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半世紀がかり、大滝ダム完成 建設に揺れた奈良・川上村 (2013年3月23日)
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計画から半世紀 大滝ダムが完成…奈良の吉野川
(読売新聞大阪版 2013年3月23日 )http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20130323-OYO1T00638.htm?from=top
計画から半世紀 大滝ダム完成 あす式典 奈良
(産経新聞奈良版 2013.3.22 ) http://sankei.jp.msn.com/region/news/130322/nar13032202160002-n1.htm国土交通省近畿地方整備局が川上村で建設を進めてきた大滝ダムの完成式典が23日、現地などで開かれる。
洪水を防ぐダム建設をめぐっては、平成15年の試験貯水の影響で付近の地区に亀裂が発生し、住民が移転を強いられた経緯もある。約半世紀にわたるダム計画は曲折を経て、ようやく4月に本格稼働する。
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紀伊半島南部の紀ノ川流域は、台風などで過去に何度も洪水被害に見舞われていた。
奈良、和歌山両県で昭和34年、130人が死亡、住宅9千棟以上が床上浸水するなど被害をもたらした伊勢湾台風を機に37年、大滝ダムが計画され、40年に着工された。
反対運動なども受けたが、ダム本体は平成14年に完成した。翌年、安全性を検証する試験貯水が行われた際、ダム上流の川上村白屋地区の家屋や壁、地面などで亀裂が発生。地区の37世帯が移転を余儀なくされ、試験貯水は中断された。
元住民らは19年、国に慰謝料を求めて提訴。23年7月、国に1200万円の賠償を命じた大阪高裁判決が確定した。
一方、整備局は周辺の地滑り対策工事を実施し、23年11月に完了。試験貯水を再開し、昨年6月に終了した。総貯水容量は8400万立方メートル。総事業費は当初の230億円から、15倍となる約3640億円に膨らんだ。
紀ノ川下流の和歌山県岩出市では、「150年に1度」の大雨に見舞われた場合、毎秒1万6千立方メートルの水が流れると想定している。
上流の複数のダムで毎秒4千立方メートルを洪水調節し、このうち大滝ダムは毎秒2700立方メートルを一時的に貯めることができる。大滝ダムは、こうした洪水防御のほか、水道用水や工業用水の提供、水力発電なども目的としている。
23日は、事前に募集していたダム湖の名前を刻んだ記念碑の除幕式などを予定している。
奈良県川上村の吉野川(紀の川)に国が建設していた大滝ダムが、計画からほぼ半世紀ぶりに完成し23日、記念式があった。
03年に試験貯水を始めたが、地滑りが発生し、その対策などで完成が大きく遅れた。当初の計画では、事業費は230億円だったが、工事費や用地補償費の拡大などで、最終的には約16倍の3640億円に膨らんだ。
大滝ダムは洪水調整、利水、発電のための多目的ダム。奈良、和歌山に水道水を供給する。堤は高さ100メートル、長さ315メートル。貯水量は8400万立方メートル。
ダムは1962年、国が計画を発表。59年の伊勢湾台風で奈良、和歌山両県内の同川流域で死者、行方不明者130人の被害が出たことがきっかけだった。
住民は土地を奪われ将来の生活に不安を感じるとして、激しく反対運動を展開したが、65年に着工し、493世帯が離村した。現在の村人口は60年の5分の1ほどの約1700人に減った。
また、03年の試験貯水では、同村白屋地区で地滑りが発生し、住民37世帯、77人が村内外に移転して、対策工事を繰り返した。11年には大阪高裁で、ダム建設を巡って国に賠償を命じる判決も出された。
この日、ダム湖を「おおたき龍神湖」と名付けて自然石に刻んだ碑の除幕式がダム湖近くであった。式には約400人が出席し、栗山忠昭村長(62)が「今日から日本一きれいな水源地の村に挑戦する」とあいさつした。【栗栖健、岡奈津希】
「ダムと共生」村民感慨 大滝ダム完工式(読売新聞奈良版 2013年3月24日 )http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/nara/news/20130323-OYT8T01012.htm◆「おおたき龍神湖」碑除幕
川上村の村立川上小などで23日行われた完工式では、国土交通省近畿地方整備局、県、村のトップが、ダム建設に協力した地元への感謝の言葉を口にした。約600人の出席者は巨大なダムのこれからに思いをはせた。
同整備局の谷本光司局長は「ダムの完成は、先祖代々の土地を提供してくれた方々のおかげです」とあいさつ。荒井知事や和歌山県の仁坂吉伸知事は様々な曲折があった事業を振り返り、「皆様の苦労がようやく実りました」と述べた。
