水源連:Japan River Keeper Alliance

水源開発問題全国連絡会は、ダム建設などと闘う全国の仲間たちのネットワークです

ホーム > ニュース > 事務局からのお知らせ

ニュース

事務局からのお知らせ

水源連共同代表 嶋津暉之氏 ご逝去のお知らせ

2024年8月21日
カテゴリー:

2024年2月15日、水源連共同代表・嶋津暉之氏が逝去されたことをご報告いたします。

ここでは、嶋津氏ご逝去の追悼文と、2024年5月18日午後、有志が集まり、全水道会館大会議室で持たれた「嶋津暉之さんに感謝する会」の報告を掲載いたします。

嶋津暉之さんのご逝去を悼む

水源連の共同代表であった嶋津暉之さんが去る2 月15 日にお亡くなりになりました。享年80歳でした。

嶋津氏が担われていた役割・実務を感謝の念を以てここに記し、皆様と共有することで、彼を悼みたくと思います。

2003 年11 月の山鳥坂ダム反対全国集会で初代代表を務められていた矢山有作さんが辞意を表明され、嶋津さんと遠藤が代表を引き継ぎ、現在に至っています。
嶋津さんは水源連発足当初から最期に至るまで、各地のダム反対運動に対する、その理論面の支柱でした。彼の日常は、起きてから寝るまで、情報公開請求と開示された情報の分析に費やしていました。「現実のデータを以て、ダム等事業者が言う必要性のごまかしをことごとく暴く」、それはとてつもないエネルギーを要する作業でした。その作業結果を水源連仲間に惜しみなく提供し続けてきました。

嶋津さんが水源連を立ち上げる契機になったのは、1991年の「水問題原論」出版です。

  • 「水問題原論」は、ダム事業者が「ダムが必要」と説明している法則を証しました。

・治水ダム 河道流下能力<基本高水流量(当該河川の治水対策最終目標流量)
・利水ダム 保有水源量<水需要予測水量
・費用対効果.>1.0

  • そして、「水問題原論」では、ダムの必要性を客観的に検証するには以下のことが必要としています。

・これらの式に使われている数値の妥当性の精査で必要性の有無判断
・ダム建設で失われるものの再評価

治水を目的としたダム事業計画を立案するときは、当該河川の治水対策最終目標流量を大きく設定し、河道能力を小さく設定することで、川から溢れないようにするにはダムが必要、と結論つけます。
私たちがそれを検証するには、それぞれの値を算出した手法と用いた数値の妥当性を確認するための情報開示請求が必要になります。

利水目的には、保有水源量の評価方法、水需要予測の妥当性を検証します。すべて算出した手法の情報開示と、使われた様々な数値の情報開示を求めます。費用対効果も同様です。

その情報を妥当な手法で再計算することで、当該ダム事業の要・不要を水源連事務局と現地の皆さんとの協議のうえで判断できます。要と判断された場合は、ダム建設で失われるものの評価を行い、水源連事務局と現地皆さんとの協議で最終判断となります。

水源連が問題として取り上げたダム事業は、現地の団体と連携を取り合いながら、情報開示請求・その分析が行われ、すべて、必要性がないことが明白になり、ダム建設で失われるものの評価が全くなおざりにされていることも明らかになりました。
その結果として松倉ダム(北海道)、新月ダム(宮城県)、渡良瀬遊水池総合開発2期(群馬・栃木・茨城・埼玉県)、東大芦川ダム(栃木県)、相模川水系建設事業2 期(神奈川県)、清津川ダム(新潟県)、紀伊丹生川ダム(和歌山県)、細川内ダム(徳島県)が、中止(https://suigenren.jp/damlist/blocked/)となりました。これらは、地元皆さんの努力はもちろんのこと、嶋津さんの支援が功を奏しています。

近年は起業者・司法共に、市民側の異論を一切無視する、とんでもない状況になっています。嶋津さんは「正しい情報を伝え続けるしかない」と耐え忍んでいました。これらは私たちが引継ぐ課題です。

