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「補助ダムに関する提言と要請」を提出
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本日、4月5日、13時30分に前原大臣に宛てた「補助ダムに関する提言と要請」を大臣秘書に提出しました。
引き続いて14時から国交記者会で記者会見を行いました。
「補助ダムに関する提言と要請」はこちら(PDF 172KB)
3月26日に国交省が発表した2010年度の補助ダムへの予算配分は、いわゆる「駆込み本体工事契約5補助ダム」に対して満額の配分を提示するものでした。この補助金が執行されてしまうと本体工事が推進されてしまい、取り返しがつかなくなります。浅川ダム・内海ダム再開発・路木ダムに反対してきた11団体の皆さんが3月29日に「3月26日発表の5補助ダムへの2010年度予算配分に抗議する(抗議書)(PDF 119KB)」を国交大臣に提出しました。
水源連はこの問題について、これまでに国交省が先頭に立って補助ダム事業を推進してきたことへの反省が不可欠であると考えます。旧政権主導の事業を全面的に見直すことが新政権の責務です。
3月26日に国交省が発表した2010年度の補助ダムへの予算配分は、いわゆる「駆込み本体工事契約5補助ダム」に対して満額の配分を提示するものでした。この補助金が執行されると、本体工事が行われされ、取り返しがつかなくなってしまいます。浅川ダム・内海ダム再開発・路木ダムに反対してきた11団体の皆さんが3月29日に「3月26日発表の5補助ダムへの2010年度予算配分に抗議する(抗議書)」を国交大臣に提出しました。
補助ダムは各道府県の判断だけで推進されてきたものではなく、国交省の主導の下に進められてきたものですから、国交大臣として補助ダムを見直して国交省の姿勢を是正する責務があります。さらに、補助ダムの事業費(治水費)の3/4近くは国費で賄われるものですから、国費の無駄遣いをなくすためにも、国にも補助ダムの見直しを行う責任があります。
この立場から、本日(2010年4月5日)は、
- 補助ダムは各道府県知事の判断だけに委ねるものではなく、国自らが再検証すべき対象であること。
- 補助金の交付に当たって、補助金等に関わる予算の執行の適正化に関する法律」に基づき、補助ダムの厳格な調査を行うこと。
- 「現在実施中の全国のダム事業の全面見直しを行う」という国交大臣の方針を貫いて、「駆け込み本体工事契約の5補助ダム」も含めて補助金配分の見直しを行うこと。
- 事業認定取り消し訴訟が係争中である事業(辰巳ダム・内海ダム再開発)に関しては、旧政権下で出されたダムの事業認定がそのまま有効であってはならないので、各地方整備局長に対して「新見直し基準に基づく見直しが終わるまで訴訟進行凍結の指示をすること。
- 事業認定申請が出されている事業(石木ダム)に関しては、ダム見直し基準に基づく見直しが終わるまで事業認定審査を凍結するよう九州地方整備局長に指示すること。
を骨子とした提言・要請を行いました。
前原大臣は不在で大臣秘書管室の白倉課長補佐が対応、提言・要請書を手渡しました。同氏は必ず大臣に渡すことを約束しました。
その後、河川局治水課の岩崎専門官と補助ダム担当課長補佐(共にこの4月の人事異動による着任)との話合いが設定されていました。直接の担当者が当方の意見を聴取して大臣に伝える、という趣旨でした。
提言・要請書に記したことを各ダムの具体的問題とあわせて説明し、中身に踏み込んだ調査・審査を行うことを両名に求めました。
岩崎専門官・補助ダム担当課長補佐の話は「共に新任で何も知らないから調査を行う」ということでしたので、途中経過の報告を求めることも伝えました。
土地収用法関係については、本省では総合政策局が、地方整備局では建政部が担当しているので、今日指摘を受けた問題については、総合政策局に伝えると言っていました。
事業認定の法的な責任者は大臣なので、大臣が判断すれば事業認定審査凍結、事業認定取り消し訴訟凍結申し出は可能なことであることを岩崎専門官は認め、その上で、前原大臣に今日のことを伝えると約束しました。
「調査をします」、「大臣に伝えます」、という言葉はよく聞くことです。
水源連事務局は、調査の途中経過について確認をしていきます。
2010年3月16日 衆議院国土交通委員会 八ッ場ダム問題参考人招致
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2010年3月16日衆議院国土交通委員会
嶋津さんが「八ッ場ダム不要」を丁寧に説明
2010年3月21日改訂
