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社説  石木ダム事業 必要性の説明が不十分だ

2019年12月4日
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石木ダム問題に関する西日本新聞の社説を掲載します。
真っ当な意見であると思います。

社説  石木ダム事業 必要性の説明が不十分だ
(西日本新聞2019/12/4 10:45) https://www.nishinippon.co.jp/item/n/565146/

一度動きだしたら、状況が変わっても止められない。大型公共事業を巡って散々指摘されてきた問題ではないだろうか。私有地の強制収用まで準備しているのなら、慎重な上にも慎重な判断を求めたい。
長崎県川棚町に県と佐世保市が計画する石木ダム建設(事業費約285億円)である。同市の利水と川棚川流域の治水を目的に1975年、国に事業採択されて44年になるが、本体に着工できていない。予定地の一部住民が反対し、立ち退きにも応じないことが最大の理由だ。
反対住民らは「水の需要予測が実態とかけ離れている」「治水も河川改修で対応可能だ」として、ダムは必要ないと主張している。
国の事業認定取り消しを求めた訴訟で、福岡高裁は先週末、一審長崎地裁に続き住民側の訴えを退けた。国や長崎県の判断に不合理はないとの理由だ。
住民側は上告する方針で、工事差し止めを求める別の訴訟も係争中である。知事の判断で予定地を強制収用する代執行が可能な状態だが、着工はまだまだ見通せないと言える。
反対がここまで強硬になった理由の一つに、県が82年、予定地の測量に県警機動隊を投入し住民を力ずくで排除した経緯がある。県はまず、信頼関係を損なった事実を重く受け止め、交渉の前提となる信頼回復に努めるべきだ。そうした意味で、県が交渉期間を確保するため工期を2025年度まで3年延長したことは評価できる。
その上で再検討すべきは、反対住民が問う「水の需要予測」「治水の代替策」についてだ。豪雨災害が相次ぐようになり水害対策は重要で、渇水の不安を解消することも大切である。ただ、人口減少や経済情勢の変化など44年前とは諸条件が大きく異なることもまた明らかだ。
国立社会保障・人口問題研究所によると佐世保市の人口推計は20年24万8千人、30年23万1千人で、10年の26万1千人から大きく減少する。水需要も比例すると考えるのが妥当だろう。
石木ダムを造って日量約4万トンの水を新たに確保する必要性が実際にあるのか。佐世保市は水需要予測を含む利水の事業再評価を、予定を早めて実施する方針という。透明性を確保し、丁寧な評価を望みたい。
治水面でも、県側は「100年に1度の規模の洪水に対応するためのダム」としてきたが、他の手段は本当にないのか。反対住民に限らず誰もが納得できる形で説明すべきだ。
石木ダム建設は強制収用に反対する国会議員らの組織も発足し、全国的関心も集めている。一度立ち止まる勇気も必要だ。

台風19号の堤防決壊は防げた?実績ある対策を「封印」した国交省の大罪

2019年12月3日
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ジャーナリストの岡田幹治さんが書かれた台風19号水害に関する論考を掲載します。今後の河川行政のあり方を問う重要な論考です。

 

台風19号の堤防決壊は防げた?実績ある対策を「封印」した国交省の大罪

(ジャーナリスト 岡田幹治)

(ダイヤモンド・オンライン2019/12/0312/3(火) 6:01配信) https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191203-00222215-diamond-bus_all&p=1

(写真)台風19号で決壊した千曲川の堤防

平成以降で最大級の被害をもたらした台風19号災害の特徴は、多数の河川で堤防が決壊したことだ。決壊は7県で71河川140カ所に達し、氾濫した濁流が人や街をのみ込んだ。

なぜ堤防は決壊したのか。

台風が猛烈な強さだったため大量の雨を広範囲に降らせたことが最大の原因だが、国土交通省の河川政策の誤りを指摘する声も出ている。

比較的安価な堤防の決壊防止方法が開発され、一部の河川で施工され、実績も上げているのに、ダム建設などの邪魔になるといった理由で「封印」したというのだ。

● 安価な「耐越水堤防」 建設を2年でストップ

10月12日に静岡県に上陸し、東日本を縦断した台風19号は、死者・行方不明者101人、住宅浸水(床上・床下)約4万3200戸(=消防庁発表、12月2日現在)という大きな被害をもたらした。
被災地では今も、多くの人たちが生活となりわいの基盤を失ったままだ。

堤防決壊の原因で最も多いのは、大雨で川の流量が増え、堤防を越えてあふれる「越水」によるものだ。

土で出来ている堤防は水に浸食されやすいため、堤防の川側の斜面(表のり)はブロックなどで覆っている。しかし、陸側の斜面(裏のり)には何の対策も施されていないので、あふれ出た水が裏のりを洗掘して崩し、堤防の崩壊(破堤)につながる。

この弱点をなくすため、建設省(国交省の前身)の土木研究所が開発したのが、「耐越水堤防」だ。

従来の堤防に手を加え、越水しても堤防は陸側から浸食されにくいように、「裏のり」を遮蔽シートやブロックなどで覆って強化し、「堤防の最上部(天端〈てんば〉)」と「裏のりの最下部(のり尻)」も洗掘されないようにするものだ。

