各地ダムの情報
札幌市水道の水需要予測の問題 ダム事業推進の一翼を担う厚労省水道課
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札幌市水道の水需要予測の問題についてその後の経過を報告します(嶋津暉之)。
当別ダム中止後に架空予測をやめた札幌市水道」(1.44MB)もご覧ください。
厚生労働省水道課が、各水道事業者の行う過大な水需要予測、架空予測を追認して、補助金を交付し、各地のダム事業推進の一翼を担っていることは周知のとおりです。
厚労省は、国土交通省と一体のダム推進の行政機関であると言っても過言ではありません。
(札幌市水道の架空予測と総務省の指摘)
グラフ(札幌市水道の実績と予測 (97KB))は札幌市水道の一日最大給水量の実績と予測を比較したものです。旧予測は2007年度に当別ダム関係の事業再評価として行ったもので、実績が60~67万㎥/日の間で推移してきているのに、予測はどんどん増加して2025年度には現保有水源83.5万㎥/日〔〔注〕)を超え、当別ダム無しでは水源が不足することになっていました。
当別ダムの水源を札幌市に送水するのは2025年度の予定ですので、それに合わせるように実績と乖離した水需要予測を行っていました。
この事業再評価の予測に対して、総務省の行政評価局からクレームが付きました。あまりにひどい架空予測なので、目にとまったのかもしれません。
総務省は、一人当たり家庭用水(原単位)の予測を取り上げ、札幌市は、増加傾向にあった時期を含む過去30年間のデータを使うのではなく、増加傾向が止まった後の最近10年間のデータを使って予測を行うべきだと指摘しました。
(厚労省の説明)
これに対して、厚労省が札幌市の予測を擁護する説明を行いました。過去10年間のデータでは増加するとは言えないので、定性的な話(世帯の細分化が進むと一人当たりが増えるとか、節水型機器の普及は限界に近づいているという怪しげな話)を持ち出して、
総務省を説得し、総務省の政策評価分科会(2009年5月)を乗り切ってしまいました。
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/hyouka/dokuritu_n/gijiroku/15566.html
説明資料http://www.soumu.go.jp/main_content/000023563.pdf
しかし、このように不合理な架空予測が罷り通ってよいはずがありません。
2010年になって、「当別ダム周辺の環境を考える市民連絡会」と「北海道自然保護協会」が厚労省に公開質問書を出し、(当時の大河原雅子参議院議員の計らいで)厚労省と総務省の担当者と面談して、予測のおかしさを追及しました。
厚労省の説明の誤りは 厚労省水道課長への公開質問書201006 (2078KB) をご覧ください。
(札幌市の予測の大幅な下方修正)
その後、当別ダムが2012年度に完成すると、札幌市はこの架空予測をやめるようになり、グラフ(札幌市水道の実績と予測)の新予測のとおり、将来の1日最大給水量は漸減し、2035年度には61.8万㎥/日まで低下するとしました。この予測値は今年3月策定の「札幌市水道ビジョン」に盛り込まれました。
となると、2009年に厚労省が政策評価分科会で行った説明を札幌市が否定したことになります。一方で、総務省の指摘が正しかったことを意味します。
(厚労省の弁明)
この問題を現在、「北海道自然保護協会」の佐々木克之副会長が追及しています。
去る7月14日には畠山和也衆議院議員が厚労省と総務省の担当者のヒアリングを行い、佐々木さんと私が同席しました。
ヒアリングに先立ちに両省に対して、厚労省への要望書20150610 (1545KB) と 総務省への要望書20150610 (221KB) を提出しました。
厚労省の弁明は、「当時の厚労省の説明は正しかったと考えている。札幌市水道ビジョンは再評価とは異なり、厚労省として指導する立場ではないので、関知しない」という極めて無責任なものでした。
総務省は過去の再評価が合理的か否かを突き詰める立場ではないと、逃げ口上でした。
国の役人はこんなものですが、このままでよいはずがありません。今後、さらに追及していきたいと考えています。
札幌市だけの話ではありません。厚労省の架空予測追認が不要なダム建設をつくり出す大きな要因になっています。
当日、「石木ダムでは佐世保市の架空予測で13戸の住民の家が強制収用されようとしている。架空予測追認の責任を自覚せよ」と思わず、厚労省の担当者に対してつい声を荒立ててしまいました。(佐世保市水道の実績と予測 (112KB))
〔注〕 札幌市水道の現在の保有水源は本来は96.5万㎥/日ありますが、札幌市は豊平川水道水源水質保全事業を起して、現保有水源を14.7万㎥/日減らしてしまいました。
この事業は、ヒ素を含む湧き水等の影響を減らすため、豊平川上流の水の一部をバイパス管で浄水場下流に導く事業で、費用は183億円にもなります。
