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国土交通省の「リスク管理型の水の安定供給に向けた水資源開発基本計画のあり方について」 答申(案)に対する意見〈2017年3月7日)

2017年3月7日
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国土交通省が全国7水系の水資源開発基本計画(フルプラン)のあり方に関する答申案に対して意見募集を行っています。

 意見を提出しましたので、参考までに掲載します。
国土交通省の意見募集は http://www.mlit.go.jp/report/press/water02_hh_000083.html をご覧ください。
リスク管理型の水の安定供給に向けた水資源開発基本計画のあり方について 答申(案)に対する意見(嶋津暉之)

1 答申案は、水道用水および工業用水の需要が減少の一途を辿ってきていて、将来はますます縮小していく事実を無視している。

下図のとおり、全国の水道用水および工業用水の需要は減少の一途を辿っている。全国の水道の一日最大給水量は1994年度から2014年度までの20年間に一日当たり約1,100万㎥も減っている。一人一日最大給水量を400リットル/日と仮定すると、20年間で約2,700万人分の水道給水量が減ったことになる。今後は人口減少時代になることにより、水道用水の規模縮小に拍車がかかることは必至である。工業用水も減り方が凄まじい。1975年と比べると、2014年の使用量は2/3の規模になっている。下図で示した水道・工業用水の減少傾向は、利根川・荒川水系などの各指定水系でも同様である。

2 水道用水および工業用水の規模縮小で水余りがますます顕著になっていく時代において新たな水資源開発事業は不要であるから、答申案は現在計画中および建設中の水資源開発事業の中止を求めるべきである。

上述のとおり、水道用水および工業用水の需要が減少の一途を辿り、将来はますます縮小していくのであるから、新たな水資源開発事業が不要であることは明白である。それにもかかわらず、各水系で不要な水資源開発事業が推進されている。利根川・荒川水系では八ッ場ダム、思川開発、霞ケ浦導水事業、豊川水系では設楽ダム、木曽川水系では木曽川水系連絡導水路、淀川水系では川上ダム、天ヶ瀬ダム再開発、筑後川水系では小石原川ダムなどの事業である。いずれも水需要縮小の時代において無用の事業であるから、答申案はこれらの新規水資源開発事業の中止を求めるべきである。

 

3 水需要が減少の一途を辿り、水余りが一層進行していく時代においてフルプラン(水資源開発基本計画)の役割は終わっているのであるから、根拠法である水資源開発促進法とともに、各指定水系のフルプランを廃止すべきである。

各指定水系のフルプランは水資源開発促進法の目的に書かれているように、「産業の開発又は発展及び都市人口の増加に伴い用水を必要とする地域に対する水の供給を確保するため」に策定されるものであり、水道用水・工業用水の需要が減少傾向に転じた時点で、その役割を終わっている。答申案は、フルプランの延命策を講じるのではなく、役割が終わった各指定水系のフルプランとその根拠法である水資源開発促進法の廃止を求めるべきである。

 

4 「リスク管理型の水の安定供給に向けた」という言葉で、役割が終わった各指定水系のフルプランの延命策をはかってはならない。

今回の答申案は「地震等の大規模災害、水インフラの老朽化に伴う大規模な事故、危機的な渇水等の危機時において最低限必要な水を確保するためには、・・・効果的な施策の展開を検討するよう留意する必要がある」と述べているが、これは、役割が終わった各指定水系のフルプランの延命策に他ならない。

第5次利根川・荒川水系フルプラン〈2008年策定〉などの現在のフルプランも無理矢理、延命策が講じられたものである。フルプランは当初から水需要の実績と乖離した過大予測によって水資源開発事業の必要性を打ち出すものであったが、1990年代から水道用水・工業用水が減少傾向に転じたため、過大予測を行うにも限度が生じてきた。そこで、国は水資源開発事業を推進するための新たな理由をつくり出した。それはより厳しい渇水年(1/10渇水年)になると、ダム等の供給可能量が大幅に減るので、それに対応するためにも水資源開発が必要だというものである。

現行のダム等の開発水量は、利水安全度1/5で計画されているので、それより厳しい渇水が来ても対応できるように、利水安全度1/10での水需給を考える必要があるというものである。1/10渇水年においてダム等の供給可能量が大幅に減るという国の計算結果は、ダム放流を過剰に行う恣意的な計算によるものであって、1/10渇水年の話も虚構のものなのであるが、このようにしてフルプランの延命策が講じられてきた。

今回の答申案「リスク管理型の水の安定供給に向けた」は、役割が終わった各指定水系のフルプランをさらに延命させることを企図したものであり、答申案の内容を根本から見直すべきである。

 

