国会議員連盟「公共事業チェックとグリーンインフラを進める会」,九州2ダム事業視察
1:概要
2024年3月23日から25日にわたって、国会議員連盟「公共事業チェックとグリーンインフラを進める会」が、下記日程で石木ダム事業地・川辺川ダム影響予定区域を視察しました。「不要」「人権侵害」「自然破壊」と批判する市民が多いこれら2ダム問題の本質を認識することを目的としていました。この視察には市民枠が設けられ、水源連から5名、水郷水都から1名が全行程同行しました。市民枠で同行した水源連の遠藤保男が、報告いたします。報告が遅れに遅れたことをお詫びいたします。
-
- 嘉田 由紀子 参議院議員(全行程)
- 山田 勝彦衆院議員(3/23石木のみ)
- 野田 国義 参議院議員(3/23石木のみ)
- 山崎 誠 衆議院議員(3/24~3/25)
- 今本 博健(京都大学名誉教授、河川工学)(全行程)
- 細谷 和海(近畿大学名誉教授、魚類学・保全生物学)(全行程)
- 宮本 博司(元国交省職員、3/23石木のみ)
- その他、水源開発問題全国連絡会メンバー5名、水郷水都1名(全行程)
-
行程:
- 3/23 午前 長崎空港から石木ダム予定地訪問午後 集会「清流をまもる 未来をまもる~石木ダム 本当に必要?~」(川棚町公会堂)
夕刻 こうばる公民会で、こうばる居住13世帯皆さん・支援者・視察団で懇親会
- 3/24 午前 八代・人吉経由で五木村へ移動
午後 五木村水没予定地~奇跡の吊り橋~ダム予定地~相良村柳瀬~球磨川合流点~人吉市山田川
19:30 くま川ハウスで市民グループと勉強会
- 3/25 人吉市街地被災地~球磨村渡(千寿園跡)~球磨村神瀬(嵩上げ)~瀬戸石ダムと豪雨災害~荒瀬ダム撤去跡~道の駅坂本~坂本町「みちのけ」で昼食・勉強会
14時 国土交通省八代河川国道事務所訪問(事前送付した別紙質問項目について質疑)
15時半 終了解散
2:3月23日の川棚町公会堂での講演会
「清流をまもる 未来をまもる」集会
- 参照HP 「石木川まもり隊」の下記ページに丁寧且つ分かりやすく紹介されています。是非、ご参照ください。
- 集会の目的 集会チラシ
- 概要
- 主催は「清流をまもる 未来をまもる」集会実行委員会 共催は 国会議員連盟「公共事業チェックとグリーンインフラを進める会」。
- プログラム
休憩 『川原のうた』のビデオ
清流をまもる未来をまもる こうばるのうた(09:44)
https://youtu.be/q_qKWf1Wbvk
3:3月24日の川辺川五木村下流部と人吉市内の7/4豪雨災害被災状況視察と夜の勉強会
- 企画の目的 マスコミリリース
-
7/4豪雨災害被災状況視察
- 当日はかなりの降雨があり、バスの外に出たのは要所に限りました。
3月24日10時半にJR八代駅からレンタルバスで先ずは川辺川ダム計画予定地の五木村を目指しました。車中では、2020年水禍視察に向けた資料が提供されました。
- そこから川辺川伝いに球磨川合流点から人吉市内の被災地を視察しました。夜は、球磨川ハウスでスライドを用いての勉強会、翌25日は球磨川沿いに被災地の状況を見分しつつ八代国道河川事務所で2020年7月4日水禍と川辺川ダム問題について質疑応答・意見交換を持ちました。
- 2020年球磨川流域豪雨災害現地調査資料
以下、要所要所の状況を収めた写真で説明いたします。
![](https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2024/06/20240324_114023-1-scaled.jpg)
川辺川ダム建設予定地点で黒木さんがノボリバタで歓迎
![](https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2024/06/20240324_133457-1-scaled.jpg)
2024年7月4日豪雨では川辺川の流れは、このつり橋の下を流れていた。この程度の流量では、600m下流に川辺川ダムがあっても、7月4日の水禍対策にはならなかったを示しています。
![](https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2024/06/20240324_150210-scaled.jpg)
川辺川再下流部の右岸の鮎養殖場 地下水が吹き上がっているので、養殖池はいつも新鮮
![](https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2024/06/20240324_161412-1-scaled.jpg)
1m近く溢れた水で御溝が見えなくなり、この指先地点で高齢者が御溝に落ちて命を落としました。