「アーマー・レビー(よろいをまとった堤防)」「フロンティア(最先端)堤防」などと呼ばれるこの堤防強化工法は、1988~98年に、加古川(兵庫県加古川市、7.2キロメートル)や那珂川(茨城県水戸市・ひたちなか市・那珂市、9.0キロメートル)など9河川で施工された。

堤防を強化するには、堤防のかさ上げという方法もあるが、裏のりの幅を広げる必要があり、用地買収などに費用も時間もかかる。それに対し、耐越水堤防は比較的安価にすぐに実施できるのが利点だった。

建設省は全国的な普及をめざし、2000年3月、設計方法を記した「河川堤防設計指針」(第3稿)を策定し、全国の地方建設局や都道府県に通達した。

ところが、わずか2年後の2002年7月、この設計指針は廃止される。

これで耐越水堤防は国が認めない工法となり、普及は止まった。

● ダムやスーパー堤防建設の 根拠がなくなるのを恐れた?

国交省はなぜ態度を急変させたのか。

当時、川辺川ダム(熊本県)の建設をめぐって住民討論集会が開かれており、ダム反対派が「耐越水堤防にすれば、大雨が降っても堤防は決壊しないから、洪水を防ぐためのダム建設は不要になる」と主張していた。

このため、耐越水堤防はダム推進の邪魔になると判断したと考えられている。

それから約20年がたったが、かつて建設された耐越水堤防は成果をあげている。

石崎勝義(いしざきかつよし)・旧建設省土木研究所次長が昨年3月、加古川の耐越水堤防を視察して調べたところ、2004年の豪雨でもびくともしなかったという。(石崎勝義『堤防をめぐる不都合な真実』/『科学』2019年12月号)

今年の台風19号では、那珂川で堤防が3カ所で決壊したが、耐越水堤防に強化された箇所は決壊していない。
国交省も堤防強化の必要性を認めており、2015年には、氾濫が発生しても被害を軽くする「危機管理型ハード対策」を打ち出した。しかしその内容は、「アスファルト舗装などによる天端の保護」と「ブロックなどによるのり尻の補強」の二つで、肝心の「裏のりの補強」は含まれていない。

なぜ国交省は今も、耐越水堤防を拒み続けるのか。

長年にわたりダム問題を研究している嶋津暉之(しまづてるゆき)・水源開発問題全国連絡会共同代表は、スーパー堤防(高規格堤防)との関係を指摘する。

スーパー堤防は、堤防の裏のりの勾配をものすごく緩やかにし、裏のりの幅を堤防の高さの30倍に広げて、その上を住宅地や公園にする。国交省はこれを、越水に耐えるただ1つの工法だとして推進している。 耐越水堤防を認めると、スーパー堤防推進の根拠がなくなってしまうことを恐れているというのだ。

石崎氏によれば、耐越水工法は1メートル当たり30万~50万円で施工できる。1メートル50万円としても1キロメートルで5億円、1000キロメートルで5000億円だ。

江戸川の片側のわずか120メートルを整備するだけで40億円以上もかかるスーパー堤防(東京都江戸川区小岩1丁目地区の場合)に比べてケタ違いに安い。

河川事業とダム建設事業を合わせた治水のための年間予算は、約6400億円(国直轄事業と補助事業の合計、2018年度当初予算)もある。ダム建設費を大幅に削って耐越水化に充てれば、数年程度で全国の堤防を強化できる。

石崎氏は、完成から年月がたって沈下した堤防や、川幅が狭くなる場所、本流に支流が合流する地点など、特に危険な部分を急いで強化するだけでも大規模な水害はなくせるとし、地球温暖化が進行し、豪雨や台風が巨大化した今こそ、耐越水堤防を復活すべきだと主張している。

● ダムの洪水予防効果は限定的 中下流地域では不明

ところで、国交省が推進したダムは、水害被害を防止・低減しただろうか。

ダム関係の訴訟をいくつも手掛けた西島和(にしじまいずみ)・弁護士は、「ダムの治水効果は不確実で限定的。しかもダムは時に凶器になる」と話す。河川の上流部に建設されるダムは、集水域に降った雨水を貯水できるだけで、中下流域に降った雨には対応できない。また治水効果はダムから遠ざかるほど減少し、中下流域(平野部)での効果は限られる。

たとえば2015年9月の鬼怒川水害では、上流に国交省管理の大規模ダムが4つもあったにもかかわらず、下流の茨城県常総市で堤防が決壊し、堤防のない箇所からの溢水もあって甚大な被害を生んだ。

今年の台風19号については、国交省関東地方整備局が11月5日、利根川の上流の7つのダムの治水効果(速報)を発表した。

それによると、八ッ場ダム(やんばダム、群馬県長野原町)や下久保ダム(群馬県藤岡市・埼玉県神川町)など7ダム合計で1億4500万立方メートルを貯水した結果、上流と中流の境目にある観測地点(群馬県伊勢崎市八斗島〈やったじま〉)では、水位をダムがない場合に比べて約1メートル下げたと推定されるという。

実際、利根川の水位は八斗島地点では氾濫危険水位を超えなかった。

しかし、中下流域に対する上流ダム群の治水効果は不明だという。利根川中流の観測地点(埼玉県久喜市栗橋)では最高水位が9.67メートル(基準面からの高さ)に達し、一時は氾濫危険水位の8.9メートルを超えた。

