水源連:Japan River Keeper Alliance

水源開発問題全国連絡会は、ダム建設などと闘う全国の仲間たちのネットワークです

ホーム > ニュース > 川辺川ダムの情報

ニュース

川辺川ダムの情報

市房ダム、早めに警戒情報 緊急放流に備え避難促す(ダムがあるために下流住民は緊急避難)

2022年5月30日
カテゴリー:

熊本県は球磨川上流の県営市房ダムについて、降雨によってダムの貯水容量が半分ほどになった段階で新たに警戒情報を出し、緊急放流せざるを得なくなる事態に備えて、下流域の住民に早めの避難行動を促す運用を6月から始めると発表しました。

2020年7月球磨川水害では市房ダムは緊急放流を行う直前の状態に陥り、下流住民に恐怖を感じさせました。

下流を水害から守るために設置されたはずのダムによって、下流住民はダムからの緊急放流に備えて避難行動をしなければならないのですから、まったくおかしな話です。

ダムがなければ、ダムを前提としない河川改修が行われてきたはずですが、ダムがあるためにそれが行われないため、下流住民は危険にさらされるのです。

ダムを前提とした河川行政に終止符を打つべきです。

市房ダムは球磨川の環境にも大きな影響を与えています。下記の写真は15年以上前の写真ですが、市房ダム下流の球磨川の河床を撮影したものです。市房ダムによって土砂の供給が遮られたため、市房ダム下流の河床は侵食が進んで、軟岩が露出しており、河川環境が悪化しています。

今回の球磨川河川整備計画原案では市房ダムは再開発することになっていますが、緊急放流問題と環境問題から考えて、市房ダムはむしろ撤去を検討すべきものです。

下記の熊本放送の記事に登場する、市房ダム管理所の塚本貴光 所長(当時)が記した当時のメモが熊本県の歴史公文書になっています。

「寸前で回避された緊急放流、緊迫の所長メモが歴史公文書に」https://suigenren.jp/news/2021/07/04/14774/

(読売新聞2021/06/29 08:59)https://www.yomiuri.co.jp/national/20210629-OYT1T50092

なお、現在の市房ダムは貯水容量4020万㎥、発電容量2880万㎥、洪水調節容量630~1830万㎥のダムです。

(静岡新聞2020.12.24)

 

市房ダム、早めに警戒情報 緊急放流に備え避難促す 6月から

(熊本日日新聞  2022年05月24日 18:51) https://kumanichi.com/articles/666726

下流域の住民に注意を促すため、早い段階で警戒情報を出す運用を始める県営市房ダム=24日、水上村

熊本県は24日、球磨川上流の県営市房ダム(水上村)について、降雨によってダムの貯水容量が半分ほどになった段階で新たに警戒情報を出す運用を、6月1日に始めると発表した。2020年7月豪雨の教訓を踏まえ、緊急放流せざるを得なくなる事態に備えて、下流域の住民に早めの避難行動を促したい考えだ。

市房ダムは20年7月4日に発生した豪雨災害で、未明の午前2時10分に「水をためる洪水調節を始めた」と関係市町村などに通知。その後も水位の上昇で満杯に近づいたが、午前6時半に河川からの流入量をそのまま下流に流す緊急放流(異常洪水時防災操作)の予告情報を出すまで、約4時間にわたって新たな情報発信がなかった。

緊急放流は寸前に回避されたものの、予告情報が出た時点で下流の人吉市などでは既に球磨川の氾濫で浸水被害が発生しており、住民から「(さらに水かさが増える)緊急放流に恐怖を感じた」との声が相次いだ。

県によると、新たな運用では20年豪雨と同規模の流入量になった場合、緊急放流の予告情報の約1時間前に警戒情報を出す。県河川課は「河川の水位や土砂災害などの情報と合わせて避難に役立ててほしい」と呼びかけている。

市房ダムは1960年に完成。これまでに梅雨や台風などの大雨に伴い71年、82年、95年の3回、緊急放流をしている。(髙宗亮輔)

 

