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石木ダム反対、座り込み1000回 出口の見えぬ闘い続く 長崎・川棚町

2021年1月13日
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石木ダムの県道付け替え工事に対して、座り込みの阻止行動を続ける地元住民と支援者についての記事とニュースをお送りします。

阻止行動は約4年半、座り込みは延べ1000回になります。頑張っていただきたいと思います。

 

石木ダム付け替え道路工事 抗議座り込み通算1000回

(長崎新聞2021/1/12 23:57) https://this.kiji.is/721740260402888704?c=174761113988793844

(写真)抗議の座り込み1000回の横断幕を広げる住民ら=川棚町

長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業に反対する住民らが、県道付け替え道路工事現場で続ける抗議の座り込みが12日、通算千回に達した。
座り込みは、県が付け替え道路工事に着手した2010年3月から断続的に実施。住民によると、県側が工事再開を伝えた16年7月25日からの「第4次」が通算千回になった。
12日は、住民や支援者ら通常より多い約50人が集まり、「いい加減にせんかい」などと書かれた横断幕を広げて抗議。住民の岩下すみ子さん(72)は、活動を記録するノートに「1000日」と書き込んだ。「まさかこんなに長引くとは」と苦笑いを浮かべ、「この場所で仲間たちと会うと力が湧く。ダム計画中止を勝ち取るまで諦めない」と決意を新たにしていた。
座り込み場所は当初、付け替え道路工事現場入り口だったが、17年8月以降は現場内に移った。現在の場所を含む約140メートルの区間で工事が遅れている。県側は昨年10月に住民らの帰宅後に重機を入れたり、同12月に防護柵を設けたりして当該区間の盛り土工事を試みたが、いずれも住民側が阻止。同10月以降、住民側は座り込みの時間を夕方まで延長したり、土曜日や祝日も現場に通ったりして警戒する。このため県は盛り土工事の工期を複数回延長し、昨年末にいったん打ち切った。

 

石木ダム反対、座り込み1000回 出口の見えぬ闘い続く 長崎・川棚町

(西日本新聞2021/1/12 6:00) https://www.nishinippon.co.jp/item/n/680806/

(写真)防寒着に身を包み、座り込みを続ける岩本宏之さん=7日午前、長崎県川棚町

新年を迎えても、いつもと変わらぬ光景だった。長崎県川棚町の石木ダム建設予定地。県が進める関連工事の大型車両が行き交うそばで、ダムに沈む古里からの立ち退きを拒む住民や支援者が座り込む。約4年半にわたり続けてきたその日数は、12日で通算千回に到達する。県との対話が細る中で、静かな闘いが続く。

5日、今年最初の座り込みに40人が集まった。午前10時前、いつもの「おやつタイム」。持ち寄ったミカンや菓子を食べ、コーヒーを手に談笑する。それを県職員が監視するのも、すっかり日常となった。

ダム予定地で暮らす13世帯43人の一人、岩本宏之さん(76)は座り込みを始めたときから、ずっと輪の中心にいる。

「おい(私)はね、ここにある自然の恵みに生かされてきた人生やけんね」。時をみて猟銃を担いで山道を歩き、イノシシの痕跡を探し、わなの位置を調整する。160キロの大物を捕らえたこともある。

幼い頃から、結核を患った父に代わり母と家庭を支えた。田畑を耕し、炭やシイタケ、タケノコを町で売った。ダムがせき止めることになる石木川のウナギは貴重なタンパク源。食糧難を生き抜き、4人の弟と妹の学費を賄えたのは、かけがえのない自然のおかげだと感謝している。「先祖代々の古里。金を積まれても、圧力をかけられても離れる気はない」。意思は揺るがない。

座り込みは2016年7月25日、ダムに水没する県道の付け替え工事を県が再開したのをきっかけに、工事現場の入り口で始めた。休日や年末年始を除くと、酷暑も風雪も関係なく、ダム建設反対を訴え続ける。

17年1月、県が日曜早朝に初めて重機を入れた。住民たちは監視カメラを据え、テントで夜を明かし、重機の前で体を張った。それでも工事は少しずつ進んだ。現在は1・1キロの道路用地で約140メートルの区間に座り込み、完成を阻む。

支援の輪は全国に広がっているが、地元には厳しい目もある。

ダムによる治水の恩恵を主張する川棚町の議会は、建設賛成の議員が圧倒的多数。昨年12月の一般質問では「自分中心の言動では支持できない」と、座り込みを非難する議員もいた。