5 目標年度を過ぎ、期限切れになっている各水系のフルプランを上位計画として国が水資源開発事業を推進している異様な事態を答申案はなぜ問題にしないのか。

利根川及び荒川、豊川、木曽川、淀川、筑後川のフルプランは目標年度が2015年度、吉野川水系は2010年度で、いずれも目標年度を過ぎており、期限切れになっている。この期限切れのフルプランを上位計画として、八ッ場ダム等の新規水源開発事業が推進されているのは異常である。法律に基づいて計画を策定し、その計画に沿って事業を進めるのが行政の責務であるにもかかわらず、計画を期限切れのままにし、計画の裏付けなしで国が八ッ場ダム等の事業を推進しているのは由々しき問題である。国が法律を軽視した行為を公然と行うのは法治国家としてあるまじきことであるので、答申案はそのことを問題視すべきである。

 

6 川の自然を取り戻すため、ダム撤去や河口堰のゲート開放などを視野に入れた答申案にすべきである。

過去のダムや河口堰といった水資源開発事業によって各河川の自然は大きなダメージを受けてきている。アメリカでは川の自然を取り戻すため、ダム撤去が数多く行われてきている。日本も水需要の縮小で、水余りが一層進行していく時代になっているのであるから、既設のダムや河口堰などの水資源開発施設がどこまで必要なのかを徹底検証して、必要性が稀薄な施設は撤去または運用の改善を進めるべきである。答申案はそのように川の自然を取り戻すことも目指すべきである。

2015年9月鬼怒川水害に関する日弁連の会長声明と調査結果報告書の発表

2016年12月4日
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日弁連が2015年9月鬼怒川水害に関する会長声明と調査結果報告書を2016年12月2日に下記のとおり、発表しました。

 

2015年9月鬼怒川水害の調査結果報告書の発表に当たり、改めて、ダム依存から脱却し、総合治水及び堤防の強化を求める会長声明

http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2016/161202_2.html

 

当連合会は、茨城県常総市を中心に発生した2015年9月の鬼怒川水害(以下「本水害」という。)に関して調査を行い、

本日、その結果を取りまとめた調査報告書日弁連 鬼怒川水害の調査報告書20161202

http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/100617_2.pdf)を発表した。
本水害では、常総市三坂地区で鬼怒川の左岸堤防が破堤するとともに、同市若宮戸地区でも溢水が生じ、また、鬼怒川に排水される八間堀川が氾濫を起こすなどして、同市市域の約3分の1に当たる約40㎢が浸水するなど、極めて甚大な被害が発生した。
当連合会は、2010年6月17日付け「ダム依存から脱却し、総合治水及び堤防の強化を求める意見書」において、総合的な治水対策の実施及び当面の対策として既存堤防の強化を提言した。本水害が同提言後の一級河川本川の破堤を伴う大規模水害であったことから、本水害の原因等について調査及び考察を行い、今後への提言を含めて、調査報告書として取りまとめた次第である。

調査の結果、鬼怒川においては、湯西川ダム建設事業に治水負担額として約1144億円もの支出を行う一方、下流の茨城県側は、既存堤防が流下能力不足等により脆弱であるにもかかわらず、堤防整備等が遅々として行われず放置された上、下流の河道負担を軽減する上流域での森林整備等の流域対策も採られず、三坂地区の破堤や若宮戸地区の溢水につながったことなどが明らかになった。また、総合治水が採り入れられず、流域の森林及び水田の貯留機能や既存河川施設の活用及び適切な避難対策やハザードマップの活用等の被害軽減方策がなされていなかったことも明らかとなった。

本年における、台風10号による降雨を原因とした岩手県での二級河川小本川の氾濫、北海道石狩川水系空知川並びに十勝川水系札内川での破堤氾濫及び台風16号による降雨を原因とした宮崎県延岡市での北川の氾濫など、水害が話題にならない年はない。毎年のように頻発する水害の被害を防止・軽減し、住民の生命・身体・生活財産を守るためには、各流域において総合治水方式へと治水対策を抜本的に見直すとともに、その実現と平行して、脆弱な既存堤防を強化し、破堤を生じないよう対策を講じることが喫緊の課題である。

本調査報告書の発表に当たり、当連合会は、改めてダム建設や堤防の改新築・河道掘削などの河道整備ではすべての洪水を河道に閉じ込めることは不可能であるとの認識をもとに、従来型の洪水対策から脱却し、流域全体で洪水を受け止めるという発想に立ってハード面・ソフト面にわたる総合的な治水対策を実施すべきこと、及び、かかる総合的な治水対策を推進しつつも、既存堤防の破堤を防止するため、速やかにその強化を求めるものである。

 

