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北村地方創生相が「犠牲に」と切り捨てた石木ダム水没地区住民、涙の訴えも長崎県知事には届かず

2019年10月3日
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ジャーナリストの横田一さんによる石木ダム問題のレポート記事を掲載します。

北村地方創生相が「犠牲に」と切り捨てた石木ダム水没地区住民、涙の訴えも長崎県知事には届かず
(HARBOR BUSINESS Online 2019/10/3(木) 8:33配信) https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191003-00203053-hbolz-soci&p=1

(写真)9月19日、長崎県庁で石木ダム建設予定地の地権者が中村法道知事と面会、建設見直しを訴えた
(写真)住民たちの訴えに答える中村法道・長崎県知事

北村地方創生大臣が「誰かが犠牲になるべき」と発言
内閣支持率がアップした第4次安倍改造内閣で、10月4日スタートの臨時国会で加計疑惑にまみれた萩生田光一文科大臣とともに野党の追及を受けそうなのが北村誠吾地方創生担当大臣(長崎4区)だ。
新内閣発足直後の9月14日の記者会見で、自らの選挙区内の「石木ダム」(長崎県佐世保市川棚町)について「みんなが困らないように生活するためには、誰かが犠牲(になり)、協力して役に立つという精神で世の中は成り立っている」と発言。反対を続けて立ち退きに応じない地権者が「犠牲になるべき」というダム建設推進論をぶち上げたのだ。
これを「ダム建設『誰かが犠牲に』 北村地方創生相」(14日の『日本経済新聞』)、「北村地方創生相 ダム建設『誰かが犠牲に、という積極的なボランティア精神で』」(14日の『毎日新聞』)など大手新聞が一斉に報道すると、地権者は「住民の理解を得たいと言いながら、強制的に土地を奪おうとしている。これは人道上の問題だ」(炭谷潤一さん)などと反発。
知事時代に県内のダム見直しをした前滋賀県知事の嘉田由紀子参院議員も「北村誠吾新『地方創生大臣』は『地方破壊大臣』か?」(9月16日のフェイスブック)と批判、翌17日の「公共事業チェック議員の会」総会でも、ヒアリングを受けていた国交省や厚労省の官僚に「これだけ財政難で少子化の時代に国はどういう国政をしたいのか。未来の子供たちに説明できるのか。公僕としての誠意を示していただきたい」と強調、国費147億円を投入する「石木ダム建設計画」(総事業費538億円)の検証と見直しを求めた。

河川工学の専門家は「ダム案より代替案のほうが安い」と指摘
石木ダムは利水と治水が目的の多目的ダムだが、かつては渇水に悩まされた佐世保市の水需要は右肩下がりとなっている。治水も堤防強化などで代替可能であることから、地権者に犠牲を強いるほどの必要性に欠けると疑問視されている。
全国各地のダム計画を検証してきた今本博健京大名誉教授(河川工学・防災工学)もこの総会に参加、「石木ダムは要らない」と銘打ったレジメをもとに解説。総会の最後に今本名誉教授はこう指摘した。
「石木ダムは必要性に疑問がある。ダム案と代替案を比較する時にずさんな検討をしている。代替案の中に必要のない事業が含まれていて水増しされており、精査すればダム案より安くなって逆転するだろう」
きちんとした見直しをすれば、石木ダム建設の正当性(公共性)は消え去る可能性が高いというのだ。