ただ、堤防はこの地点では氾濫危険水位より約3メートル高く造られており、氾濫は免れた。氾濫を防いだのは上流のダムではなく、堤防だった。

● 流量調節機能を失う場合も 危険が大きい緊急放流

ダムによる治水では、満杯になると洪水調節の機能を失うというもう一つの欠点がある。

堤防を守るために、流入した水量と同量を放流する「緊急放流」が行われるのだ。だがこの場合、自然界では起こり得ない流量の急上昇が起き、避難が難しい。

たとえば昨年の西日本豪雨では、愛媛県の肱川(ひじかわ)で2つのダムの緊急放流が行われ、西予市と大洲市ですさまじい被害を出した。

今年の台風19号では関東と東北の6つのダムで緊急放流が行われ、幸い水害は起きなかったが、ダム下流の人たちは右往左往させられた。

利根川上流の7ダムでは、下久保ダムが緊急放流の可能性があると関東地方整備局が発表していた。結果的に回避されたが、ダムは一時、ほぼ満杯になっていた。
八ッ場ダムは7500万立方メートルを貯水したが、これは本来の貯水能力を1000万立方メートルも上回る貯水量だった。多目的ダムである同じダムは使用できる容量を、上水道と工業用水のための利水用2500万立方メートル、洪水防止のための治水用6500万立方メートルとしている。

今は本格稼働前に安全性を確認する試験貯水中なので、利水用の容量に大量の空きがあり、治水用の容量を大きく超える貯水ができた。

だが、もし本格運用が始まっており、利水用容量が満杯に近い状態のときに、台風19号級の大雨が降れば、緊急放流が実施される可能性が大きい。想像するだけで恐ろしい事態だ。

● 今後の河川政策に 19号の教訓を生かせ

台風19号災害からどんな教訓を学び、今後の河川政策にどう生かしていくか。嶋津氏は次のように指摘している。

まずダムに対する過大評価をやめることだ。

八ッ場ダムは約6500億円の巨費と地元住民の生活の犠牲という代償を払って建設され、計画から半世紀たって完成したが、いまや水余りの時代になって利水の意義はなくなり、治水の効果も限定的であることが明らかになった。

八ッ場ダムに投じられた約6500億円を耐越水工法などの堤防強化に充てていれば、台風19号による堤防決壊はかなり防げた可能性がある。そう考えると、残念でならない。

今後の治水対策は、今回の災害を公正に検証し、個別の対策については費用・時間・効果を総合的に検討して優先順位をつけて実施していくべきだ。

氾濫防止にすぐに役立つのは、河床の掘削を随時行って河道の維持に努めることと堤防の強化であり、それには耐越水堤防の復活が欠かせない。

(ジャーナリスト 岡田幹治)

石木ダム 二審も事業取り消し認めず 原告住民ら憤りと落胆

2019年12月1日
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11月29日、石木ダム事業の事業認定の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁(西井和徒裁判長)は住民らの控訴を棄却しました。住民側は上告する方針です。その記事とニュースをお送り掲載します。
行政の誤りを正すのが司法の役目であるはずなのですが、司法は本当に無力ですね。
特に、福岡高裁の西井和徒裁判長は2018年7月30日の諫早干拓訴訟で、潮受け堤防排水門の開門命令を無効にする判決を出した裁判官ですので、最初から期待することができない人物でした。
何とも悔しいですが、引き続き頑張りましょう。


石木ダム 二審も事業取り消し認めず 原告住民ら憤りと落胆

(長崎新聞2019/11/30 11:50) https://this.kiji.is/573339196492432481?c=39546741839462401

(写真)報告集会で判決内容を批判する原告の岩下和雄さん(左)=福岡市、福岡県弁護士会館
石木ダムの事業認定を巡る訴訟で、福岡高裁は29日、原告の請求を退けた一審判決を支持した。水没予定地で暮らす13世帯は、土地収用法に基づく手続きで先祖代々の土地の所有権を失い、明け渡し期限も過ぎている。公権力による行政代執行が現実味を帯びる中での高裁の判断に、原告や支援者らの間には憤りと落胆が広がった。一方、事業推進の行政や市民は「必要性が認められた」と安堵(あんど)した。
控訴棄却の短い主文を読み上げ、裁判官たちは足早に法廷を後にした。わずか数秒で言い渡された判決。「これで終わり?」「こんなのおかしい」。マイクロバスに乗り合わせ、朝から2時間近くかけて裁判所にやってきた住民や支援者らは口々に不満をもらした。
住民の岩下すみ子さん(71)は「これが裁判って言えるのか」と肩を落とし、傍聴席から立ち上がった。厳しい判決は予想していた。昨年12月に口頭弁論が始まった控訴審。今度こそは、という願いとは裏腹に、原告側が求めた証人尋問などはことごとく却下され、わずか3回の弁論で結審。代理人弁護士からも「勝てる見込みは少ない」と聞いていた。
ダム建設に伴う付け替え道路工事現場で毎日抗議の座り込みをしていたが、股関節を痛め、手術のために約1カ月入院した。退院後も本調子とはいかないが、いちるの望みを託して裁判所に足を運んだ。結果は再びの敗訴。それでも、「裁判官に理解してもらえなくても、古里に住み続ける私たちの気持ちは変わらない」と固い決意を口にする。
「まるで私たちから逃げているようだった」。住民の川原千枝子さん(71)は裁判官たちの態度を当てこすった。生活の基盤である土地の権利を失った今、「もう少し丁寧に向き合ってくれてもいいのでは」。判決に納得はできない。
石丸勇さん(70)は控訴審第1回口頭弁論で意見陳述に立った。事業で地域コミュニティーが破壊され、住民が翻弄(ほんろう)された歴史を語り、「代替地に移れば、地域コミュニティーは再現できる」とした長崎地裁の判決を「事実から目を背けている」と批判した。だが高裁判決も全く同じだった。「自分の頭で考えていない。多くの住民が暮らしている土地を強制収用した、過去(のダム事業)にも例がない事態。住民の心の痛みや問題の大きさを見ているのか」と吐き捨てた。
「上告に向け、みんなで引き続き頑張っていこう」。判決後の反対派の集会。弁護団の一人が声を上げると、原告や支援者らから大きな拍手が起きた。