![](https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2024/06/20240324_161047-scaled.jpg)
万江川から導水された御溝用水路と御溝引き入れ口 2024年7月4日の豪雨時には水深1m近く溢れました。
![](https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2024/06/20240324_164707-scaled.jpg)
万江川中流部の小溝用水取り入れ水門。7月4日の降雨でこの水門は水没しなかったが・・・・・
![](https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2024/06/20240324_164844-scaled.jpg)
水門のすぐ下流はかなり低くなっていて、ここから万江川の水が溢れて流れ込み、人吉市内の御溝が大氾濫。多くの人が命を落とす原因の一つになった。
![](https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2024/06/20240325_083705-1-scaled.jpg)
霞の下が球磨川本流。人吉盆地の隣、渡で球磨川に合流する小川の合流点。小川の流れが球磨川に入りやすいように導流堤がつくられている。7月4日はこの導流堤が小川の豪流流下を妨げ、小川が大氾濫。すぐ上流に位置していた老人ホ-ム「千寿園」では14人が命を落としています。
![](https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2024/06/20240325_084224-scaled.jpg)
渡駅近くのJR肥薩線の軌道は根こそぎ移動していた。同線の復旧の目途は厳しい。
![](https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2024/06/20240325_094735-scaled.jpg)
肥薩線白石駅近くの電柱に貼られている実績浸水深3.8m その位置はこの電柱天辺近くの表示 えらいことです。
![](https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2024/06/20240325_110759-2-scaled.jpg)
肥薩線鎌瀬駅近くの、半分が崩壊・流失した第一橋梁。 肥薩線に架かる3つの橋梁の内、下流の2つが全半壊しました。さらに上流のくまがわ鉄道の通称第4橋梁は川辺川合流点の直下流に位置し、上流からの樹木等が橋脚間に詰まってダム化、同橋梁軌道敷より低い地域一帯がダム湖化しました。水圧に耐えかねた第4橋梁が崩壊すると、その上流に滞留していた膨大な流水が第4橋梁崩壊現場から一挙に流出、下流の人吉市内を急襲して、大規模水害となりました。
![](https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2024/06/20240325_145132-scaled.jpg)
八代河川国道事務所での川辺川ダム計画についてのヒアリング
2020年球磨川流域視察団 八代事務所話合い用資料
話合いで取り上げた論点の簡単な解説です。
公共事業チェック議連と国交省八代河川国道事務所話合い メモ
話合いに向けて事前に提出した質問(赤字)と、口頭回答+意見交換の速記録です。
![](https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2024/06/fa5211248e479c625d1cbaee4b4616cc-scaled.jpg)
2020年7月4日の豪雨水禍の実態を調査している「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域群市民の会」みなさんからスライドを使って説明を受けました。川辺川ダム計画は豪雨水禍の実態を無視した暴挙であること、気候変動に伴う雨の降り方には、ダム依存の河川法では全く対応できないことが知らされました。
4:まとめ
1975年に公定計画とされてから50年経過している石木ダムは、「その必要性は計画決定直後から喪失しています。長崎県は「地元の了解なしではダムは造らない」と覚書きを交わした上で予備調査を開始した1972年からこれまで、覚書を反故にして工事を強行し続け、土地収用法を適用して地元住民の地権をすべてはく奪しています。住民13世帯皆さんは地権をはく奪されたことに抗して、毎日ダム建設工事現場に座り込み、「石木ダム・覚書 県」https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2024/06/83ea662d062895a7fac88be7fe866d64.pdfを遵守して工事を中断して,必要性についてゼロからの話合い」を長崎県に要請する生活を続けています。長崎県は「今後の生活に関すること以外は話し合わない」と行政代執行のスキを狙っています。このような事態の本質を知るべく勉強会がこの視察で持たれました。本年は石木ダム事業計画の再評価が行われるので、地元関係者の皆さんは、この勉強会で暴かれた真実を基本に据えて、まともな再評価を実施させるべく活動を行っています。