ヒ素はさほど問題ではなく、浄水場での除去効率を向上させれば済む話なのですが、札幌市は当別ダムへの参加の理由につくるため、保有水源の一部をきり捨て、同時に183億円という大きな事業を起こしました。
霞ケ浦、漁協の差し止め請求棄却 導水訴訟で水戸地裁
茨城新聞がこの判決の問題と限界に触れた論説を書いています。
霞ケ浦導水差止請求事件 判決文の一部 20150717(121KB)をご覧ください。
判決文の全体は
霞ケ浦導水裁判の判決文20150717(22MB)をご覧ください。
論説 霞ケ浦導水事業判決 具体的成果、事業者に責任
(茨城新聞 2015年7月18日) )http://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=14371456324508霞ケ浦導水事業の工事差し止めを那珂川、涸沼流域の4漁協と栃木県の漁連が求めた訴訟の判決が17日あり、水戸地裁(日下部克通裁判長)は「漁業権侵害の具体的な危険があるとまではいえない」として漁協側の訴えを棄却した。
霞ケ浦導水訴訟で水戸地裁 漁協の差し止め請求棄却
(東京新聞茨城版2015年7月18日)http://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/20150718/CK2015071802000149.html?ref=rank
漁協の差し止め請求棄却 水浄化など公共性を認定 那珂川取水口差し止め訴訟
(下野新聞 2015年7月18日 朝刊)http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/local/news/20150718/2024531
アユなど那珂川水系の水産資源に悪影響を及ぼす恐れがあるとして、栃木、茨城両県の漁連・漁協5団体が国に霞ケ浦導水事業の那珂川取水口建設差し止めを求めた訴訟の判決公判が17日、水戸地裁で開かれ、日下部(くさかべ)克通(かつゆき)裁判長は、漁協側の請求を棄却した。漁業権侵害の訴えについて「具体的危険があるとまでは言えない」などとして退けた上で、国側が主張した事業の公益性を認めた。漁協側は控訴する方針。
霞ケ浦導水事業 漁協の差し止め請求棄却 水戸地裁「公益性ある」
(産経新聞 2015.7.18)http://www.sankei.com/region/news/150718/rgn1507180017-n1.html
霞ケ浦導水事業:漁協の請求棄却…水戸地裁判決
(毎日新聞 2015年07月17日 19時47分)http://mainichi.jp/select/news/20150718k0000m040044000c.html
県は強硬姿勢をやめよ 石木ダム計画 長崎新聞社説
7月10日の長崎新聞の社説を掲載します。
石木ダム問題についてまさしく正論を述べた社説です。
地元新聞が長崎県に対して「強硬姿勢をやめよ」という見解を突き付けた意味はきわめて大きいと思います。
県は強硬姿勢をやめよ 石木ダム計画
長崎新聞社説 2015年7月10日
県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業で県は8日、反対地権者13世帯が現住する家屋などを含む土地(約12万平方㍍)の裁決申請などを実施。
これで未買収地すべてが強制収用に向けた手続きに入ったが、県はこの強硬姿勢をやめるべきだ。
1982年5月、県は土地収用法に基づく測量を計画地で実施したが、反対住民の抵抗に遭い、県警機動隊を出動させた。
現場では、道路に座り込んだ住民が実力で排除される事態に。以降、反対住民は態度を硬化させ、このダム計画が数十年も迷走する端緒となった。
県は、反対住民の理解を得ようと説得を続けたが、有効な対話は成り立たないまま、今日に至る。途中、公共事業削減の嵐が吹き、ダム不要論も台頭したが、この計画は生き残った。
今も公共事業に対する国民の視線は厳しい。
国民生活に資する基盤整備は今後も必要だが、無駄な出費は厳しくチェックされなけれぱならないし、過剰な環境破壊や政官業による不正が疑われる事業も当然許されない。
そのうえで、個々の必要性に対する国民の理解と支持がなければ、事業が持ちこたえることはできない。
事業主体は、慎重に丁寧に穏当に手順を進める必要がある。法に従って粛々と進めるだけでは不十分だ。
石木ダム計画は、その悪い見本のような経過をたどっている。
まして今後、強制収用という手法で、自分の家で生活を営んでいる住民たちを無理やり引きはがしてまで作業をするなど、現代の日本においてまともな光景ではない。
県は立ち止まってほしい。そして、出直してほしい。
佐世保市はどれぐらい水が足りていないのか、人口減少局面で水需要は将来どれぐらい増大するのか、本当に他の解決策はないのか、治水効果はどう発揮されるのか、反対住民と有効な対話ができないまま何十年も過ぎた責任はいずれにあるのかー。
40年の時間とコストをかけて完了しない公共事業が、それでも必要であることの説得力のある説明をし直したほうがいい。
「もう十分説明してきた」という答えが返ってくるのかもしれない。だが現実はどうか。