2016年(平成28年)12月2日

日本弁護士連合会

会長 中本 和洋

厚労省の「水道事業の維持・向上に関する専門委員会」が水需要の大幅な減少を予測

2016年11月1日
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厚生労働省の「水道事業の維持・向上に関する専門委員会」が今年3月から開かれてきています。10月26日の第7回会議では報告書の骨子案が示されました。
その骨子案には次の通り、「今から約40年後、日本の人口は8600万人程度となると推計されている。それに伴い、水需要も約4割減少すると推計されている」と書かれています。
その根拠資料を厚労省水道課に聞いたところ、下記の第1回の参考資料2-2にある添付のグラフ第1回委員会参考資料2-2とのことでした。
2009年の全国水道の有収水量3700万㎥/日が2060年には2200万㎥/日まで減るという予測です。減少率は約40%です。
人口だけでなく、家庭用原単位も減ることになっていて、国立社会保障題・人口問題研究所の人口推計を使って計算すると、人口は32%減、原単位は12%減です。
このように、厚労省も今後、水道の需要が人口の減少と原単位の減少で大きく減っていくことを認識しているのです。
ところが、一方で厚労省は、石木ダム事業参画の佐世保市の架空水需要予測をそのまま容認しています。
この専門委員会の座長は滝沢智東大教授で、滝沢氏は石木ダムの事業認定の際に、九州地方整備局に対して、佐世保市の架空水需要予測にお墨付きを与える意見書を出しています。
その意見書に対して、ダム検証のあり方を考える科学者の会が公開質問書 https://suigenren.jp/news/2014/06/03/5410/ を送付しましたが、なしのつぶてでした。
表と裏の顔を使い分ける厚労省と、滝沢智東大教授に対して怒りを禁じえません。

第8回水道事業の維持・向上に関する専門委員会 資料
報告書の骨子案(たたき台)http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000141000.pdf
1。水道事業をめぐる現状と課題
○ 現在、我が国の水道は9 7.8%の普及率に達し、水道は、国民の生活の基盤として
必要不可欠なものとなっている一方、以下に掲げる喫緊に解決しなければならない課題

を抱えている。
○ 人口減少社会が到来し、今から約40年後、日本の人口は8600万人程度となると
推計されている。それに伴い、水需要も約4割減少すると推計されている。給水量の減

少は直接料金収入の減少につながり、特に小規模な水道事業者(注:簡易水道事業者を

含む。以下同じ。)において、財政状況の急激な悪化が懸念される。

第1回水道事業の維持・向上に関する専門委員会 資料
平成28年3月22日(火)
参考資料2-2:水道事業の基盤強化方策に盛り込むべき事項(PDF:4,419KB)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000137087.pdf

蛍舞い、棚田広がる山里にダム計画 「ふるさと守りたい」住民の姿を映画に

2016年10月2日
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長崎県・石木ダムから山里を守るための映画づくりが行われています。その記事をお送りします。映画づくりへの支援をよろしくお願いします。

蛍舞い、棚田広がる山里にダム計画 「ふるさと守りたい」住民の姿を映画に

(A-port 朝日新聞社のクラウドファンディングサイト 2016年09月30日

※ 著作権の関係で削除しました。

「スーパー堤防・街づくりを考える会」からのお知らせ(10月16日(日))

2016年10月1日
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「スーパー堤防・街づくりを考える会」からのお知らせ

講演会「治水とは何か」のお知らせ

 スーパー堤防事業をさせないための勉強会です.

 きたる10月16日(日)午前10時から12時半まで、北小岩コミュニティ会館 第5、第6集会室で講演会「治水とは何か―スーパー堤防の欺瞞一」を開催いたします。

 これは、私たちの「スーパー堤防・街づくりを考える会」が発足以来、今年で10年を迎えるのを念頭に、スーパー堤防構想のそもそも、計画の欺瞞、うそ、そして紆余曲折して姿を変えつつあるこの事業について、私たちの考えを伝えると同時に、皆様と一緒に考えようと企画したものです。

 講師には水問題の専門家である嶋津暉之さんのほか、当会から地質学専門家の渡邉拓美、戸口素男運営委員長が報告、皆さんからの質問にも答えます。

 その他、現在造成中の江戸川町会18班地区の地権者も参加、住民の声もお伝えします。

 当日は簡単な資料を配布するほか、わずかですが当会作成の資料類も用意いたします。ぜひご参加<ださい。お待ちしています。

日時:10月16日(日)午前10時~12時半

会場:北小岩コミュニティ会館(TEL 03-5963-1162)

   第5、6集会室(2階)

講師:・嶋津暉之氏(水源開発問題全国連絡会共同代表)

   ・渡邉拓美氏(地質学専門家)   ゛

   ・戸口素男(会’運営委員長)

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