県は「地権者の約8割が同意した」と事業の正当性を主張する。土地収用法に基づき、13世帯の家屋を強制排除する権限も得た。中村法道知事の判断一つで排除も可能だ。

「一度も同意していない事業がどんどん進められていく。抵抗するのは当然のこと」と岩本さんは反論する。町職員だったので、公権力の強さも、危うさもよく分かる。

知事と住民の対話は19年9月以降、途絶えたまま。住民は県道工事の中止が対話の条件としているが、県は応じていない。

間もなく千回を超える座り込み。参加者の多くは高齢で持病がある人もいる。「県はいつまでこげんこと続けさせる気か」。出口の見えない状況に、岩本さんはいら立ちを募らせている。 (岩佐遼介)

【ワードBOX】石木ダム事業

長崎県と同県佐世保市が治水と水道水源の確保を目的に、川棚川支流の石木川に計画。1975年に国が事業採択した。当初の完成予定は79年度だったが、現在は2025年度を目標にしている。立ち退きを拒む13世帯の土地や建物は、土地収用法の手続きにより、19年9月に所有権が国へ移転。県は強制撤去できる行政代執行が可能になった。

 

石木ダム座り込み1000回 「みんなの結束は誇り」/長崎

(毎日新聞長崎版2021年1月13日)https://mainichi.jp/articles/20210113/ddl/k42/040/356000c

県と佐世保市が川棚町に建設を計画する石木ダムを巡り、水没予定地の住民らによる抗議の座り込みが12日、1000回を迎えた。現場には住民の他、長崎市や福岡市などからの支援者ら約40人が集まり、「抗議の座り込み1000回」の横断幕が掲げられた。

座り込みは県が県道の付け替え工事を再開した2016年7月25日に開始。ダム建設反対の住民の意志が揺らぐことはなく、年末年始などを除き座り込みを重ねてきた。

ダムの建設計画を巡っては、国の事業認定取り消しを求めた訴訟の敗訴が確定し、強制的に立ち退かせる県の行政代執行が可能になるなど、水没予定地の13世帯約50人の住民を取り巻く環境は厳しさを増している。昨年12月には県が盛り土作業を再開し、工事現場に住民が入らないよう柵を設置した。

住民の一人、岩下すみ子さん(72)は「ダムに反対しながら亡くなった住民の思いも背負って闘っている。県には納得いく話し合いをしてほしい」と語った。週2回ほど座り込むという佐世保市の70代女性は「こうしてみんなが結束して集まるのは誇りです」と話した。【綿貫洋】

 

通算1000回 石木ダム抗議の座り込み「工事の中断を求める住民側と県側の対立深まる」【長崎県】

(テレビ長崎 2021/01/12(火) 12:25配信) https://news.yahoo.co.jp/articles/8aadd2ee95cf15d38d55b0db7b2877e25014aae6

長崎県と佐世保市が東彼・川棚町に計画している石木ダムを巡り、建設に反対する住民などが続けている抗議の座り込みが、12日で通算1000回となりました。

住民によりますと、抗議の座り込みはダム完成後に水に沈む長崎県道の代わりとなる付け替え道路の工事が始まった2010年3月から断続的に行っていて、2016年7月から続けてきた「第4次座り込み」が12日で通算1000回となったということです。

長崎県と佐世保市が東彼・川棚町川原地区に計画し、2025年度の完成を目指す「石木ダム」を巡っては、話し合いのために「工事の中断」を求める住民側と長崎県側との対立が深まっています。

 

支援者に支えられた1千日 石木ダム反対運動

(朝日新聞2021年1月13日 9時30分)

 

石木ダム座り込み抗議1000回に 住民「県は話し合いを」

(西日本新聞2021/1/13 11:00) https://www.nishinippon.co.jp/item/n/681057/

石木ダム関連工事と住民の主な動き

(写真)抗議の座り込みが千回に達し、ダム建設阻止の決意を新たにする住民や支援者

長崎県川棚町で県が進める石木ダム事業の工事現場で、立ち退きを拒む住民や支援者による抗議の座り込みが12日、通算千回に到達した。50人以上が普段と同じように座り込み、県に事業の見直しを求める決意を新たにした。