嶋津さん、これまで本当にお疲れさまでした。言葉に尽くせないご尽力に感謝申し上げ、ご冥福を祈らせていただきます。

2024年8月21日   水源連代表 遠藤保男

嶋津暉之さんに感謝する会

2024年5⽉18⽇、2⽉15⽇に旅⽴った「嶋津暉之さんに感謝する会」が全⽔道会館⼤会議室で⾏われ、会場に92名、zoomで26名の⽅の参加がありました。

「訃報は耐え難い衝撃だった」(⾼橋利明・⼋ッ場ダム住⺠訴訟弁護団)という開会挨拶と黙祷から開始。嶋津さんの業績紹介から始まり、次々と嶋津さんとのかかわりエピソードが共有され、⽔道会館⼤会議室は、嶋津さんへの感謝の気持ちで満ち溢れました。

川辺川ダム、⽯⽊ダム、細川内ダム、⻑良川河⼝堰、相模⼤堰、⼋ッ場ダム、渡良瀬遊⽔池、湯⻄川ダム、南摩ダム、スーパー堤防、霞ヶ浦導⽔事業、⻤怒川⽔害、最上⼩国川ダム、平瀬ダム、苫⽥ダム、徳⼭ダム、⾵⾕ダム、平取ダム、サンルダム、当別ダムなど、⽇本全国各地でダム建設反対運動や河川問題に取り組んできた市⺠が次々に登壇し、嶋津さんへの思いをそれぞれに語りました。

また、有識者・専⾨家・議員として、弁護⼠の⼤⽊⼀俊さん・弁護⼠の⾕萩陽⼀さん・弁護⼠の坂本博之さん・京都⼤学名誉教授の今本博健さん・新潟⼤学名誉教授の⼤熊孝さん・元国⼟交通省の宮本博司さん・衆議院議員の⼤河原雅⼦さん・衆議院議員の塩川鉄也さん・前・群⾺県会議員の伊藤祐司さんなど⽅々が登壇し、嶋津さんへ謝意やかかわりを語っていただきました。

皆さんの発⾔に共通していたことは、各地のダム建設反対運動がダム建設事業者(国⼟交通省や県⾏政)との議論や、裁判において、嶋津さんによる科学的な検証結果を提供していただけたことで⾏政と闘うことができたということでした。嶋津さんは情報公開などで開⽰を受けた膨⼤なデーターを元に解析を⾏い、⽔需要予測がダム建設のために⾼い予測を意図的に⽴てているおかしさや、ダムによる治⽔効果が低く限定的であり堤防の強化こそがまず求められることを明らかにしました。そうした嶋津さんの科学的分析によって各地の運動が⽀えられて来ました。

感謝する会の参加者それぞれは⾃分の地域についての嶋津さんの協⼒を語りましたが、嶋津さんが⽇本各地数⼗箇所のダム建設問題について膨⼤な科学的分析をそれぞれ⾏っていたこと、嶋津さんが遠藤さんと共に各現地を何度も訪問して現地の運動と⽔源連の活動を続けてきたこと、その幅広さと労⼒の⼤きさに、あらためて驚き、嶋津さんへの感謝と追悼をそれぞれにかみしめる会となりました。

 

決定書  石木ダム収用明渡裁決の取消しを求める審査請求

2024年8月6日
カテゴリー:

石木ダム収用明渡裁決の取消しを求める審査請求に対して、斉藤鉄夫国土交通大臣は本年(2024年)7月31日付で「本件審査請求を棄却する」と決定しました。

本審査請求は、「長崎県収用委員会が2019年5月21日付でなした、こうばる在住13世帯全地権者からのすべての地権収用明渡裁決の取消し」を求めて、2019年7月3日に行政不服審査請求法に基づく審査請求です。審査請求提出から5年を経過した現在においては、石木ダムが不要であることはあまりにも当然のことです。この実態下においてもなお事業認定効果である地権収用明渡が有効とするのでは、行政不服審査法の目的を否定する自殺行為です。

本審査請求の詳しい内容と経過下記リンク先を参照願います。

参考:行政不服審査法

目的 第1条第1項

  • この法律は、行政庁の違法又は不当な処分に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、
    • 国民の権利利益の救済を図るとともに、
    • 行政の適正な運営を確保すること

    を目的としています。

2024東京アースデイ報告

2024年7月4日
カテゴリー:

今年4月、アースディ東京に、水源連は東京の水連絡会・八ッ場あしたの会とともに、出展しました。

何か新しい訴え方を、ということで紙芝居に挑戦しました。紙芝居「石木ダムは要らない」を電子化しました。

9分の動画で石木ダムのすべてが分かります。

ご視聴のうえ、拡散していただければ幸いです。

石木ダムってなに?~動画13世帯の闘い~

https://tokyo924mizu.blog.fc2.com/blog-entry-174.html

なお、「流水型川辺川ダムはいらない」の紙芝居も試みましたが、簡略化した表現がいまいち難しかったので、アースデイで紹介するのは遠慮してしまいました。この語の課題です。

「九州2ダム事業の議連視察」報告

2024年6月27日
カテゴリー:

国会議員連盟「公共事業チェックとグリーンインフラを進める会」,九州2ダム事業視察

1:概要

2024年3月23日から25日にわたって、国会議員連盟「公共事業チェックとグリーンインフラを進める会」が、下記日程で石木ダム事業地・川辺川ダム影響予定区域を視察しました。「不要」「人権侵害」「自然破壊」と批判する市民が多いこれら2ダム問題の本質を認識することを目的としていました。この視察には市民枠が設けられ、水源連から5名、水郷水都から1名が全行程同行しました。市民枠で同行した水源連の遠藤保男が、報告いたします。報告が遅れに遅れたことをお詫びいたします。

  • 参加者

    • 嘉田 由紀子 参議院議員(全行程)
    • 山田 勝彦衆院議員(3/23石木のみ)
    • 野田 国義 参議院議員(3/23石木のみ)
    • 山崎 誠 衆議院議員(3/24~3/25)
    • 今本 博健(京都大学名誉教授、河川工学)(全行程)
    • 細谷 和海(近畿大学名誉教授、魚類学・保全生物学)(全行程)
    • 宮本 博司(元国交省職員、3/23石木のみ)
    • その他、水源開発問題全国連絡会メンバー5名、水郷水都1名(全行程)
  • 行程:

    • 3/23     午前 長崎空港から石木ダム予定地訪問午後 集会「清流をまもる 未来をまもる~石木ダム 本当に必要?~」(川棚町公会堂)
      夕刻 こうばる公民会で、こうばる居住13世帯皆さん・支援者・視察団で懇親会
    • 3/24     午前 八代・人吉経由で五木村へ移動
      午後 五木村水没予定地~奇跡の吊り橋~ダム予定地~相良村柳瀬~球磨川合流点~人吉市山田川
      19:30 くま川ハウスで市民グループと勉強会
    • 3/25     人吉市街地被災地~球磨村渡(千寿園跡)~球磨村神瀬(嵩上げ)~瀬戸石ダムと豪雨災害~荒瀬ダム撤去跡~道の駅坂本~坂本町「みちのけ」で昼食・勉強会
      14時 国土交通省八代河川国道事務所訪問(事前送付した別紙質問項目について質疑)
      15時半 終了解散

2:3月23日の川棚町公会堂での講演会
「清流をまもる 未来をまもる」集会

  • 参照HP  「石木川まもり隊」の下記ページに丁寧且つ分かりやすく紹介されています。是非、ご参照ください。
  • 集会の目的 集会チラシ
  • 概要
    • 主催は「清流をまもる 未来をまもる」集会実行委員会 共催は 国会議員連盟「公共事業チェックとグリーンインフラを進める会」。
  • プログラム
    • 加藤登紀子さんからのビデオメッセージ
      https://youtu.be/45JqFTtROto
    • 地元住民の岩下和雄さん  現地状況説明 
    • https://youtu.be/wlzuE8G1svo
    • 河川工学が専門の今本博健さん(京都大学名誉教授)講演 「水位計算による川棚川治水への石木ダムの効果についての検討」
      1.  要旨:
        • 石木ダム計画の水位計算がおかしい。
        • 何故なら、水位計算に必要な粗度係数(河川の側面や底の粗さを表す値)の設定がおかしいから。
        • 粗度係数が低下すれば水位は下がる。川棚川では1990年7月洪水のあと河川改修が実施されており、粗度係数は設定時より低下しているはずなのに修正されていない。粗度係数が設定値の0.8倍以下なら石木ダムは役に立たない。
      2. 講演資料:今本博健氏
      3. 動画: https://www.youtube.com/watch?v=OCJPiSmWN6s
    • ダム建設に詳しい宮本博司さん(元国土交通省河川局防災課)講演 「ダムで命と清流は守れるのか?」
      1. 要旨
        この治水計画はあまりにも杜撰!