ダムに沈む地域の住民たちが涙ながらに長崎県知事に訴える
国会議員や専門家から疑問が噴出した2日後の9月19日、水没予定地の地権者の約50人が中村法道・長崎県知事と県庁で面会をした。土地の明け渡しを求める採決を長崎県委員会が5月に出した結果、翌日(20日)になると所有権が国に移ることになっていた前日に5年ぶりの知事面会が実現したが、そこで地権者が目の当たりにしたのはダム建設ありきの姿勢だった。
最初に故郷への思いを語った地権者は松本好央さん(44歳)。「生まれ育ったこの土地に住み続けることは悪いことなのでしょうか、私たちは何も悪いことはしていません。この先もずっと住み続けていきます」との決意表明をすると、松本さんんお高校2年生の娘・晏奈(はるな)さんが「思い出が詰まったふるさとを奪われるのは絶対に嫌です。どうか私たちの思いを受け取ってください」と綴った手紙を涙ながらに読み上げていった。
続いてマイクを握った炭谷潤一さん(38歳)が「私は、私の家族と川原(こうばる)の人と川原というコミュニティを全力で守ります。住民の理解を得たいと言いながら、強制的に土地を奪おうとしている。これは人道上の問題だ」と訴えた。
その隣に座っていた炭谷さんの娘、小学3年生の沙桜(さお)さんも手紙を開いた途端、涙を抑えきれずに途切れ途切れになりながらも「私は川原が大好きです」「ダムを作らないで下さい」という故郷への思いを涙声で絞り出した。
最年長である92歳の松本マツさんは「川原のきれいな住みよかところに、なんでダムのできるとかな」「この年になって、どこへ出て行けと言うのですか」と訴えた。

住民たちの訴えも、知事には届かず
約2時間半にも及んだ面会は、地権者が起立して頭を下げて陳情する場面で終わったが、中村知事の石木ダムを推進する考えに変わりはなかった。面談中も石木ダム建設の必要性を何度も繰り返した中村知事は、面談後の囲み取材で「(ダム)事業全体を進めて行く必要があることを改めて感じた」と言い切ったのだ。
そして「事業全体の見直しは難しいと考えているのか」という質問に対しても、中村知事は次のような回答をするだけだった。
「検証を重ねて『これが最良の方策である』という考え方のもと、これまで進んできた経過があるわけですので、代替措置が新たに可能性のある話として出てくることになれば、また検討を進める必要があると思いますが、現状ではやはり今の方針のもとで進まざるを得ないではなかろうかと思っています」
そこで筆者が「鳥取県では恣意的な計画、データでダムありきになっていたが、見直しをする考えはないのか。子供たちの訴えを聞いても考えを変えないということか」と質問すると、中村知事はこう答えた。
「『ダム案と他の代替案の事業費を比較して、意図的に代替案の事業費が大きくなっていた』といったような点については、本県の場合にはたび重ねて検証作業を進めて来ているわけで、そういったことはない」

筆者はその後も再質問、次のような質疑応答を行った。
――子供たちの訴えについて一言お願いします。
中村知事:子供さんたちの故郷に対する思いを直接聞かせていただきました。そうした思いというのは大切にしなければいけないと先ほど申し上げた通りであります。
――(子供たちの訴えを)受け止めて何かアクションを起こさないのですか。今までの方針を変えるおつもりは。
中村知事:先ほど申し上げた通りであります。
――右から左へ聞き流すということですか。
中村知事:(無言)
司会者:これで終了します。
小学生から92歳の高齢者に至るまで、各年代の地権者が故郷への思いを訴えても、中村知事は面会前と同じダム推進論を繰り返しただけだった。

石木ダム建設計画は地元有力議員・金子家の“家業”!?
筆者が「土着権力の研究・長崎県自民党県連」(『選択』2016年2月号)という記事を書いた時の取材協力者は、「石木ダム建設計画は金子家の“家業”といえる」と話す。石木ダム計画は、自民党参院議員の金子原二郎・前長崎県知事(1998年~2010年)と、父親の金子岩三・元農水大臣の親子の足取りと重なり合うという。
中選挙区時代に長崎は、県庁所在地の長崎市(人口約19万人)などから成る「旧長崎1区」と、人口2番目の佐世保市(人口約10万人)や川棚町を含む「旧長崎2区」に分かれていた。
ここで岩三氏が9期連続当選(1958~1983年)。ダム計画浮上の1962年は2期目、事業採択の1975年は6期目、そして県が測量段階で機動隊を入れた1982年は9期目だった。当初から水没予定地の農家(地権者)が「農業を続けたい」と激しい反対運動を展開、現在に至っているために機動隊が入ることになった。
「岩三氏は選挙区内のダム計画に賛成でしたが、当時、佐世保市は慢性的な水不足で、推進の正当性はあった。しかし反対運動で計画が遅れる中、川からの取水などで水の供給能力が向上する一方、工場誘致失敗や人口減少や節水で水需要が右肩下がりになった。その結果、農家の土地を強制収用してダム計画を進める必要性・公共性はほとんどなくなった」(県政ウォッチャー)