市房ダム、放流前に早めの発信 熊本豪雨教訓、「貯留能力の半分」も

(西日本新聞2022/5/25 11:30 ) https://www.nishinippon.co.jp/item/n/928626/

熊本県は6月1日から、球磨川上流の県営市房ダム(水上村)の防災情報を拡充し、緊急放流予告に至る前に、避難判断のきっかけにしてもらおうと「貯留能力の半分情報」の発信を新たに始める。2020年の熊本豪雨時は、緊急放流の予告の段階で既に浸水が始まっており、逃げ遅れた人たちが恐怖を感じたことを教訓とした。県によると、全国でも珍しい試み。

市房ダムの防災情報の提供は主に(1)予備放流開始(2)洪水調節開始(3)緊急放流2時間前(4)同1時間前-の4段階。県は「熊本豪雨で避難行動を支援する役割を十分に果たせなかった」との反省を踏まえ、貯留能力の半分に達した時点で住民に伝え、避難の準備や開始の判断材料としてもらう考え。

20年7月4日の豪雨時、市房ダムは午前2時10分に洪水調節開始を通知。緊急放流2時間前通知は午前6時半、1時間前通知は同7時20分だった。同8時45分に緊急放流の「見合わせ」、同10時半に「行わない」と通知。最終的に緊急放流は回避した。

一方、球磨川の氾濫発生情報が出された時刻は、球磨村渡地区で同5時55分、人吉市で同7時50分。先行して支流が氾濫し、地元消防の記録では同6時40分以降、人吉市では「逃げ遅れ」「車両水没」「床上浸水」の119番が増えた。

県河川課によると、市房ダムはこれまでに豪雨や台風で3回緊急放流している。熊本豪雨時に「半分情報」があれば発信は同5時半ごろ。過去99回の洪水の3割が「半分情報」を出す基準に達しているという。 (古川努)

 

早期避難につなげる 熊本県の市房ダムで新たな情報発信 2020年豪雨を教訓に

(RKK熊本放送2022年05月24日18時45分)  https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/rkk/region/rkk-53196

球磨川(くまがわ)の上流にある市房(いちふさ)ダム。2020年7月の豪雨で緊急放流の予告が出された際、川は既に一部で氾濫していました。
そこで、今後住民の早期避難につなげられるよう、今回新たな情報発信の基準が設けられました。
その基準は「貯留能力の半分まで水がたまった」というもので 2020年7月の豪雨で言えば、球磨川が氾濫する30分ほど前のタイミングで出されます。

市房ダム

当時 市房ダムの管理事務所は、氾濫の4時間ほど前、ダムへの水の流入が一気に増えだした時に流域の自治体に通知を出しました。

熊本県市房ダム管理所 塚本 貴光 所長(当時)
「異常洪水時防水操作(緊急放流)に入る可能性がある。時間はまだ未定」

塚本 貴光 所長(当時)

ただ、次の通知は基準がなかったため、球磨川が氾濫した30分後に「緊急放流の予告」というタイミングでした。

緊急放流の通知前に球磨川は氾濫していた

これでは流域住民の早期避難につながらないと、今回ダムを管理する県が新たな基準を設けました。

新基準を設ける

また、当時 球磨川が氾濫した後に「緊急放流」という言葉が出てきたため、恐怖を感じた住民がいたことも基準を設けた背景とされています。
この情報発信は6月から始まります。

 

球磨川水系河川整備計画原案への意見書(2020年球磨川洪水に対応できない川辺川ダム、川の環境を壊す川辺川ダムの計画中止を!)2022年5月2日

2022年5月2日
カテゴリー:

球磨川水系河川整備計画原案への意見書を2022年5月2日に提出しました(嶋津暉之)。

意見書は2020年球磨川洪水に対応できない川辺川ダム、川の環境を壊す川辺川ダムの計画中止を!2022年5月2日

のとおりです。

川辺川ダム問題だけでなく、遊水池の整備の問題、市房ダムの問題もありますので、それらについても少しふれました。

長文ですので、目次を下記に示しておきます。

 

            目次

 1 球磨川流域の死者50人の9割は球磨村と人吉市の住民で、支流の氾濫によるものであったから、川辺川ダムがあっても救うことができなかった____2

1-1 球磨村渡地区の水没は小川の氾濫が引き起こした_________2

1-2 人吉の犠牲「原因は支流氾濫」市民団体が調査結果公表______3

 