2008年に「球磨川は地域の宝」として「川辺川ダム建設事業計画の白紙撤回」を国に求めた熊本県知事蒲島郁夫氏は、2020年7月4日の球磨川未曽有の大規模水禍の直後に、「環境にやさしい流水型川辺川ダム建設」を国に求めました。しかし、7月4日の水禍はこれまでとは全く異なった雨の降り方に起因していることが流域住民の調査で明白にされました。川辺川ダム予定地から遠く離れた球磨川の西部側に停滞した線状降水帯からの豪雨が、球磨川の各支流から豪流となって流出したことで、7月4日の大規模水禍に至りました。2008年からこれまで、「ダムに依存しない球磨川水系の治水」を図ってきたはずでしたが、実は国と県は、川辺川ダムを大前提とした河道整備に固執するばかりで、流域の山々の状況などの整備をほったらかしにしていたのです。それを踏まえることなく、「ダム群による流量調節を基本に据えた球磨川水系河川整備基本方針」を定め、直ちに「流水型川辺川ダムを中心に据えた球磨川水系河道整備計画」を策定しました。しかも、この整備計画では「2024年7月4日の雨量は統計的に異常値」として切り捨て、「従来計画降水量の1割増しに対応」としたため、今後十分に予想される2020年7月4日型の豪雨には対応できません。それは国と県が認めています。そればかりか、そのような川辺川ダムを前提とした宅地嵩上げ、軌道整備がなされるので、2020年7月4日型の豪雨再来時にはまた同様な水禍に見舞われてしまいます。流水型と言っても、大洪水時にはダム堤上流には大規模な堆砂が生じ、放流口が河道と同じ高さにあるため、雨が降るごとに堆積物が直接流出ことになるのですから、下流への白濁水流出が長く続きます。自然に優しいどころか下流の河川を白濁流で殺してしまうことは明らかです。このような致命的な問題を抱えた球磨川水系治水対策の実態を見分できました。水禍の実態を調査された皆さんが、「ダムから球磨川を守ろう。今の河川法では、雨の降り方が大幅に変わってきていることに対応できない」と指摘していることが理解できました。
九州2ダム問題の視察で明らかになったことを政治に活かす、河川政策を見直す。私たちの課題と思います。
1:集会概要
予告
高度成長期の重厚長大な土建型の開発が限界を迎えるなか、インフラの老朽化対策は一向に進まず、辺野古新基地建設やダム建設、リニアなど不要不急の大型事業は相変わらずに続いています。政官財利権と結びつく構造は不変であり、特に最近は、人権侵害も顧みず問答無用な独裁政治で強行する姿勢が顕著になっています。
公共事業改革市民会議では、人権無視で強行する事業の暴走をストップさせ、「公共事業」を本来あるべき姿に変えていくため、院内大集会を企画しました。
ZOOM配信も致します。下のチラシ右下のQRコードを読み取ってお入りください。
![](https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2023/09/7fb60edcd7f44829a605fe367772e9ae-e1694571188113.jpg)
報告
集会参加者は130名(会場:80名、ZOOM50名)でした。
日本環境会議理事長の寺西俊一先生のご講演、各地の報告を行い、ご参加頂いた4名の国会議員からのメッセージなどと合わせて総括し、集会宣言という形で採択しました。
本集会では、不要不急の公共事業が今なお続き、人権侵害を顧みずに強行される事態に対して、強い警笛を鳴らしました。コモンの復権が急務であることを確認し、「公共事業チェック議員の会」再始動への強い期待を確認しました。
2:水源連関係からの2つの報告(予告と報告)
水源連関係事業は、石木ダム問題と川辺川ダム問題の2つが、各々10分間枠で報告されます。
長崎県が「地元の了解なしではダムは造らない」と覚書きを交わした上で予備調査を開始した1972年からこれまでの51年、地元住民を苦しめ続けている石木ダム。土地収用法を適用した長崎県・佐世保市によって、13世帯約50人が地権を奪われ、明渡しを拒否して生活を継続、「覚書を守れ、(石木ダムの必要性についてゼロからの)話合いに応じよ」と現地工事現場での抗議・要請行動に明け暮れています。
9/28の集会で現地から駆けつけて報告するつもりでしたが、起業者による工事強行が厳しさを増し、現場を離れることが出来ない状況になっているため、現地からのZOOM参加となります。