石木ダム 二審も住民側敗訴 福岡高裁「公共の利益優越」

(長崎新聞2019年11/30(土) 12:00) https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191130-00000005-nagasaki-l42

(写真)高裁判決を報告する馬奈木弁護団長(右)=福岡高裁前
長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、反対住民ら106人が国に事業認定の取り消しを求めた訴訟の控訴審で、福岡高裁(西井和徒裁判長)は29日、ダムの公益性を認めた一審長崎地裁判決を支持し、原告側の請求を棄却した。原告側は上告する方針。
西井裁判長は判決で「ダム建設事業によって得られる公共の利益は、失われる利益に優越する」と認め、国土交通省九州地方整備局(九地整)の判断に「裁量の逸脱や濫用はない」と原判決をほぼ全面的に踏襲した。利水に関する専門家の意見書は「判断を左右しない」と退けた。
一審は、同市の利水と川棚川の治水を主目的とする同ダムの必要性などが争点となった。原告側は利水、治水、いずれの面でも建設の必要性はなく、水没予定地の反対住民13世帯の土地を強制的に収用する公共性を欠くと主張。これに対し、長崎地裁は昨年7月、県の治水計画や同市の水需要予測などは合理性を欠くとは言えず、事業認定した九地整の判断は適法と結論付けた。
控訴審で原告側は引き続き、ダムは不要と訴えた。利水面では、同市の水需要予測や保有水源の評価の問題点を指摘した専門家2人の意見書を新たに提出。国側は原判決が適正として棄却を求めていた。
判決後の集会で、住民の岩下和雄さん(72)は「約50年間闘ってきた私たちに対し、判決(の読み上げ)はたった3秒間だった」と憤り、「古里を離れるつもりはない。上告し、事業の不当性をただしていく」と言葉に力を込めた。
石木ダムを巡っては、住民らが県と同市に工事の差し止めを求めた訴訟も長崎地裁佐世保支部で係争中。3月24日に判決が言い渡される予定。

◎馬奈木昭雄・原告弁護団長の話
国民の声に耳を傾ける裁判所の役割を放棄した不当判決。最高裁では必ず勝てると確信し、土地収用法の運用の仕方の違憲性などを訴える。

◎国土交通省九州地方整備局担当者の話
国の主張が認められたものと理解している。住民側が上告し、最高裁で争うことになった場合も、関係機関と協議して適切に対応していく。


石木ダム 二審 「改めて必要性認められた」 推進派、安堵

(長崎新聞2019/11/30 11:45) https://this.kiji.is/573339904459801697?c=39546741839462401

「改めてダムの必要性が認められた」-。石木ダム建設事業を巡る控訴審判決を受け、事業を推進する県や佐世保市、市民団体からは安堵の声が上がった。
同事業を巡っては、県が今月、完成目標を2022年度から25年度に延期する方針を正式決定。延期で、県側は反対住民側との話し合いを進めたい考えだ。
判決を受け、中村法道知事は県庁で報道陣に、「一審に続き、事業の公益上の必要性が認められたと受け止めている」と述べ、反対住民への説得を粘り強く続ける考えを示した。家屋撤去などの行政代執行については、「どうしても他に方法がないという段階で最終的に慎重に判断していかなければならないと思っている」とした。朝長則男市長は「司法判断として、改めて石木ダムの必要性が認められた。事業の進展に向けて、県とともに尽力する」とのコメントを出した。
「石木ダム建設促進佐世保市民の会」の寺山燎二会長は「佐世保市民は渇水に苦しんできた。事業が認められ、ほっとした」と安堵。同市議会石木ダム建設促進特別委員会の長野孝道委員長は「県や市と連携し、(反対派の)事業への理解が深まるよう取り組んでいきたい」と話した。

 

石木ダム訴訟 1審を支持 取り消し求めた住民らの訴え棄却 福岡高裁
(毎日新聞2019年11月29日 20時14分)  https://mainichi.jp/articles/20191129/k00/00m/040/345000c

