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コンセッション方式や広域化で基盤強化、水道法改正案
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今国会に上程されている水道法改正案についての解説記事を掲載します。
注目すべきところは、2の広域連携の推進と4の官民連携の推進です。広域連携に関しては、都道府県が推進役の役割を果たすようになります。
官民連携に関しては水道施設の運営権(コンセッション)を民間事業者に設定できる仕組みが導入されます。この記事は次のように解説しています。
「現行制度でも、PFI法に基づいて、施設の所有権を地方公共団体が保持したまま、施設の運営権を民間事業者に設定することは可能だが、施設の運営権を民間事業者に設定するには、地方公共団体が水道事業の認可を返上したうえで、民間事業者が新たに認可を受けることが必要になっている。これに対して、地方公共団体から、不測のリスク発生時には地方公共団体が責任を負えるよう、水道事業の認可を残したまま、運営権の設定を可能にしてほしいとの要望が出ていた。そこで、改正後は、地方公共団体が水道事業者の位置付けを維持したまま、運営権方式を導入できるようにする。 」
この水道法改正に対してどう対応していくかが問われています。
第196回通常国会 PPPまちづくり関連の改正法案を読む(3)
コンセッション方式や広域化で基盤強化、水道法改正案
(新・公民連携最前線2018.4.6) http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/tk/PPP/040200075/040300003/
平島 寛
水道事業は、人口減少に伴う水の需要の減少、水道施設の老朽化、深刻化する人材不足、必要な水道料金原価の見積もり不足の恐れなどの課題に直面している。
これらの課題を解決し、将来にわたって安全な水の安定供給を維持していくために、水道の基盤強化を図るのが水道法改正案の狙いだ。改正案の内容は、
1. 関係者の責務の明確化
2. 広域連携の推進
3. 適切な資産管理の推進
4. 官民連携の推進
5. 指定給水装置工事事業者制度の改善
の5つからなる。
1.関係者の責務の明確化および2.広域連携の推進に関しては、法律の目的における「水道の計画的な整備」を「水道の基盤の強化」に変更し、国、都道府県、市町村、水道事業者に対し、「水道の基盤の強化」に関する責務を規定する。
国は、広域連携の推進を含む基盤強化の基本方針を定めることとする。都道府県には、水道事業者間などの広域的な連携の推進役としての責務を規定する。都道府県は、水道基盤強化計画を定めることができ、水道事業者間などの広域的な連携の推進に関して協議を行うため、水道事業者などを構成員として、「広域的連携等推進協議会」を設置できるようにする。
国内1388の上水道事業のうち、給水人口5万人未満の小規模な事業者が952と多数存在(2014年度)しており、経営面でのスケールメリットを創出できる広域連携が必要となっていることから、都道府県には広域連携の推進役としての役割が期待されている。
3.適切な資産管理の推進に関しては、老朽化に起因する事故の防止や安全な水の安定供給のため、水道事業者などに点検を含む施設の維持管理や定期的な修繕の実施、台帳の整備を義務付ける。水道事業者は、長期的な観点から水道施設の計画的な更新に努めなければならない。そのために、水道施設の更新に要する費用を含む収支の見通しを作成・公表するように努める必要がある。
現行法では、施設の維持・修繕の基礎となる台帳整備の規定がなく、施設データの整備が不十分だったため、災害時に迅速な復旧作業に支障を生じる例も見受けられた。さらに、高度経済成長期に整備された水道施設の更新時期が到来しており、長期的視野に立った計画的な施設の更新(耐震化を含む)が必要になっている。一方、人口減少に伴って水道事業の経営状況は今後も厳しい見込みだが、十分な更新費用を見込んでいない水道事業者が多く、水需要の減少と老朽化の進行によって、将来急激な水道料金の引き上げを招く恐れがあり、適切な資産管理が必須になっている。資産台帳の整備は、広域連携や官民連携のための基礎資料としても必要不可欠である。
4.官民連携の推進では、地方公共団体が水道事業者として経営する原則は維持する一方、水道の基盤強化のために多様な官民連携の選択肢を広げるという観点から、水道施設の運営権(コンセッション)を民間事業者に設定できる仕組みを導入する。
