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報道

千寿園の避難計画、最大雨量を想定せず作成  排水ポンプ3カ所が全て破損 熊本・球磨村

2020年7月30日
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球磨川の氾濫によって、熊本県球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」で入所者14人が亡くなりました。

この千寿園の避難計画の問題を取り上げた記事をお送りします。

国は2015年に水防法を改正し「1000年に1度」の豪雨を想定した浸水区域図を作成しましたが、千寿園は従前の「80年に1度」の浸水区域図、園自体は浸水しない浸水区域図による避難計画を策定していたという問題です。

しかし、「1000年に1度」の豪雨を想定した浸水区域図は公表されているものの、その浸水区域図が実際にどこまで重視されているのでしょうか。

むしろ、避難計画の問題ではなく、浸水の可能性があるところに特別養護老人ホームを建てることを規制しない行政側の問題であるように思います。

それと、下記の記事「排水ポンプ3カ所が全て破損 熊本・球磨村の渡地区、浸水で能力喪失」のとおり、浸水で排水機場がストップしたことも大きな問題です。肝心の時に役立たたないのですから、排水機場の機能を全面的に点検する必要があります。

 

 千寿園の避難計画、最大雨量を想定せず作成 熊本・球磨

(毎日新聞2020年7月28日 21時16分)https://mainichi.jp/articles/20200728/k00/00m/040/230000c

(写真)入所者14人が亡くなった特別養護老人ホーム「千寿園」=熊本県球磨村で2020年7月5日、本社ヘリから

九州豪雨で入所者14人が犠牲になった熊本県球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」が策定していた避難計画が、最大規模の大雨が降った時の浸水想定ではなく、より小さな想定を考慮して作成されていたことが判明した。園の顧問弁護士が28日、毎日新聞の質問状に回答した。水防法は最大規模の大雨を考慮した避難計画の策定を求めている。

国は2015年に水防法を改正し「1000年に1度」の豪雨を想定した浸水区域図を作成して水害対策を強化することにした。さらに、翌16年8月の台風10号で岩手県岩泉町の高齢者グループホーム「楽(ら)ん楽(ら)ん」が浸水し入所者9人が死亡したことを受け、17年6月に再度水防法を改正。最大規模の豪雨を想定した浸水区域にある福祉施設などに避難計画策定を義務付けた。

国土交通省九州地方整備局は17年3月、熊本県人吉市より上流で12時間総雨量502ミリの「1000年に1度」の雨が降った場合、千寿園周辺は広範囲に10~20メートル未満浸水するとの浸水区域図を公表した。同時に九地整は12時間262ミリの「80年に1度」の浸水区域図も公表。この場合、園自体は浸水せず、周辺の浸水も0・5メートル未満とされており、園はこのケースを考慮した避難計画を策定し、村に提出していた。

この判断について、園の顧問弁護士は「地区全体が水没するという、規模があまりにも大きすぎる(想定の)ため、避難計画の策定で考慮することができなかった」と回答した。

国交省によると、豪雨当日の球磨村の12時間雨量(3日午後7時~4日午前7時)は439ミリで、国土地理院によると、園周辺は2~3メートル浸水したと推定される。園は1階の天井部分まで浸水した。

国交省によると20年1月現在、全国で7万7906施設が水防法に基づく避難計画策定を義務付けられているが、策定済みなのは45%の3万5043施設にとどまる。国は22年3月までに策定率100%を目指しているが、未作成でも罰則はなく、熊本県内の対象施設で策定しているのは5・4%だけだ。【中里顕、城島勇人、吉川雄策】

国の用地確保支援策が必要

広瀬弘忠・東京女子大名誉教授(災害リスク学)の話 避難計画を策定するだけでは場当たり的な対応になってしまう可能性があり、施設側が細かく気象情報をチェックし避難に備えることが大切。一方、危険な立地を避けて施設を建設することも重要だが、今は民間任せになっているので、国の費用助成も含めた用地確保の支援策が必要だ。

水防法

水害の被害軽減のため国や地方自治体が果たすべき役割を明記した法律。国に河川ごとの浸水想定区域図策定と自治体への通知も求めており、市町村は地域防災計画に想定区域図を反映する。関東・東北豪雨(2015年9月)や台風10号(16年8月)などの大規模水害を受け、中小河川のリスク情報発信や周辺自治体などによる減災協議会の創設も規定した。洪水時に河川の巡視や水門の開閉などにあたる水防団の身分規定もしている。

 

排水ポンプ3カ所が全て破損 熊本・球磨村の渡地区、浸水で能力喪失

(西日本新聞2020/7/18 6:00)https://www.nishinippon.co.jp/item/n/627281/

(写真)球磨川(上)と支流の小川(左下)が氾濫し、広い範囲で浸水した熊本県球磨村=4日(撮影・帖地洸平)

熊本県南部を襲った4日の豪雨の際、大規模浸水が発生した同県球磨村渡地区に設置されていた3カ所の排水ポンプ施設が浸水で全て破損し、排水能力を失っていたことが国土交通省八代河川国道事務所への取材で分かった。

同事務所は同等の排水能力を持つポンプ車を配備して対応している。

排水施設は、建設が中止された川辺川ダムに代わる治水対策の一環で、国交省が2015年に11億円をかけて整備した。

支流側の内水氾濫を軽減する能力があり、今回の豪雨でも当初は稼働したが、球磨川の氾濫で水に漬かり動かなくなったという。

渡地区は球磨川と支流の合流部に当たり、人吉盆地に降った雨が集中する地形。

渡地区では2階建て民家の屋根付近まで水に漬かり、浸水深は5メートルを超えたとみられる。

地区内には、14人が死亡した特別養護老人ホーム「千寿園」もある。

同事務所によると、隣接する同県人吉市でも球磨川の氾濫で国管理の排水施設1カ所が破損。

「本流が氾濫するような大規模な浸水では排水施設自体が水没してしまい、対応できない」という。

(古川努)

 

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