2 2020年7月洪水は小川や人吉付近の支川流域の時間雨量が非常に大きく、川辺川ダムが必要という治水計画は基本的な誤りがある__________3

 

3 2020年7月豪雨による球磨川大氾濫の最大の要因は球磨川本川と支川の河床掘削があまり実施されてこなかったことにある_____________5

3-1 球磨川は河床高が計画河床高よりかなり高い状態が放置されてきた_5

3-2 川辺川ダム推進のために、球磨川の高い河床高が据え置かれてきた_7

 

4 ダム依存度が異常に高い治水計画(球磨川河川整備計画原案)の危険性_7

 

5 自然に優しくない流水型ダム____________________9

5-1 既設の流水型ダムで明らかになってきた川の自然への多大な影響___9

①生物にとっての連続性の遮断_____________________9

➁ダム貯水域は流入土砂、土石が堆積した荒れ放題の野原へ________9

③ダム下流河川の河床の泥質化、瀬や淵の構造の衰退___________10

➃河川水の濁りが長期化________________________10

 

5-2 とてつもなく巨大なゲート付き流水型ダム「川辺川ダム」の運用は全くの未知数、川辺川・球磨川の自然が大きなダメージを受けるのではないか。_____10

 

5-3 かけがえのない美しい川辺川を失ってよいのか_________12

 

補論1 先祖代々の土地、現在の生活、コミュニティを喪失させる遊水地の整備は安易に進めるべきではない____________________12

 

補論2 市房ダムは再開発ではなく、環境問題と緊急放流問題から考えて撤去を検討すべきである_________________________13

 

 

球磨川流域治水 遊水地「90世帯移転」住民困惑「自宅再建したのに」 遊水地は本当に必要なものなのか

2022年4月16日
カテゴリー:

2020年7月の九州豪雨で氾濫した熊本県の球磨川流域で、国土交通省は人吉市、球磨村で計約90世帯の移転が必要な遊水地の設置事業を進めようとしています。

国は今月、用地取得に関する日程の説明を始めたが、対象地域では豪雨後に自宅を再建した被災者もおり、困惑が広がってい。

遊水地は先祖代々の土地、現在のコミュニティを喪失させるものです。球磨川の治水対策として本当に必要なものなのでしょか。

河道掘削でどこまでの洪水に対応できるのか、とことん見極めることが先決です。

 

集団移転 迫られる選択  球磨川治水で遊水地候補の人吉市大柿地区 「水害怖い」「愛着」板挟み 

(熊本日日新聞2022/4/7(木) 11:39)https://news.yahoo.co.jp/articles/b772013b6569f966f7247ddecfaab57f75d5449f

球磨川治水対策の「遊水地」候補となっている大柿地区(中央)と中神地区(同奥)=1月、人吉市(高見伸、小型無人機で撮影)

2020年の熊本豪雨の被害が大きかった人吉市大柿地区の住民が、住み慣れた土地を離れるかどうか選択を迫られている。氾濫した球磨川の治水のため、地区の半分以上が「遊水地」の候補地となった上、市が地区全体の集団移転を提案したからだ。住民の意向を踏まえた提案ではあるが、現地での生活再建を望む声も根強い。一方、分断を心配して地区全体を遊水地にするよう求める声もある。

「土地は先祖から受け継いだ財産。ここに住み続けたい」。4月から町内会長を務めている大柿章治さん(76)が語った。自宅は被災後に修理。隣のビニールハウスでは施設園芸も再開し、「大柿の存続に力を注ぎたい」と意気込む。

遊水地整備案は、国が提示。大柿地区の半分以上に当たる約20ヘクタールを整備するとした。さらに市が3月19日の説明会で、地区全体の集団移転を提案した。

松岡隼人市長は説明会で「大柿は地形的に浸水リスクが高い。命とコミュニティーを守り、早期に生活再建を実現するためには安全な場所へ移転し、新しい大柿地区をつくることが望ましい」と説明。国が計画する流水型ダムの完成に長期間要することも、浸水リスクが残る理由に加えた。

