建設の必要性はなく、水没予定地の反対住民13世帯の土地を強制的に収用する公共性を欠くと主張。これに対し、長崎地裁は昨年7月、県の治水計画や同市の水需要予測などは合理性を欠くとは言えず、事業認定した九地整の判断は適法と結論付けた。
控訴審で原告側は引き続き、ダムは不要と訴えた。利水面では、同市の水需要予測や保有水源の評価の問題点を指摘した専門家2人の意見書を新たに提出。国側は原判決が適正として棄却を求めていた。
判決後の集会で、住民の岩下和雄さん(72)は「約50年間闘ってきた私たちに対し、判決(の読み上げ)はたった3秒間だった」と憤り、「古里を離れるつもりはない。上告し、事業の不当性をただしていく」と言葉に力を込めた。
石木ダムを巡っては、住民らが県と同市に工事の差し止めを求めた訴訟も長崎地裁佐世保支部で係争中。3月24日に判決が言い渡される予定。

◎馬奈木昭雄・原告弁護団長の話
国民の声に耳を傾ける裁判所の役割を放棄した不当判決。最高裁では必ず勝てると確信し、土地収用法の運用の仕方の違憲性などを訴える。

◎国土交通省九州地方整備局担当者の話
国の主張が認められたものと理解している。住民側が上告し、最高裁で争うことになった場合も、関係機関と協議して適切に対応していく。


石木ダム 二審 「改めて必要性認められた」 推進派、安堵

(長崎新聞2019/11/30 11:45) https://this.kiji.is/573339904459801697?c=39546741839462401

「改めてダムの必要性が認められた」-。石木ダム建設事業を巡る控訴審判決を受け、事業を推進する県や佐世保市、市民団体からは安堵の声が上がった。
同事業を巡っては、県が今月、完成目標を2022年度から25年度に延期する方針を正式決定。延期で、県側は反対住民側との話し合いを進めたい考えだ。
判決を受け、中村法道知事は県庁で報道陣に、「一審に続き、事業の公益上の必要性が認められたと受け止めている」と述べ、反対住民への説得を粘り強く続ける考えを示した。家屋撤去などの行政代執行については、「どうしても他に方法がないという段階で最終的に慎重に判断していかなければならないと思っている」とした。朝長則男市長は「司法判断として、改めて石木ダムの必要性が認められた。事業の進展に向けて、県とともに尽力する」とのコメントを出した。
「石木ダム建設促進佐世保市民の会」の寺山燎二会長は「佐世保市民は渇水に苦しんできた。事業が認められ、ほっとした」と安堵。同市議会石木ダム建設促進特別委員会の長野孝道委員長は「県や市と連携し、(反対派の)事業への理解が深まるよう取り組んでいきたい」と話した。

 

石木ダム訴訟 1審を支持 取り消し求めた住民らの訴え棄却 福岡高裁
(毎日新聞2019年11月29日 20時14分)  https://mainichi.jp/articles/20191129/k00/00m/040/345000c

