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報道

川辺川ダム揺れる民意…白紙撤回から12年 

2020年10月5日
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「川辺川ダム揺れる民意」という記事を掲載します.川辺川ダム無しで今回の豪雨に対応できる治水対策案を示すことが求められています。

 川辺川ダム揺れる民意白紙撤回から12年

(西日本新聞2020/10/05 06:05) https://www.47news.jp/localnews/5335931.html

西日本新聞社 西日本新聞社 球磨川の治水を巡る経過

熊本知事「11月に治水策」

7月の豪雨災害を契機に、かつて熊本県の蒲島郁夫知事が「白紙撤回」した川辺川ダム建設を巡る議論が再燃している。発端は、国が8月の検証委員会で提示した「ダムがあれば被害は軽減できた」とする推計結果。蒲島氏は治水対策として「ダムも選択肢の一つ」との構えで、年内に新たな判断を表明する。

「11月末までに治水計画を示すことで、住民の皆さんも将来の計画ができるのではないか」。蒲島氏は9月下旬、甚大な被害を受けた人吉市を視察した際にこう述べた。

県南部の球磨川流域は1963年から3年連続で水害が発生。特に65年の家屋の損壊と流失は1281棟に及び、人吉市街地の3分の2が浸水した。そこで国は66年、最大の支流川辺川へのダム建設を発表。「5~10年に1度」の洪水にしか耐えられない治水安全度を一気に「80年に1度」に向上させる計画だ。

ダムの用地取得は98%完了し、水没予定地の五木村では移転対象549世帯のうち、1世帯を除いてすべてが移転。水没する道路の付け替え道路は9割が完成。かかった費用は概算事業費約3300億円の6割に当たる約2100億円に達していた。

だが、大型公共事業への反発なども相まって「脱ダム」の機運が高まり、蒲島氏は初当選した2008年、「球磨川そのものが守るべき宝」として白紙撤回。翌09年に前原誠司国土交通相(当時)が中止を表明した。

代わりに国や県、流域市町村は「ダムによらない治水」を検討。国は19年、堤防かさ上げや放水路設置などを組み合わせた10の治水案を提案した。しかし、治水安全度の目標は「20~30年に1度」とダムに及ばず、費用1兆円、工期100~200年をつぎ込む案はまとまらなかった。

この間、行われた対策は宅地のかさ上げなど一部に限られる。「5~10年に1度」の洪水にしか耐えられないままだった流域は今年7月、「戦後最大規模」の豪雨で壊滅的な被害を受けた。死者65人のうち浸水による犠牲は50人に上る。流域市町村は9月、国と県に「ダムを含めた抜本的な治水」の早期実施を要請した。一方、ダム反対派の動きも活発化している。

蒲島氏は白紙撤回を表明した県議会での演説で、「未来の民意」にも言及していた。「再びダム治水を望んだ場合、すでに確保されているダム予定地が活用されることになる」。被災地の惨状を目にした蒲島氏が、12年後の民意とどう向き合うのか注目される。 (古川努)

 「反対だったが」「またもめるのか」

熊本県南部の球磨川流域の住民たちは半世紀前、度重なる水害の解決策として支流、川辺川でのダム建設を認めた。だが、その後の反対運動で流域は分断。対立の歴史は2008年、蒲島郁夫知事の「白紙撤回」でいったん決着した。そして12年後の今年7月、死の恐怖にさらされた流域住民の「民意」は、再び大きく揺れている。

「今はダムが必要だと考えている」。7月豪雨で自宅が全壊した人吉市紺屋町の男性(71)は「かつてはダム反対が民意だった。でも今回の災害で変わった」と打ち明ける。自宅2階に避難した八代市坂本町の50代女性は「(上流にある市房)ダムがなければ助からなかったと思う。昔は反対派も多かったけど、今回の雨で考えを変えた人も多いはず」と推測する。

壊滅的な被害を受け、住民の心には変化の兆しも見える。だがダムを巡る対立と分断の記憶は深く刻まれ、「おおっぴらに賛成とは言えない」とのムードも漂う。

「ダムを造らなくても、他に手段があると(白紙撤回を)決断したはずではなかったか」。球磨村一勝地地区で、全壊した自宅を片付けていた70代男性はうんざりした顔を見せた。渡地区の女性(49)は「またダムでもめるのか。何年後に実現するのか…」。復興という深刻な現実に直面する住民たちに、繰り返される議論はむなしく映る。

◇ ◇

球磨川の上流には既にダムがある。1960年に建設された水上村の市房ダム。治水面で一定の役割を果たしているが、流域住民の見方は違う。

球磨村で生まれ育った80代男性は「球磨川はコントロールできない。よそ者には分からない」。渡地区の男性も「机の上で計算しても分からないことはある」と同調する。清流とともに生きてきた住民の心底には、そもそも人工構造物への疑念があるようだ。

神瀬地区の男性(70)は今回、川の水位が一気に上がって下がった、と感じた。その原因は「市房ダムの緊急放流」だと考え、さらにダムができれば「被害が広がる」と不安がる。

だが市房ダムはこれまで一度も緊急放流をしていない。国も県も流域市町村も、いまだ今回の豪雨による被害の検証内容を正式に住民に説明する場を設けていないことが、疑念や不安を増幅させる。行政への不信は募る。

各機関のトップだけで方針を決めるやり方に反対する人吉市の会社員の男性(49)は「国、県、首長だけの会議ではダムのメリットしか説明されないだろう。デメリットも明らかにし、住民の意見を反映させるべきだ」と注文。川辺川ダムができれば水没する五木村で、建設方針だった当時、苦渋の決断で高台に移転した男性(71)は願う。「下流域の甚大な被害を思えば反対はできない。せめて村民にしっかり説明し、意見を聞いてほしい」 (中村太郎、長田健吾、綾部庸介、松本紗菜子)

 

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