事務局からのお知らせ
国に対して鬼怒川水害の損害賠償を求める裁判の訴状
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2015年9月の関東・東北豪雨では鬼怒川下流部で堤防が決壊し、無堤地区で大規模な溢水があって、その氾濫が茨城県常総市の鬼怒川左岸側のほぼ全域におよび、凄まじい被害をもたらしました。
この鬼怒川水害は、氾濫の危険性が極めて高い箇所を放置してきた国土交通省の誤った河川行政が引き起こしたものです。
そこで、8月7日、国家賠償法により、被災者30人が国に対して損害賠償を求める裁判を起こしました。
この裁判の訴状を下記のとおり、掲載しました。
訴状 鬼怒川水害訴状 0.6MB
訴状の図 訴状の図1~図15 7.4MB
提訴の記事とニュースは https://suigenren.jp/news/2018/08/13/10992/
および https://suigenren.jp/news/2018/08/13/10997/
をご覧ください。
ダムがあるために避難の時間が失われた(野村ダムと鹿野川ダム)
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今回の記録的な豪雨では、愛媛県・肱川の国土交通省の野村ダム、鹿野川ダムの放流がダム下流域の被害を大きく拡大しました。
そのことに関して、次のように、ダムがなければ、もっと大きな被害が出ていたというダム擁護論が出ています。
肝心な時に役立たないダム( 野村ダム、鹿野川ダム、日吉ダムの流入量と放流量のグラフ)
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西日本における記録的な豪雨による被害はすさまじく、多くの方の生活を奪ってしまいました。7月9日午前0時半現在、全国で88人が死亡し、4人が意識不明の重体、58人の安否が不明となっています(NHKニュース)。
なんとも痛ましいことです。
今回の記録的豪雨で、愛媛県・肱川の国土交通省の鹿野川ダムと野村ダム、京都府・桂川の水資源機構の日吉ダムが満水になり、洪水調節機能を失ってしまいました。
これらのダムの運用データをネットで見ることができますので、3ダムについて流入量と放流量のグラフを描いてみました。
下図のとおりです。
鹿野川ダムと野村ダムが洪水調節を行えたのは、流入量が急増してから5~6時間だけのことであって、あとは洪水調節機能を全く失ってしまいました。
日吉ダムは第一波の洪水に対しては洪水調節を行えましたが、第二波の洪水に対しては無力でした。
下図を見ると、想定外の雨に対してダムというものがいかに無力であるかがよくわかります。
肝心な時に役立たないダムに依存する治水計画と決別すべきです。
なお、各ダムの諸元は次の通りです。
日吉ダム 総貯水容量6,600万㎥、洪水調節容量4,200万㎥、集水面積290㎢
野村ダム 総貯水容量1,600万㎥、洪水調節容量350万㎥、集水面積168㎢
鹿野川ダム 総貯水容量4,820万㎥、洪水調節容量1,650万㎥、集水面積513㎢
(ダム流入量・放流量の出典:リアルタイムダム諸量一覧表)
石木ダム問題の講演会「佐世保市民にとって石木ダムは無用の長物」の資料とスライド(6月30日)
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6月30日(土)に石木ダム問題に関する講演会が佐世保市の市民文化ホールで開かれました。
講演会のタイトルは「どうなる!石木ダム訴訟 どうする!石木ダム 子や孫に残すのは豊かな自然? それとも大きな借金?」です。
今本博健先生(京都大学名誉教授)が「川棚川の治水に石木ダムは不要である」の講演、
嶋津が「佐世保市民にとって石木ダムは無用の長物」の講演を行いました。
そして、馬奈木昭雄先生(石木ダム対策弁護団長)が「石木ダム裁判 今後のたたかいの展望」を報告しました。
利水に関する「佐世保市民にとって石木ダムは無用の長物」では、次の6点を柱にして講演しました。
① 人口が減少し続け、水需要が縮小して、水余りが一層進行していく縮小社会時代において石木ダムの新規水源が必要であるはずがない。
② 石木ダムの必要性は、水需要の実績を無視した架空予測と、保有水源の恣意的な過小評価によって捏造されたものである。
③ 当局は渇水が来たらその影響は計り知れないと、市民の不安をあおるような宣伝をしているが、実際には水需要の確実な減少で佐世保市は今や渇水に強い都市に変わっている。
④ 当局は、既設ダムの老朽化対策でダムを長期間、空にしなければならず、その代替水源として石木ダムが必要だと宣伝しているが、実際には貯水したままで老朽化対策が可能であり、この話は石木ダム建設推進のため、市が考え出した苦しまぎれの口実にすぎない。