集まった人たちは「長崎県は、いい加減にせんかい(千回)!」と書いた横断幕を掲げた。「ここ数年で亡くなった方が多い。絶対に古里を渡さない気持ちです」。ダム予定地で暮らす岩下すみ子さん(72)の言葉に力がこもる。

座り込みは、県道付け替え工事を県が再開した2016年7月から続く。その後、工事は再開と中断を何度も繰り返した。県は昨年12月下旬から、住民が座り込む一帯の工事を一時中断している。

「現場」と呼ばれる座り込みの場所に、佐世保市から毎回足を運ぶ宮野由美子さん(72)は「千回はあくまでも通過点。必要のないダム事業を一日も早く断念してほしい」と話した。

県は20年度中に約1・1キロの県道工事を終える方針。ダム堤の関連工事も控えているが、住民や支援者は徹底抗戦の構えを崩さない。現場の気温は氷点下になることもある。住民らは暖を取る道具や椅子を収納する倉庫を持ち込んでおり、県は再三にわたり撤去を求めている。

予定地の住民、岩下和雄さん(73)は「この現場で工事が進まない限り、本体工事の本格着工はできない。今こそ、県は話し合いをせんばいかん」と語った。 (岩佐遼介)


【長崎】石木ダム抗議の座り込み1000回

(長崎文化放送2021/01/131/12(火) 19:50) https://news.yahoo.co.jp/articles/f5ea8bd667d2df2f4d33a46a3ce66c9f7309f16e

長崎県と佐世保市が東彼・川棚町で進める石木ダム建設事業。県道の付け替え工事現場で続く反対住民らの座り込みが12日で1000回になりました。

反対住民らの抗議の座り込みは2016年7月25日からほぼ毎日続いています。

12日も午前8時前から「石木ダムは要らない」などとプリントされたシャツを着た約40人の住民らが集まりました。

厳しい冷え込みの中の座り込み。焚き木で暖をとり、寒さを乗り切ります。

「長崎県は、いい加減にせんかい!抗議の座り込み1000回」と書かれた横断幕を持ってダム建設反対への強い意思を示します。

石木ダム建設を巡ってはおととし5月、長崎県収用委員会が建設に必要な住民らの土地の収用を認め、9月に土地の所有権が国に移りました。

長崎県は行政代執行による強制収用が可能になっています。長崎県は今年度中に石木ダムの本体工事に着手する方針で、2025年度の完成を目指しています。

 

石木ダム抗議を激励 長崎 工事現場に田村貴昭氏ら

(しんぶん赤旗2021年1月6日(水)) https://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2021-01-06/2021010604_03_1.html

  日本共産党の田村貴昭衆院議員は5日、長崎県と佐世保市が川棚町に計画する石木ダムの県道付け替え工事の現場に駆け付け、新年から座り込んで抗議行動を続ける地元住民や支援者を激励しました。山下満昭党県委員長、堀江ひとみ県議、小田徳顕佐世保市議が同行しました。

昨年12月、工事を急ぐ県は、工事現場に住民らが入れないよう柵を設置し、重機を入れるなど強硬手段に出ました。しかし、住民らの抗議で作業は進まず、県はこの区間の工期内の施工を断念しました。党県委員会は、工事をいったん中断し地元住民と話し合うよう中村法道知事宛てに要望しました。

今年初めての座り込みには午前、午後合わせて58人が参加。田村氏は「石木ダム反対」と書かれたゼッケンをつけ、座り込み参加者に「コロナ禍で、医療機関や困っている人たちへの支援を行うべきときに、巨費をかけてムダな公共事業を進めるということは認められない」と語り、「国会でも野党連携を広げ、絶対あきらめず、ともに頑張っていきたい」と激励しました。

地元住民らと懇談する中で、住民の女性(72)は「毎日が常にダムとのたたかい。でも、子どもたちのことを思うと私たちの代で何としても止めたい」と話し、支援者の森下浩史・元長崎大学教授は「忙しいところを来ていただき、感謝している」と語りました。

(写真)座り込み参加者らを激励する田村氏(左端)=5日、長崎県川棚町

主文 審査請求を棄却する  (石木ダム事業認定取消請求裁決)

2021年1月11日
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2013年10月7日から7年2ヶ月経ちました。

