八ッ場ダムの情報
八ッ場ダム工期延長の基本計画変更案発表に関する声明(八ッ場あしたの会 2013年8月12日)
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8月6日、八ッ場ダム事業の計画変更が国土交通省関東地方整備局より提示されたことについて、「八ッ場あしたの会」は下記の声明文を同局局長および関係1都5県知事に送付しました。 (「八ッ場あしたの会」のホームページhttp://yamba-net.org/ より)
2013年8月12日
八ッ場あしたの会 代表世話人 野田知佑ほか
八ッ場ダム工期延長の基本計画変更案発表に関する声明
国土交通省関東地方整備局は去る8月6日、八ッ場ダム建設事業の工期を2015年度から2019年度へと、4年間延長する基本計画変更案を発表した。今後、各都県議会の議決に基づいて6都県知事が計画変更に同意すれば、2019年度完成に向けて来年度から本体工事が公式に進められることになる。
本体着工の前に立ち止まって冷静な目でダム建設の見直しを!
しかし、八ッ場ダム建設事業は多くの基本的問題点、矛盾を抱えており、このままダム完成に向けて推進することは将来において大きな禍根を残すことになる。
● 希少な動植物の宝庫、縄文時代にまで遡る膨大な歴史遺産、泉質の優れた川原湯温泉の旧源泉を沈めることは、取り返しのつかない損失となるのではないか?
● 名勝「吾妻渓谷」をはじめとするかけがえのない自然景観はダム完成後には今の様相が失われてしまうのではないか?
● ダム完成後には多くの住民が居住するダム湖周辺で地すべりなどの災害が惹起されるのではないか?
● 過疎化が急速に進行しつつあるダム予定地において、ダム完成後にダム湖観光で本当の地域振興をはかることができるのか?
● 首都圏においても水需要が一層縮小し、人口減少が顕著になっていく時代において、八ッ場ダムが完成しても無用の長物になることが目に見えているのではないか?
● 利根川流域住民の安全を守るために、治水効果が希薄な八ッ場ダムの予算をもっと有効な治水対策に振り向けるべきではないのか?
● 八ッ場ダムは堆砂速度が計画よりかなり早く、土砂堆積により、ダムの機能が次第に低下していくのではないか?
など、様々な問題点を覆い隠したまま、関東地方整備局は反対の声を無視して、ダム完成に向けて邁進しているが、果たして八ッ場ダムを建設することでどのような将来が到来するのか、立ち止まって冷静な目で科学的にダム建設の是非をあらためて考えるべきである。
八ッ場ダムの工期延長の真因は付替鉄道の工事の大幅な遅れ
八ッ場ダムの工期が2015年度から2019年度へと4年延長することについて、関東地方整備局は民主党政権によるダム検証を理由としているが、ダム検証の間も、ダム本体以外の関連工事は従前どおり進められてきた。現在のJR吾妻線はダム本体工事予定地を走っているから、本格的なダム本体工事を始める前に付替鉄道を完成させ、現鉄道を廃止しておかなければならず、当初の工程表では付替鉄道は2010年度完成の予定であった。ところが、付替鉄道の工事が遅れに遅れて、まだ未完成である。そのため、ダム検証があろうがなかろうが、八ッ場ダムの工期は大幅に延長せざるを得なかったのであり、関東地方整備局は責任回避のため、工期の遅れを民主党政権のせいにしている。
2019年度にダムは本当に完成するのか?