栗山忠昭村長は「建設への理解をいただいた地元に心から感謝し、ダムとの共生を図ります」と述べた。
公募したダム湖の名前は、205点の中から同村職員吉田志帆さん(35)の「おおたき龍神湖」と決まり、ダム右岸で、同小児童らも参加した記念碑の除幕式があった。
前村長で8期32年、ダム建設に取り組んだ大谷一二(いちじ)さん(88)は、「ダムはこれから、多くの人命を災害から救うでしょう」と期待した。
家屋改修完了 嘉田滋賀県知事が視察…芹谷ダム建設中止( 2013年03月21日)
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滋賀県の嘉田由紀子知事は2009年に芹谷ダムの建設を中止しました。ダム予定地であった「水谷地区」では家屋改修や合併浄化槽の整備などが行われ、工事がほぼ完了しました。
嘉田知事が昨日、その水谷地区を視察 しました。
家屋改修完了 知事が視察…芹谷ダム建設中止( 読売新聞滋賀版2013年3月21日) http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/shiga/news/20130320-OYT8T00878.htm
県営芹谷ダム(多賀町)の建設中止を受け、県が水没予定地だった「水谷地区」で進めていた老朽家屋の改修工事がほぼ完了し、嘉田知事が20日、2年2か月ぶりに現地を視察した。
住民と意見交換した嘉田知事は、「末永く地域に住み続けてもらえるよう、これからも町と協力し、支援を続けたい」と約束した。
県は1963年、芹谷ダムの建設を計画し、調査を始めたが、嘉田知事が就任した後の2009年1月、建設中止を決定。
県は、ダム建設による集団移転を前提に家屋の修繕が進んでいなかった22戸の住宅について、11年度から6億3000万円を投じ、家屋改修や合併浄化槽の整備などを行い、工事はほぼ完了した。
この日、嘉田知事は、屋根瓦のふき替えや床の張り替えなどが済んだ家屋を視察し、県が新たに整備した集会所で住民と意見交換。
嘉田知事は「長い間、苦労をおかけしたが、家屋の改修にもめどがつき、何よりのことだと思っています」とあいさつし、県道バイパスの早期整備や獣害対策、農地再生など、今後も支援を続ける考えを表明した。
宮下克己・上水谷区長(63)は「地域では高齢化が進んでおり、一日も早い生活再建が必要だ。県とは前向きに協議していきたい」と話していた。
嘉田知事が水谷地区視察 芹谷ダム中止で改修中(京都新聞 2013年03月21日) http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20130320000139
(写真)県の支援で改修が進む民家で住民から話を聞く嘉田知事(左から2人目)=滋賀県多賀町水谷地区
滋賀県の嘉田由紀子知事は20日、県が建設を中止した芹谷ダムの水没予定地だった多賀町水谷地区を訪れた。県の支援で改修が進む住宅や集会所を視察し、地元住民との意見交換会に出席した。
同地区にはダム建設に伴う水没を想定して修繕されていなかった民家が22戸あり、県は2009年の事業中止決定後、改修支援を続けてきた。嘉田知事は3戸を訪ね、住民から暮らしぶりや改修の進み具合を聞いた。
今月に改修が完了した上水谷集会所では、嘉田知事は住民15人と意見交換。冒頭で「ダム事業の見直しで地元の驚きと迷いはどれほどのものだったか。あらためておわびしたい」とあいさつ。
終了後の会見では、「地元の表情が明るく、手応えを感じた。活力あるまちづくりに向け、県としても全力で支援していきたい」と述べた。
宮下克己・上水谷区長(63)は「意見交換会では県道のバイパス建設や休耕田の整備についての要望が多かった。優先的な順位をつけて早く進めてほしい」と話した。
「住民支援続けていく」 芹谷ダム旧予定地 嘉田知事視察 滋賀(産経新聞滋賀版 2013.3.21) http://sankei.jp.msn.com/region/news/130321/shg13032102010002-n1.htm
平成21年1月に建設中止になった芹谷(せりたに)ダムの旧予定地(多賀町水谷)を20日、嘉田由紀子知事が視察した。
ダム建設中止後、旧予定地では家屋改修事業が進められ、今夏にも完了する見込みとなっている。嘉田知事は、家屋の改修状況を確認するとともに地元住民の声を聞いて回った。
芹谷ダム事業は、昭和38年度からスタート。平成4年度に建設を開始し、地元住民も同意したが21年1月、ダム事業再評価実施の結果、建設中止が決まった。
一方、家屋改修事業は23年1月、県と多賀町のダム建設中止に伴う地域振興に関する合意書に基づき開始。
6億3千万円をかけて22戸の家屋改修工事に着手し、今夏には全戸完了する予定という。
嘉田知事は今回、改修対象となった22戸のうち改修中や、すでに完成した家屋3戸を訪問。住民から住み心地や進捗(しんちょく)状況などを聞いた後、新たに建設された集会所で今後の計画報告とともに意見交換会を行った。