裁決書

審査請求人
住所 ・・・・・・・・
氏名 ・・・・

上記審査請求人(以下「請求人」という。)が、平成25年10月7日付けでした
審査請求について、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第40条第2項の規
定に基づき、次のとおり裁決する。
なお、この裁決の取消しを求める訴えは、裁決があったことを知った日の翌日から起
算して6か月以内に、国を被告として提起することができる。ただし、裁決があったこ
とを知った日の翌日から起算して6か月以内であっても、裁決の日、の翌日から起算して
1年を経過したときは、裁決の取消しの訴えを提起することができない。

主文
審査請求を棄却する。
事 実

1 審査請求に係る処分
長崎県及び佐世保市が起業者である二級河川川棚川水系石木ダム建設工事並びにこれ
に伴う県道、町道及び農業用道路付替工事(以下「本件事業」という。) に関し、
九州地方整備局長(以下「処分庁」という。)が平成25年9月6日付けでした事業
の認定(九州地方整備局告示第15 7号。以下「本件処分」という。)

2 審査請求の趣旨
本件処分を取り消す、との裁決を求める。

3 審査請求の理由
本件審査請求の理由の要旨は、次のとおりである。

以下、当方(審査請求者)の審査請求に付した意見書と、処分庁の弁明書に対する当方からの反論書に記した反論に記した意見書とを基に審査庁が作成した、審査請求の理由が続いている。

その後に、裁決主文「審査請求を棄却する」の理由を記した、理由 が長々と記されている。

上にその冒頭部分を紹介した、2020年12月11日付けの裁決書(国土交通大臣 赤羽一嘉)が、石木ダム事業認定取消を求める審査請求人に届きました。
審査請求を提出したのが2013年10月7日ですから、7年2ヶ月が経過しての裁決です。これだけ時間をかけての審査なのですが、裁決理由は処分者(事業認定処分庁である九州地方整備局長)の弁明書記載事項の丸写し、もしくは、その補修文を貼り付けたうえで、「ダム建設案(申請案)が最も合理的であるとした処分庁の判断が不合理であるとは認められない。」と結論づける文ばかりでした。

行政不服審査法は、その主旨として、第1条で「この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを開くことによつて、簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。」としています(2014年に若干表現が変更がある)。「簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を図る」のであるからには、「処分庁の判断が不合理であるとは認められない。」では困ってしまいます。この事業によって、事業地居住民の生活の場を未来永劫に亘って奪い取るからには、「処分庁の判断が不合理であるとは認められない。」というのではまったくく不十分です
ダム事業予定地に指定されていなければ、事業地に居住されている皆さんが生活の場を追われる羽目にはならなかったからです。これらの裁決理由からは、生活の場を奪い取るほど必要性がある事業なのか否かをしっかり検証することを意識した裁決とは読み取れないからです。

今回の国土交通大臣による「審査請求棄却」裁決の取消を求めるには、国を被告として2020年12月11日の6ヶ月以内に提訴することになります。事業認定取消訴訟は不当にも2020年4月に「上告棄却」が決定しています。すでに事業認定に関する司法の判断は決定していますが、行政不服審査請求棄却裁決は新たな行政処分であることから、石木ダム対策弁護団と「事業認定取消を求める審査請求規約裁決取消訴訟」についてしっかり相談しようと考えています。(遠藤保男)

裁決書 20201211 PDF版 (送付された書類紙面をコピー)
裁決書 20201211 WORD版(反論記載用 審査請求理由と裁決理由、それへの反論をセットとして記載 判決理由への反論はこれから書き込み、取消訴訟に備える。)

事業認定取消を求める審査請求 関連書類

2013年10月7日審査請求段階

2015年1月15日 審査請求書への処分庁弁明書とそれへの反論関係

2017年5月17日「認定庁の公害等調整委員会からへの質問に対する回答」と当方からの反論

2019年1月16日 公害等調整委員会

 

 

 

 

 

 

 

流水型の川辺川ダムへの賛否に無回答3人、にじむ難しさ 12首長アンケ-ト

2021年1月6日
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球磨川流域の12市町村長に朝日新聞が流水型の川辺川ダムへの賛否等についてアンケートを行った結果についての記事を掲載します。

川辺川ダムに「賛成」と答えたのは八代市、芦北町、錦町、水上村、山江村、球磨村の6首長、「やむを得ない」が人吉市、多良木町、湯前町の3首長、五木村、相良村、あさぎり町の首長は無回答でした。