今回の基本計画変更案は工期4年延長であるが、本当に2019年度に八ッ場ダムが完成するのか、まだまだ不透明である。今年度は本体関連工事を行うことになっているが、その関連工事3件の中には記者発表上は「作業ヤード造成」となっているものの、実際はダム本体工事そのものであるダム本体左岸掘削工事(約10万㎥の掘削)も含まれている。これは、来年度から本体工事を始めるのでは工期が足りないという関東地方整備局の焦りを示すものであり、2019年度完成には難しい面があることを示唆している。
仮にダム本体工事が2019年度に完了したとしても、その後の試験湛水で地すべりが起きれば、ダム完成は大きく遅れることになる。奈良県の大滝ダム(国土交通省)では試験湛水により、地すべりが発生して38戸が移転を余儀なくされ、その後、延々と地すべり対策が行われて、工期は約10年延長された。また、埼玉県の滝沢ダム(水資源機構)は試験湛水後に地すべりが次々と起きて、その対策工事のため、工期が約5年延長された。貯水池周辺の地質がきわめて脆弱な八ッ場ダムでは、事前の地すべり対策では足りず、試験湛水中に深刻な地すべりが発生して、大滝ダムや滝沢ダムのように、工期が大幅に延び、ダム完成時期が2020年代中頃から後半になる可能性が十分にある。
事業費再増額の5度目の基本計画変更が行われることは必至
今回の基本計画変更案は工期延長と洪水調節ルールの変更のみであり、2011年のダム検証で示されていた地すべり対策等による183億円の増額は含まれなかった。関東地方整備局は事業費についてはコスト縮減で対応するというような曖昧な説明をしているが、実際は事業費増額に対して関係都県が拒絶反応を示していることから、その計画変更を先送りしただけである。
現在の総事業費4600億円に対して、2013年度までの執行予定額は3827億円であるから、まだ先延ばしすることができると判断し、先送りしたと考えられる。本体工事費を含む残事業費からコスト縮減で183億円を生み出せるわけがなく、実際には次に述べるように更なる増額要因もあるから、遅かれ早かれ、事業費増額の基本計画変更が浮上してくることは必至である。今までも、基本計画の変更は工期延長、事業費増額。工期延長と、小出しに行われてきており、今回もその場しのぎのやり方が踏襲されているのである。
いずれは事業費の増額は500~600億円以上 実際には関東地方整備局が表に出していない三つの大きな増額要因がある。
① 代替地の整備費用の大半の負担:80~100億円
住民の移転代替地の整備費用は、現在は事業費の枠外で、2011年度までで約97億円が投じられている。代替地は未だに造成工事中であるから、この整備費用がさらに膨らむのは確実である。八ッ場ダム事業では谷の大規模な埋め立てや山の斜面への造成など、地形条件の悪い中で代替地を無理をしてつくっているので、整備費用がきわめて高額になっている。代替地の分譲収益はせいぜい20億円程度であるから、分譲収益で整備費用を賄うことはできず、代替地整備費用の大半80~100億円は事業費に上乗せされると予想される。
② 東電への減電補償:160~200億円以上
八ッ場ダムの完成後はダムに水を貯めるため、吾妻川にある水路式の東京電力㈱水力発電所への送水量が減ってその発電量が大幅に減少するので、東京電力への減電補償が必要である。関東地方整備局は八ッ場ダム検証報告(2011年)の中で、減電量はわずかであるとしたが、それは恣意的な計算によるものであり、関東地方整備局が使ったデータを入手して減電補償額を計算すると、160~200億円以上になる。
③ 試験湛水中に地すべりが発生した場合の対策工事費:少なくとも100億円規模
前述の大滝ダムや滝沢ダムではダム本体完成後の試験湛水で深刻な地すべりが発生して対策工事が延々と行われ、地すべり対策工事費がそれぞれ約308億円、約145億円にもなっている(内閣参質171第186号の政府答弁書)。同様に、貯水池予定地周辺の地質がきわめて脆弱な八ッ場ダムでは、試験湛水によって深刻な地すべりが発生して追加対策を余儀なくされ、少なくとも100億円規模の増額が必要となる可能性が十分にある。
八ッ場ダムはダム湖周辺が多くの住民の居住地であるという特殊条件を抱えたダムであり、ダムを造るのであれば安全対策を万全にする必要がある。
上記の①、②、③も考慮すると、八ッ場ダム建設事業費の増額はダム検証で示された約183億円にとどまらず、さらに340~400億円、合わせて500~600億円以上の増額が必要となることが予想される。
以上述べたとおり、八ッ場ダム事業は本体工事に向けて、工期延長の基本計画変更案が示されたが、その先行きは混沌としている。