「利水」の需要もなくなり、途中から「治水」と「流量確保」という目的が加わる
息子の原二郎氏が旧長崎2区の地盤を父親から引き継いで初当選したのが1993年。その翌年の全国的な大渇水を最後に、深刻な渇水は20年以上起きていない。高度成長時代から人口減少時代に突入する時の流れとともに、佐世保市の慢性的な水不足は解消、利水目的のダム建設の必要性が消え去ってしまったのだ。 途中から目的に「治水」と「流量確保」が加わったのは、利水目的に代わって必要性を下支えする狙いは明らかだったが、これも小規模な堤防強化などで対応可能だ。先の今本博名誉教授らダム問題の専門家は、「多目的ダムになってもダム建設の必要性は乏しい」と断言する。
しかし衆院議員から転身した金子前知事も、後任の中村法道知事も自民党長崎県連とともに、時代遅れとなった石木ダムを推進し続けた。なお民主党が長崎4小選挙区を独占していた2010年に初当選した中村知事は、原二郎氏から知事ポストを禅譲された形で、石木ダム推進の政策も引き継いだ。先の取材協力者の県政ウォッチャーはこう続けた。
「父親の金子岩蔵氏の時代に石木ダム計画が事業化して予算がつき、息子の金子知事代に進んだ。石木ダム事業は金子家の成果といえるので、それを完成することが親孝行と思っているのではないか。参院議員になった今も金子氏は知事ポストを禅譲した中村知事はもちろん、長崎県政に影響力を持っていると聞いています。金子前知事が父親の思いを引継いで推進してきた石木ダム計画に対して、中村知事が見直しを言い出せないのはこうした長崎県政の長い経緯があるためです」
「コンクリートから人へ」を掲げた民主党政権から2012年12月に政権奪取をした第2次安倍政権は「国土強靭化」を旗印にしながら、「人からコンクリートへ」の土建政治(公共事業推進)を復活させた。その象徴的な事業が石木ダム計画といえるが、北村大臣の犠牲発言を機にクローズアップされることになった。
しかし約538億円を投じて美しい棚田の景観を破壊する石木ダム建設に対しては、坂本龍一氏や伊勢谷友介氏ら著名人も反対している。安倍政権の土建政治体質を問う事業として、石木ダムをはじめとするムダな公共事業に関しての国会論戦が注目される。

<文・写真/横田一>
【横田一】
ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)に編集協力。その他『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数
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日本の流水型ダムとその問題点(最上小国川ダム建設差し止め住民訴訟の報告会9月29日)

最上小国川ダム建設差し止め住民訴訟の報告会が9月29日(日)に山形県新庄市でありました。

「最上小国川の清流を守る会」は、最上小国川ダムの建設差し止めを求める住民訴訟を2012年に提起しましたが、今年7月30日、山形地裁は住民側敗訴の不当判決を出しました。

この判決は事実と証拠に基づかない誤りが多く、到底認めがたい不当判決であるとして、同会は仙台高裁に控訴しました。

9月29日の報告会は控訴審も含めて、最上小国川ダム問題についてのこれからの取り組みを話し合うものでした。

嶋津も参加し、「日本のダム反対運動の経過と現状」、「ダム等河川開発の裁判の状況」、「最上小国川ダムと流水型ダムの問題点」について報告しました。

このうち、流水型ダムの問題点についての報告内容を参考までにお知らせします。

「環境にやさしいダム」をキャッチフレーズにして流水型ダム(穴あきダム)が増えてきました。最上小国川ダムも流水型ダムです。

日本の流水型ダム の通り、4基の流水型ダム(益田川ダム、辰巳ダム、西之谷ダム、浅川ダム)が完成し、さらに7基の流水型ダム(最上小国川ダム、玉来(たまらい)ダム、立野ダム、三笠ほんべつダム、矢原川ダム、大戸川ダム、城原川ダム〉がつくられようとしています。