松岡隼人市長が大柿地区の集団移転を提案した説明会で意見を述べる住民=3月19日、人吉市

大柿地区は、蛇行する球磨川の左岸に位置。豪雨では、あふれた濁流が地区全体を襲い、全58世帯が全壊した。対岸には、同じように遊水地の整備候補地となった中神地区がある。

大柿地区は被災当初、補助事業を活用した集団移転を模索した時期もあった。だが、費用や時間がかかり過ぎるとして立ち消えになり、住民はそれぞれ生活再建を進めていた。

そうした中、国が昨年2月以降、遊水地の整備方針を順次示し、11月に大柿地区の整備案を示した。市の意向調査では、全58世帯のうち43世帯が移転再建を希望したほか、遊水地整備も44世帯が賛成した。被災から時間が経過し、「心の整理がついた」と賛成に転じた人もいたという。

市内の仮設住宅に暮らす男性(65)は「もう水害で怖い思いはしたくない。移転するのが一番」とした上で、「遊水地になる区域とならない区域で大柿が分かれるのは複雑。全域を遊水地にした方が納得できる」と全域整備を訴えた。

 「遊水地はできれば造ってほしくない」という大柿勝則さん(69)も「住民の意向が受け入れに傾く中、反対意見を通せば地区が二分される」と懸念した。前町内会長の一橋國廣さん(77)は現地再建を強く望みながらも「住民それぞれに考えがあり、周囲に残った方がいいとは言えない」と複雑な表情を浮かべた。

遊水地を受け入れて移転すれば、土地は国が買収する。ただ、遊水地の整備区域外の住民が移転を望んでも補償の対象にならない。住民の中で、費用負担を巡る“線引き”が生まれる事態を危ぶむ声もある。

市は集団移転の提案を踏まえて、4月以降に改めて地区全体の意向を確認するとした。(中村勝洋、川野千尋、元村彩)

 

球磨川流域治水 遊水地「90世帯移転」住民困惑「自宅再建したのに」

(読売新聞2022/03/22 05:00 )https://www.yomiuri.co.jp/local/kyushu/news/20220322-OYTNT50010/

2020年7月の九州豪雨で氾濫した熊本県の球磨川流域で、国が治水対策として計画する 遊水地 の候補地に人吉市、球磨村の計約90世帯が含まれ、移転を迫られることになった。国は今月、用地取得に関する日程の説明を始めたが、対象地域では豪雨後に自宅を再建した被災者もおり、困惑が広がっている。(前田敏宏、松尾真里那)

修繕を終えた自宅前で、将来への不安を口にする今村さん(熊本県球磨村で)

23年度着工目標

「せっかくリフォームして住み始めたのに、別の場所に移らないといけないなんて……」。球磨村渡の候補地に夫婦で住む今村チエ子さん(71)は、球磨川に近い自宅前で表情を曇らせた。

豪雨によって木造2階建ての自宅は約4・5メートル浸水し、「全壊」の判定を受けた。一時、仮設住宅に身を寄せたものの、自宅の骨組みは無事だったため、愛着のある土地で修繕による再建を選んだ。

球磨川を眺めながら散歩するのが好きで、地元を離れることは選択肢になかった。21年夏前に数百万円をかけて再建を終え、ようやく自宅で生活を始めようとした直前、遊水地の候補地に入ることを知った。

村によると、渡地区の候補地では被災前、約50世帯が暮らしていた。今村さん宅の近隣では被災のため家を取り壊し、村外に引っ越した人もいる。「離れたくないが、水害があったけん、移転は仕方がなかとかな。せめて慣れ親しんだ場所の近くで暮らしたい」と今村さんは願う。

遊水地  川沿いの土地に水を引き込み、河川の流量を抑える治水対策。平常時は農地や公園として利用するが、洪水時には浸水するため住宅は移転が必要になる。九州豪雨を受け、国、熊本県、流域市町村が掲げた「流域治水」の一環として計画された。国は土地を掘り下げて水をためる「掘り込み方式」を基本とした整備を予定している。

国土交通省は昨秋以降の住民説明会で、候補地4か所の配置案を公表した。このうち、宅地がある球磨村渡地区(約30ヘクタール)と人吉市大柿地区(約20ヘクタール)の住民には、高台などへの移転を求める方針だ。今月に入って渡地区で開催した説明会では、22年度半ば以降に用地取得に向けて補償額を提示するスケジュール案を示し、23年度の着工を目指す方針を明らかにした。