(写真)石木ダム訴訟の高裁判決を前に横断幕を掲げて裁判所に向かう水没予定地の住民ら=福岡市中央区で2019年11月29日午後0時38分、浅野孝仁撮影
長崎県と同県佐世保市が計画する石木ダム事業(同県川棚町)を巡り、反対する住民ら106人が国に事業認定の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁(西井和徒裁判長)は29日、「国の判断に裁量の逸脱など違法はない」として1審・長崎地裁判決を支持し、住民らの控訴を棄却した。住民側は上告する方針。
石木ダムは佐世保市の水不足解消と治水を目的に建設が計画され1975年に国が事業採択。2013年に国が土地収用法に基づき事業認定した。水没予定地の住民らが提訴し、「(人口減の中で)市の水需要予測は過大で、治水面も河川改修などで対応できる」などと主張していた。
(写真)控訴棄却を受けて「石木ダムNO」とカードを掲げて不満をあらわにする水没予定地の住民ら=福岡市中央区で2019年11月29日午後1時24分、浅野孝仁撮影
判決は、生活用水や工業用水などで需要が増え、24年度に1日4万トンが不足するとした市の予測(12年度算出)について、市民1人の使用水量を全国平均(09年度)より低く設定しているなどと指摘し「明らかに不合理な点があるとはいえない」とした。県の洪水想定についても国の基準などに従っているとし、石木ダムを必要とした判断を妥当とした。
また、移転が必要となる住宅の代替宅地が造成され、地域コミュニティーを一定程度再現することも不可能ではないとし「ダム建設の利益より、失われる利益が大きいとはいえない」と判断した。【宗岡敬介】
(写真)石木ダム訴訟の高裁判決を前に裁判所前で集会を開いた水没予定地の住民ら=福岡市中央区で2019年11月29日午後0時35分、浅野孝仁撮影
原告怒りあらわに「ダムは必要ない」
1審に続く敗訴に、原告らは怒りをあらわにした。
原告団は判決後に記者会見。水没予定地の住民で原告代表の岩下和雄さん(72)は「佐世保市の水需要予測は(算出のたびに)大幅に変わっていて信用できない。ダムは必要ないと確信している」と訴えた。水没予定地は今月18日の明け渡し期限が過ぎ、県による強制排除も可能な状況となっているが、「私たちはこれからも闘い抜き、ふるさとを離れるつもりはない。ただちに上告して、判断を正してもらいたい」と力を込めた。
(写真)判決後、報告集会で話す原告の岩下さん(中央)=福岡市の福岡高裁で2019年11月29日午後1時56分、松村真友撮影
馬奈木昭雄・弁護団長は「高裁の判断は事実誤認で合理性を欠いている。1審判決を上書きしたようで、自分たちの判断はない。極めて不当な判決だ」と批判した。
原告の住民や支援者ら約60人は判決後の集会で、今後も工事現場などでの抗議活動を続けることを誓い合った。【浅野孝仁】


石木ダム、二審も住民敗訴 福岡高裁「事業利益、損失上回る」

(西日本新聞2019/11/30 6:00)  https://www.nishinippon.co.jp/item/n/564042/
(写真)判決後、福岡高裁前で「石木ダムNO」をアピールする原告や支援者=29日午後1時20分ごろ、福岡市中央区
長崎県と同県佐世保市が計画している石木ダム(同県川棚町)を巡り、反対する住民ら106人が国に事業認定取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が29日、福岡高裁であり、西井和徒裁判長は「事業認定の判断に裁量を逸脱した違法はない」として、一審長崎地裁判決を支持し、原告側の控訴を棄却した。原告側は上告する方針。
石木ダムは1975年に事業採択されたが、移転対象のうち13世帯は土地の買収に応じず、建設予定地に残った。国は2013年に事業認定。今月18日には全ての事業予定地が明け渡し期限を迎え、行政による強制撤去が可能な状態となっている。
判決で西井裁判長は、佐世保市が生活用水や工業用水の需要が増加すると見込んだ試算について「不合理な点があるとはいえない」との一審判決を踏襲。また、移転対象の住民には代替宅地が用意されていることを踏まえ「事業による公共の利益は生活用水の確保や洪水調節という地元住民の生命に関わるもので、原告らの失われる利益を優越している」と述べた。
石木ダムを巡っては、水没予定地の住民ら約600人が長崎県と佐世保市に工事差し止めを求める訴訟を起こしており、来年3月に判決が言い渡される。 (鶴善行)
■住民落胆「撤回まで闘う」
石木ダム建設予定地の住民らが国の事業認定取り消しを求めた訴訟で、控訴棄却の判断を示した福岡高裁前に集まった住民たちは、落胆しつつも「建設撤回まで闘おう」と意気込んだ。
ダム予定地を巡っては今月19日から、長崎県による行政代執行の手続きが可能になったばかり。高裁前では判決後も原告や支援者ら約70人が「石木ダムNO!」のプラカードを掲げた。その後の集会では原告の一人、ダム予定地の川原(こうばる)地区で暮らす岩下和雄さん(72)が「50年闘ってきて判決は3秒。判決がいかに不当かを最高裁に正してもらいたい」と訴えた。
弁護団の馬奈木昭雄弁護士は上告する方針を示しており、原告の石丸キム子さん(69)は「裁判がどうあっても川原に住み続ける」。岩本菊枝さん(70)は「また月曜日に弁当を持って頑張りましょう」と述べ、週明けも予定地で座り込みを続ける意向だ。
一方、事業主体の長崎県の中村法道知事は判決について「事業の公益上の必要性が認められた。地元住民の理解が得られるように粘り強く取り組みたい」と述べるにとどめた。 (平山成美、岡部由佳里)


石木ダム2審も住民側訴え退ける

(NHK 2019年11月29日 17時45分)https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20191129/5030006145.html