皆様には現地報告から、この厳しい状況を実感され、起業者側への抗議・要請をなされるよう、期待いたします。
要請先:皆様への呼びかけ・お願い
石木ダム問題については、下記pdf版とホームページをご覧ください。
「2020年の球磨川流域豪雨災害から河川法の根本的問題を問う」より
川辺川ダムがあれば : 作り話でしか正当化できない川辺川ダム建設
マスコミは豪雨災害発生の翌日から「川辺川ダムがあれば」の大宣伝を始めた。そして国と県は検証と称して、川辺川ダム建設に必要な事象づくりに取り組んだ。これが治水の専門家集団のやることかと思うような作り話をヘドロだらけで復旧に取り組んでいる住民に向けて繰り返し垂れ流した。その典型が「川辺川ダムがあれば人吉市街地の氾濫は6 割カット出来た」とか、「流水型ダムで命も清流も守れる」とか、「川辺川ダムで本流の水位をさげれば支流の氾濫は防ぐことが出来た」という作り話である。
9月28日の集会では、2020年7月球磨川大氾濫を「待ってました!」とばかりに「川辺川ダム必要」を連呼し続けている熊本県と国土交通省のゴマカシを徹底的に暴き、現在のダム治水では気候変動に伴う線状降水帯停滞に伴う集中豪雨には対応できない、と警鐘を鳴らします。
川辺川ダム問題については、下記pdf版とホームページをご覧ください。
3:集会全容(報告)
-
配布資料
-
基調講演・報告で投射した資料
(石木ダム・川辺川ダムは上に別掲)
-
集会ビデオ
6月30日、石木ダム共有地権者は起業者(長崎県と佐世保市)に『覚書』履行を再要請しました。 上記に関して、石木川まもり隊のブログに掲載されている「共有地権者、県と佐世保市へ再要請」から引用しながら、報告いたします。
-
長崎県からの回答(6月22日付)20230622 長崎県回答
覚書は重要と認識しているので理解を得る努力は今後も続けるが、事業の必要性について議論する段階ではない。いずれの方とも議論に応じることはできない。
-
佐世保市からの回答(6月16日付)20230616 佐世保市回答
覚書や石木ダム不要についての話し合いは致しかねる。
回答対応⇒再要請
あなた方との意見交換はしませんよとの意思表示。門前払いです。佐世保市に至っては、覚書についての見解も示さず、地元の方への対応をどう考えているかも触れず、全く中身のない回答でした。 こんな回答では、「そうですか。わかりました」と言うわけにはいかないですよね~ということで、この日、大石知事と宮島市長あての要請書を再度提出することになりました。 長崎県知事と佐世保市長へへの下記再要請書を6月30日にそれぞれの担当者に手渡しました。
後日、上記質問に欠落していた重要なテーマを、それぞれに追加質問と要請として7月5日に送付しました。
あまり知られていないが、石木ダム建設予定地には共有地が2ヶ所存在する。
半世紀にわたりダム建設に反対し、ふるさとを守り続けている川原住民を支えたいと思う人たちが、1つは2009年に、もう1つは2013年に住民の方の山林の一部を共同で所有することにした。
その共有地権者の中の84名が長崎県知事と佐世保市長へ要請書を提出した。
代表の遠藤保男氏が横浜から来県し、6月6日に県庁、7日に佐世保市役所を訪れ、担当者に手渡した。
その要請書はこちら。
石木ダム事業起業者への要請:長崎県へ
石木ダム事業起業者への要請:佐世保市へ
その趣旨は「覚書の遵守」、つまり「石木ダムの必要性について川原住民との話し合い」を実行するようにということ。
8日の朝日新聞の記事がこの要請の目的をしっかり伝えているので、一部抜粋させていただくと、
覚書は1972年7月、県が石木ダムの予備調査を始める前に住民側と結んだ。「建設の必要性が生じたときは、協議の上、書面による同意を受けた後着手するものとする」と明記。久保勘一知事(当時)と、住民の代表3人が署名押印した。ただ、県は3年後の75年、事業に着手。2021年9月に本体工事を始めた。
6日に県庁を訪れた共有地権者らが県に指摘したのが、この覚書の「不履行」だった。
「石木ダム建設絶対反対同盟を支援する会」の遠藤保男代表は「同意していないのに収用地での工事が強行されている」と指摘。地権者の松本美智恵さんは「県と地元の対立の原点がこの覚書の反故だ」と語った。
覚書は、住民らがダム関連工事の差し止めを求めた訴訟で論点の一つになったことがある。21年の二審・福岡高裁判決は、覚書があるにもかかわらず、地元の理解が得られていないと指摘。「今後も理解を得るよう努力することが求められる」と見解を示し、県に合意形成の必要性を説いた。
事業主体の県はどう考えているのか。県土木部の担当者は取材に対し「覚書は今も有効で、履行している」と述べ、覚書に違反する手続きはとっていないとの認識を示した。長年、説明会の開催や戸別訪問などで事業への理解と協力を得る努力を続けてきたとしている。
「覚書は今も有効で、履行している」?!