        • 雨量観測も流量観測もやっていない。
        • そのことにより雨量と流量の検証がされていない。
        • 絵に描いた餅であり、こんな計画で立ち退きを要求してはダメ!
      2. 講演資料:宮本博司氏
      3. 動画:https://www.youtube.com/watch?v=GyPNC4bco6I
    • 淡水魚が専門の細谷和海さん(近畿大学名誉教授)講演 「シーボルトが見た日本の水辺と石木川の魚類生態系の魅力」
      1. 要旨
        • 石木川を含む川棚川水系は、シーボルトが世界に紹介した日本の淡水魚の模式産地の可能性がある。
        • シーボルトとビュルゲルが日本から持ち帰った魚類標本は1465個体もあった。
        • シーボルトとビュルゲルが日本から持ち帰った魚類標本は1465個体もあった。
        • シーボルトの川を標榜するなら、いま棲息しているシーボルトコレクションにある魚をトポタイプ(現存個体)として保全する必要がある。
        • 淡水魚を保護するためには、河川の上・下流、本流・氾濫原、表層・浸透層をつなぐ回遊経路を保全する必要がある。
      2. 講演資料:細谷和海氏
      3. 動画:https://www.youtube.com/watch?v=J_M5YcTiP1c

休憩  『川原のうた』のビデオ
清流をまもる未来をまもる こうばるのうた(09:44)
https://youtu.be/q_qKWf1Wbvk

  • マスコミ報道

3:3月24日の川辺川五木村下流部と人吉市内の7/4豪雨災害被災状況視察と夜の勉強会

  • 企画の目的 マスコミリリース
  • 7/4豪雨災害被災状況視察

    • 当日はかなりの降雨があり、バスの外に出たのは要所に限りました。
      3月24日10時半にJR八代駅からレンタルバスで先ずは川辺川ダム計画予定地の五木村を目指しました。車中では、2020年水禍視察に向けた資料が提供されました。
    • そこから川辺川伝いに球磨川合流点から人吉市内の被災地を視察しました。夜は、球磨川ハウスでスライドを用いての勉強会、翌25日は球磨川沿いに被災地の状況を見分しつつ八代国道河川事務所で2020年7月4日水禍と川辺川ダム問題について質疑応答・意見交換を持ちました。
    • 2020年球磨川流域豪雨災害現地調査資料

以下、要所要所の状況を収めた写真で説明いたします。

      • 3月24日 石木ダム予定地から人吉市内被災地

川辺川ダム建設予定地点で黒木さんがノボリバタで歓迎

 

2024年7月4日豪雨では川辺川の流れは、このつり橋の下を流れていた。この程度の流量では、600m下流に川辺川ダムがあっても、7月4日の水禍対策にはならなかったを示しています。

川辺川再下流部の右岸の鮎養殖場  地下水が吹き上がっているので、養殖池はいつも新鮮

 

1m近く溢れた水で御溝が見えなくなり、この指先地点で高齢者が御溝に落ちて命を落としました。

 

万江川から導水された御溝用水路と御溝引き入れ口 2024年7月4日の豪雨時には水深1m近く溢れました。

 

万江川中流部の小溝用水取り入れ水門。7月4日の降雨でこの水門は水没しなかったが・・・・・

 

水門のすぐ下流はかなり低くなっていて、ここから万江川の水が溢れて流れ込み、人吉市内の御溝が大氾濫。多くの人が命を落とす原因の一つになった。

    • 3月25日 人吉から八代河川道路事務所

霞の下が球磨川本流。人吉盆地の隣、渡で球磨川に合流する小川の合流点。小川の流れが球磨川に入りやすいように導流堤がつくられている。7月4日はこの導流堤が小川の豪流流下を妨げ、小川が大氾濫。すぐ上流に位置していた老人ホ-ム「千寿園」では14人が命を落としています。

 

渡駅近くのJR肥薩線の軌道は根こそぎ移動していた。同線の復旧の目途は厳しい。

 

