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報道

【混迷の石木ダム】長崎県知事、佐世保市長、 川棚町長のインタビュー記事

2020年11月24日
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長崎新聞が【混迷の石木ダム】というタイトルで、5人のインタビュー記事を連載しました。

2人は石木ダム絶対反対同盟の岩下和雄さんと石木川まもり隊の松本美智恵さんで、そのインタビュー記事は別稿をお読みください。。

残りの3人は行政側で、中村法道・長崎県知事、朝長則男・佐世保市長、山口文夫・川棚町長です。この3人のインタビュー記事を掲載します。

この記事を読んで最も腹立たしく思うのは、朝長佐世保市長の次の答えです。

-なぜ石木ダムが必要なのか。

朝長市長:1994年に大渇水が起きた。給水制限が264日間に及び、48時間のうち5時間しか水が出ない過酷な状況もあった。当時を知る市民は減ったが、あの苦しみは二度と経験させたくない。

-人口減少社会の中で、佐世保市の水需要予測は「過大」との指摘もある。

朝長市長:私たちは国の指針に基づいて予測し、国から事業の補助金をもらっている。国に認められた予測であり、市が独断で決めていない。

朝長市長は26年前に起きた大渇水を持ち出していますが、その後、佐世保市の水需要はどんどん減って、一日最大給水量は当時の73%にまで落ち込んでおり、仮に同程度の大渇水が来ても、問題になりません。

また、佐世保市がいまだに続けている水需要の架空予測について「国に認められているのだから」問題がないと、朝長市長は強弁していますが、ダム計画がなければ、実績乖離の予測をするはずがありません。

一方で、この架空予測を容認する国(厚生労働省)に対して強い憤りを覚えます。

 

【混迷の石木ダム】インタビュー・中村法道知事 代替案なく不退転の決意

(長崎新聞2020/11/19 11:53) https://this.kiji.is/701995600895968353

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業。事業採択から45年の歳月が流れ、県は家屋などを強制撤去できる行政代執行の一歩手前まで手続きを進めてきた。だが今も水没予定地に暮らす13世帯は反対の姿勢を崩さず、事態は混迷を深めている。互いが納得する形で解決する余地はないのか。中村法道知事に聞いた。
球磨川水害に関する意見書 水源連 1117
 -事業が進まない要因と県の責任をどう考えているのか。

 川棚川の治水の安全性確保と佐世保市の慢性的な水不足解消のため「ダム建設に依(よ)らざるを得ない」と、地元住民の理解が得られるよう歴代知事や職員が何度も戸別訪問するなど努力を重ねてきた。この間、1982年に強制測量を実施し、行政に対する不信感が相当大きくなったのは事実。この点について当時の高田勇知事はのちに「ご心労、ご迷惑をお掛けした」旨の発言をされており、私たちも同じ思いを申し上げてきた。ただそうした経過の中でも8割の地権者の方々から土地を提供していただいた。住民の安全安心の確保が強く求められる中、ダムがいまだに完成していないことに強く責任を感じている。

 -ダムの治水、利水効果について県・佐世保市と反対住民の主張は溝が深いが、埋められると思うか。

 これまでに河川の氾濫が起きた降水量には現在進めている河川改修で対応できるが、それ以上の100年に1度かつ最も危険な雨の降り方でも、住民の生命・財産を守るという水準で事業を進めている。利水では人口は減少しているのに水の需要予測が過大と指摘されているが、一定の余裕量は必要。全国のダムも同様に推計されている。時間をかけて説明すれば理解していただけると思う。だが事業を白紙に戻さなければ話し合いに応じないといった主張が繰り返され、耳を傾けてもらえない状況が続いており非常に残念だ。

 -県幹部は昨年9月以来の知事との面談を働き掛けているが、住民は先に工事の中断を求めている。

 大規模災害が頻発するような状況では一刻も早い環境整備は行政の責務。話し合いが進まなければ工事再開もあり得る、との前提で話し合うことはあるかもしれない。実現すれば、まずはダムの必要性を理解してもらうことが最も重要になる。幾通りもの選択肢の中から今の案を選んできた経過があり、さまざまな疑問に答えられる。

 -知事は行政代執行について「(2022年3月までの)任期中に方向性を出したい」と述べている。

 住民の理解を得て事業を完成させるのがベスト。行政代執行は最後の最後の手段。状況の推移を見極めながら総合的かつ慎重に判断したい。

 -行政代執行に踏み切れば、県も世間から批判されダメージは大きい。現実的な選択肢になり得るのか。

 新たに50戸以上の移転を伴う河川拡幅や、海水淡水化装置の導入など、相当コスト高になってもダム以外の手法を選択するという県民・市民の意見が多く出てくれば話は別だが、現実的に考えると代替案はない。不退転の決意で事業に臨まなければならないと考えている。行政代執行がやむを得ない局面となれば、批判やお叱りを甘んじて受ける覚悟で進めなければならない。

 -それは政治生命を懸けるという意味か。

 行政代執行をするのであれば、まさに政治生命を懸けた決断が必要になる。

 

【混迷の石木ダム】インタビュー 朝長則男 佐世保市長 渇水の苦しみ 二度と

(長崎新聞2020/11/21 14:00T) https://this.kiji.is/702714763617387617

(写真)朝長則男 佐世保市長

 -なぜ石木ダムが必要なのか。

 戦前から佐世保は、旧日本海軍が造ったダムに頼りながら発展した。戦後は米軍や自衛隊の基地ができ、造船で工業化も進んだ。急激に人口が増える中、十分な水を確保できない状態が続いていた。そうした中、1994年に大渇水が起きた。給水制限が264日間(8月1日~95年4月26日)に及び、48時間のうち5時間しか水が出ない過酷な状況もあった。当時を知る市民は減ったが、あの苦しみは二度と経験させたくない。備えとして、石木ダムで必要最小限の水を確保したい。