⑤ 石木ダムおよび関連水道施設の佐世保市負担額は、施設整備で339億円、完成後の維持管理等で294億円、計633億円にもなり、佐世保市の現世帯数で割ると、1世帯あたり負担額は約60万円にもなる。今後は世帯数が小さくなっていくので、1世帯あたりの負担額はもっと大きな値になる。そして、今後、石木ダム等の事業費増額が必至であるから、この負担額はさらに大きなものになる。
⑥ 必要性が欠如した石木ダム事業によって現世代だけではなく、後世の世代にも巨額の費用負担を強いる愚行を続けてはならない。
この講演の配布資料は佐世保市民にとって石木ダムは無用の長物 配付資料 2.05MB
使用したスライドは佐世保市民にとって石木ダムは無用の長物 スライド 7.53MB
をご覧ください。
「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案」についての意見陳述(参議院)
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5月31日の参議院国土交通委員会で「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案」の審議のための参考人招致が行われました。
この法案は、人口減少・高齢化の進展や地方から都市等への人口移動等により、所有者不明土地が全国的に増加しており、今後も増加の一途をたどることが見込まれいることから、その対応策として上程されたもので、すでに衆議院を通過しました。法案とその説明は http://www.mlit.go.jp/policy/file000003.html をご覧ください。
参議院国土交通委員会での審議にあたり、二人の参考人が呼ばれ、その一人として法案反対の立場で嶋津が出席しました。
この法案は、土地収用法の特別措置法という面があり、土地収用法によって石木ダム予定地等の強制収用が進められようとしていることから、その問題点を指摘する必要があると考え、参考人を引き受けました。
嶋津が陳述した意見書と説明に使った資料は次のとおりです。
「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案」に関する意見(嶋津)20180531 0.45mB
意見陳述の説明資料(嶋津)20180531 3.8mB
この法案の問題点として主に指摘したことは次の2点です。
(1)所有者不明土地とされる土地の収用で収用委員会の公開審理をなくし、都道府県知事の裁定に代えることの問題点
(実際には収用委員会の制度も形骸化しているのですが、本法案は現状をさらに悪くするものですので、収用委員会の問題は取り上げませんでした。)
〇 土地収用法が定める収用手続は、憲法29条が保障する土地所有権そのものを「公共のため」に権利者の意に反してでも奪うという、財産権の侵害度が最も高い手続きである。権利者に対する十分な手続保障があってこそ、公共目的で権利を奪うことが正当化されるのであり、その手続きとして収用委員会という第三者機関による公開審理は不可欠のものである。
〇 ところが、本法案では所有者不明土地とされる土地の収用は、収用委員会の公開審理をなくし、都道府県知事の裁定に代えることになっている。となると、都道府県の公共事業の場合は、事業者も収用の裁定者も同じ都道府県となり、都道府県の判断だけで進むことになり、公正な収用であるかどうか、所有者不明土地とされているが、調査を尽くしたものであるかどうかについて第三者機関によるチェックが行われないことになってしまう。
(2)収用手続きの簡素化が進められれば、必要性が希薄な公共事業が一層まかり通る可能性が高くなる
〇 本法案で所有者不明土地は収用委員会の公開審理をなくし、都道府県知事が裁定するようにすること、さらに、国土交通省が近く策定する「事業認定の円滑化マニュアル」を普及させることにより、事業認定申請から、事業者が所有権を取得するまでの期間を大幅に短縮することになっている。
〇 所有者不明土地への対応が必要だということを名目にして、本法案により、土地収用手続きの簡素化が進められれば、必要性が希薄な公共事業が一層まかり通る可能性が高い。
〇 事業認定制度が形骸化しており、必要性の希薄な公共事業にも事業認定のお墨付きが出るようになっているので、公共事業の必要性の是非について厳格な審査が行われるよう、事業認定制度の抜本的な改善が必要である。
〇 事業認定の厳格化への改善無しに、土地収用手続きの簡素化を進めるべきではない。
事業認定制度が形骸化している端的な例として、石木ダム問題を取り上げ、石木ダムが利水治水の両面で必要性がきわめて疑わしい事業であるにもかかわらず、そのような石木ダムにも事業認定のお墨付きが出る事業認定制度の根本的な欠陥を具体的に指摘しました。
今回の参考人を引き受けたのは、国会の国土交通委員会の議員に石木ダムの問題を伝える機会にもなるということがありました。
陳述に使った上記の意見書と説明資料をお読みいただければ幸いです。