(写真)石木ダム訴訟の高裁判決を前に横断幕を掲げて裁判所に向かう水没予定地の住民ら=福岡市中央区で2019年11月29日午後0時38分、浅野孝仁撮影
長崎県と同県佐世保市が計画する石木ダム事業(同県川棚町)を巡り、反対する住民ら106人が国に事業認定の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁(西井和徒裁判長)は29日、「国の判断に裁量の逸脱など違法はない」として1審・長崎地裁判決を支持し、住民らの控訴を棄却した。住民側は上告する方針。
石木ダムは佐世保市の水不足解消と治水を目的に建設が計画され1975年に国が事業採択。2013年に国が土地収用法に基づき事業認定した。水没予定地の住民らが提訴し、「(人口減の中で)市の水需要予測は過大で、治水面も河川改修などで対応できる」などと主張していた。
(写真)控訴棄却を受けて「石木ダムNO」とカードを掲げて不満をあらわにする水没予定地の住民ら=福岡市中央区で2019年11月29日午後1時24分、浅野孝仁撮影
判決は、生活用水や工業用水などで需要が増え、24年度に1日4万トンが不足するとした市の予測(12年度算出)について、市民1人の使用水量を全国平均(09年度)より低く設定しているなどと指摘し「明らかに不合理な点があるとはいえない」とした。県の洪水想定についても国の基準などに従っているとし、石木ダムを必要とした判断を妥当とした。
また、移転が必要となる住宅の代替宅地が造成され、地域コミュニティーを一定程度再現することも不可能ではないとし「ダム建設の利益より、失われる利益が大きいとはいえない」と判断した。【宗岡敬介】
(写真)石木ダム訴訟の高裁判決を前に裁判所前で集会を開いた水没予定地の住民ら=福岡市中央区で2019年11月29日午後0時35分、浅野孝仁撮影
原告怒りあらわに「ダムは必要ない」
1審に続く敗訴に、原告らは怒りをあらわにした。
原告団は判決後に記者会見。水没予定地の住民で原告代表の岩下和雄さん(72)は「佐世保市の水需要予測は(算出のたびに)大幅に変わっていて信用できない。ダムは必要ないと確信している」と訴えた。水没予定地は今月18日の明け渡し期限が過ぎ、県による強制排除も可能な状況となっているが、「私たちはこれからも闘い抜き、ふるさとを離れるつもりはない。ただちに上告して、判断を正してもらいたい」と力を込めた。
(写真)判決後、報告集会で話す原告の岩下さん(中央)=福岡市の福岡高裁で2019年11月29日午後1時56分、松村真友撮影
馬奈木昭雄・弁護団長は「高裁の判断は事実誤認で合理性を欠いている。1審判決を上書きしたようで、自分たちの判断はない。極めて不当な判決だ」と批判した。
原告の住民や支援者ら約60人は判決後の集会で、今後も工事現場などでの抗議活動を続けることを誓い合った。【浅野孝仁】


石木ダム、二審も住民敗訴 福岡高裁「事業利益、損失上回る」

(西日本新聞2019/11/30 6:00)  https://www.nishinippon.co.jp/item/n/564042/
(写真)判決後、福岡高裁前で「石木ダムNO」をアピールする原告や支援者=29日午後1時20分ごろ、福岡市中央区
長崎県と同県佐世保市が計画している石木ダム(同県川棚町)を巡り、反対する住民ら106人が国に事業認定取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が29日、福岡高裁であり、西井和徒裁判長は「事業認定の判断に裁量を逸脱した違法はない」として、一審長崎地裁判決を支持し、原告側の控訴を棄却した。原告側は上告する方針。
石木ダムは1975年に事業採択されたが、移転対象のうち13世帯は土地の買収に応じず、建設予定地に残った。国は2013年に事業認定。今月18日には全ての事業予定地が明け渡し期限を迎え、行政による強制撤去が可能な状態となっている。
判決で西井裁判長は、佐世保市が生活用水や工業用水の需要が増加すると見込んだ試算について「不合理な点があるとはいえない」との一審判決を踏襲。また、移転対象の住民には代替宅地が用意されていることを踏まえ「事業による公共の利益は生活用水の確保や洪水調節という地元住民の生命に関わるもので、原告らの失われる利益を優越している」と述べた。
石木ダムを巡っては、水没予定地の住民ら約600人が長崎県と佐世保市に工事差し止めを求める訴訟を起こしており、来年3月に判決が言い渡される。 (鶴善行)
■住民落胆「撤回まで闘う」
石木ダム建設予定地の住民らが国の事業認定取り消しを求めた訴訟で、控訴棄却の判断を示した福岡高裁前に集まった住民たちは、落胆しつつも「建設撤回まで闘おう」と意気込んだ。
ダム予定地を巡っては今月19日から、長崎県による行政代執行の手続きが可能になったばかり。高裁前では判決後も原告や支援者ら約70人が「石木ダムNO!」のプラカードを掲げた。その後の集会では原告の一人、ダム予定地の川原(こうばる)地区で暮らす岩下和雄さん(72)が「50年闘ってきて判決は3秒。判決がいかに不当かを最高裁に正してもらいたい」と訴えた。
弁護団の馬奈木昭雄弁護士は上告する方針を示しており、原告の石丸キム子さん(69)は「裁判がどうあっても川原に住み続ける」。岩本菊枝さん(70)は「また月曜日に弁当を持って頑張りましょう」と述べ、週明けも予定地で座り込みを続ける意向だ。
一方、事業主体の長崎県の中村法道知事は判決について「事業の公益上の必要性が認められた。地元住民の理解が得られるように粘り強く取り組みたい」と述べるにとどめた。 (平山成美、岡部由佳里)