意見交換を終え、嘉田知事は「子供や孫が毎週のように帰って来るようになったと聞き、ほっとしている。周辺の県道や農地の整備などが課題として残されているが、町と協力して支援を続けていく」と話し、
地元の宮下克巳・上水谷区長は「住民の要望を聞いて優先順位を判断してもらい、道路や農地など適正な整備を進めてもらいたい」と要望した。
豊川の明日を考える流域委員会 研究者は設楽ダムの効果に否定的(2013年3月21日)
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豊川の明日を考える流域委員会 研究者はダムの効果に否定的ー住民理解の形成をと(東日新聞 2013/03/21)http://www.tonichi.net/news/index.php?id=28174
学識経験者らでつくる「豊川の明日を考える流域委員会」(委員長=藤田佳久・愛知大名誉教授)の32回目の会合が20日、豊橋市駅前大通2丁目の名豊ビルで開かれた。
設楽ダム建設事業について、委員同士で意見を交わした。研究者からはダム建設への疑問が相次いだほか、住民理解への配慮を求める声も聞かれた。
前回から4年3カ月ぶりの開催。この間、政権交代を経て設楽ダム建設事業が二転三転したことを踏まえ、藤田委員長は冒頭のあいさつで「久しぶりに我々の手元に戻って来た」と感慨深げに話した。
初めに、国土交通省中部地方整備局側から、東三河の関係自治体との間でつくる「検討の場」で示した「ダム建設が最も有利」との総合評価案について説明があった後、委員同士で意見交換した。
研究者からは、ダム建設に否定的な意見が相次いだ。沓掛俊夫・愛知大教授(地学)が「ダムを作り、年中一定量の水を流すのが正常なのか」と、自然環境の観点から疑問を呈したのに対し、同整備局は水量に緩急を与えながら管理していく方針を示した。
水工学が専門の中村俊六・豊橋技術科学大名誉教授は「ダムが決壊したら死者が出る」と、その危険性を主張した。
住民理解への意見も聞かれた。神野吾郎・豊橋商工会議所副会頭は「上手に地域のコンセンサスを得られるようお願いしたい」と同整備局に求め、鈴木真理子・とよはし女性フォーラム会長は「(設楽町の)住民の心情をくみ取り、物事を進展させてほしい」と述べた。
ダム事業の当事者として、横山光明・設楽町長は「これまでの流域委員会の議論の結果を重んじ、町民が落ち着いた生活をできるようダムの方向性を見定めてほしい」と訴えた。
設楽ダム素案に有識者らが意見 地方整備局が委員会( 読売新聞愛知版2013年3月21日) http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/aichi/news/20130320-OYT8T00980.htm
設楽ダム計画検討の場で国交省中部地方整備局が示した報告書素案を検討する「豊川の明日を考える流域委員会」が20日、豊橋市内で開かれた。
同委員会は豊川の河川整備について助言を求めるため、1998年に同局が設置。今回は素案に対する意見を聴く場として4年ぶりに開催された。メンバーは委員長の藤田佳久・愛知大学名誉教授、神野吾郎・豊橋商工会議所副会頭ら11人。
委員会では、中村俊六・豊橋技術科学大学名誉教授から「設楽ダム計画以上に効果のある対策はないという我田引水的な話が並べてある」と批判的な意見があった一方、
横山光明・設楽町長が「ダム計画は当時の流域委員会が議論した末に結論を出した。その結果を重んじて方向を見定めてもらいたい」と求めた。
同局では、この日の意見や関係住民の公聴会の結果を反映させた報告書原案を近くまとめ公表する。
南摩ダム 栃木県南の代替水源案(栃木県の机上方針)(読売新聞栃木版 2013年3月20日)
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栃木県が南摩ダム(思川開発)への参加を続けるため、県南の市町水道の地下水依存率を減らす実現性のない方針をつくりました。
南摩ダムの検証で、栃木県は、厚生労働省による水道事業の認可を受けていることが条件として求められました。当然の条件ですが、栃木県は南摩ダムで得る水源は使う当てがなく、水道事業の計画そのものが存在しません。
そこで、栃木県は県南の市町水道の地下水依存率を減らす、形だけの方針をつくって、これを「水道事業の認可」の代わりに国交省に報告しようとしています。「水道事業の認可」の代わりになるものではないのですが、これで行けるとしているようです。
栃木県南の地盤沈下は沈静化し、地下水汚染の心配もないので、市町水道の地下水依存率を減らす必要はまったくなく、栃木県自身もその方針に基づいて水道用水供給事業を実際に進めることは巨額の費用がかかるので、考えていません。あくまで机上の方針です。
このような机上の方針で南摩ダムの検証が進められようとしています。
それにしても、この記事は栃木県の方針の虚構には何も触れていません。こういう記事が出るから、行政はやりたい放題のことができるのです。