地方公共団体はPFI法に基づく議会承認などの手続きを経るとともに、水道法に基づいて厚生労働大臣の許可を受けることによって、民間事業者に施設の運営権を設定できるようになる。
現行制度でも、PFI法に基づいて、施設の所有権を地方公共団体が保持したまま、施設の運営権を民間事業者に設定することは可能だが、施設の運営権を民間事業者に設定するには、地方公共団体が水道事業の認可を返上したうえで、民間事業者が新たに認可を受けることが必要になっている。これに対して、地方公共団体から、不測のリスク発生時には地方公共団体が責任を負えるよう、水道事業の認可を残したまま、運営権の設定を可能にしてほしいとの要望が出ていた。そこで、改正後は、地方公共団体が水道事業者の位置付けを維持したまま、運営権方式を導入できるようにする。
5.指定給水装置工事事業者制度(※)の改善については、工事事業者の資質の保持や実態との乖離の防止を図るため、給水装置工事事業者の指定に更新制(5年)を導入する。
※ 条例によって給水装置工事は指定給水装置工事事業者が施行することが規定され、各水道事業者は蛇口、トイレなどの給水装置工事を施行する者を指定できる。
1996年に全国一律の指定基準による現行制度が創設されたが、広く門戸が開かれたことで事業者数が大幅に増加。現行制度は新規の指定のみで、休廃止の実態が反映されづらく、無届け工事や不良工事が多発していることが背景にある。
(資料)水道管路の老朽化はますます進む(厚生労働省)
保護中: 鬼怒川水害訴訟の資料
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下水道処理場で官民連携 浜松市が新手法導入、事業開始
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国内初となる下水道の長期運営権の譲渡となる浜松市の西遠流域下水道事業が今年度から始まりました。その記事を掲載します。
水処理世界最大手の仏ヴェオリアと日本の会社が設立した浜松ウォーターシンフォニー株式会社が20年間運営を行います。https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/g-sisetu/gesui/seien/pfi.html
運営権者は維持管理、改築更新工事、計画立案、浜松市は認可取得、モニタリングを行うことになっています。
ただし、民営化するのは、西遠流域下水道事業の処理場とポンプ場だけであって、下水管の部分は譲渡されていません。
なお、下記の記事では運営権者が料金徴収を行うと書かれていますが、料金徴収は市が委任を受けていますので、市がまとめて徴収して、運営権者に収入額の24%を渡します。
国内初の下水道の運営権譲渡ですが、浜松市の西遠流域下水道事業は特異な事例ではないかと思います。
西遠流域下水道は元々は静岡県の事業でしたが、2005年の市町村合併に伴い、対象流域が浜松市のみとなり、合併特例法の適用により2016年3月末に浜松市に移管されました。管理は移管前は静岡県下水道公社を通して民間会社に委託し、移管後は市が直接、民間会社に委託していました。したがって、もともと市が直営で運営したものではなく、運営方式を模索した結果、今回の民営化を選択したのであって、他の下水道や水道にそのまま当てはまるとは思われません。
なお、運営権譲渡の詳細は下記の運営権実施契約書に書かれています。
浜松市公共下水道終末処理場(西遠処理区)運営事業 公共施設等運営権実施契約書
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/g-sisetu/gesui/seien/documents/jisshikeiyakusho_20171030.pdf
下水道処理場で官民連携 浜松市が新手法導入、事業開始
(静岡新聞2018/4/2 08:22)www.at-s.com/news/article/politics/shizuoka/474401.html
(写真)コンセッション方式導入を祝い、テープカットする関係者=1日午前、浜松市南区の西遠浄化センター
官民連携の新手法「コンセッション方式」を2018年度から導入した浜松市公共下水道終末処理場(西遠処理区)の事業開始式が1日、同市南区の西遠浄化センターで開かれた。下水道分野での同方式の導入は全国初で、市や運営企業などの関係者、地元住民ら約50人が参加し、事業開始を祝った。