石木ダム2審も住民側訴え退ける

(NHK 2019年11月29日 17時45分)https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20191129/5030006145.html

長崎県川棚町で建設が進められている石木ダムについて、建設に反対する元地権者の住民などが国に事業認定の取り消しを求めた裁判の2審で、29日、福岡高等裁判所は「国の事業認定の判断に裁量を逸脱し、乱用した違法はない」として、1審判決に続いて住民側の訴えを退ける判決を言い渡しました。

石木ダムは、長崎県と佐世保市が水道水の確保や洪水対策を目的に285億円をかけて長崎県川棚町に建設を進めているダムで、4年前、反対する住民など100人余りが、「ふるさとが奪われる」などと国に事業認定の取り消しを求める訴えを起こしました。

1審の長崎地方裁判所は「石木ダム事業は水道用水の確保や洪水調整のため必要がある」として訴えを退ける判決を言い渡し、住民側が控訴していました。
2審では、これまで住民側が「石木ダム事業は、建設に必要な費用に対して、実際に生じる社会的利益が非常に乏しい」などと主張する一方、国側は請求を棄却するよう求めていました。

29日の判決で、福岡高等裁判所の西井和徒裁判長は「石木ダム事業は公益性の必要性があるうえ、経済性と社会性の両面で最も優れているとした長崎県と佐世保市の判断は不合理とはいえないことから国の事業認定の判断に裁量を逸脱し、乱用した違法はない」などとして、1審に続いて住民側の訴えを退ける判決を言い渡しました。
判決のあとに開かれた会見で、住民側の馬奈木昭雄弁護士は「きわめて不当な判決だ。おかしいことはおかしいと世間に声を上げていく」と話していました。
また、住民の岩下和雄さんは「判決は受け入れられず、ふるさとを離れるつもりは少しもない。これからも住民たちと力を合わせていく」として、引き続きダム建設に反対していく考えを強調していました。
住民側の弁護士によりますと、原告側は判決を不服として最高裁判所に上告する方針だということです。

判決を受けて中村知事は、報道陣に対して「第1審に続き、石木ダム事業についての公益上の必要性が認められたものと受け止めている」と話しました。
そしてダム事業の進捗を引き続き、図っていかなければいけないとしたうえで「皆様の理解が得られるように努力していく」と話していました。

また、事業をめぐっては、強制的な家屋の撤去などを伴う行政代執行の手続きに入れるようになっていることについて「ほかに方法がないという段階で、慎重に判断をしなければいけないものなので、今後の事業の推移や進捗状況などを総合的に判断していく必要がある」と述べました。

【石木ダムとは】
石木ダムは、川棚町の洪水対策や佐世保市の水道水確保を目的に40年余り前の昭和50年度に旧建設省が事業を採択し、建設が決まりました。
ダム本体の高さは55.4メートル、総貯水量は548万立方メートルで、完成すれば県が管理するダムの中で、3番目に大きいダムになります。
総事業費は285億円。

長崎県と佐世保市が国土交通省や厚生労働省の補助を受けて川棚町に建設を進めています。

一方、県と佐世保市は建設に反対する住民との土地の買収交渉が難航したことから、土地を強制的に収用しようと、県の収用委員会に「裁決申請」を行いました。
ことし5月、県の収用委員会は、ダム建設に必要なすべての土地を強制的に収用できるようにする裁決を下し、今月18日、すべての土地の明け渡し期限を迎えました。

これにより県は、すでに強制的な家屋の撤去などを伴う行政代執行の手続きに入れるようになっています。
県によりますと、建設予定地には、いまも13世帯・およそ60人が住んでいて、こうした大規模の家屋の撤去などを伴う行政代執行は、全国的にも例がないと見られるということです。
行政代執行について、中村知事はこれまでに「最後の手段だと思っている。事業の進み具合などの事情も考えて慎重に判断すべき課題だ」と述べています。

一方、建設に反対する住民らによる座り込みの影響などで、ダムに水没する県道の付け替え工事などに遅れが出ています。
このため、県はダムの完成時期を3年延期し、令和7年度に見直す方針を有識者らによる「県公共事業評価監視委員会」で説明。
治水の面から事業の再評価を行った結果、「継続すべき」とした対応方針案を示しました。

これに対し、委員会はこの方針案を認める意見書を中村知事に手渡したことから、県は、27日、ダムの完成時期を3年延期し令和7年度に見直す方針を正式に決定しました。
県によりますと、令和7年度にダムを完成させるためには、遅くとも来年中には本体工事を始める必要があるということで、今回の判決が県の判断にどのように影響を与えるか注目が集まります。

「石木ダムを断念させる全国集会」の講演の配布資料およびスライドと解説

2019年11月24日
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11月17日(日)に「石木ダムを断念させる全国集会」が川棚町公会堂で開かれました。