このうち、水上村、多良木町、湯前町、あさぎり町は球磨川への川辺川合流点より上流側に位置しており、また、山江村は合流点より下流側ですが、球磨川本川と少し離れているので、川辺川ダムと直接的な関係がないように思います。

これらの5町村を除くと、賛成は八代市、芦北町、錦町、球磨村の4市町村になります。

このうち、球磨村では支川「小川」の氾濫で特別養護老人ホーム「千寿園」で入所者14人が亡くなりましたが、これは小川が本川よりかなり早く氾濫したことによるものであって、川辺川ダムで対応することは困難であったと思います。また、下流域の八代市、芦北町では川辺川ダムがあってもその治水効果は下流にいくほど減衰していきますので、どれほどの意味があるのでしょうか。

八代市、芦北町、球磨村の首長がどこまで理解して川辺川ダムに賛成しているのか、よくわかりません。

 

ダム賛否に無回答3人、にじむ難しさ 12首長アンケ-ト

(朝日新聞2021年1月5日 14時30分)

ダム湖が一面緑色に 外来種の水草、2年連続大発生 除去費億単位、アユの姿も消え… 鹿児島・さつま町

2020年12月31日
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球磨川の南側、鹿児島県を流れる川内川(せんだいがわ)の鶴田ダムのダム湖で水草が2年連続で大発生し、除去費が億単位になり、アユへの影響も懸念されているという記事を掲載します。

2019年11月の記事も掲載します。

鶴田ダムは総貯水容量12300万㎥のダムです。2006年7月豪雨(鹿児島県北部豪雨)による川内川の水害のあと、放流管を増設し、洪水調節容量7500万㎥を9800万㎥/に、1.3倍に拡張するダム再開発事業が行われ、2018年度に完成しました。、

鶴田ダムは2006年7月豪雨の時に緊急放流を行い、ダム下流域を大氾濫させました。(「平成 18 年鹿児島県北部豪雨における川内川の水位上昇とその考察」http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00074/2008/52-02-0003.pdf

川辺川ダムは前の計画では総貯水容量が13300万㎥でしたから、鶴田ダムとほぼ同じ規模です。ちなみに流域面積は川内川が1573㎢、球磨川が1880㎢で、河川の規模もほぼ同じです。

球磨川の隣を流れる川内川のダム湖で、このような水草の異常増殖が問題になっているのです。

川辺川ダムを貯水型ダムはなく、流水型ダムにする検討が進められているのは、このような水草の異常増殖の心配があるからだと考えられます。

しかし、流水型ダムにすれば、河川環境への影響を回避できるかというと決してそうではありません。

竹門康弘氏(京都大学防災研究所水資源環境研究センター)は流水型ダムの環境影響について次の3点を指摘しています。(2013年の小国川での講演資料より)

1、河床攪乱規模の低下により瀬–淵構造の形態が変化する可能性がある。⇒淵が砂利や砂で埋まり、浅くなるなどが考えられる。サクラマスやヤマメの産卵場が減少

2、湛水域上部に大粒径の石礫が滞留する結果、下流への大礫の供給が減る可能性がある。 ⇒直下流で河床の径粒分布が変化すると考えられる。

3、湛水域下部に細粒分や栄養塩が滞留する結果、平水時の濁度が若干増加する可能性や藻類が増える可能性がある。⇒直下流で青澄な流水景観が損なわれる恐れがある。

  

ダム湖が一面緑色に 外来種の水草、2年連続大発生 除去費億単位、アユの姿も消え… 鹿児島・さつま町

(南日本新聞2020/12/26(土) 11:15)https://news.yahoo.co.jp/articles/2932d82808253d7d54107557a7a5d8b6dd6839b4

(写真)湖面を覆う水草。専用船で除去するが追いつかない=さつま町神子の鶴田ダムから

(写真)回収され山積みされている水草=さつま町神子

さつま町の鶴田ダムの貯水池・大鶴湖で、外来水草が昨年に続いて大量発生している。管理所が除去を進めているが、繁殖力に追いつかない。除去費用は前年度の1億5千万円を超える可能性もある。同町と伊佐市にまたがる湖はアユの産卵地で、生態系への影響も懸念されている。