なんと不可解な回答だろう。
「覚書を履行している」のが本当なら、住民がダム建設に同意した文書が存在するはずで、それを提示して欲しい。
それが存在しないならダム建設は諦めているはず。しかし、現実は同意文書もなく、ダム建設は進めている。
どうして「履行している」などと言えるのだろう?
一方、「覚書は今も有効」とのこと。よかった!
では、これからも覚書について、私たちはしっかり県に問い続け、履行を求め続けよう。(*’▽’*)
マスコミ各社のオンライン記事はこちら。
NBC長崎放送:石木ダム建設反対の市民団体 知事との話し合いを要請
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/nbc/530101?display=1
KTNテレビ長崎:石木ダム建設は必要ない」市民団体が話し合いの場を要請
https://www.ktn.co.jp/news/detail.php?id=20230607008
朝日新聞:石木ダム「地元の了解なしにつくらない」半世紀前の「覚書」はいま https://digital.asahi.com/articles/ASR6774P6R67TOLB00C.html?iref=pc_photo_gallery_bottom
毎日新聞:「知事と話し合う場を」石木ダム反対、市民団体が要請書 https://mainichi.jp/articles/20230607/ddl/k42/040/379000c
オマケの写真と呟き。
ここは水道局庁舎内。要請のための会場確保を待っているところ。
1週間前に代表本人から要請書を提出に行くので会場を確保しておいて欲しいと電話で依頼していたにもかかわらず、会議室はみな埋まっていて確保できなかったとのことで、その会議が終わるまで約1時間も待たされた。
遠来の代表はじめ参加者の多くが70代前後の高齢者ばかり。宮島市長は就任会見で、「対話を重視した市政をつくりたい」と語っていたはずだが???
10月21日、球磨川流域の市民団体が、9月の台風14号に伴う大雨で水位が上昇した県営市房ダムの危険性や、流水型川辺川ダムの環境への影響について見解を示すように、熊本県に申し入れを行いました。その記事を掲載します。
市房ダムの基本的な問題点をあらためて下記に整理しておきます。
市房ダム、危険性説明を 市民団体が県に申し入れ
(熊本日日新聞 2022年10月24日 10:57) https://kumanichi.com/articles/833328
![](https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2022/10/2b30d3fcced978ddf191bdfb42ac272a-1-300x190.jpg)
県営市房ダムの危険性や流水型ダムの環境への影響を示すよう県に申し入れる市民団体=21日、県庁
人吉市の「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会」など3市民団体は21日、9月の台風14号に伴う大雨で水位が上昇した県営市房ダム(水上村)の危険性や、国が建設を計画する流水型ダムの環境への影響について見解を示すよう、県に申し入れた。
市房ダムによる洪水調節で、大雨時に多良木地点で約0・9メートル、人吉地点で約0・2メートル水位を下げたとする県の説明に対し、「効果ばかり言っているが、ダムが満水になって放流量が流入量を上回った場合のリスクについても説明すべきだ」と指摘した。
台風後、球磨川流域の樅木ダム(八代市泉町)や幸野ダム(湯前町)下流では水の透視度が低かったとする調査結果を示して「ダムは大量の土砂や粘土をため込んで川の濁りを長期化させる」と主張し、流水型ダムが「清流を守る」とする根拠の説明も求めた。(元村彩)
市房ダムの基本的な問題点
(1)球磨川の洪水位の低減に対する寄与はかなり小さい
今年9月中旬の台風14号に伴う大雨により、市房ダムで9月19日3時から緊急放流が行われました。
下記のグラフは国交省と熊本県のデータを使って、市房ダムの流入量・放流量、および市房ダム下流の球磨川の当時の水位の時間変化を見たものです。、
市房ダムより約9㎞下流の球磨川・多良木地点では、緊急放流の影響で5時頃に水位が少し上がりましたが、