南摩ダム 県南の代替水源案(読売新聞栃木版 2013年3月20日) http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tochigi/news/20130319-OYT8T01676.htm
(写真)南摩ダムの建設予定地(昨年8月、県提供)
県は19日、計画が一時凍結となっている鹿沼市の南摩ダム(思川開発)事業の再開をにらんだ水道水源確保の方針を明らかにした。
地下水への依存率が現在92%に上っている思川流域の県南2市3町(栃木、下野市、壬生、岩舟、野木町)で、2030年度までに65%とし、最終的には他の地域並みの40%まで下げる目標を盛り込んだ。
県は南摩ダムを2市3町の代替水源にしたい考えで、事業の必要性を検証している国土交通省にこの方針を報告する。
同日の県議会県土整備常任委員会で県が明らかにした。
この中で県は、30年度の2市3町の人口が約24万8000人になると試算し、一日あたりの最大取水量が10万立方メートルになると算出した。この段階で、6万5000立方メートルは地下水、残りは南摩ダムを水源とする表流水から取水するのが目標だ。
県によると、地下水は汚染が見つかった場合、表流水と比べて水質改善に時間がかかり、地盤沈下が起きると取水制限もせざるを得なくなる。
これらを理由に、県は地下水依存からの脱却が必要としている。
県内を河川別に流域に分けると、地下水の依存度は、県北西部から南東部に続く鬼怒・小貝川流域は37・5%、県北東部の那珂・久慈川流域は42・2%で、思川流域の依存率は高い。
他の流域にはそれぞれに水道関連ダムがあるのに対し、思川流域にはないためだ。2市3町のうち、茨城県内から水道供給を受けている野木町を除けば地下水以外に水源はない。
2市3町の一帯は「地盤沈下が続いている」(県砂防水資源課)とも指摘されている。地盤沈下が問題視された埼玉県東部では、地下水への依存率を現在は20%程度にまで下げ、沈下量の抑制を図っている。
南摩ダム事業を巡っては、利水計画や巨額の費用を理由にした反対意見もある。県は13年度予算案にダム関連道路の整備事業費などとして4億円を計上しているが、本体の建設は、国交省の検証で妥当と認められるまで再開できない。
◇
南摩ダム(思川開発)事業 1都4県(栃木、埼玉、千葉、茨城)の利水と治水を目的に2001年から用地取得などが始まったが、09年に民主党政権下で一時凍結された。県内では、県南2市3町の代替水源としての役割も担う予定。
福田知事は「水源確保は水の危機管理、安全保障からいっても重要だ」と、事業再開に強い期待感を示している。
利根川水系河川整備計画の策定に関する要請(8)(利根川・江戸川河川整備計画原案の基本的な問題点)(2013年3月18日)
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利根川流域市民委員会は3月18日の利根川・江戸川有識者会議に下記の要請書を提出しました。
2013年3月18日
利根川・江戸川有識者会議 委員 各位
利根川流域市民委員会
共同代表 佐野郷美(利根川江戸川流域ネットワーク)
嶋津暉之(水源開発問題全国連絡会)
浜田篤信(霞ヶ浦導水事業を考える県民会議)
連絡先 事務局(深澤洋子)
利根川水系河川整備計画の策定に関する要請(8)(利根川・江戸川河川整備計画原案の基本的な問題点)
利根川・江戸川有識者会議は本日第11回会議の後、引き続き開催されるのか、予断を許さない状況になっています。前々回の会議での泊宏河川部長の発言にもあったように今回または次回で打ち切りになる可能性が高くなっています。
打ち切りになれば、国土交通省関東地方整備局は、利根川・江戸川河川整備計画原案を微調整して計画案とし、そのあと、関係都県知事の意見を聞いて計画を近々のうちに策定しまうことが予想されます。利根川・江戸川有識者会議での議論、パブリックコメント、公聴会の意見聴取も、所詮、関東地方整備局は通過儀礼としか考えていないようです。
しかし、利根川の河川整備計画は利根川の今後30年間の河川整備の内容を定めるものですので、現在および将来の利根川流域住民の生命と財産を本当に守ることができ、且つ、利根川の自然環境にも十分に配慮した計画が策定されなければなりません。利根川流域住民にとってきわめて重要な意味を持つ計画を拙速に策定すれば、将来において大きな禍根を残すことになります。
利根川・江戸川有識者会議の委員の参考に資するため、利根川・江戸川河川整備計画原案の基本的な問題点を下記のとおり、まとめました。
委員の皆様におかれましては、下記の問題点をお読みいただき、利根川・江戸川河川整備計画原案について十分に議論する場の確保を関東地方整備局に求めるとともに、原案の是非を根底から検討されることを要請します。
1 八ッ場ダム本体関連工事を進めるための拙速策定でよいのか。