八ッ場ダム中止問題で参考人5名を招致して意見を聴きました。
参考人 | 質問する議員 | ||
---|---|---|---|
豊田明美 | 川原湯温泉組合長 | 民主党枠 | 田中康夫 |
嶋津暉之 | 水源開発問題全国連絡会共同代表 | 自民党枠 | 徳田毅 |
虫明功臣 | 東京大学名誉教授 法政大学客員教授 | 共産党枠 | 塩川鉄也 |
松浦茂樹 | 東洋大学国際地域学部教授 | みんなの党枠 | 柿澤未途 |
奥西一夫 | 京都大学名誉教授 | 公明党枠 | 竹内譲 |
社民党枠 | 中島隆利 |
定刻9時に始まり、1時近くに終わりました。
参考人が15分ずつ意見陳述し、そのあと、各党枠から一人ずつの委員が持ち時間20分で参考人に質問をする、という方式でおこなわれました。
5参考人の陳述骨子(骨子なので報告者・遠藤の主観が入ってしまいます)
当日、嶋津氏・虫明氏・松浦氏・奥西氏は説明資料を配布されました。本人のご了解を頂いたものについて下記にリンクをつけました。
豊田さんは、中止発表は地元との意思疎通の上、生活再建策発表とセットであるべきであったこと、生活再建にはもう時間がないこと、ダムあり再建が最も早い、と現地の状況・気持ちを説明しました。
嶋津さんは、治水上も利水上も必要性がないこと、ダム推進により堤防強化がなおざりにされていること、などを丁寧に説明しました。
嶋津さん説明資料はこちら(PDF 4.4MB)
虫明さんは、田中康夫議員から「基本高水流量を高く算出するために流出モデルの係数が設定されたのではないか」、と質問され、「安全サイドということでそういう係数を使ったと思われる。過大に算出されるので見直しが必要」と見直しが必要であることを認めました。しかし、「治水は洪水水位を少しでも下げる必要があるので八ッ場ダムは治水に有効」、としました。
虫明さん説明資料はこちら(PDF 6.1MB)
松浦さんは、「基本高水流量を超過確率で算出するようになってから格段と大きくなったこと、高度経済成長期でダム建設への投資に目が向いていたことなどから過大に設定されている」「1980年に八斗島地点の基本高水流量をそれまでの実績値17,000m3/秒(カスリーン台風時の実績流量)から22,000m3/秒と5,000m3/秒増やした説明がされていない」等を指摘の上、「治水面では八ッ場ダムは疑問」とし、八ッ場ダムの治水容量をそのまま利水容量に振り返ることを提案しました。
松浦さん説明資料はこちら(PDF 889KB)
奥西さんは、大規模地滑り発生が危惧されること、治水・利水の安全性確保を目的としたダムが、大規模地滑りによる巨大津波でダム下流に甚大な災害をもたらしかねないことを警告しました。
奥西さん説明資料はこちら(PDF 2.5MB)
関連新聞記事
「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」に提出した意見書
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2010年3月6日掲載
国土交通省は2010年1月20日に「今後の治水対策のあり方に関する意見募集について」をマスコミ発表しました。多くの皆さんが意見書を提出されました。併せて、水源連事務局にもコピーを送付いただきました。皆さんが抱えている問題からの意見です。
「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」公開要請
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2010年3月20日改訂
非公開であることに対して、1月14日に住民団体が抗議と公開を求める2回目の要請を行いましたが、2回目も非公開でした。この有識者会議はダムによらない治水のあり方を追求し、従来の河川行政を根本から変えていくことを目的とするものですから、国民とともに議論を進めていく姿勢がなければ、国民の共感を得る答を得ることができません。公開はその目的を達成するための必須の条件であるにもかかわらず、公開をかたくなに拒否しています。
以前から有識者会議の公開を求めている市民団体が全国に要望団体を募集したところ、要望団体を108団体が名乗りを上げました。
これだけ多くの皆さんがこの有識者会議の公開を求めていることはとても重要なことです。
2月8日、3回目の公開要望書を前原大臣と中川座長に提出しました。
市民団体からの公開要望書提出はこれで3回になります。
前原大臣への要望書、中川座長への要望書
1回目公開要請書(PDF 106KB)
2回目公開要請書(PDF 115KB)
3回目公開要請書(108団体名簿付き)(PDF 348KB)