しかし、「環境にやさしいダム」というのは虚構であって、流水型ダムは実際には河川の自然環境に少なからぬ影響を与えることが予想されます。

流水型ダムについてさらに心配されることは、大洪水時に流木や土砂などで洪水吐きが詰まって、洪水調節機能が失われてしまうことです。

洪水吐きの吞み口の手前に鋼製のスクリーンを設置して、流木等の流入を防ぐとしていますが、山腹が崩壊したような大洪水時には、枝葉が付いた樹木が土砂とともに一挙に流出してくるので、鋼製スクリーンの表面は流出樹木や土砂で覆われて、閉塞してしまうことが予想されます。閉塞すれば、2018年7月の西日本豪雨災害における肱川の野村ダムや鹿野川ダムのように、ダム流入水が一挙にダム下流へ流出して、ダム放流量が急激に増え、下流住民は避難する時間も失われてしまうことになります。

流水型ダムの問題点を簡単にまとめた当日の配布資料 流水型ダムの問題点 をお読みいただければと思います。

最上小国川ダムは八ッ場ダムと同じく、今年度末に完成の予定で工事が進んでいます。

当日の報告会の成果の一つは、最上小国川ダムがたとえ完成しても、その後も最上小国川をずっと長期間調査し、流水型ダムの影響を明らかにする活動を継続することが確認されたことです。

日本で最も古い益田川ダムさえ、完成してから十数年しか経っておらず、その後、完成したのは辰巳ダム、西之谷ダム、浅川ダムですが、完成してからの年数が短く、流水型ダムの問題はこれから露呈してくると思われます。

ダムがたとえ完成しても、その影響をずっと監視していく、このような活動が重要であると思います。

八ツ場ダム 10月1日から試験湛水を開始 計画から67年地滑りなど異変が発生しないか 

2019年10月2日
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大変残念なことですが、八ッ場ダムの試験湛水が10月1日から始まりました。
その記事を掲載します。
朝日新聞9月28日の記事と上毛新聞10月1日の記事が、試験湛水で地すべりが起き、完成が大幅に遅れた大滝ダムと滝沢ダムの実例に触れています。

朝日新聞10月2日の記事の終わりに嶋津の談話も載っています。

関東地方整備局もこの試験湛水開始をHPで発表しています。「八ッ場ダム試験湛水を開始しました」http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/yanba_00000089.html

八ツ場ダム、水没始めた街 住民「もう後戻りは」
(朝日新聞群馬版2019年10月2日03時00分)

 

計画から67年 観光客「どんな景色に」 八ツ場ダムで試験湛水開始 3~4カ月で満水見通し
(上毛新聞2019/10/2(水) 6:03) https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191002-00010000-jomo-l10


(写真)1日午前10時40分から試験湛水が開始された八ツ場ダム (写真)試験湛水の見学でにぎわう「やんば見放台」
計画発表から67年が経過し、建設が最終段階を迎えた群馬県の八ツ場ダム(長野原町)で、国土交通省は1日、ダムに水をためる試験湛水(たんすい)を始めた。約半年間かけて水位を上下させ、堤体や貯水池周辺の安全性を確認する。気象条件や河川の状況にもよるが、3~4カ月で満水となる見通し。漏水や地滑りなどの異常がなければ、来春以降にダムとして利用を開始する。
同省八ツ場ダム工事事務所によると、ダム上流面に設置した「締切(しめきり)ゲート」を下げて仮排水路を閉鎖し、同日午前10時40分に試験湛水を開始した。閉鎖作業中、ゲート付近に「八ツ場ダム 湛水開始」と書かれた幕が張られた。
赤羽一嘉国交相は同日の閣議後会見で、「本年度中のダム完成に向けて着実に事業を進め、地元の皆さまに役立つようにしっかり取り組みたい」と述べた。
ダム建設に伴い、県は周辺道路の付け替えなど、地元の生活再建事業に取り組んできた。山本一太知事は同日の記者会見で「(生活再建は)大事な問題だと思っている。県として責任を持ってやり遂げていく」と語った。

◎平日かかわらず多くの観光客 無事完了願う声も
八ツ場ダムの試験湛水が開始された1日、ダム周辺は多くの観光客でにぎわった。住民は完成の最終段階を迎えたダムの姿を胸にとどめつつ、無事に湛水が完了し、ダムが誘客の追い風となることを願った。