中流の人吉地点では、緊急放流の影響は明確ではなく、むしろ球磨川流域の降雨によって、水位がかなり上昇しました。
このように流域面積が小さい市房ダムの球磨川への影響は元々小さなものであって、人吉あたりではその治水効果をほとんど期待できません。市房ダムは、球磨川の洪水位低減に対する寄与はかなり小さいダムなのです。
(西日本新聞2020/8/12)
2022年9月18~19日の球磨川の観測水位と市房ダムの流入・放流量の時間変化 (国交省と熊本県のデータを使って作成)
流域面積 市房ダム158㎢ 多良木250㎢ 人吉1137㎢ (市房ダムは河口から約93㎞)
![](https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2022/10/b8f25ea95afd5268a9e2e4ad3c71ad87-1-201x300.jpg)
![](https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2022/10/f32052434788259a0ddef9190f28611c-201x300.jpg)
![](https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2022/10/de9260fbe62c37e953ab8cea49c83b6e-201x300.jpg)
(2)緊急放流時のダム直下での氾濫が心配される市房ダム
市房ダムはむしろ、緊急放流時のダム直下での氾濫が心配されるダムです。
2020年7月の熊本県の球磨川豪雨では、熊本県営市房ダムが緊急放流寸前のところまでいきました。
その様子を記録した管理所長のメモの内容を伝える記事があります。https://suigenren.jp/news/2021/07/04/14774/
「やばい…280m超える」寸前で回避された緊急放流、緊迫の所長メモが歴史公文書に
(読売新聞2021/06/29)
この記事を読むと、市房ダムは、線状降水帯の停滞がもう少し長ければ、洪水のさなかに水害の危険性を高める緊急放流せざるをえなかったことがわかります。
熊本県は2022年6月から、球磨川上流の県営市房ダムについて、降雨によってダムの貯水容量が半分ほどになった段階で新たに警戒情報を出し、緊急放流せざるを得なくなる事態に備えて、下流域の住民に早めの避難行動を促す運用を始めると発表しました。https://suigenren.jp/news/2022/05/30/16290/
しかし、下流を水害から守るために設置されたはずのダムによって、下流住民はダムからの緊急放流に備えて避難行動をしなければならなくなったのですから、まったくおかしな話です。
ダムがなければ、ダムを前提としない河川改修が行われてきたはずですが、ダムがあるためにそれが行われないため、下流住民は危険にさらされるのです。ダムを前提とした河川行政に終止符を打つべきです。
(3)市房ダムの環境への影響(ダム下流河床の軟岩露出)
下記の写真は15年以上前の写真ですが、市房ダム下流の球磨川の河床を撮影したものです。市房ダムによって土砂の供給が遮られたため、市房ダム下流の河床は侵食が進んで、軟岩が露出しており、河川環境が悪化しています。ダムによる軟岩露出は、河床掘削による軟岩露出とは異なり、土砂の供給そのものを永続的に大幅にカットしてしまうから、何年経っても軟岩の上に砂礫が堆積していくことはありません。市房ダムができてから、軟岩が露出した状態が続いているのです。
![](https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2022/10/12232a60af5996670603dcb3e84e79f8.png)
なお、市房ダムは1970年3月完成で、貯水容量4020万㎥、発電容量2880万㎥、洪水調節容量630~1830万㎥のダムです。
計画堆砂量510万㎥に対して2019年度末の実績堆砂量が499万㎥にもなっています(国交省の開示資料による)。
市房ダムは2022年8月策定の球磨川水系河川整備計画により、再開発が計画されていますが、上記(1)、(2)、(3)の基本的な問題点を踏まえれば、むしろ撤去を計画すべきダムなのです。