国交省八代河川国道事務所の森康成副所長は「貴重な宅地を提供いただくことになる。住民の意向に寄り添いながら治水のため理解を求めていきたい」と話す。

先祖代々の土地

人吉市によると、大柿地区では約40世帯が候補地に入る。先祖代々、この地区で暮らしてきたという山上修一さん(77)の自宅敷地も候補地に含まれ、「豪雨で苦しい生活を強いられ、やっとの思いで生きてきたのに故郷も奪われるのか」と落胆を隠せない。

豪雨で自宅は2階まで濁流が押し寄せた。敷地内で営んでいた民宿を住まいとして修繕中で、約2か月後には夫婦で地区へ戻るつもりだ。

大柿地区の大半の世帯が遊水地の移転対象となることを踏まえ、人吉市は19日の説明会で、候補地外を含む全約60世帯に浸水リスクが低い地区外への集団移転を提案した。松岡隼人市長が「命とコミュニティーを守るため」と理解を求めたが、反対の声も上がった。

豪雨当日、地区は広範囲で浸水したが、有志による避難誘導によって一人の犠牲者も出さなかった。山上さんは「財産とも言えるコミュニティーは、この場所で、何十年もかけて積み上げてきたもの。先祖代々の土地を守っていくためにも地区外への移転には反対だ」と口にした。

 

九州豪雨で大規模浸水、遊水地整備へ集落全58世帯に移転提案

(読売新聞2022/03/21 11:27)

https://www.msn.com/ja-jp/news/national/e4-b9-9d-e5-b7-9e-e8-b1-aa-e9-9b-a8-e3-81-a7-e5-a4-a7-e8-a6-8f-e6-a8-a1-e6-b5-b8-e6-b0-b4-e3-80-81-e9-81-8a-e6-b0-b4-e5-9c-b0-e6-95-b4-e5-82-99-e3-81-b8-e9-9b-86-e8-90-bd-e5-85-a8-ef-bc-95-ef-bc-98-e4-b8-96-e5-b8-af-e3-81-ab-e7-a7-bb-e8-bb-a2-e6-8f-90-e6-a1-8/ar-AAViSqD?ocid=BingNewsSearch

豪雨で球磨川が氾濫し大規模な浸水被害を受けた熊本県人吉市の市街地(2020年7月4日、読売機から)

九州豪雨で被災した熊本県人吉市は19日夜、遊水地の整備が計画されている大柿地区を対象に説明会を開いた。松岡隼人市長は大規模な浸水被害を踏まえ、全58世帯に地区外への移転を提案。「安全な場所でコミュニティーを保ったまま新しい集落を整備することが望ましい」と理解を求めた。(前田敏宏)

市は、住民への意向調査の結果も明らかにした。8割弱が遊水地の整備計画に協力する意向を示した一方、反対が1割弱、判断がつかないが1割半だった。

市によると、計画に対して「協力する」との回答が44世帯(全体の76%)に上った。これを踏まえ、地区全体での移転案を復興方針として示した。計画に「協力しない」は5世帯(9%)、「判断つかない」は9世帯(15%)だった。

今後の住居に関しては、43世帯(74%)が移転方針と回答し、12世帯(21%)は現地再建を希望。3世帯(5%)は再建場所は判断ができないとした。遊水地の予定地に入る37世帯では5世帯が現地再建を望んだ。

説明会には住民ら約50人が出席。「水害は大変な恐怖だった。土地の有効利用へ提供したい」と協力意向が示された一方、「水害で多くを失った。せめて元の地区で営みを再開したい」と反対の声も上がった。

市は新年度以降も懇談会や戸別訪問を続け、計画への理解を求める。

 

人吉市大柿地区の遊水地整備で全世帯移転を提案
(NHK2022/03/22 12:28)https://www3.nhk.or.jp/lnews/k/kumamoto/20220322/5000015064.html