ダム本体を見渡せる無料の展望台「やんば見放台」(長野原町川原畑)には朝から多くの人が途切れることなく訪れた。工事中から見守ってきたという峯岸和人さん(44)=太田市=は「工事をしている時は昔の景色がなくなってしまうのが寂しかったが、完成したダム本体は想像以上に壮大。これから水がたまってどんな景色になるのか楽しみ」と目を輝かせた。近くでうどん店を営む中島泰さん(70)は「朝から駐車場がいっぱいで、平日なのに週末のようなにぎわいだった。ダム湖を中心に、にぎやかな地域になってほしい」と期待した。
湛水中は地滑りや漏水などの異常が発生することも懸念され、住民からは無事を願う声が聞かれた。午前9時から行われたゲートの閉塞(へいそく)作業を見守った同町川原湯地区の60代男性は「水をため始め、ようやく一区切りという感じ。事故なく湛水が完了してくれれば」とした。ダム近くでレストランを営む水出耕一さん(65)は「ダム完成後も住民の生活は続く。完成がゴールではない。ダムがしっかりと機能するまで見守りたい」と話した。


八ツ場ダム きょうから試験湛水を開始予定 計画から67年

(上毛新聞2019/10/01) https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/society/163604

(写真)水没する国道から望む八ツ場ダム(9月27日撮影)
本年度中の完成を見込む八ツ場ダム(群馬県長野原町)の建設事業で、国土交通省が1日にもダムに水をためる試験湛水(たんすい)を開始する予定であることが30日、分かった。同省八ツ場ダム工事事務所が水没地区の住民に書面で伝えた。当日の天候や吾妻川の状況から最終判断する。計画発表から67年が経過し、地域に多大な犠牲を強いてきた大型建設事業が、完成に向けた最終段階を迎える。

◎地滑りなど異変が発生しないか 注意深く監視
同事務所は30日、水没5地区の全世帯に「試験湛水開始のお知らせ」とする文書を配布した。1日に湛水を開始する方針のほか、気象条件や河川の状況によって延期になる可能性も示した。併せて、貯水範囲は水位が急に上がり危険になるため、立ち入らないよう注意も呼び掛けた。

試験湛水は、水をためて水位を上下させ、ダム堤体や基礎地盤、貯水池周辺の安全性を確認するダム建設の最終工程。常時満水位(標高583メートル)まで水をためた後、1日1メートル以内で水を抜き最低水位(同536.3メートル)まで下げる。
試験湛水中は、計器や巡視により異変を警戒する。ダム堤体と周囲の基礎地盤については、水位の変動に伴う漏水や変形などを監視。貯水池周辺でも斜面や構造物などに変動がないかを確認する。漏水や地滑りがあった場合は湛水を止める。
試験湛水により異変が確認されれば、計画が遅れることもある。奈良県の大滝ダムでは2003年、試験湛水中に周辺の家屋や地面に亀裂が発生。37戸が移転を余儀なくされ、計画が約10年遅れた。八ツ場ダムを巡っては、市民団体や超党派の国会議員が「地滑りなどの安全対策に問題がある」として、国に詳細な説明を求めている。

一方、試験湛水の開始方針を受け、同町の萩原睦男町長は「67年の時を経て、ようやくここまできた。国には問題のないようしっかりと進めてもらい、予定通り3月の完成を迎えたい」と話した。
地元の川原湯温泉協会の樋田省三会長は「大きな区切りであると同時に新たな出発でもある。早くダム湖を見てみたい」と完成に期待を寄せた。

八ッ場ダム試験湛水 1日開始へ 3~4カ月間で満水に
(毎日新聞2019/09/30 19:08) https://mainichi.jp/articles/20190930/k00/00m/040/208000c

(写真)試験湛水を前に公開された八ッ場ダム工事現場の水没地域から見たダム本体=群馬県吾妻郡長野原町で2019年9月27日午後2時47分、藤井太郎撮影
群馬県長野原町に国が建設している「八ッ場(やんば)ダム」の試験湛水(たんすい)が1日にも始まることが分かった。試験湛水開始で、ダムは3~4カ月間で満水になる見込み。来年春の本格稼働に向けて大きな節目を迎えることになる。
試験湛水とは、ダムの本格的な運用開始前に最高水位まで水をためて、ダム本体や基礎地盤、周辺の山などの斜面の安全性を確認するもので、漏水状況や地滑り対策箇所などがチェックされる。最高水位まで水がたまった後、1日に約1メートルずつ水位を下げていくが、最低水位以下まで水位を下げることはなく、ダムの底部分が見られることはなくなる。
工事関係者によると、1日午前9時ごろにダム本体にある「締切(しめきり)ゲート」と呼ばれる水門を閉めて、ダムに流れ込む吾妻川の流れをせき止める。当日の天候状況などでは中止する可能性もあるという。
国土交通省はこれまで、1日以降に試験湛水を始めることを明言していたが、具体的な期日は公表していなかった。【西銘研志郎】