関東地方整備局が利根川・江戸川河川整備計画の策定をなぜ急ごうとするのか、本来は利根川水系全体の河川整備計画を策定しなければならないのに、なぜ本川だけの整備計画だけをつくろうとするのか、なぜ有識者会議の議論を打ち切ろうとするのか、その理由は八ッ場ダム本体関連工事の早期着手にあります。
民主党政権下では2011年12月22日の藤村修官房長官の裁定により、八ッ場ダム本体工事の予算執行は利根川水系河川整備計画の策定が前提条件となりました。昨年12月の総選挙で自公政権に交代しましたが、八ッ場ダム建設計画の上位計画である利根川河川整備計画の位置づけなしで八ッ場ダムの本体工事に入ることは法的な正当性がなく、世論の反発を招きかねないとして、利根川・江戸川河川整備計画の策定を急いでいると推測されます。
しかし、現在および将来の利根川流域住民の生命と財産に関わるきわめて重要な意味と役割を持つ利根川河川整備計画が、八ッ場ダム本体関連工事の早期着手のために拙速に策定されることは本末転倒であるといわざるをえません。
八ッ場ダム建設基本計画ではダム完成予定年度は2015年度末となっていますが、工期の大幅な延長は必至となっています。昨年2月の国会で当時の前田武志国交大臣は、八ッ場ダムの完成は本体工事着手後約7年かかると答弁しており、今すぐに着手しても完成は2020年度になります。これは主に、関連事業である付替え鉄道(JR吾妻線)の工事の遅れによるものなのですが、一方で、治水・利水両面での八ッ場ダムの必要性が希薄になっていることが背景にあります。
このように八ッ場ダムは仮に推進しても完成は2020年度以降のことなのですから、八ッ場ダム本体工事の早期着手のために、利根川河川整備計画の策定を急ぐ理由はなく、八ッ場ダムの是非をあらためて議論すべきです。いわば、八ッ場ダム本体関連工事の早期着手を企図する国土交通省の面子のために、本川だけの利根川・江戸川河川整備計画が急いで作られようとしているのです。このような本末転倒の話が罷り通ってよいはずがありません。
2 八ッ場ダムを位置づけるための治水目標流量の引き上げ
2006~2008年の利根川水系河川整備計画の策定作業で関東地方整備局が示した計画案のメニューでは本川の治水安全度1/50、治水目標流量約15,000㎥/秒(八斗島地点)でしたが、2012年度に策定作業が再開されてからは、関東地方整備局の計画案は本川の治水安全度1/70~1/80、治水目標流量17,000㎥/秒に引き上げられました。2006~2008年に示し、有機者会議や公聴会、パブコメで意見も聴いた計画案の枠組みを関東地方整備局が自ら勝手に変えてしまうのですから、行政としては常軌を逸した乱暴な進め方という他ありません。
2月14日会議の配布資料2「原案補足」2㌻に八斗島地点上流の洪水調節施設の効果量の表(8洪水の引き伸ばし計算結果)が示されています。その表は別紙1の表1に示すとおりで、既設ダム、八ッ場ダム、烏川内洪水調節施設、既存施設の機能増強(ダム再編事業)の洪水調節によって、治水目標流量17,000㎥/秒を概ね、河道目標流量14,000㎥/秒以下に下げるようになっています。八ッ場ダムなしでは、治水目標流量17,000㎥/秒に対応できないようになっています。
しかし、治水目標流量が2006~2008年当時の案のように15,000㎥/秒ならば、どうなるでしょうか。「原案補足」2㌻の表の数字に15,000/17,000を乗じて、比例計算で単純に治水目標流量15,000㎥/秒とした場合の八斗島地点上流洪水調節施設の効果量を試算した結果を別紙1の表2に示します。
ただし、この「原案補足」2㌻の表は、国交省が八ッ場ダムの効果量を従前の数字よりかなり大きくしたものです。国交省による従前の計算では八ッ場ダムの洪水ピーク削減量は基本高水流量22,000㎥/秒に対して600㎥/秒(31洪水の引き伸ばし計算結果の平均)で、削減率は2.7%でした。ところが、「原案補足」の表では八ッ場ダムの効果量は8洪水の平均で1,176㎥/秒で、目標流量17,000㎥/秒に対する削減率は6.9%になり、従前の削減率の2.6倍に跳ね上がっています。八ッ場ダムの効果が2.6倍になったのは、一つは八ッ場ダムの洪水調節ルールを八ッ場ダム基本計画に記載されている本来のルールとは違うものにしたこと、もう一つは洪水流出計算の新モデルが八ッ場ダムの効果が大きくなるようにつくられたことによるものです。
そのように、「原案補足」の表は八ッ場ダムの効果を引き上げる意図が入ったものですが、それでも、治水目標流量を15,000㎥/秒にすれば、別紙1の表2のとおり、既設ダムの効果だけで、河道目標流量14,000㎥/秒以下に下げることが可能となります。八ッ場ダムも烏川内洪水調節施設も既存施設の機能増強(ダム再編事業)も不要となります、
このことから見て、2006~2008年当時の治水目標流量約15,000㎥/秒から今回の原案の治水目標流量17,000㎥/秒への引き上げは、八ッ場ダム等を河川整備計画に位置づけるために行われたものであることは明らかです。
