事務局からのお知らせ
大雨時の河川流出量 森林回復で4割減 八ッ場建設に影響も(東京新聞 朝刊 一面 2012年11月13日)
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大雨時の河川流出量 森林回復で4割減 八ッ場建設に影響も(東京新聞 朝刊 一面 2012年11月13日)http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012111302000087.html
森林機能が回復した土壌は、はげ山が目立つ荒廃した時期に比べ、大雨が川に流れ出す量を三~四割程度も減らすことが、東京大学演習林・生態水文学研究所(愛知県瀬戸市)の研究で分かった。森林が雨水を浸透させて洪水を和らげる「緑のダム」効果が、実際の観測値を基に実証されたのは珍しい。
国土交通省は森林の保水力を十分反映させずに、今後想定される最大洪水の規模を計算し、利根川上流域の八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)建設の根拠としている。専門家は「想定洪水の規模は過大で見直すべきだ」と指摘している。
同研究所の五名(ごみょう)美江特任研究員と蔵治光一郎准教授によると、演習林内の丘陵地(約十四ヘクタール)では降雨量と、降った雨が川に流れ出す直接流出量を観測してきた。
これまでの記録から、木々の乱伐で三割近くが裸地だった一九三五~四六年の荒廃期と、森林面積が九割以上回復し、土壌の再生が進む二〇〇〇~一一年の各十二年間で、総雨量六〇ミリ以上のデータを比べた。
このうち一時間当たりの雨量がピーク時で三〇ミリ以上の強い雨の場合、荒廃期よりも森林回復期の方が雨の流出量が大幅に減少。総雨量が二〇〇ミリで38・3%減り、倍の四〇〇ミリでも25・6%減少していた。保水力の差を見ると、四〇〇ミリで七一・三ミリもあった。
蔵治准教授は「大雨では森林の保水力は効果を発揮しないという国交省の従来の見解を覆す結果が出た。今後は森林政策と治水計画を融合していくことが望ましい」と語る。
八ッ場ダムの是非などを検証している「利根川・江戸川有識者会議」委員の関良基・拓殖大准教授は「利根川流域で最も被害が出た一九四七年のカスリーン台風洪水時、上流域ははげ山も多かったが、
現在、森林は回復し、土壌が発達している。計算をやり直せば八ッ場ダムが不要になるはずだ」と話した。
千曲川、サケ遡上11匹に減 西大滝ダムで調査(信濃毎日新聞 2012年11月13日)
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千曲川、サケ遡上11匹に減 西大滝ダムで調査(信濃毎日新聞 2012年11月13日)http://www.shinmai.co.jp/news/20121113/KT121112FTI090020000.php
信濃川のJR東日本宮中(みやなか)取水ダム(新潟県十日町市)に今秋遡上(そじょう)したサケは、ここ10年余りで最多の297匹に上ったことが12日、信濃川中流域水環境改善検討協議会(事務局・国土交通省信濃川河川事務所)の調査で分かった。
これに対し、約30キロ上流の飯山市と下高井郡野沢温泉村境の千曲川にある東京電力西大滝ダムで確認できたサケは、昨年の35匹から11匹に減った。
同協議会は2001年から宮中取水ダムで、03年から西大滝ダムで、それぞれ魚道に仕掛けたわなでサケを捕まえ、大きさなどを調べて上流に放している。
ことしはともに9月11日~11月10日に調べ、宮中取水ダムでは10月8日に最初の3匹を確認。その後もほぼ連日遡上し、同23日には1日当たり最多の38匹を記録した。西大滝ダムでは10月10日に1匹目を確認し、最多は同26日の3匹だった。
宮中取水ダムの魚道では今夏、魚が遡上しやすくなるようにする改修工事が終了。NPOなどが近年、サケの稚魚放流に力を入れていることなども、遡上が増えた背景にあるとみられるという。
一方、西大滝ダムについて、同協議会は「ダム手前の本川や支流で産卵するサケもいる。去年が偶然多かったともいえる」と指摘。
稚魚を放流しているNPO法人新潟水辺の会(新潟市)の加藤功事務局長(66)は「宮中取水ダムを通過したサケがどこに行ったのかは現段階では分からない」としている。
宮中取水ダムをめぐっては、JR東日本の違法取水問題を機に09年からダム下流への放水量が大幅に増えた。東京電力は今秋から西大滝ダムの魚道を改修する。
安威川ダム問題で皆さんのご協力を(2012年11月22日更新)
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「大阪府営安威川 ダム本体工事(さしあたって転流工工事) 着工中止を求める大阪府への「申し入れ」と「見解」への 支持と賛同及び大阪府知事宛要請文提出ご依頼」