八ツ場ダム 10月1日にも試験貯水開
(朝日新聞群馬版 2019年9月28日03時00分)

石木ダム 完成目標延期 反対派「現場を見ろ」 事業継続に憤り、失望

2019年10月2日
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9月30日、長崎県公共事業評価監視委員会が開かれましたが、石木ダム事業の3年工期延長をあっさり認めてしまいました。その記事とニュースを掲載します。
石木ダム建設反対連絡会が26日、委員会の委員に対し、意見書と詳しい資料を送付したにもかかわらず、委員たちは石木ダムの虚構性を何も理解できなかったようです。
まともな議論は一切なく、県の説明を拝聴するだけの存在価値ゼロの委員会でした。

委員会の名簿を末尾に記しておきますが、なんともお粗末な委員たちです。

今回、再評価では石木ダムの費用対効果が1.25から1.21になりましたが、いずれにせよ1を超えているということで、ゴーサインが出ました。しかし、石木ダムの費用対効果の計算は全く恣意的な計算であって、現実に合わせて計算すれば、1を大きく下回り、石木ダムは見直すべき事業となります。
現実と乖離した費用対効果の計算で、石木ダムに対してゴーサインが出るのは腹立たしい限りです。

 

延期の石木ダム「必要か」 反対住民が批判
(朝日新聞長崎版2019年10月1日

 

石木ダム 完成目標延期 反対派「現場を見ろ」 事業継続に憤り、失望
(長崎新聞2019/10/1 11:30 ) https://www.oricon.co.jp/article/946699/

(写真)建設予定地の住民や支援者らで埋まった傍聴席=長崎市元船町、平安閣サンプリエール
長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業で県は30日、県公共事業評価監視委員会に完成目標を3年延期して事業を継続する方針を諮問し、承認された。事業継続に、建設反対派からは憤りや失望の声が上がった。
審議は長崎市内のホテルであり、用意された約40の傍聴席は建設予定地の住民や支援者らで埋まった。ダム事業の必要性を説明する県に対し、傍聴席からは時折「数字を示せ」「ウソをつくな」といったぼやきが漏れた。委員会がダム事業の継続を承認すると、「ちゃんと現場を見に来い」などとやじが飛んだ。
傍聴した反対13世帯の一人、岩本宏之さん(74)は事業継続について「想定していた内容。知事の言ったことは認めないといけないのだろう」と冷ややか。工期変更については「中村法道知事の(3期目の)任期(2022年3月まで)中に行政代執行について判断したくないのでは」と推測した。
ダム問題について考える「いしきを学ぶ会」実行委員の森下浩史さん(72)は工期変更を受け「これから市民の関心を高め、政治分野に踏み込めるかが焦点になるだろう」と話した。

石木ダム完成3年遅れ 25年度に目標延期
(長崎新聞2019/10/1 00:00) https://www.oricon.co.jp/article/946205/