長崎県川棚町で建設が進められている石木ダムについて、建設に反対する元地権者の住民などが国に事業認定の取り消しを求めた裁判の2審で、29日、福岡高等裁判所は「国の事業認定の判断に裁量を逸脱し、乱用した違法はない」として、1審判決に続いて住民側の訴えを退ける判決を言い渡しました。

石木ダムは、長崎県と佐世保市が水道水の確保や洪水対策を目的に285億円をかけて長崎県川棚町に建設を進めているダムで、4年前、反対する住民など100人余りが、「ふるさとが奪われる」などと国に事業認定の取り消しを求める訴えを起こしました。

1審の長崎地方裁判所は「石木ダム事業は水道用水の確保や洪水調整のため必要がある」として訴えを退ける判決を言い渡し、住民側が控訴していました。
2審では、これまで住民側が「石木ダム事業は、建設に必要な費用に対して、実際に生じる社会的利益が非常に乏しい」などと主張する一方、国側は請求を棄却するよう求めていました。

29日の判決で、福岡高等裁判所の西井和徒裁判長は「石木ダム事業は公益性の必要性があるうえ、経済性と社会性の両面で最も優れているとした長崎県と佐世保市の判断は不合理とはいえないことから国の事業認定の判断に裁量を逸脱し、乱用した違法はない」などとして、1審に続いて住民側の訴えを退ける判決を言い渡しました。
判決のあとに開かれた会見で、住民側の馬奈木昭雄弁護士は「きわめて不当な判決だ。おかしいことはおかしいと世間に声を上げていく」と話していました。
また、住民の岩下和雄さんは「判決は受け入れられず、ふるさとを離れるつもりは少しもない。これからも住民たちと力を合わせていく」として、引き続きダム建設に反対していく考えを強調していました。
住民側の弁護士によりますと、原告側は判決を不服として最高裁判所に上告する方針だということです。

判決を受けて中村知事は、報道陣に対して「第1審に続き、石木ダム事業についての公益上の必要性が認められたものと受け止めている」と話しました。
そしてダム事業の進捗を引き続き、図っていかなければいけないとしたうえで「皆様の理解が得られるように努力していく」と話していました。

また、事業をめぐっては、強制的な家屋の撤去などを伴う行政代執行の手続きに入れるようになっていることについて「ほかに方法がないという段階で、慎重に判断をしなければいけないものなので、今後の事業の推移や進捗状況などを総合的に判断していく必要がある」と述べました。

【石木ダムとは】
石木ダムは、川棚町の洪水対策や佐世保市の水道水確保を目的に40年余り前の昭和50年度に旧建設省が事業を採択し、建設が決まりました。
ダム本体の高さは55.4メートル、総貯水量は548万立方メートルで、完成すれば県が管理するダムの中で、3番目に大きいダムになります。
総事業費は285億円。

長崎県と佐世保市が国土交通省や厚生労働省の補助を受けて川棚町に建設を進めています。

一方、県と佐世保市は建設に反対する住民との土地の買収交渉が難航したことから、土地を強制的に収用しようと、県の収用委員会に「裁決申請」を行いました。
ことし5月、県の収用委員会は、ダム建設に必要なすべての土地を強制的に収用できるようにする裁決を下し、今月18日、すべての土地の明け渡し期限を迎えました。

これにより県は、すでに強制的な家屋の撤去などを伴う行政代執行の手続きに入れるようになっています。
県によりますと、建設予定地には、いまも13世帯・およそ60人が住んでいて、こうした大規模の家屋の撤去などを伴う行政代執行は、全国的にも例がないと見られるということです。
行政代執行について、中村知事はこれまでに「最後の手段だと思っている。事業の進み具合などの事情も考えて慎重に判断すべき課題だ」と述べています。

一方、建設に反対する住民らによる座り込みの影響などで、ダムに水没する県道の付け替え工事などに遅れが出ています。
このため、県はダムの完成時期を3年延期し、令和7年度に見直す方針を有識者らによる「県公共事業評価監視委員会」で説明。
治水の面から事業の再評価を行った結果、「継続すべき」とした対応方針案を示しました。

これに対し、委員会はこの方針案を認める意見書を中村知事に手渡したことから、県は、27日、ダムの完成時期を3年延期し令和7年度に見直す方針を正式に決定しました。
県によりますと、令和7年度にダムを完成させるためには、遅くとも来年中には本体工事を始める必要があるということで、今回の判決が県の判断にどのように影響を与えるか注目が集まります。

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