12月上旬、鶴田ダムの天端から大鶴湖を望むと、専用船2隻が作業を進めていた。湖面が見えるのは船の周辺だけ。緑色の水草は、ダムから約12キロ上流の伊佐市の曽木の滝近くまで広がる。  専用船は大型のカッターで水草を刈り、運搬用の船に積み込む。岸からは4トントラックで敷地内の仮置き場に運ぶ。1日の処理量は60~70トン。仮置き場には、一部茶色く変色した草が積み上がっていた。  管理所によると現在、水草は約200万平方メートルの湖面の半分以上を覆う。外来種ボタンウキクサとホテイアオイで、環境省は生態系を壊す恐れがあるとして駆除を呼び掛ける。水面を覆い尽くし、水中の光や酸素不足から魚介類への悪影響も懸念され、枯れて沈むとダムの放流を妨げる可能性がある。

□ ■ □

水草の群生がみられるようになったのは2008年度。増減を繰り返し、19年度は湖面の半分まで広がった。専用船を初めて使って駆除作業に着手。しかし、暖冬で枯死しなかったこともあり、約10万平方メートルが残った。それらが再び繁殖し、9月以降一気に増えた。

生態系への影響を心配する声も上がり始めている。1~3月に大鶴湖でアユの稚魚を取っている川内川上流漁協(伊佐市)の今年の採捕量は、目標の50分の1の1キロにとどまった。山田満組合長(65)は「このままでは来年も難しいだろう。漁協運営にとって死活問題」と嘆く。  川内川漁協(さつま町)の舟倉武則組合長(74)も「今年は湖に流れ込む川で、アユの姿を見なかった」と表情を曇らせる。両漁協は7月、管理所に早期対策を求める要望書を出した。

□ ■ □

ダムは6~8月、大雨に備え水位を低くするため、専用船での除去作業ができない。管理所は昨年より2カ月早い9月末から専用船を投入した。11月からは2隻体制にし、同月末までに約2千トンを回収した。

水草や流木の除去費は、年約8億円のダム維持費から賄う。大量発生前の費用は年4千万円程度。前年度は約6千トンの回収で約1億5千万円かかった。本年度も同規模を想定しており、毎年実施する堆積土砂の測量を全て取りやめ、予算を確保した。

費用がかさむ場合は、緊急性のない補修工事の先送りも検討する。三浦錠二所長(57)は「春までに全て回収できるように最優先で進める」と話す。

大鶴湖の上流には水草の群生があり、今後も株が流れ込む可能性がある。ホテイアオイの生態に詳しいNPO法人オアシス水環境研究会(志布志市)の本村輝正理事長(84)は「湖水の富栄養化も異常発生に関係しているのではないか。流域全体で環境を考える必要がある」と指摘する。

【ボタンウキクサとホテイアオイ】  それぞれ環境省の特定外来生物と緊急対策外来種、重点対策外来種に指定されている。ボタンウキクサはアフリカ原産で別名ウオーターレタス。南アメリカ原産のホテイアオイはウオーターヒヤシンスとも呼ばれ、いずれも家庭などで栽培していたものが野生化したとみられる。

 

鹿児島)ダム湖で異常繁殖の水草、除去作業が本格化

(朝日新聞2019年11月20日 3時00分)

球磨川水害 被災者の意識調査 民意が置き去りにされた

2020年12月29日
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熊本日日新聞が被災住民を対象に実施した意識調査の結果では、球磨川治水について望む対策は「宅地のかさ上げ・高台移転」「堤防のかさ上げ・引堤」「河道掘削」の順に回答数が多く、「ダム建設」は4番目です。

熊本日日新聞の社説と、調査結果を示した記事を掲載します。

被災住民が川辺川ダムの建設を望んでいるかのような話は、国土交通省と熊本県が作り上げた虚構だと思います。

被災者の大多数の意向に沿って、川辺川ダムの建設ではなく、これらの治水対策を優先して進めるべきだと思います。

 

被災者の意識調査 民意が置き去りにされた

(熊本日日新聞社説2020/12/282月28日 09:28) https://kumanichi.com/opinion/syasetsu/id45018

球磨川流域を中心に甚大な被害をもたらした7月豪雨を受け、蒲島郁夫知事は12年前に「白紙撤回」した川辺川ダム建設計画を一転して容認。流水型(穴あき)のダムを造るよう国に求めた。国土交通省は即、呼応。来年度予算案に調査費が盛り込まれた。