おととし7月の豪雨を受けた今後の治水対策として人吉市の大柿地区で検討されている遊水地の整備に向け、市は地区の全世帯に移転を求める案を示しました。
これは19日に開かれた住民説明会で示されました。
人吉市の大柿地区では、今後の治水対策として、川からあふれた水をためる遊水地の整備が検討されていて、去年、国が地区の3分の2を遊水地の整備範囲とし、住民に移転を求める一方、残る3分の1は宅地や農地にする案を提示していました。
説明会では、市が地区の全58世帯に行った調査の結果が示され、およそ8割が「国の計画に協力する」とした一方、整備範囲については「コミュニティが分断される」とか「治水効果を高めるため全域にすべき」などの理由から半数が「納得できない」と答えたということです。
そのうえで松岡市長は、「新たなダムの完成にも10年かかり、大柿地区全体が危険な場所のままだ」と述べ、全世帯に集団移転を求めました。
これに対し住民からは「早く用地交渉を進めてほしい」といった意見の一方、「すでに自宅を再建し、ほかの場所には移りたくない」といった意見も出されました。
市は集団移転について、再度、住民の意向を調査した上で、地区全体を遊水地とする案も含め、国に要望したいとしています。
みなし仮設で暮らしている50歳の男性は「大柿地区での再建を目標に避難生活を続けてきたのに到底受け入れられない。再検討してほしい」と話していました。

 

15年連続「水質が最も良好な河川」は熊本県にあった(川辺川)

2022年4月10日
カテゴリー:

国交省は毎年、全国の河川の水質調査結果を公表し、「水質が最も良好な河川」をいくつか選んできています。球磨川水系の川辺川が毎年選ばれてきています。

TABIZINE 2022年3月29日の記事に下記の通り、

日本一水質が良好な川、その答えは、熊本県の人吉盆地に流れ下る「川辺川」と記されています。

そのように素晴らしい川辺川であるからこそ、その自然を守るために、長年、川辺川ダム反対運動が展開されて、ダム事業がストップされてきたのです。

その川辺川に国土交通省が流水型の川辺川ダムを建設する計画を策定しようとしています。それが現在パブコメが行われている球磨川水系河川整備計画原案です。

多くの方が球磨川水系河川整備計画原案に対して意見を表明してくださるよう、お願いします。

このパブコメについては

球磨川水系河川整備計画原案のパブリックコメントと、原案の基本的な問題点 | 水源連 (suigenren.jp)

をお読みください、

 

【日本一の○○連載】15年連続「水質が最も良好な河川」は熊本県にあった

(TABIZINE 2022/03/29 07:30https://www.msn.com/ja-jp/travel/news/%E3%80%90%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%B8%80%E3%81%AE%E2%97%8B%E2%97%8B%E9%80%A3%E8%BC%89%E3%80%9115%E5%B9%B4%E9%80%A3%E7%B6%9A%E3%80%8C%E6%B0%B4%E8%B3%AA%E3%81%8C%E6%9C%80%E3%82%82%E8%89%AF%E5%A5%BD%E3%81%AA%E6%B2%B3%E5%B7%9D%E3%80%8D%E3%81%AF%E7%86%8A%E6%9C%AC%E7%9C%8C%E3%81%AB%E3%81%82%E3%81%A3%E3%81%9F/ar-AAVBoMX?ocid=BingNewsSearch

意外な日本一を取り上げるTABIZINEの連載。今回は、暖かくなって行楽地に出かけたい、自然の中で遊びたいと思った時に役立つ日本一を紹介します。

© TABIZINE 提供image by MK Products from Wikipedia

日本一水質が良好な熊本県「川辺川」

 

© TABIZINE 提供 熊本県球磨川 球磨川 (C) Shutterstock.com

 

暖かくなってくると水辺の行楽地に出かけたくなりますよね。海はもちろん、河川敷や川べりも目的地の候補になってくると思います。せっかく水辺に出かけるのであれば、ごみが浮いたり水が汚れていたりする場所ではなく、奇麗な水辺に出かけたいですね。

では、日本で一番奇麗な水辺、例えば日本でもっとも奇麗な川はどこにあると思いますか? 川といっても大小さまざま。数も膨大にあるので、それこそ日本一を決める作業は容易ではありませんが、少なくとも一級河川(とその水系)の中で日本一水質が良好な川といったら、どこになるのでしょうか。