ダムが実際にいつ完成するか、不透明なまま推移し、事業費増額の問題が重くのしかかってくることが予想される。
このような状況において私たちは、八ッ場ダムという巨大な負の遺産を子孫に残さぬよう、決してあきらめることなく、八ッ場ダム事業の抜本的な見直しを求め続けていく。同時に、吾妻渓谷などのかけがえのない自然と、貴重な遺跡の宝庫を生かしたフィールドミュージアム構想により、真の地域振興の道を切り開くことを訴えていきたい。
八ッ場「15年度完成」見直し(読売新聞群馬版 2013年7月31日 )
太田昭宏国交大臣が7月30日の記者会見で、八ッ場ダムの2015年度完成は事実上不可能と述べたことに関して、読売新聞が詳しく報じています。
事業費増額に関して、八ッ場あしたの会の試算結果「500億~600億円規模の増額が必要になる」も紹介されています。
八ッ場あしたの会ホームページ
事業費の増額 http://yamba-net.org/problem/meisou/zougaku/
工期の延長 http://yamba-net.org/problem/meisou/kouki/
八ッ場「15年度完成」見直し(読売新聞群馬版 2013年7月31日 ) http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20130730-OYT8T01484.htm
太田国土交通相は30日の閣議後の記者会見で、八ッ場ダム(長野原町)の2015年度完成を目指す現行の基本計画について、「事実上不可能。よく議論、精査して(完成が)何年ということを提起し直さないといけない」と述べ、見直す方針を明らかにした。
ただ、見直しを終える時期や、完成時期の見通しについては言及しなかった。
八ッ場ダムは工事用道路の整備など関連工事の手続きが始まったばかりで、本体工事着工のめどは立っていない。本体着工から完成までに7年が必要との見方もある。
県関係者らは、現行の基本計画の期間内での完成は不可能とみて、国に対し「基本計画変更の手続きに早急に着手すべきだ」(大沢知事)と求めていた。
ダムの基本計画は1986年に告示され、3回にわたって見直されてきた。3回目の2008年の見直しでは、完成時期が15年度に延長された。計画見直しは次で4回目となる。
太田国交相の見直し表明について、地元は冷静に受け止めている。
長野原町の高山欣也町長は「誰が見ても今の計画通りの完成は間に合わず、見直しはやむを得ない。遅れを取り戻すよう工期短縮などに努め、早期完成を望む」と語った。
八ッ場ダム水没関係5地区連合対策委員会の篠原憲一事務局長は「いつまでもダラダラと工事が続くようでは困る。地元の声を新計画に反映してほしい」と訴えた。
また太田国交相は記者会見で、基本計画で約4600億円とされている総事業費について「それほど増加するとは思っていないが、精査が必要だ」と述べた。
総事業費は工事遅延による人件費の増加や、新たな地滑り対策工事などで、増額が避けられないとみられている。国交省が11年度に行った検証では、増額は約183億円と試算し、
建設に反対する市民団体「八ッ場あしたの会」は、500億~600億円規模の増額が必要になるとの試算を公表している。
見学会:45年前完成の下久保ダム、市民が環境変化確認 三波石峡、水枯れて (毎日新聞群馬版 2013年06月01日)
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見学会:45年前完成の下久保ダム、市民が環境変化確認 三波石峡、水枯れて (毎日新聞群馬版 2013年06月01日)http://mainichi.jp/area/gunma/news/20130601ddlk10040147000c.html
ダム建設による環境変化を確かめる見学会が、藤岡市と神川町にまたがる下久保ダム周辺であり、首都圏の市民11人が参加。同ダム下流にある国指定名勝で天然記念物の三波石峡(さんばせっきょう)などを散策した。
見学会は、市民団体「八ッ場ダムをストップさせる埼玉の会」が主催。
八ッ場ダム建設を前に、45年前に完成した下久保ダムで現在どんな環境変化があるのかを確認するのが狙い。
三波石峡は、1968年のダム完成後、川がせき止められたため水が枯渇し、こけが生えたり、川底に雑草が生える状態になったという。
同会の大高文子さん(59)は「八ッ場ダム下流の吾妻渓谷の環境もここと同様に変化しないだろうか」と心配顔。
一方、八ッ場あしたの会の渡辺洋子さん(57)は、「多くの人がダム問題を考えるために、まず自分の目で見ることが大事だ」と話した。【尾崎修二】