3 治水目標流量案17,000㎥/秒の科学的根拠の破綻
利根川・江戸川河川整備計画原案の治水目標流量17,000㎥/秒(八斗島地点)は、国交省が利根川洪水流出計算の新モデルを使って1/70~1/80の治水安全度に相当する流量を算出したものと説明されています。この計算の過程に使われた総合確率法は科学性が疑わしい方法なのですが、この問題はさておき、この新モデルで昭和22年カスリーン台風の再来計算流量は21,100㎥/秒(八斗島地点)であり、同台風の実績ピーク流量の公称値17,000㎥/秒と比べて、4,000㎥/秒以上も過大であることから、新モデルの妥当性が本有識者会議の議論で大きな争点となってきました。
この大きな乖離については八斗島地点上流で氾濫があったことでしか説明できず、その説明資料として国交省が示したカスリーン台風当時の氾濫推定図は洪水が台地や丘陵まで駆け上るというもので、現実と遊離したものでした。大熊孝委員は昭和40年代の東京大学大学院生時代に利根川周辺の現地で丹念に聞き取り調査を行った結果から、カスリーン台風当時の八斗島上流の氾濫は小さなものであり、1,000㎥/秒にも満たないと断じています。したがって、国交省による21,100㎥/秒という再現計算流量は非常に過大な値であることが明らかです。
さらに、2月21日の本有識者会議で新たに配布された資料3「治水調査会利根川小委員会・利根川委員会の議事録」(カスリーン台風直後の昭和22年11月から24年2月までの建設省内の委員会の議事録)とその委員会報告(建設省「利根川改修計画資料Ⅴ」)を読むと、カスリーン台風洪水の八斗島地点の実績流量とされている17,000㎥/秒は政治的に決められたものであり、実際の実績流量はそれより小さい数字で、15,000㎥/秒以下であったことを知ることができます。
また、この議事録を見ると、上述の氾濫による流量減少は、昭和22~24年の委員会では一切議題になっていません。上流部の氾濫で八斗島の洪水ピーク流量が大きく減少したならば、実績流量の評価においてそのことが議論の重要なテーマになって当然だと思われるのですが、それについて議論が行われた形跡がありません。そのことは八斗島より上流部での氾濫は比較的小さなもので、取り上げる必要がない程度のものであったことを物語っています。
カスリーン台風の実績流量が実際には17,000㎥/秒ではなく、15,000㎥/秒以下なのですから、国交省の新モデルによる再来計算流量21,100㎥/秒との差は6,000㎥/秒以上となり、21,100㎥/秒の過大さが一層明白になってきました。
氾濫量を仮に大きめに見て1,000㎥/秒としても、再来計算流量は16,000㎥/秒以下になるべきです。
以上の事実を踏まれば、原案の治水安全度1/70~1/80に相当する流量の真値は17,000㎥/秒よりはるかに小さい数字になります。この真値を比例計算で推測すると、
17,000㎥/秒×(16,000㎥/秒÷21,100㎥/秒)=約12,900㎥/秒となります。
以上のとおり、カスリーン台風の正しい実績流量に合わせて洪水流出モデルを構築すれば、関東地方整備局の1/70~1/80を前提としても、その洪水ピーク流量は15,000㎥/秒を大きく下回る流量になるのですから、八ッ場ダム等の新規洪水調節の必要性は皆無となります。
4 巨額の河川予算を使い続けることが前提になっていて、実現性がない利根川・江戸川河川整備計画原案
本有識者会議の第9回会議で関東地方整備局は「河川整備計画原案の治水対策で想定している費用は約8,600億円である」と答えています。同様な数字が八ッ場ダム建設事業の検証の開示資料にも示されています。この時の総額はほぼ同じ8,394億円で、その内訳は別紙2のとおりです。
しかし、中身を見ると、事業費の過小見積もりが明らかな事業項目が少なくありません。例えば、首都圏氾濫区域堤防強化対策事業は1,687億円となっていますが、実際には同事業の開示資料では2,690億円となっています。また、高規格堤防(スーパー堤防)は82億円となっていますが、原案によるスーパー堤防の整備区間は22㎞もあり、1㎞あたり数百億円規模とされるスーパー堤防がこんなにわずかな事業費で済むはずがありません。八ッ場ダムも今後は地すべり対策などで事業費の大幅増額は必至です。
となると、原案通りの河川整備を実施しようとすれば、1兆何千億円の費用が必要なのであって、それも本川関係だけです。今回の原案の計画対象外となっている支川関係を含めると、2兆円を超えるかもしれません。
日本は過去につくりすぎた社会資本の老朽化により、その更新と維持管理に必要な投資が次第に増大して、新規の社会資本投資が先細りになる時代になっていくことは周知の事実です。そのことを踏まえれば、利根川の河川整備にそのように巨額の河川予算を投じることはもはや不可能です。
利根川・江戸川河川整備計画原案は事業費の面から見て実現性がなく、絵に描いた餅に過ぎないのです。
5 流域住民の安全を極力早く確保できる治水対策を厳選した河川整備計画を!