第二回「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」嶋津氏陳述
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2010年3月20日改訂 有識者会議についてはここ
2010年1月15日午後3時から、2回目の上記有識者会議が開催されました。
2回目はこれまでのダム依存水行政に異論を唱えてきた淀川水系流域委員会の生みの親であり且つ国交省を退職して同流域委員会の委員長を務めた宮本博司氏と、水源連共同代表の嶋津暉之氏が参考人として出席要請がありました。二人とも公開を求めましたが聞き入れられませんでした。宮本氏は「非公開であるならば出席拒否」を選択され、嶋津氏は「有識者会議が少しでも後ろ向きではない答申を出すように」と出席要請に応じました。お二人の結果は異なるものの、苦渋の決断でした。
15日の嶋津氏の陳述には補助者として遠藤も同席しました。
冒頭に座長が公開要請があったことについて非公開の理由を説明しました。その主旨は、この会議では特定の河川、ダムも議論の対象となるが、それがそのままオープンになると、その関係住民に不安を与える恐れがあるので、公開しないというものでした。しかし、これは理由にならない理由です。
嶋津暉之氏は主に次のことを陳述しました。
15日の有識者会議における配布資料は国交省のホームページに掲載されています。
http://www6.river.go.jp/riverhp_viewer/entry/
y2010e63a795e5783f9cc2330b4991f1d97ae84f539bef.html
そのうちの資料1-1、1-2、1-3、1-4が嶋津氏の配布資料です。
資料1-2がスライドで使ったものです。
嶋津氏陳述の主な論点
●ダムによる治水対策の問題点
- ダムの集水面積は小さく、もともと、あまり大きな効果を持ち得ない。
- 雨の降り方によって治水効果が大きく変動するギャンブル的治水対策である。
- ダム地点から下流に行くほど、洪水ピークの削減効果が減衰する。
- ダム地点の洪水が想定を超えると、ダムは治水機能が急減する。
●新規ダムを治水計画から除くためのステップ
第1ステップ
治水計画の目標流量の再設定
治水計画は、机上の計算で求めた現実離れした過大な洪水流量ではなく、実際に観測された近年の最大洪水流量に近い数字を目標流量とする。
第2ステップ
新規ダムよりも河道整備優先の治水計画へ河川整備基本方針で定められている河道整備を優先して進める。
第3ステップ
河道整備で対応可能な範囲と洪水受容の方策の徹底追求
- 現況河道で流下が可能な洪水流量および河床掘削や堤防の一部嵩上げで流下が可能となる洪水流量を追求する。
- 河道整備で対応できる範囲を超える洪水については豊川霞堤地区の事例および国交省による球磨川の川辺川ダムの代替治水策を参考にして、流域への受容の方策を追求する。
第4ステップ
想定規模を超える洪水への対応策洪水が堤防を越流することがあっても、堤防が直ちに決壊しないように耐越水堤防に強化するとともに、流域への洪水の受容の方策を追求する。
●ダムの費用便益比(B/C)の正しい再計算の実施
新規ダム事業の費用便益比(B/C)を現実に即して正しく再計算し、ダム中止の理由を明確にする。
陳述の後、出席委員から質問・意見が出されました。
「嶋津氏の陳述内容を基本的に支持する」という意見、
「基本高水流量を棚上げにして、戦後最大などの洪水流量を治水計画の目標とするのが現実的である」という意見、
「降雨量を引き伸ばしで基本高水を出すことが科学的だ」という意見(基本高水流量を恣意的に大きく算出するカラクリとして使われていると嶋津氏は反論)、
「ゲリラ降雨と破堤が問題であり超過洪水対応を考えなければならない」という意見、「越水対策堤防は重要であるが、技術的な見通しが明確ではない」という意見、
「洪水を受容する選択をした場合、受容地域の公平性をどのように確保するのか」という意見、
「これまでは洪水を河道とダムでおさえるとしてきたが頭を切り替える必要があり、国交省の範囲だけではできない。この委員会では実際にできることを考えるべきではないか」という意見などが出されました。
会議の全体的な雰囲気としては、治水計画の目標流量を現実的な値にし、超過洪水対策として、耐越水堤防と氾濫受容の可能性を探っていく方向性はあったように思います。
その中で特に重要な課題は耐越水堤防(越流洪水があった場合に、直ちに決壊しない堤防)の技術的な見通しをつけることです。
これが今後の治水対策の要になりますので、それを求める国民的な運動を展開していくことが必要だと思います。