(写真)下久保ダムを職員に案内される参加者ら=藤岡市保美濃山の下久保ダムで
二】
八ッ場ダム東京判決への抗議集会ー6/1、池袋
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八ッ場ダムをストップさせる東京の会からのお知らせを転載します。
8年余にわたり、私たちは次々と新たな資料、調査・研究を積み上げ、八ッ場ダムの不要性、危険性を立証してきました。
ところが今年3月、東京高裁は、自治体にとってダムが役に立ってもたたなくても、負担金は支払わなくてはならない、という非常識な判決を言い渡しました 。
今回、この判決の内容を分析・批判するとともに、「市民の常識」とかけ離れた裁判がされる背景について、『日本司法の逆説』の著者・西川伸一教授より解説していただきます。
また、八ッ場ダム事業をごり押しする国交省によって、利根川の河川整備計画が大きくゆがめられようとしている現状を、嶋津暉之さんよりご報告いただきます。
私たちはこの不当判決に強く抗議し、その背後にある司法と行政の病に迫ります。
◆日 時:6月1日(土)午後1:30~4:30
◆会 場:豊島区生活産業プラザ(エコとしま)8階多目的ホール
http://chizuz.com/map/map19585.html
(池袋駅より徒歩7分)
◆参加費:500円
*解説「間違いだらけの高裁判決
―事案の異なる判例を引き、事実評価は手抜き」
八ッ場ダム住民訴訟弁護団
*講演「司法行政からみた裁判官~裁判官だって出世したい!」
講師:西川伸一 明治大学教授
*報告「八ッ場ダム事業でゆがめられる利根川の河川整備計画」
嶋津暉之 利根川流域市民委員会共同代表
*声明「高裁不当判決に抗議し、最高裁での審理を要求する!」
八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会
◆主催:八ッ場ダムをストップさせる東京の会
お問合せ:T/F 042-341-7524 深澤
国交省関東地方整備局が利根川・江戸川河川整備計画を策定(2013年5月15日)
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5月15日、国交省関東地方整備局は利根川・江戸川河川整備計画を策定しました。
関東地方整備局のHP http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/river_00000084.html をご覧ください。
関東地方整備局は4月24日に計画(案)を公表し、関係都県知事の意見を聴きましたが、早くも知事からの意見がそろったということで、計画策定を発表しました。
関係都県知事は関係区市町村長の意見を聴いたうえで、関東地方整備局に対して意見を述べることになっていましたので、多少の日数を要すると思っていたのですが、予想以上に早い動きです。
5月13日に提出した利根川流域市民委員会の抗議文に書かれているように、問題だらけ、欠陥だらけの利根川河川整備計画の策定です。
しかし、これで終わりということではありません。私たちは、本来あるべき利根川河川整備計画の市民案を提案して、計画の見直しを求めていきます。
八ツ場、南摩ダム整備 計画に盛り込む(下野新聞2013年5月16日 朝刊) http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/top/news/20130515/1044886
国土交通省関東地方整備局は15日、利根川と江戸川の治水や環境保全などの方針を示した「利根川・江戸川河川整備計画」を策定し、群馬県の八ツ場ダム整備を盛り込んだ。
70~80年に一度の大雨でも洪水被害が出ないようにするためとしている。同ダムに反対する住民らは、1月に示された同計画原案に対し反対の意見を寄せていたが、大筋で変更はされなかった。
八ツ場ダムについては、本県も整備費10億4千万円を負担している。鹿沼市の思川開発事業(南摩ダム)も同様の理由で、計画内に位置付けられた。整備期間の目標は、今後30年と定められた。
大雨時の最大流量については、群馬県伊勢崎市八斗島地点で、1秒当たり1万7千立方メートルと設定。両ダムの建設などで、同1万4千立方メートル程度に低下させることができ、洪水被害の防止や軽減が図れるとした。
一方、八ツ場ダム建設に反対する市民団体などは「(最大流量は)科学的根拠が希薄で過大な設定。強引に八ツ場ダムを計画に位置づけようとしている」と批判している。
同計画では河川環境の保全策として、2012年にラムサール条約湿地に登録された渡良瀬遊水地について、湿地の再生などに努める方針も盛り込んだ。