巨額の河川予算を利根川に投じ続けることはもはや困難な時代になってきたので、利根川水系においても流域住民の安全を極力早く確保できる治水対策を厳選して、そこに河川予算を集中して投じるように河川行政を変えていかなければなりません。そうしなければ、利根川流域の住民は氾濫の危険性がある状態に放置されてしまうことになります。
利根川では堤防の高さはほとんどの区間で確保されていますので、堤防のかさ上げは今後のメインの治水対策ではありません。また、八ッ場ダムは治水効果がわずかで、喫緊の対策にはなりえません。
喫緊の治水対策は脆弱な堤防の強化とゲリラ豪雨による内水氾濫への対策です。さらに、想定を超える洪水への対策も考えなければなりません。これらの喫緊の治水対策に重点をおいた実現性がある利根川河川整備計画が策定されなければなりません。
① 脆弱な堤防の強化
利根川及び江戸川の本川・支川では洪水の水位上昇時に破堤する危険性がある脆弱な堤防が各所にあり、浸透防止対策が必要な区間の割合は利根川本川62%、江戸川60%にも及んでいます。もし破堤すれば、甚大な被害をもたらすので、脆弱な堤防の強化工事を急いで進めなければなりません。脆弱な堤防では洪水時の水位上昇で堤内地への漏水が起き、破堤の危険が生じることがあります。2001年の台風10号では埼玉県加須市大越(おおごえ)で堤防の漏水事故がありました。6都県知事は2009年10月19日の共同声明で2001年のような堤防の漏水事故があるから、八ッ場ダムが必要だと主張しましたが、それは全く非科学的な意見です。堤防の漏水は堤防の強化でしか防ぐことができないのであって、八ッ場ダムで洪水位をわずかに下げても何の意味もありません。6都県知事たちの主張は、実情にあまりに無知で、利根川流域の住民の安全を真剣に考えない無責任なものと言わざるをえません。八ッ場ダムではなく、脆弱な堤防の強化こそが利根川治水の喫緊の課題なのです。
② ゲリラ豪雨による内水氾濫への対策
利根川流域における最近の氾濫はゲリラ豪雨が引き起こす内水氾濫(小河川の氾濫を含む)ばかりです。2011年9月のはじめにも群馬県南部で記録的な大雨があり、伊勢崎市等で大きな浸水被害がありましたが、これも内水氾濫でした。近年はこのようなゲリラ豪雨がしばしば起きるようになりましたので、雨水貯留・浸透施設の設置、排水機場の強化など、内水氾濫対策に重点をおいた整備事業を早急に進める必要があります。
③ 想定を超える洪水がきても壊滅的な被害を受けない対策
3.11東日本大震災を踏まえれば、利根川においても想定を超える洪水が襲った場合に壊滅的な被害を受けない治水対策にも取り組まなければなりません。それは治水計画の洪水目標流量を引き上げて、ダムなどの大きな河川構造施設を次々と整備することではありません。そのような施設整備は巨額の予算ときわめて長い年数を要するため、実現が不可能です。想定を超える洪水が来ても、壊滅的な被害を防止できる現実に実施可能な対策を進めていかなければなりません。それは、越流することがあっても直ちに決壊しない堤防(耐越水堤防)に変えていくことです。
ⅰ スーパー堤防の中止を!
耐越水堤防への改善は今後の治水対策の要ですが、それはスーパー堤防ではありません。スーパー堤防は1㎞の整備に数百億円規模の事業費を要するため、実際にはごく限られた区間の「点」的な整備しかできず、治水対策として何の役割も果たしません。税金を浪費するだけのスーパー堤防事業は直ちに中止すべきです。
ⅱ 首都圏氾濫区域堤防強化対策事業の見直しを!
堤防強化という名目で利根川・江戸川の右岸側堤防(約70㎞)を大きく拡幅する首都圏氾濫区域堤防強化対策事業が進められています。この事業は堤防の裾野を大きく拡げるため、1,200戸以上の家屋の移転が必要となるもので、完成まで非常に長い年月を要し、事業費も大きく膨れ上がることが予想されます。現計画の事業費でも約2,690億円、1㎞当たり40億円にもなります。治水対策は、最小の費用で最大の効果があり、長い年月を要しないものが選択されなければなりません。もっと安上りな堤防強化対策を選択すべきです。
ⅲ 安価なハイブリッド堤防技術を導入して耐越水堤防へ
耐越水堤防は巨額の費用をかけることなく、堤防を強化できる技術が選択されなければなりません。鋼矢板やソイルセメント連続地中壁を堤防中心部に設置するハイブリッド堤防が安価な技術で、1㎞当たり数億円規模で実施できるとされています。このような技術による堤防強化工事を進めれば、短い期間で利根川の堤防を抜本的に強化することができます。ハイブリッド堤防による堤防強化を利根川水系河川整備計画に明記すべきです。
6 自然の回復を目指した利根川河川整備計画を!