長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業で、県は30日、2022年度としてきた完成目標を25年度に3年延期する方針を県公共事業評価監視委員会(井上俊昭委員長、7人)に諮問し、承認された。事業は継続する。県によると、建設工事の進捗(しんちょく)が計画より遅れているためという。石木ダムの当初の完成目標は1979年度だった。延期されるのは9回目。
石木ダムを巡っては9月、県と同市が反対13世帯の宅地を含む全ての未買収地約12万平方メートルの権利を取得。家屋など物件を含まない土地が対象だった9月19日に続き、物件を含む土地の明け渡し期限が11月18日に設定されている。完成目標延期で反対住民との交渉を進める考えとみられる。
諮問で、県は延期の理由について、ダムに水没する県道の付け替え道路工事が反対派の座り込みなどで遅れ、ダム本体の工程にも影響する見通しになったためとした。新しい工程によると、完成目標は、付け替え道路工事とダム本体工事が24年度、その他の工事と試験湛水(たんすい)が25年度とし、現行目標よりそれぞれ3年ずれ込む。
有識者らでつくる同委員会は県が実施する公共事業について知事の諮問に応じて審議する県の付属機関。30日は長崎市内で開いた。県は延期に加え、延期などに伴い費用対効果を1.25から1.21に下方修正した上で事業を継続するとの対応方針を示した。委員からは環境への影響や住民に対する説明状況などの質問が上がり、県の方針を原案通り承認した。同委員会は議論を踏まえ、中村法道知事に意見書を提出する予定。

石木ダム完成時期3年延長へ [長崎]
(長崎放送2019/9/30(月) 19:14配信) https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190930-00002923-nbcv-l42

県の公共事業を再評価する委員会がきょう長崎市で開かれ、川棚町に計画されている石木ダムについて工期を3年延長し完成予定を2025年度として事業を継続することが認められました。
この委員会は県の公共事業のうち採択から長期間が経過したものについて外部の有識者らが検証を行うもので、会場には石木ダム建設予定地に住む反対住民らも傍聴に駆けつけました。
この中で、県の担当者は反対住民らの行動で付け替え道路工事が遅れており工期を延長せざるを得ないものの、ダムは川棚川の治水対策に必要不可欠なため事業を継続したいと説明。
これに対し委員から反対意見は出ず、工期を3年延長し完成予定を2022年度から2025年度として事業を継続することが認められました。
石木ダム建設予定地の所有権は土地収用法に基づき反対住民の土地を含めすでに国に移っており、建物を含む土地の明け渡し期限は11月18日に迫っています。


石木ダムの完成は3年延期し2025年度に…県が方針 当初から46年遅れで見直しも9回目

(テレビ長崎2019/10/019/30(月) 20:56) https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190930-00010004-ktn-l42

長崎県は住民などが住む土地を強制収用し建設事業を進めている川棚町の石木ダムについて、完成時期を3年延期し2025年度とする方針を示しました。
長崎市で開かれた公共事業の再評価などを行う事業評価委員会が開かれ、川棚町の石木ダム事業について審議しました。
石木ダムの審議は規模の見直しや事業が半世紀近くに渡ることなどから、9回目となります。
事業を進める長崎県側は関連の道路工事などが遅れているとして、完成時期をこれまでの2022年度から3年延期した2025年度とする方針を示しました。
見直しは9回目で、当初の1979年度から46年の遅れとなります。
長崎県側は、洪水被害の防止や水道用水の確保など、ダム事業の目的を改めて説明すると、委員はダムの治水面が機能するのか質しました。
委員 「四国のダムだったと思いますが、緊急放流によって下流域の浸水がひどかったというニュースを見たが、石木ダムについてはその危険性、可能性は」
長崎県側は「ダムは100年に1度の雨を想定し建設している」として、安全性などを強調しました。
地権者 岩本 宏之 さん 「今回で(審議は)9回目、ずっと(工期を)伸ばしてきている。県の説明は、当然メリットの部分だけを言っている、隠されたデメリットがある両方を聞いて判断すべき」
長崎県の見直し案に対して委員からは異議は出ず、事業の継続を認める決定を出しました。

 

石木ダム 完成3年延期方針承認
(NHK2019年09月30日 17時07分)https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20190930/5030005577.html

長崎県川棚町に建設が進められている石木ダムについて、県は関連工事に遅れが出ていることから、30日開かれた県の委員会にダムの完成時期を3年延期する方針を示し、承認されました。
長崎県と佐世保市が令和4年度の完成を目指し川棚町で建設を進めている石木ダムをめぐっては、県の収用委員会がダム建設に必要なすべての用地を強制的に収用できるようにする裁決を下し、今月19日、用地の所有権が地権者から国に移りました。
ただ、ダムに水没する県道の付け替え工事では、建設に反対する住民らによる座り込みの影響などで遅れが出ていることから、県はダムの完成時期を3年延期し令和7年度に見直すことになりました。