「安威川ダム反対市民の会 」(代表 江菅洋一)と 「大阪府安威川(あいがわ)の治水を考える流域連絡会」(代表 畑中孝雄)さんから水源連の皆さんに表記のお願いが届いております。
団体個人知事宛要請書提出依頼(PDF 62kb)をお読みの上、添付1.大阪府申し入れ(PDF 58kb)を支持・賛同する旨を表明する添付3.団体個人知事宛要請書ひな形(PDF 36kb)に必要事項を記入して、
- 住所:〒540-8570 大阪市中央区大手前2 丁目 大阪府都市整備部河川室ダム砂防課気付 大阪府知事 松井一郎宛 て
- 日限: 11月28日水曜日大阪府到着
で発送されるようお願いします。
Faxの場合は、下記宛てによろしくお願いします。
Fax:06-6944-0589
大阪府都市整備部河川室ダム砂防課御中
◎ご送付いただいた団体や個人の方は、念のため下記メールにご連絡ください。
takao_hatanaka@nifty.com
この要請の科学的根拠については添付2.国土研-大阪府営安威川ダム計画の地質問題に関する見解(171kb)をご覧ください。
木下昌明の映画批評~自然に寄り添って生きる意味『流 ながれ』
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ポレポレ東中野で上映中の『流 ながれ』の映画批評です。映画の上映期間と時刻は http://www.mmjp.or.jp/pole2/ をご覧ください。
なお、カワラノギクという野草は、http://d.hatena.ne.jp/Limnology/20111123/p1 によれば、「日本の川中流部は本来、洪水を起こして、その度に植生が一掃され、礫だけになります。カワラノギクはそういった攪乱が起こる河川に適応して生きてきた植物です。」ので、洪水が起こらなくなった河川では、進入してくる他の植物に負けてしま」う植物です。ダムで洪水を貯留して川の攪乱が起きにくくなると、カワラノギクは衰退していきます。
この映画批評に書いてあるように、「ダムができて形だけ川であってもそれは自然な流れではない』のです。各地で再びダム建設に向かう河川行政を何として変えていかなければなりません。
木下昌明の映画批評~自然に寄り添って生きる意味『流 ながれ」(レイバ-ネット 『サンデー毎日』 2012年11月4日号)
http://www.labornetjp.org/news/2012/1028eiga
●能勢広・村上浩康制作『流 ながれ』
老人二人の活動から川を知る―自然に寄り添って生きる意味
能勢広・村上浩康の映画『流 ながれ』は、神奈川県の中津川が舞台である。
中津川といえば、渓流釣りが好きだった仕事仲間がよく出かけていた川で、昨日は何を釣ったとか自慢していたが、この映画はその種の話ではなく、川が川として成り立っている基本を教えてくれるドキュメンタリーだ。
といっても、河原に野草のカワラノギクを植え続けている吉江啓蔵と、トンボやカゲロウなどの幼虫である水生昆虫を調査し続けている齋藤知一の二人の地道な活動を10年にわたって撮った、地味であるが貴重な作品である。
丹沢山地を源流とする中津川は、相模川の支流にあたり約30キロを蛇行しながら流れている。上空からの俯瞰(ふかん)撮影には、川にそって民家が並ぶ日本の原風景が広がっていた。
だが、2000年にダムができて、下流に環境の変化をもたらしている。そのことが二人の老人の活動から次第に見えてくる。
なぜ、吉江老人はカワラノギクを植えるのか。河川の整備や砂利採集などで石ころの河原が少なくなり、この花が絶滅危惧種となったからだ。
「生涯に一度しか咲かない」花は、かつて河原一面に咲き誇っていた。それが見られなくなるのを惜しんで、誰に頼まれたわけでもないのに、彼は一人で種を採り、家で育て、その株を移植している。
水生昆虫調査の齋藤老人は、石をひっくり返し、その生態を調べている。映画を見るまでは魚のエサにしか見えなかった幼虫なのに、流れに抗(あらが)い、石にしがみつき、必死に動き回っている姿を画面で見ていると、いとおしくなってくる。
昆虫はダムの突然の放水に適応できずに種類が極端に減ったと。彼は「ダムができて形だけ川であってもそれは自然な流れではない」と言う。
「コンクリートから人へ」の象徴だった八ッ場ダムでバタバタしている政府の河川環境への無策は、心ある人々の活動を逆なでするものだ――自然に寄り添って生きることの大切さを訴える映画を見ながら、静かな怒りがこみあげてくる。
(木下昌明)
*東京・ポレポレ東中野にて10月27日より公開。〔付記〕 この二人のように、人々の無関心な自然と向きあい、小さな生き物の生態から世の中の動きを観察していくことも、人間の一つの生き方であり、とても重要なことではないかとわたしは考える。