ちなみに一級河川とは、

<国土保全または国民経済上,特に重要な水系であると政令で指定したなかで,国土交通大臣が指定する河川>(ブリタニカ国際大百科事典より引用)

と定義されています。

日本一水質が良好な川、その答えは、熊本県の人吉盆地に流れ下る「川辺川」になります。

15年連続「水質が最も良好な河川」

© TABIZINE 提供 熊本県人吉 人吉 (C) Aprilflower / Shutterstock.com

川辺川といわれてピンと来る人は、熊本県の人以外だとなかなかいないのではないでしょうか。

熊本県南部には八代という街があり、その八代に向かって流れ下る「球磨(くま)川」があります。同じく熊本県南部には、あの西南戦争でも舞台となった人吉盆地があり、その人吉盆地を横断する球磨川に大きな支流が流れ込んでいます。

その全長約50kmの支流を川辺川(球磨川水系)と呼びます。八代市の五家荘(ごかのしょう)といわれる山深いエリアが水源地で、国土交通省が毎年公表する全国一級河川の水質調査で「水質が最も良好な河川」に15年連続で選ばれています。

<15年連続で水質日本一になっている川は、全国で川辺川だけです>(『日本⼀の清流川辺川〜新たな相良村へ〜』より引用)

周辺は雨が多く、自然災害も少なくない土地です。2020年(令和2年)の熊本豪雨と災害のニュースも記憶に新しいです。

川辺川流水型ダム予定地と仮排水路https://www.youtube.com/watch?v=gzwC38r9Jg8

治水用のダム建設のニュースも繰り返し報じられていますが、それだけ自然の豊かなエリアですから、天候が穏やかな日は地元の子どもたちが川辺で遊び、大人たちはラフティングなどのアクティビティを楽しんでいます。

2021年(令和3年)の段階では、川辺川下流の相良(さがら)村で、水辺の楽しみを満喫できる複合親水施設の整備構想もあると各紙が報じていました。

筆者も、残念ながら上流まで行った経験はないのですが、人吉盆地で川辺川沿いを軽く歩いた経験はあります。

これから暖かくなって、どこか美しい水辺で楽しみたいと思ったら、新型コロナウイルス感染症の感染拡大状況にも注意しつつ「日本一の清流」川辺川に遊びに出かけてみてはいかがでしょうか?

西南戦争に関する歴史的なスポットや温泉地、茶園など川以外の見どころも周囲には多いです。観光の楽しみはそれこそ尽きないですから、日本一巡りの旅の行き先として検討してみてくださいね。

© TABIZINE 提供 川辺川の上流 image by 河川一等兵 from Wikipedia

[参考]

※ 令和2年水質調査結果 – 国土交通省

※ 川辺川の水質日本一 豪雨後も15年連続維持 – 人吉新聞社

※ 複合施設整備を構想 川辺川生かしキャンプ場など/熊本県相良村 – 九建日報

※ 川辺川の概要

※ 熊本豪雨あす1年 仮住まい、なお3675 – 西日本新聞

※ 令和2年7月豪雨 被害写真

※ 『さがら』2012年8月号

※ 熊本県知事はなぜ脱ダムを放棄したのか – ニッポンドットコム

※ ⽇本⼀の清流川辺川〜新たな相良村へ〜 – 熊本県相良村

[Photos by Shutterstock.com]

 

球磨川水系河川整備計画原案のパブリックコメントと、原案の基本的な問題点

2022年4月6日
カテゴリー:

既報の通り、球磨川水系河川整備計画の原案についてのパブリックコメントが4月4日から始まりました。期間は5月6日までです。

 

河川整備計画のパブリックコメントの基本的問題点

率直に言って、河川整備計画原案のパブリックコメントは国土交通省等の河川管理者が市民の意見を計画に反映したことにするためのセレモニーです。

市民がいかに的確な意見を送り付けても、その意見が計画に反映されることはほとんどありません。河川管理者の考えに抵触しない、無難な意見だけがほんの少し計画に盛り込まれるだけといってもよいでしょう。