豪雨後の治水対策協議で軸となったのはダム建設。スピード感というより、むしろ拙速な印象を拭いきれない。熊本日日新聞社が被災住民を対象に実施した意識調査の結果を見て懸念が的中した。浮き彫りになったのは最も重視すべき住民の意向、いわゆる民意が置き去りにされている実態である。

ダム要望は4番目

調査によると、行政に取り組んでほしい施策で最も多かったのは「生活や事業の再建」で、53・0%と過半数を占めた。元の生活に早く戻りたいとの切実な思いが伝わる。「治水対策」は2番目で25・6%。最重点で取り組むべきは、やはり生活再建である。

球磨川治水に絞ると、望む対策は「宅地のかさ上げ・高台移転」「堤防のかさ上げ・引堤」「河道掘削」の順に回答数が多く、「ダム建設」は4番目だった。

ダムへの期待度は高くなく、ダムありきで治水対策を主導した国交省や県との認識の違いが際立つ。治水協議に加わった流域市町村の首長は、住民の要望を直接肌で感じていたはずだ。ダムに固執する理由の説明が求められよう。

知事は方針転換の理由に「民意の変化」を挙げた。12年前はダム不要が大半だったが、被災後、少なくとも3分の1は建設に賛成しているというものだ。今回の知事判断を「支持する」との回答は「どちらかと言えば」を合わせて41・8%。知事の想定に近い。

民意は動いたのか

しかし、「どちらかと言えば」を含めた「支持しない」は36・3%、「分からない・無回答」も21・9%だ。単純比較はできないが、知事が白紙撤回を決断した当時、流域住民の82・5%が支持したのとは落差がある。ずれが生じたのは、結論を急ぎすぎたためではないか。

建設の賛否を問う住民投票を「実施すべきだ」は「いずれ」を含め59・8%と、「実施すべきでない」(14・3%)を大きく上回った。流域治水を進めていく上で、住民の合意が得られていない点は今後の不安材料だ。円滑な事業推進の妨げになりかねない。

知事が11月19日、県議会でダム容認を正式表明した際、特に反省の弁はなかった。2008年の白紙撤回は半年間の熟慮の末、「球磨川そのものが守るべき宝」と決断したが、今回の容認は周囲があっけにとられるほど早かった。

被害の責任どこに

代替策とした「ダムによらない治水」が12年間にわたり全く進まなかったことの責任の所在は、一体どこにあるのだろう。

治水に深く関与していた国交省の責任はより重い。知事の白紙撤回表明の直前、九州地方整備局長は「ダムを建設しないことを選択すれば、住民に水害を受忍していただかざるを得ないことになる」と述べた。何としてもダム建設を進めたい気持ちの表れだったのだろう。しかし建設は中止に。治水の主導的立場にありながら不作為ともとられかねない12年間の姿勢と、関連はあるのだろうか。

治水対策協議で対立し、事業を後押しできなかった流域市町村の首長も責任は免れまい。

次のステージにやみくもに進む前に立ち止まり、きちんと総括すべきである。流域治水をどう進めれば最も効率的なのか、展望も開けてこよう。不可欠なのが、住民の要望を丁寧にすくい取り合意形成につなげることだ。果たすべき責任はそこにある。

 

2020熊本豪雨 熊日球磨川流域被災者調査 人吉市、八代市坂本町、球磨村、相良村、五木村

(熊本日日新聞2020年12月29日)

球磨川の冶水対策を尋ねた設問(複数回答、回答数786件)では、

宅地かさ上げや堤防堅備など被災者にとって身近な場所での冶水対策を望む声が、ダムやゆ遊水地の整備を大きく上回る傾向が出た。

回答で最も多かったのは、「宅地のかさ上げ・高台移転」で、241件に逮した。「埋防のかさ上げ・川幅を広げる引堤」も207件と目立った。

県が10~11月に実施した流域の憲見聴取会で住民から要望が相次いだ「河道掘削」は158件だった。

一方、「ダム建設jは100件にとどまり、被災者のニーズは乏しかった。「遊水地の堅備jも41件と少なかった。

(野方信助)

 

◇調査方法 11~20日、球磨川流域2市3村の計798世帯に設問による対面調査を実施し、540世帯から回答を得た。

人吉市、八代市坂本町、球磨村、相良村は仮股住宅と遍曜所の全世帯が対象。五木村については避難所などがないため、NTT電話帳から無作為で紬出した世帯を対面で調査した。

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