ダムも長寿命化へ転換 計画的補修へ詳細点検(読売新聞栃木版 2012年10月27日)
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ダムも長寿命化へ転換 計画的補修へ詳細点検(読売新聞栃木版 2012年10月27日)
記事のポイントを書き出すと、次のとおりです。維持管理費の削減のため、電気・機械設備等を計画的に補修していくというものです。しかし、100年以上の長い年月を考えたら、ダムの行く末はどうなるのでしょうか。
〇 ダム本体のコンクリート部分は、少なくとも100年はもつ。だから、他の構造物ほど長寿命化は考えられてこなかった。
〇 水門や弁などの金属部分や電気、機械設備は、20、30年で更新時期を迎える。
〇 各ダムごとに詳細な点検を実施し、部品ごとに優先順位を定めた補修計画を立てる。これまでは異常があったところを補修してきたが、計画的に補修を進めれば、壊れてから修繕するよりも費用を縮減できる。目的は、維持管理費の削減だ。
(写真)ワイヤが老朽化していないか確認する県安足土木事務所の職員(9月19日、足利市の松田川ダムで)
足利市北部にある松田川ダム(1995年完成)。「財団法人ダム技術センター」(東京)の職員が、コンクリートの表面に薬品を吹きかけると、アルカリ性を示す紫色になった。アルカリ性から酸性に向けた進行は劣化を表すため「中性化」していない状況が確認出来た。
ダム維持管理費削減などのため導入された県の「とちぎダム長寿命化プロジェクト」で、耐久性などが問題ないとされた松田川ダム(足利市)
「とちぎダム長寿命化プロジェクト」の一環として、県は9月5日、同センターと共同で同ダムの調査を実施。ボートに乗って貯水池のコンクリートの点検のほか、貯水量や放水量などが分かるデジタル表示が正常に作動しているかなど、1か月~1年に1回の割合で行う定期点検より細かく調べた。
ダムを管理する県安足土木事務所保全第1部の影山晃弘部長は「人が人間ドックを受けるようなもの。全体的な症状が目に見え、効率的な管理につながる」と説明する。
機械設備は20、30年 同センターの池田隆・企画部長は、「ダム本体のコンクリート部分は、少なくとも100年はもつ。だから、他の構造物ほど長寿命化は考えられてこなかった」と説明する。
しかし、水門や弁などの金属部分や電気、機械設備は、20、30年で更新時期を迎えるとされる。県砂防水資源課によると、県営ダムは7か所あるが、維持管理に使える予算は近年、年間3億円前後で推移しているという。
同課の担当者は、「これまで必要最低限の部分しか直せなかった。先延ばしできる部分は先延ばししてきた」と明かす。
「修繕先送りしない」 完成後30年以上経過する県営ダムは、2008年現在で「中禅寺ダム」(日光市)、「西荒川ダム」(塩谷町)、「塩原ダム」(那須塩原市)の3か所だったが、14年に4か所、20年に5か所に増える。
「プロジェクト」は10年、財政難に危機感を募らせた同課が、橋などで行われていた長寿命化の取り組みを参考に始めた。目的は、維持管理費の削減だ。
各ダムごとに詳細な点検を実施し、部品ごとに優先順位を定めた補修計画を立てる。これまでは異常があったところを補修してきたが、計画的に補修を進めれば、壊れてから修繕するよりも費用を縮減できる。
また、場当たり的な対応にならず、年度ごとの費用にばらつきが出ないという。京都大大学院工学研究科の小林潔司教授(インフラマネジメント)は「ダムは修繕を先送りしないことが大事」と、同プロジェクトを評価する。
県はプロジェクトに基づき、11年度、県営ダム4か所の補修計画を作った。今年度は松田川ダムを含む残り3か所を策定し、来年度には、各ダムの計画を基に、県営ダム全体の長寿命化修繕計画を完成させる方針だ。
県砂防水資源課の松本茂副主幹は、「ダムは代替が利かない施設で、壊れたときの影響が大きい。早めの修理で、安全性もさらに高められる」と意義を語る。
▼建設60~70年代ピーク
「財団法人日本ダム協会」(東京)によると、全国にはかんがい、上水道、工業用など約2800のダムがある。建設時期は1960~70年代がピークで、完成後50年以上経過したダムが現在、約半数を占める。
国土交通省は昨年、ダムの機械設備については長寿命化計画のマニュアルを定めたが、電気通信設備やダム本体については、今年度中の策定を目指して検討を進めている。
同省河川環境課の渕上吾郎課長補佐は、「栃木県の長寿命化の取り組みは、全国に先駆けた事例」と評価する。
ダムによる治水と利水は、発電やかんがいなど住民生活で重要な役割を担っていることから、京都大防災研究所水資源環境研究センターの角哲也教授(河川工学)は、
「長寿命化によりコスト縮減だけでなく、安全に長く使い続けられる意義は大きい」と指摘。「栃木県と国の取り組みが各県に良い影響を与え、全国のダムの維持管理レベルの底上げにつながる」と述べている。