とはいえ、今回の球磨川水系河川整備計画によって、多くの人が長年反対し続けてきた川辺川ダムが法的に位置付けられ、建設に向けて動き出すことになります。また、問題が指摘されている遊水地の整備、市房ダム再開発も動き出すことになりますので、パブリックコメントを無視するだけではすみません。

多くの方が今回の球磨川水系河川整備計画原案に対して意見を送ることが必要です。

 

今回のパブリックコメントの仕組み

今回のパブリックコメントの仕組みを説明します。

今回のパブリックコメントは国管理区間と県管理区間に分かれていて、かなり複雑です。

球磨川は下図の通り、国の管理区間と熊本県の管理区間があります。球磨川本川は河口部から上流の幸野ダム(市房ダムのすぐ下流)までは国の管理区間です。

支川は川辺川の五木村~相良村(川辺川ダムの予定地)は国の管理区間ですが、それ以外は県の管理区間です。

国と県のそれぞれの管理区間の河川整備計画の原案は次のURLで見ることができます。

<国管理区間>

http://www.qsr.mlit.go.jp/yatusiro/site_files/file/river/kasenseibi/kuma_seibikeikaku_genan.pdf

<県管理区間>

https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/175952.pdf

そして、国管理区間の原案についての意見は国に、県管理区間の原案についての意見は県に言わなければなりません。

意見を意見書提出様式 に記入してください。意見書の送付先は次の通りです。

国管理区間に対する意見: 〒866-0831熊本県八代市萩原町1丁目708-2 国土交通省九州地方整備局八代河川国道事務所調査課 宛

県管理区間に対する意見: 〒862-8570熊本県熊本市中央区水前寺6丁目18番1号​ 熊本県土木部河川港湾局河川課 宛

 

今回の河川整備計画原案の基本的な問題(1)流水型川辺川ダムの建設

今回の河川整備計画原案の基本的な問題点の第一は長年、流域住民をはじめ、多くの人々が反対し続けてきた川辺川ダム建設事業が流水型ダムという衣をまとって動き出すことです。

川辺川ダムのことは<国管理区間>の原案の103ページに書かれています。

http://www.qsr.mlit.go.jp/yatusiro/site_files/file/river/kasenseibi/kuma_seibikeikaku_genan.pdf

これから2700億円という巨額の公費を投じて、2035年度完成予定で、川辺川ダムの建設が進められることになっています。

川辺川ダムは球磨川水系の自然を大きく損なうものですので、反対運動の高まりで一時は中止されたのですが、2020年水害で復活してきました。何としても中止させなければなりません。

 

今回の河川整備計画原案の基本的な問題(2)遊水地の整備による先祖代々の土地、現在のコミュニティの喪失

本川では人吉市、球磨村で計約90世帯の移転が必要な遊水地が計画されています。(遊水地「90世帯移転」住民困惑「自宅再建したのに」(読売新聞2022/03/22 05:00 )https://www.yomiuri.co.jp/local/kyushu/news/20220322-OYTNT50010/

本川の遊水地のことは<国管理区間>の原案の103ページに書かれています。

先祖代々の土地、現在のコミュニティを喪失させる遊水地は安易につくるべきものではありません。

 

今回の河川整備計画原案の基本的な問題(3)市房ダム再開発

既設の市房ダムの再開発が今回の河川整備計画原案に盛り込まれています。(<国管理区間>の原案の104ページに書かれています。)

市房ダムは県が管理しているダムですが、国土交通省が大規模な改造(再開発)を行うとしています。

2016年にも大規模な改造が検討されたことがありますが(http://www.qsr.mlit.go.jp/yatusiro/site_files/file/activity/kaisaisiryo/20160119shiryou3.pdf)、今回の再開発事業の内容、費用はまだ決まっていません。

市房ダムについて思い出されるのは2020年7月洪水で洪水調節機能を失って、緊急放流に近い状態に陥ったことです。(「昨夏の球磨川豪雨で緊急放流寸前だった市房ダム」https://yamba-net.org/55341/ )

このことを踏まえれば、市房ダムは再開発ではなく、撤去を検討すべきだと思います。

 

今回の球磨川水系河川整備計画原案に対して多くの方が意見を提出することを期待します。

↑ このページの先頭へ戻る