肥薩線白石駅近くの電柱に貼られている実績浸水深3.8m その位置はこの電柱天辺近くの表示 えらいことです。

 

肥薩線鎌瀬駅近くの、半分が崩壊・流失した第一橋梁。 肥薩線に架かる3つの橋梁の内、下流の2つが全半壊しました。さらに上流のくまがわ鉄道の通称第4橋梁は川辺川合流点の直下流に位置し、上流からの樹木等が橋脚間に詰まってダム化、同橋梁軌道敷より低い地域一帯がダム湖化しました。水圧に耐えかねた第4橋梁が崩壊すると、その上流に滞留していた膨大な流水が第4橋梁崩壊現場から一挙に流出、下流の人吉市内を急襲して、大規模水害となりました。

 

 

八代河川国道事務所での川辺川ダム計画についてのヒアリング


2020年球磨川流域視察団 八代事務所話合い用資料
話合いで取り上げた論点の簡単な解説です。

公共事業チェック議連国交省八代河川国道事務所話合い メモ
話合いに向けて事前に提出した質問(赤字)と、口頭回答+意見交換の速記録です。

  • 24日夜の勉強会

2020年7月4日の豪雨水禍の実態を調査している「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域群市民の会」みなさんからスライドを使って説明を受けました。川辺川ダム計画は豪雨水禍の実態を無視した暴挙であること、気候変動に伴う雨の降り方には、ダム依存の河川法では全く対応できないことが知らされました。

4:まとめ

1975年に公定計画とされてから50年経過している石木ダムは、「その必要性は計画決定直後から喪失しています。長崎県は「地元の了解なしではダムは造らない」と覚書きを交わした上で予備調査を開始した1972年からこれまで、覚書を反故にして工事を強行し続け、土地収用法を適用して地元住民の地権をすべてはく奪しています。住民13世帯皆さんは地権をはく奪されたことに抗して、毎日ダム建設工事現場に座り込み、「石木ダム・覚書 県https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2024/06/83ea662d062895a7fac88be7fe866d64.pdfを遵守して工事を中断して,必要性についてゼロからの話合い」を長崎県に要請する生活を続けています。長崎県は「今後の生活に関すること以外は話し合わない」と行政代執行のスキを狙っています。このような事態の本質を知るべく勉強会がこの視察で持たれました。本年は石木ダム事業計画の再評価が行われるので、地元関係者の皆さんは、この勉強会で暴かれた真実を基本に据えて、まともな再評価を実施させるべく活動を行っています。

2008年に「球磨川は地域の宝」として「川辺川ダム建設事業計画の白紙撤回」を国に求めた熊本県知事蒲島郁夫氏は、2020年7月4日の球磨川未曽有の大規模水禍の直後に、「環境にやさしい流水型川辺川ダム建設」を国に求めました。しかし、7月4日の水禍はこれまでとは全く異なった雨の降り方に起因していることが流域住民の調査で明白にされました。川辺川ダム予定地から遠く離れた球磨川の西部側に停滞した線状降水帯からの豪雨が、球磨川の各支流から豪流となって流出したことで、7月4日の大規模水禍に至りました。2008年からこれまで、「ダムに依存しない球磨川水系の治水」を図ってきたはずでしたが、実は国と県は、川辺川ダムを大前提とした河道整備に固執するばかりで、流域の山々の状況などの整備をほったらかしにしていたのです。それを踏まえることなく、「ダム群による流量調節を基本に据えた球磨川水系河川整備基本方針」を定め、直ちに「流水型川辺川ダムを中心に据えた球磨川水系河道整備計画」を策定しました。しかも、この整備計画では「2024年7月4日の雨量は統計的に異常値」として切り捨て、「従来計画降水量の1割増しに対応」としたため、今後十分に予想される2020年7月4日型の豪雨には対応できません。それは国と県が認めています。そればかりか、そのような川辺川ダムを前提とした宅地嵩上げ、軌道整備がなされるので、2020年7月4日型の豪雨再来時にはまた同様な水禍に見舞われてしまいます。流水型と言っても、大洪水時にはダム堤上流には大規模な堆砂が生じ、放流口が河道と同じ高さにあるため、雨が降るごとに堆積物が直接流出ことになるのですから、下流への白濁水流出が長く続きます。自然に優しいどころか下流の河川を白濁流で殺してしまうことは明らかです。このような致命的な問題を抱えた球磨川水系治水対策の実態を見分できました。水禍の実態を調査された皆さんが、「ダムから球磨川を守ろう。今の河川法では、雨の降り方が大幅に変わってきていることに対応できない」と指摘していることが理解できました。