11月18日が家屋の明渡し期限になっていましたが、こうばるの13世帯は動じることなく、これまでの通りの暮らしを続け、長崎県と佐世保市に対して石木ダム建設を断念させる闘いを続けています。

この全国集会は奪われた土地を取り戻す新たな闘いのスタートとなる集会でした。

石木ダムは必要性が全くなく、地元住民を苦しめるだけの有害無益な事業です。この全国集会はそのことをあらためて確認する集会でもありました。

嶋津の方から最初に「石木ダムは治水利水の両面で全く不要」というテーマで30分間の講演を行いました。

この講演の配布資料と、講演で用いたスライドとその解説は次の通りです。

石木ダムは治水利水の両面で全く不要 配布資料20191117

石木ダムは治水利水の両面で全く不要 スライドと解説 20191117

治水に関して長崎県は、今年10月の台風19号豪雨のような未曽有の豪雨が川棚川流域に降る場合もあるから、石木ダムが必要だと言っていますが、それは全くの間違いです。

川棚川流域で1/100の雨量に対して石木ダムで対応できることになっているのは計画上も流域面積の8.8%に過ぎません。しかも、その中には港湾管理者の管理区間ということで堤防整備計画がない川棚大橋下流区間なども含まれているので、実際に石木ダムで対応できることになっているのは流域面積の4~5%にとどまります。したがって、1/100を超える未曽有の豪雨が降れば、石木ダムがあっても川棚川の各所で氾濫することになります。

さらに、1/100を超える雨が降れば、石木ダムが洪水調節機能を失ってしまうことも予想されます。

計画を超える雨が降ることもあることを考えれば、長崎県は石木ダムの建設に拘泥している場合でありません。その建設を断念して、川棚川流域の住民の生命と財産を本当に守ることができる治水対策に力を注がなければなりません。

利水に関しては、佐世保市は過去の渇水が再来すれば、市民の生活への影響が計り知れないものになると述べ、渇水の恐怖を煽って、石木ダムが必要だと宣伝しています。

しかし、過去の渇水到来時と現在は水需要の状況が大きく変わっています。佐世保市水道の一日最大給水量は1990年代後半から横ばいの傾向になり、2000年代になってから、ほぼ減少の一途を辿り、2018年度は1994年度の77%まで減少しています。

水需要の大幅な減少により、今の佐世保市は渇水に対応できる都市に変わっています。そして、これからも水需要の更なる減少が続くことは確実なので、佐世保市はますます渇水に強い都市になっていきます。

 

是非、上記の配布資料、スライドとその解説をお読みいただき、石木ダムが本当に無意味な事業であることを周りの方に伝えてくださるよう、お願いします。

石木ダム事業 住民「力で奪うのか」 長崎県は繰り返し公益性主張

2019年11月19日
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11月18日、石木ダム建設に反対する住民ら約40人が長崎県庁を訪れ、石木ダムの計画断念を求める文書を提出しました。その記事を掲載します。

石木ダム事業 住民「力で奪うのか」 長崎県は繰り返し公益性主張
(長崎新聞2019/11/19 10:11) https://this.kiji.is/569330499597861985?c=174761113988793844

(写真)平田副知事(左)に宣言文を手渡す岩下さん=県庁
長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業で、水没予定の川原(こうばる)地区で暮らす反対住民13世帯の土地の明け渡し期限となった18日、住民らが県庁を訪れ、建設断念を求めた。明け渡しには応じない姿勢をあらためて見せた住民ら。一方の県側は同事業の公益性を繰り返し、主張は平行線をたどった。「行政代執行にならないようにすることが大事」としながらも、行政代執行を選択肢から排除しない考えを示す県。両者の溝は埋まる気配はなく、混迷の度合いを深めている。
午前9時半、マイクロバスで県庁に到着した住民らは一様に硬い表情だった。9月、約5年ぶりに実現した中村法道知事との面会では計画の見直しを求めて頭を下げたが、直後の会見で知事がダム推進をあらためて表明したからだ。後日、「生活再建や地域振興に誠意を持って対応する」として再度の面会を求める書簡が届いた。「こちらの話は聞かず、話を聞けというのか」。住民側はいら立ちを募らせていた。
17日に同町であった反対集会で採択した宣言文を平田研副知事に手渡すと、土地収用法に基づき土地の所有権を失った住民の岩下和雄さん(72)が憤りをあらわに口火を切った。石木ダムの主目的である利水と治水の効果に疑問を呈し、事業継続を承認した県公共事業評価監視委員会についても「ダムを造りたい人たちだけを(メンバーに)入れて再評価した」と切り捨てた。
「(治水面で)緊急性があるなら河川整備を先にやるべきだ」「石木ダムを造らないと治水効果は上がらない」-。約1時間の面会。治水一つとっても住民と県側の主張は、この日も最後まで交わることはなかった。
18日は住民らが県と同市に工事差し止めを求めた訴訟の期日とも重なり、住民らは面会を終えた足で長崎地裁佐世保支部へ。住民の岩永正さん(68)は「県庁と裁判所で厳しい現実を感じた。県は本当に私たちの生活を力で奪い取るのだろうか」と行政代執行に警戒感をにじませた。「付け替え道路工事現場の騒音で目覚める日常に慣れてきているのが怖い。嫌なことが続くが、地元の住民は踏ん張って暮らし続けるしかない」。石丸穂澄さん(37)は自らに言い聞かせるように話した。
午後5時前、住民らを乗せたバスが川原に帰着。それぞれが家路につき、夕食の支度や犬の散歩などの日常に戻っていった。岩本宏之さん(74)は「暮らしに変わりはない。ただ土地の所有権を失い、保険や行政の手続きなどにどの程度影響があるのかは気掛かりだ」とぼやいた。
一方、「石木ダム建設促進佐世保市民の会」の寺山燎二会長(81)は「佐世保市民にとってダムは必要だということを理解してもらいたいが、私たちは静観するしかない」と淡々と語った。