そして県は、30日開かれた有識者らによる「県公共事業評価監視委員会」でこうした方針を説明し、事業の再評価を行った結果、費用対効果は多少下がったものの、治水の面では、依然としてほかの方法よりも有利だと評価できるとして、事業を継続すべきだという対応方針案を示しました。
委員からは、強制収用に至るいきさつなどについて質問が出されたものの、対応方針案は原案通り承認されました。
完成時期の延期は、これで9回目になります。
今後は、県とともに建設を進める佐世保市が、水利用の計画を見直すなど利水の面から事業の妥当性を再評価するかどうかが焦点の1つになります。
委員会を傍聴した、元地権者の岩本宏之さんは「結論ありきの委員会だと感じた。県はメリットしか説明しないので、委員には、県と地元住民の両方から意見を聞いてほしかった」と話していました。

長崎県公共事業評価監視委員会
任年月日:令和元年5月15日 満期年月日:令和3年3月31日
氏  名 会の役職名 職業又は役職名 選出及び
選考基準
大嶺 聖 副委員長 長崎大学大学院工学研究科 教授 技術分野
井上 俊昭 委員長 前新上五島町長 地方自治分野
梅本 國和 委 員 弁護士 法律分野
中村 政博 委 員 ㈱長崎経済研究所 取締役調査研究部長 経済分野
山本 緑 委 員 保健医療経営大学 准教授 環境分野
岡 美澄 委 員 公募委員 その他
五島 聖子 委 員 長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科 教授 その他

石木ダム事業認定への行政不服審査請求の現状(2019年9月末)

2019年9月29日
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石木ダム建設事業を長崎県収用委員会にかける前提として、土地収用法に基づく事業認定が必要です。
石木ダムは2013年9月6日に九州地方整備局が長崎県と佐世保市に対して事業認定を行いました。
それに対して地元住民らが事業認定取消訴訟を提起しました。昨年7月の長崎地裁の判決は住民側の敗訴でしたので、控訴し、今年11月29日に福岡高裁で判決がでます。
一方で、住民、支援者らは、行政不服審査法に基づき、事業認定に対する行政不服審査請求を2013年10月初めに行いました。

行政不服審査法は第一条に「行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。」と書かれているように、裁判と並んで、国民が行政の誤りについて判断を求めることができる重要な制度です、

石木ダム事業認定の審査庁は、国土交通省土地収用管理室です。概ね、次の流れで審査が行われてきています。

① 審査庁が審査請求書を認定庁(九州地方整備局)に送付

② 認定庁が審査請求書への弁明書を審査庁に送付 → 審査庁が弁明書を審査請求人に送付

④ 審査請求人が弁明書への反論書を審査庁に提出
さらに、審査請求人は審査庁で意見陳述を行う(審査請求人が望む場合)

⑤ 審査庁が審査請求書、弁明書、反論書、口頭陳述書を総務省の公害等調整委員会に送付して意見照会

⑥ 公害等調整委員会が審査(必要に応じて認定庁へ問い合わせ)

⑦ 公害等調整委員会が審査庁へ意見(回答)を送付

(2017年度から請求者にも意見を送付し、HPに公開するようになりました。http://www.soumu.go.jp/kouchoi/activity/ikensyoukai.html

(参考までに嶋津暉之の審査請求に対する回答は公害等調整委員会の回答20170303(2016年度であったので、開示請求で入手)の通りです。)

⑧ 審査庁が公害等調整委員会の意見を踏まえて審査し、審査結果を請求人に送付

今のところ、2019年3月に⑦がすべて終わり、現在は審査庁の最終審査の段階になっています。
審査庁に問い合わせたところ、審査結果の送付がいつにになるのか、わからないとのことであり、来年以降になるかもしれません。

しかし、2013年10月初めに行政不服審査請求を行ってから、すでに約6年も経っています。

この審査請求は事業認定に基づいて行われる収用裁決にブレーキをかけるために行ったものですが、

石木ダム予定地のすべての用地を対象とする収用裁決が今年5月21日に出ており、この審査請求は意味を持たないものになっています。

行政不服審査法第一条「行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図る」という目的は、
まったく蔑ろにされてしまっているのです。

行政不服審査法の運用の抜本的な改善を求める運動が必要です。

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