 -反対する住民らと真剣に向き合ってきたか。

 市長就任直後の2007年5月から毎月現地へ出向き、(反対する)13世帯を戸別訪問するなどしてお願いを続けた。当初は耳を傾けてくれる住民もいたが、09年に事業認定を申請してから態度が厳しくなった。何度も怒鳴られたりして、警察を含め周囲から「危ない」と注意を促された。以来、訪問を控えているが、(住民を説得したい)気持ちは変わらない。

 -知事は昨年9月に反対住民と面談した。市長はしばらく対面していない。

 県に対応を任せており、知事から同席を求められればいつでも出向く。ただ、(反対派との)行政訴訟も続いており、今は議論をするタイミングではないとも感じている。

 -事業への理解が深まらない要因は。

 反対する住民には理解してもらえないが、佐世保市民と川棚町民の大半は事業の必要性を理解している。(反対する)市民団体は、住民への同情や、ダム自体を認めたくないという考えもあるのかもしれない。(理解の程度を)ひとくくりには言えない。

 -人口減少社会の中で、佐世保市の水需要予測は「過大」との指摘もある。

 私たちは国の指針に基づいて予測し、国から事業の補助金をもらっている。国に認められた予測であり、市が独断で決めていない。

 -代替策はないのか。

 コストを無視し、いくらでも公金を使えるのであればあるのかもしれない。ただ、海水淡水化装置にしても漁業者との調整など多くの課題が出てくる。さまざまな可能性を調査した上で石木ダムが最適という結果が出た。漏水対策や再生水の活用などの取り組みも続けているが、まとまった水量を確保できるダムの代替策としては「現実論」にならない。私から建設の中止を言い出すことはない。

 -県は、家屋などを強制的に撤去する行政代執行も選択肢の一つとする。行政代執行を認めるか。

 総合的な要素の中で知事が最終的に判断すること。現段階で私が言及することはないが、これまでの知事の発言は支持する。

 -市は行政代執行を知事に請求できる。任期中に請求する考えはあるか。

 市民や議会から「知事に言うべき」と求められれば、知事に相談するかもしれない。ただ、今はそこまでの状況とは考えていない。


【混迷の石木ダム】インタビュー<完> 【混迷の石木ダム】インタビュー<完> 山口文夫 川棚町長 状況打開 難しい

(長崎新聞2020/11/23 13:54) https://this.kiji.is/703472377812485217?c=39546741839462401

(写真)山口文夫 川棚町長

 -用地の取得が完了した現在も、13世帯約50人の町民が住み続けている。地元町長として現在の状況をどう見ているのか。

 町では11人の死者を出した1948年をはじめ、複数回の水害を経験した。現在も川棚川下流域に住んでいる町民は多く、治水は重要な課題だ。石木ダムへの協力を長らくお願いしてきたが、13世帯の皆さんに理解してもらえず残念に思う。先祖代々受け継いだ土地を離れたくないという強い思いがあるのだろう。だが、すでに移転した8割の住民にも同じく古里への強い思いがあり、苦渋の選択をした。移転者からは「先祖が眠る墓を掘り起こす時が一番苦しかった」「私たちの決断は何だったのか。やりきれない気持ち」「提供した土地が無駄にならないようにダムの早期完成を望んでいる」という声を聞いた。どちらに対しても行政の責任がある。

 -就任当初からダム推進を訴えてきた。ダム問題についてどう取り組んできたのか。

 就任した2010年は事業認定申請後で、表立っての行動はできなかった。民主党政権下で全国のダム事業の再検証があり、さまざまな方法を議論した結果、やはり石木ダムが最も現実的だと思った。この時期に地元住民と知事の公開討論会を設けることができ、議論は6時間に及んだ。私自身さまざまなルートを使って反対住民との接触を試みたが「町は関係ない」と言われたりして糸口をつかめなかった。反対住民の弁護団が結成され、法廷闘争に移って以降、町として動くのがさらに難しくなった。

 -地元町長として状況打開に動く考えはないのか。

 非常に難しい。残念ながら説得する機会すら持てない状況だ。数年前、水没予定地の川原地区の自治会長から「町長として県に反対を訴えてほしい」と要望を受けた。今までになかった動きだったので、町政懇談会で話し合おうと打診したが断られた。現在、川原地区の住民は土地の権利を失っているが、住んでいる以上は町民であり、町として自治会活動を支援する責務がある。こうしたつながりを通して、何とか話し合う機会を捉えたいが。

 -昨年の町議選では川原地区の反対住民が最多得票で当選した。ダムを巡る町民世論をどう見ている。

 これまでもダム反対を訴える議員はいたが、町議会では過去3回ダム推進が決議された。地権者の8割が移転し、歴代町長も推進の立場だ。こうした状況を総合的に判断して、ダムの必要性を理解している町民が多数とみている。

 -県は家屋などを強制撤去する行政代執行も選択肢から除外しない構えだ。万が一、代執行となった場合に町としての対応は。

 現段階で知事は「早期に話し合いに応じてもらえるように粘り強く呼び掛ける」と述べている。その姿勢を評価しているし、私自身代執行は望まない。話し合いで何とか解決できないかと思っている。代執行は知事の判断であり、今の段階で私がコメントすべきではない。町としては町政懇談会に応じてもらい、協力してもらうようにお願いするしかない。

 

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