長崎・石木ダム「計画断念を」
(共同通信2019/11/18 10:08)  https://www.nishinippon.co.jp/item/o/560481/

 石木ダムの建設予定地

(写真)長崎県の平田研副知事(左)に石木ダム建設の断念を求める文書を読み上げる住民の岩下和雄さん=18日午前、長崎県庁
長崎県と佐世保市が川棚町に計画する石木ダムを巡り、水没予定地に住む13世帯の明け渡し期限を迎えた18日、建設に反対する住民ら約40人が県庁を訪れ、計画断念を求める文書を提出し「河川改修など他の方法をやり尽くしてからダムを検討するべきだ」と訴えた。県は19日以降、行政代執行で土地や建物の強制収用ができるようになる。
出張中の中村法道知事の代理で対応した平田研副知事は、治水効果を強調し「行政代執行は選択肢から外さない。ダムで恩恵を受ける川棚町の人たちは大切な県民だ」と述べた。住民側は「そんな態度だから話し合いができない。私たちは県民ではないのか」と反発した。

 

長崎)あくまで立ち退き拒む 石木ダム明け渡し期限
(朝日新聞長崎版2019年11月19日0

 

県、代執行「排除せず」 長崎・石木ダム 反対派なお断念求める
(西日本新聞2019年11月19日 6時0分) https://news.livedoor.com/article/detail/17401144/

長崎県と同県佐世保市が計画する石木ダム事業(同県川棚町)は18日、立ち退きを拒む13世帯の宅地を含む全ての事業予定地が、県収用委員会の定める明け渡し期限となった。反対派はこの日、県に事業断念を要請したが、平田研副知事は住宅などを強制的に撤去する行政代執行について「選択肢として排除しない」との考えを示した。県は19日以降、行政代執行の手続きが可能になる。
県庁での要請には約50人が参加し、反対住民の岩下和雄さん(72)が「行政代執行すれば長崎の恥だ。全国民が見ている。それでもやるつもりか」と主張。17日に同町で反対派約700人が参加して開かれた全国集会で採択した「ダムは治水、利水の両面で全く不要」とする宣言文を提出した。
平田副知事は「治水面でダムが一番効果が高い」などと説明し、反対派からは怒号が飛び交った。出張中の中村法道知事は「期限を迎え、いまだ明け渡しいただけておらず残念。協力に応じていただけるよう働き掛けを続けたい」とのコメントを出した。
住民らが県と佐世保市にダムの工事差し止めなどを求めた訴訟は18日、長崎地裁佐世保支部で結審し、来年3月24日に判決が言い渡される。 (岡部由佳里、平山成美)
◇    ◇
■「みんな家族」「強制的」「仕方なか」 明け渡し期限、移転住民複雑
石木ダム事業が進む長崎県川棚町には、反対する住民がいる一方、さまざまな事情で用地を明け渡し、移転した人たちもいる。故郷に残った住民が土地の明け渡しを突きつけられ、同じ集落に住んでいた元住民は割り切れない思いを吐露した。
ダムが計画される川原(こうばる)地区で総代を務めた80代男性は、かつて「川原の思いを一つにする」と反対運動の先頭にいた。1982年、県が機動隊を投入して用地測量に踏み切った記憶は鮮明だ。「あそこまで強制的にやるとは思わなかった。むちゃくちゃだった」
先祖代々、200年以上受け継いだ土地は結局2003年に手放した。「川原が嫌で移ったわけじゃないが、高齢になって百姓をするのはきつい。いくら反対してもダムはできるとも思った。仕方なか」
川原に残る人たちに別れを告げるのはつらかったが、決断を悪く言う人は一人もいなかった。同じく川原で育った男性の妻は「みんな家族みたい。人間関係が良くなかったら、とっくに県に押し切られていた」と話した。
国の事業採択から44年の石木ダム計画。「長い、長すぎる。移転してから何年たつ? ダムになった自分の故郷は見たくない。かといってダムができなければ、なんで移ったのかという気持ちになる」。男性は複雑な胸中を打ち明けた。
一方、明け渡しに応じずに集落で暮らす川原房枝さん(79)は「それぞれ事情があった人もいる」と移転した元住民を思いやる。石木ダム工事差し止め訴訟原告の一人、岩本宏之さん(74)は「今秋もこの土地で稲刈りをした。生活を変えるつもりはない」ときっぱり語った。 (竹中謙輔、平山成美)

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