同方式は自治体が公共施設の所有権を持ちながら、民間事業者が料金徴収して自由に施設運営する。民間運営は37年度までの20年間で、総事業費を約86億円削減できるという。市が運営権を与えるのは同センターと中継ポンプ場2カ所で、市内から排水される下水の5~6割を処理している。市は水道事業でも導入可能性を調査している。
式典で鈴木康友市長は「人口減少社会でのインフラ管理は自治体の課題であり、浜松で成功させて全国に広がることを期待したい」とあいさつした。施設を運営する浜松ウォーターシンフォニーの山崎敬文社長は「一瞬たりとも事業が途絶えることのないよう全力で運営に努める」と述べた。
2018(平成30)年度の各ダムの予算額
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2018(平成30)年度の各ダムの予算額がきまりました。
相変わらず、ダム事業に巨額の予算が付いています。
直轄ダムと水資源機構ダムの2018年度予算は、国交省のホームページ
http://www.mlit.go.jp/river/basic_info/yosan/gaiyou/yosan/h28/h28damyosan.pdf
の予算案と同じです。
補助ダムの2018年度予算は、事業実施箇所(当初配分)
http://www.mlit.go.jp/page/kanbo05_hy_001526.html
の中に示されています。
例えば、石木ダムについては長崎県を開くと、最初に道路局の予算、次に国土保全・水管理局の予算が書かれていて、
石木ダムの事業費が7.63億円となっています。
石木ダムの最近5年間の予算の推移は次のとおりです。
2014年度 14.90億円 2015年度 9.20 億円 2016年度 1.20億円 2017年度 5.88億円 2018年度 7.63 億円
各ダムの2009~2018年度の予算の推移を整理しました。参考までにご覧ください。
2018年度の直轄ダム・水資源機構ダムの予算額の計は1,837億円、補助ダムの予算額の計は507億円、合計2,343億円です。
原告側控訴の方針 新潟・福島豪雨訴訟 一部は断念
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先にお伝えしたように、2011年7月の新潟・福島豪雨の只見川氾濫の浸水被害は、発電用ダムの堆砂を取り除かなかったことが原因だとして、金山町の住民が東北電力と電源開発の二社を訴えた裁判の判決が3月26日にありました。残念ながら、住民側の敗訴でした。
原告の約半数がこの判決を不服として控訴する方針を固めました。その記事を掲載します。
原告側控訴の方針 新潟・福島豪雨訴訟 一部は断念
(福島民報2018/03/31 09:48)http://www.minpo.jp/news/detail/2018033150413
2011(平成23)年の新潟・福島豪雨で只見川氾濫による浸水被害を受けた住民がダム管理者の東北電力と電源開発に損害賠償を求めた訴訟で、原告は請求棄却の判決を不服として控訴する方針を固めた。30日に金山町で開いた会合で申し合わせた。
原告団34人のうち少なくとも17人が控訴する。残る17人の一部は高齢による体の衰えなどを理由に控訴を断念する意思を示している。
原告団事務局長の黒川広志さん(76)=金山町=は「注意義務違反と水害との因果関係を認めないという判決には納得できない」と話した。
地裁会津若松支部は26日の判決で、東北電力の注意義務違反を認定した一方、浸水被害との因果関係は認められないとして原告の請求を棄却した。
新潟・福島豪雨
只見川ダム訴訟 控訴へ 原告側、1審判決不服で /福島
(毎日新聞福島版2018年4月1日)https://mainichi.jp/articles/20180401/ddl/k07/040/049000c
2011年7月の新潟・福島豪雨で浸水被害を受けた金山町の住民ら34人が只見川氾濫の責任を問いダム管理者の東北電力とJパワー(電源開発)を相手に起こした損害賠償請求訴訟で、原告側は請求を棄却した福島地裁会津若松支部の判決を不服として仙台高裁に控訴する方針を決めた。
30日に町開発センターで開いた集会で表明した。原告団の中には高齢などを理由に訴訟の継続を諦める住民もいるため、控訴の意思を示しているのは34人のうち少なくとも17人という。