長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、反対地権者らが国に事業認定取り消しを求めた訴訟の控訴審第3回口頭弁論が3日、福岡高裁(西井和徒裁判長)であった。高裁は原告側が求めた証人尋問を却下し、結審した。判決は11月29日。
原告側は、県と同市が主張する治水面、利水面でのダムの必要性に反論する準備書面を提出。治水面ではダム建設の費用対効果について算定方法が不適切だとした。利水面では、同市が算定した水需要予測と保有水源について、評価方法の問題点を指摘した専門家2人の意見書を提出。2人の証人尋問を求めたが、西井裁判長は却下し、弁論を終結した。
弁論後の集会で原告弁護団長の馬奈木昭雄弁護士は「初めから結論が決まっているかのように、こちらの話を聞こうともしない。裁判所としての機能を放棄している」と批判した。
判決ありきの訴訟指揮⁈ 石木ダム事業認定取消訴訟控訴審 7月3日
福岡高等裁判所、7月3日の口頭弁論で、「これを以て終結、判決は11月29日」
2019年7月3日14時から開かれた石木ダム事業認定取消訴訟控訴審第3回口頭弁論において、双方からの提出書類確認、控訴人側からの提出準備書面要旨説明陳述を終え、審理が「今後の進行」に入りました。控訴人側は、この日の口頭弁論に向けて提出した2つの意見書の作成者、伊藤達也氏(法政大学教授)と富樫幸一氏(岐阜大学教授)について、その意見書の内容説明を求めるための証人申請をしました。西井和徒裁判長は、被告側に意見を求め、被告代理人が「その必要は無い」と述べると、言下に「当裁判所も必要ないと認め、採用しない」とあっさり却下。この控訴審は今日を以て終結とする。判決は11月29日13時10分。」と告げ、3人の裁判官退廷してしまいました。
控訴人が、新たな証拠や意見書を提出しているにもかかわらず、それらには一顧だにもせず、福岡高裁の西井和徒裁判長ら3人の裁判官は、問答無用と一刀両断。私たちを斬り捨てたのです。まさに、2019年7月3日は、「福岡高等裁判所が死んだ日」になりました。
控訴人側からの提出準備書面要旨説明陳述
高橋謙一弁護士が利水に関して提出した第8 ないし第10 準備書面の要旨を述べました。
緒方 剛弁護士が、治水の側面から費用便益比の問題すなわち、費用対効果の点について第7準備書面の要旨を述べました。
準備書面要旨陳述内容
19.06.27高裁J7 治水要旨 緒方弁護士
高裁J8等利水要旨 高橋弁護士
伊藤達也氏(法政大学教授)意見書概要
- 佐世保市が「二年に一度の渇水状況」と喧伝していますが、実は「渇水」の実態はなく、単なる「幻想渇水」である。
- 後発水利権は先発水利権を侵害しない限度でしか認められない、本件慣行水利権は、相浦川の4つのダム及び相浦取水場の許可水利権に先発している、相浦川の許可水利権が十分に取水できているにもかかわらず、本件慣行水利権だけが取水できない状況が起こることはあり得ない。
- あり得ない状況が起きているように見えるのは、本件慣行水利権及び相浦川の許可水利権が相互に補完して、取水されているからである。
- 総合的に見ると、被控訴人が「10年に1回程度の渇水」と述べる2007年でさえも十分に取水できている。
- 本件慣行水利権だけを保有水源から除外することが著しく不合理である。
富樫幸一氏(岐阜大学教授)意見書概要
- 石木ダム建設の必要性の根拠とされる平成24年度水需要予測について、種々の項目で、恣意的かつ不合理な予測が行われている。
- 人口統計について、佐世保市は2024年の人口を想定するのみであるが、厚労省「新水道ビジョン」のように2060年の推計をすべきこと、2060年の佐世保市の給水人口は20万人以下として水需要予測を行うべき。
- 生活用水原単位については、佐世保市が採用したロジスティック曲線は収束値を根拠なく恣意的に過大な224リットルと設定して過大な需要予測を立てた。
- 業務営業用水は、観光需要を過大かつ重複して評価していることから、「2010年から2017年に観光客数が1.4倍に増加しているのに対し、営業用水の有収水量が4.2%減少している」という齟齬をきたしている。
- 佐世保市造船業の実績値から、過去の給水・減圧制限と出荷額の連関はなく、しかも、SSKの修繕船事業についても根拠がないことから、4,412㎥/日の上水を確保する必要性はない。
- 石木ダム事業では建設費のほかに多数の必須の費用負担があり、実質総負担額は615億円に上り、1世帯当たりの1年間の負担増額が約9000円になると試算。今後の人口・水需要・水道収入すべての減少が確実視される中では過大な負担である。
- 渇水による被害額の想定は国交省の再評価実施要領細目にはない手法である。5~20%の節水率では生活及び産業活動にはほとんど影響がでないことから、佐世保市の被害額推計が「ありえない架空の計算値を挙げている」
裁判所への主な提出書類
〇控訴人側
準備書面
意見書
〇被告側
次回
判決 2019年11月29日 13時10分
報告集会
福岡高裁の建物の隣の弁護士会館で報告集会を持ちました。誰もがみな、高裁での展開に「信じられない」と唖然とするばかりで臨んだ報告集会でした。馬奈木弁護団長の発言に参加者は耳を澄ましました。
馬奈木弁護団長の発言骨子を「石木川まもり隊」ホームページ を参考にして紹介します。
下の写真は同ホームページに掲載された、「マイクを持つ馬奈木弁護団長」です。
- 「福岡高裁が死んだ日」「裁判所としての使命を放棄した日だ」
- 当方の立証を拒んだうえで、「控訴人の主張は裁量権の違法性を立証できていない」と、敗訴させるからだ。
- 石木ダム闘争が裁判で勝ってもダムが止まるとは限らない。今は、国は敗訴しても確定判決に従わない。
- ではどうするか?勝つまで闘うしかない。
- 私が石木ダム裁判を引き受けたのは、裁判で勝てないとしても、負けてはいけない、勝つまで闘ういう覚悟が皆さんにできているのが分かったからだ。
- 裁判で勝っても、石木ダムが止まるわけではない。
- 裁判は水戸黄門の印籠とは違う。
- 悪代官は水戸黄門にひれ伏すが、国は司法に従わない。
- 我々が要求を実現する道はただ一つ。頑張り抜くこと。
おかしいことはおかしいと言い続けること。
許せないことは許せないと態度で示すこと。 - 「あらためて頑張り抜きましょう!」
マスコミ報道
石木ダム訴訟控訴審が結審 判決は11月
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