「石木ダムとは必要なのか」と疑問に思っている県民がいかに多いことか。県民にこれほど理解されない不幸な県事業をほかに知らない。
県は強硬手段をとる構えをやめるべきだ。手法の誤りは将来に禍根を残す。利害関係者との対話に失敗する代償の大きさは、国営諌早湾干拓事業を見れば分かる。
形は完成しても泥沼の裁判闘争が続き、対立がどこまでも終わらない悲劇の典型だ。
このダム計画でも、そうなることが分かっていて、手順だけを進めるのは合理的でない。(森永玲)
長崎)裁決申請、地権者反発 石木ダム用地巡り再び
反対地権者の家屋、土地を暴力的に奪おうとする長崎県の動きにストップをかけるため、世論を大いに盛り上げていかなければなりません。
(NHK 2015年07月08日 23時49分) http://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/5033176691.html?t=1436383914459

「なぜ議論拒むのか」 石木ダム、地権者ら怒り [長崎県]
(写真)裁決申請について説明し工事現場に入ろうとする県職員に背を向け、抗議を続ける地権者や支援者たち
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(毎日新聞長崎版 2015年07月09日)http://mainichi.jp/area/nagasaki/news/20150709ddlk42010308000c.html県と佐世保市が川棚町に計画する石木ダム建設で、県は8日、反対地権者4世帯の住宅を含む約3ヘクタールの強制収用に向け、県収用委員会に裁決申請したと発表した。石木ダム事業で家屋が裁決申請の対象になるのは初めてで、住民は反発を強めている。
県河川課によると、対象はダム本体の建設予定地で、現在は住宅地や農地として利用されている。県収用委は、審理で県や地権者らの意見を聞いた上で、土地の補償額や明け渡しの期日などを決める。県は同日、9世帯の住宅を含む約9ヘクタールについても、裁決申請に向けた手続きを開始した。
中村法道知事は8日の定例記者会見で、石木ダムの必要性を改めて強調し「地権者の理解を得て土地を譲ってもらうのが理想だが、現実にはなかなか難しい状況だ」と申請の理由を説明した。
朝長則男市長は「これまで約40年間の経緯、現在の地元の状況、工事工程など事業を取り巻くさまざまな状況を総合的に判断されたものと思う」とのコメントを発表した。
一方、対象用地の家屋で暮らす岩下秀男さん(67)は「必要のないダムのためにどうして家を強奪されなければならないのか。我々は自然豊かな古里で暮らしたいだけ。反対活動を継続し、この土地からてこでも動かない」と語気を強めた。
石木ダム事業は1975年に事業採択されたが、反対派住民と行政の対立で本体着工のめどが立たない状況が続いてきた。県収用委は先月、県の申請を受け、予定地内の農地約5500平方メートルについて10月末(一部を除く)までの明け渡しを求める裁決を出している。【小畑英介、梅田啓祐】
石木ダム 県が土地収用裁決申請
(読売新聞長崎版 2015年07月09日)http://www.yomiuri.co.jp/local/nagasaki/news/20150708-OYTNT50133.html県と佐世保市が川棚町に計画する石木ダム建設事業は、県が8日、反対地権者4世帯の家屋4棟を含む土地約3万平方メートルの収用に向けた裁決申請をしたことで、新たな局面に入った。県収用委員会による裁決後、地権者が明け渡しに応じなければ、家屋や土地の強制収用が可能になるが、地権者側は一歩も引かない構えを貫いている。
県河川課によると、申請内容は〈1〉土地所有権の移転は裁決から60日後〈2〉明け渡し期限は、家屋が同180日後、家屋以外は同60日後――など。補償額は約2億7000万円とした。
中村知事は記者会見で「地権者の理解を得て、円満な形で進めるのが理想」とする一方、ダム建設の必要性を強調し、「今後もしっかりと取り組んでいかなければならない」と述べた。行政代執行による強制収用の可能性については「現段階でその手法を排除するわけにはいかない」と含みを持たせた。
同市の朝長則男市長は裁決申請を受け、「事業の着実な進展につながると受け止めており、今後の状況を見守りながら、市の責務を果たしていく」とのコメントを発表した。
一方、反対地権者の1人で、今回の裁決申請の対象となった家屋で暮らす岩下秀男さん(67)は「ダムは利水、治水の両面で必要ない。反対運動を続け、何があろうとここに住み続ける。私だけでなく、地権者はみんな同じ気持ちだと思う」と語気を強めた。
地権者のリーダー格の岩下和雄さん(68)も「強制収用は許されず、内容を伴わないダム計画に反対していくことに変わりはない。ダムの必要性がなくなっていることは明白で、県はきちんと納得いく説明をするべきだ」と憤りをあらわにした。
「失うものは美しいもの」~パタゴニア辻井支社長が石木ダム反対訴え
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