九州2ダム問題の視察で明らかになったことを政治に活かす、河川政策を見直す。私たちの課題と思います。

9.28 大集会『公共事業を糾す』予告と報告

2023年9月21日
カテゴリー:

1:集会概要

予告

高度成長期の重厚長大な土建型の開発が限界を迎えるなか、インフラの老朽化対策は一向に進まず、辺野古新基地建設やダム建設、リニアなど不要不急の大型事業は相変わらずに続いています。政官財利権と結びつく構造は不変であり、特に最近は、人権侵害も顧みず問答無用な独裁政治で強行する姿勢が顕著になっています。

公共事業改革市民会議では、人権無視で強行する事業の暴走をストップさせ、「公共事業」を本来あるべき姿に変えていくため、院内大集会を企画しました。

ZOOM配信も致します。下のチラシ右下のQRコードを読み取ってお入りください。

 

報告

集会参加者は130名(会場:80名、ZOOM50名)でした。
日本環境会議理事長の寺西俊一先生のご講演、各地の報告を行い、ご参加頂いた4名の国会議員からのメッセージなどと合わせて総括し、集会宣言という形で採択しました。
本集会では、不要不急の公共事業が今なお続き、人権侵害を顧みずに強行される事態に対して、強い警笛を鳴らしました。コモンの復権が急務であることを確認し、「公共事業チェック議員の会」再始動への強い期待を確認しました。

2:水源連関係からの2つの報告(予告と報告)

水源連関係事業は、石木ダム問題と川辺川ダム問題の2つが、各々10分間枠で報告されます。

  • 石木ダム建設事業

長崎県が「地元の了解なしではダムは造らない」と覚書きを交わした上で予備調査を開始した1972年からこれまでの51年、地元住民を苦しめ続けている石木ダム。土地収用法を適用した長崎県・佐世保市によって、13世帯約50人が地権を奪われ、明渡しを拒否して生活を継続、「覚書を守れ、(石木ダムの必要性についてゼロからの)話合いに応じよ」と現地工事現場での抗議・要請行動に明け暮れています。
9/28の集会で現地から駆けつけて報告するつもりでしたが、起業者による工事強行が厳しさを増し、現場を離れることが出来ない状況になっているため、現地からのZOOM参加となります。
皆様には現地報告から、この厳しい状況を実感され、起業者側への抗議・要請をなされるよう、期待いたします。

要請先:皆様への呼びかけ・お願い

石木ダム問題については、下記pdf版とホームページをご覧ください。

  • 川辺川ダム建設事業

「2020年の球磨川流域豪雨災害から河川法の根本的問題を問う」より

川辺川ダムがあれば : 作り話でしか正当化できない川辺川ダム建設
マスコミは豪雨災害発生の翌日から「川辺川ダムがあれば」の大宣伝を始めた。そして国と県は検証と称して、川辺川ダム建設に必要な事象づくりに取り組んだ。これが治水の専門家集団のやることかと思うような作り話をヘドロだらけで復旧に取り組んでいる住民に向けて繰り返し垂れ流した。その典型が「川辺川ダムがあれば人吉市街地の氾濫は6 割カット出来た」とか、「流水型ダムで命も清流も守れる」とか、「川辺川ダムで本流の水位をさげれば支流の氾濫は防ぐことが出来た」という作り話である。

 9月28日の集会では、2020年7月球磨川大氾濫を「待ってました!」とばかりに「川辺川ダム必要」を連呼し続けている熊本県と国土交通省のゴマカシを徹底的に暴き、現在のダム治水では気候変動に伴う線状降水帯停滞に伴う集中豪雨には対応できない、と警鐘を鳴らします。

川辺川ダム問題については、下記pdf版とホームページをご覧ください。

3:集会全容(報告)

↑ このページの先頭へ戻る