利根川では過去のダム建設や河川改修などの河川改変事業によって利根川の自然は大きなダメージを受けてきました。最近、絶滅危惧種に指定されたウナギを例にとれば、霞ケ浦・北浦を含む利根川水系のウナギの生産量は1960年代の終わりには1,000トンを超える漁獲量を示し、全国漁獲量の1/3を占めていましたが、2000年代には60トン前後まで低下し、最盛期の約1/20となり、まさに絶滅の危機の状態にあります(二平章(茨城大学地域総合研究所「ウナギ資源の減少と河口堰建設」(東京水産振興会平成23年度事業報告)より)。
このように利根川の自然がおかれている悲しむべき現実を踏まえれば、利根川河川整備計画の策定においては自然を極力回復させることを企図すべきです。その点で、大いに参考になるのは、現在、策定作業が進められている円山川水系河川整備計画(近畿地方整備局)です。この河川整備計画原案では、自然の回復を目指して、①本川と支川・水路との間の落差を解消し、生物の移動可能範囲の拡大を図る、②水域から山裾までの河床形状をなだらかにして、山から河川の連続性を保全する、③川の営力による自然の復元力を活かしつつ、河川環境の整備を行い、過去に損なわれた湿地や環境遷移帯等の良好な河川環境の保全・再生を図ると書かれています。
私たちはこの原案に盛り込まれた素晴らしい理念に感動を覚えました。関東地方整備局においても円山川水系河川整備計画原案を見習って自然の回復を目指した利根川水系河川整備計画を策定すべきです。
7 利根川水系全体の河川整備計画を!
今回の原案は利根川・江戸川の本川のみを対象としています。しかし、利根川水系には渡良瀬川、鬼怒川、霞ケ浦など、大きな支川がいくつもあり、それらの支川も含めて、水系全体の河川整備計画を策定しなければなりません。支川と本川は相互に関係しており、特に支川の状況が本川に影響するので、本川だけの整備計画を先行して策定することは策定手順が根本から間違っています。
全国の一級河川の直轄区間では72水系で河川整備計画が策定されてきていますが、今回の利根川の原案のように、本川の河川整備計画を先行して策定した水系は皆無です。石狩川以外は水系全体の河川整備計画を策定しています。唯一の例外である石狩川では支川の河川整備計画を先に策定し、それを受けて本川の河川整備計画を策定しています。支川の状況が本川に影響することを考えれば、当然の順序です。利根川においても、本川を先行して策定することをやめて、他の一級水系と同様に、支川も含めて水系全体の河川整備計画の策定作業を進めることが必要です。
8 事実に基づく利根川水系河川整備計画の策定を!
今回の利根川・江戸川河川整備計画原案の資料を見ると、事実に基づいていないものが少なくありません。
① 八ッ場ダムの治水効果
たとえば、八ッ場ダムに関しては2月14日会議の配布資料2「原案補足」2㌻に記載されている八ッ場ダムの治水効果は2で述べたように過大な計算値が記されています。
八ッ場ダムの治水効果は決して大きなものではありません。八ッ場ダムは最近60年間で最大の洪水である1998年9月洪水においてその水位低下効果を観測流量から計算してみると、別紙3の図1のとおり、最大で見ても八斗島地点でわずか13cmしかありません。その時の最高水位は堤防天端から4mも下にあって、確保すべき余裕高2mを大きく上回っていましたから、その水位低下は治水対策上、何の意味もありませんでした。
さらに八ッ場ダムの治水効果は下流に行くほど、大きく減衰していくことが関東地方整備局の計算でも明らかになっています。これは、河道貯留効果といわれる現象によるものです。一つは支川が流入し、本川の流れと支川の流れが互いに押し合って減勢されること、もう一つは、川幅が広がって滞留することによって洪水の流れの勢いが弱まることによるものです。
このように実際の洪水では八斗島地点での八ッ場ダムの治水効果は小さく、下流に行けば、その効果は減衰していくのですから、八ッ場ダムは利根川の治水対策として無用のものです。
② 利根川下流部の流下能力
もう一つの例として、2月14日会議の配布資料2「原案補足」1㌻の「利根川の流下能力図」を見てみましょう。同図を見ると、利根川の佐原付近より下流の流下能力(計画高水位で評価)は6,000㎥/秒程度になっており、河道目標流量案8,500㎥/秒に対して大きく不足しています。このことから、原案では利根川下流部では大規模な河道掘削が必要だとしています。別紙2の事業費の内訳をみると、利根川下流部の河道掘削の費用は2,700億円にもなっています。
しかし、この流下能力の大きな不足は事実でしょうか。布川地点で最大7,559㎥/秒が流れた1998年9月洪水の痕跡水位を見ると、別紙3の図2に示すとおり、計画高水位を下回っています。特に河口堰より上流では計画高水位を0.5~1m下回っています。この痕跡水位から推測すると、計画高水位で評価した実際の流下能力は8,000㎥/秒かそれ以上あります。
このように、原案の資料は事実によらないデータが少なくありません。原案の資料の信憑性を洗い直して、利根川水系河川整備計画を原点から作り直していくことが必要です。
以上
追記 利根川流域市民委員会の賛同団体34団体の名簿は、2012年9月25日に提出した「利根川水系河川整備計画の策定に関する要請(1)(計画策定の基本的な事項について)」の末尾をご覧ください。