水源連:Japan River Keeper Alliance

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石木ダム事業認定執行停止申立、却下!?

2017年4月9日
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3月30日、長崎地方裁判所が県側の主張を認め、申立を却下

この申立は、「事業認定の効力は,基本事件の本案判決が確定するまでこれを停止する。」の決定を求める申立でした。

事業認定執行停止申立は、事業認定がなされればそれに地権者が従わない限り行政代執行に至ることが確実であることを踏まえ、これに続く収用委員会による収用裁決・明渡裁決にストップをかけ、住居取壊し等の行政代執行を未然に食止めるための申立でした。
事業認定取消し訴訟係争中に無駄な石木ダム事業によって13世帯の皆さんが個々の生活と地域社会が破壊されることを未然に防ぐことを目的に据えた法的手段です。

この申立を裁判所は2017年3月30日に、「却下」しました。
極めて不当なことです。

この申立において長崎県がこんな反論(下に引用)をしていると決定書に記載されています。さらに裁判所は、石木ダムの必要性に何ら言及することなく、長崎県のこの反論を全面的に採用して却下を決定しています。

「損害の重大性について」
申立人らは,川原地区の地元住民が,川原地区で,人と人とのつながりの中で,土地の自然と恵みを享受しながら生活をし,その生活を続ける権利ないし価値を損害として主張する。しかし,土地収用法により土地を収用され,そこでの生活を営むことができなくなる不利益を直ちに人格権の侵害による損害であるというのは,土地収用法自体を否定するに等しく,上記の不利益は私有財産である土地を失うという財産的損害と評価されるにとどまる。そして,そのような損害は同法の規定に従い填補されることとなり,社会通念上,金銭賠償によって填補され得る性質のものである。」

この申立で、
①これが長崎県の基本的姿勢であること、②まったく不要な石木ダム事業遂行のために土地収用法を適用していること自体が13世帯皆さんの人格権侵害であること、③長崎県に「人格権権侵害を直ちに止めさせる」取組みが不可欠であること。
が明白になりました。

 

執行停止申立事件決定書( 申立人目録削除)

マスコミ報道

長崎新聞

各ダムの平成29年度予算と予算の推移

2017年4月4日
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2017(平成29)年度の各ダムの予算額がきまりました。

直轄ダムと水資源機構ダムの2017年度予算は、国交省のホームページ

http://www.mlit.go.jp/river/basic_info/yosan/gaiyou/yosan/h28/h28damyosan.pdf の予算案と同じです。

補助ダムの2017年度予算は、事業実施箇所(当初配分)

http://www.mlit.go.jp/page/kanbo05_hy_001112.html  の中に示されています。

例えば、石木ダムについては長崎県を開くと、最初に道路局の予算、次に国土保全・水管理局の予算が書かれていて、

石木ダムの事業費が5.88億円となっています。

 

石木ダムの最近5年間の予算の推移は次のとおりです。

2013年度 8.40 億円  2014年度 14.90億円  2015年度  9.20 億円  2016年度 1.20億円   2017年度 5.88億円

 

各ダムの2009~2017年度の予算の推移を整理しました。参考までにご覧ください。

直轄ダム・水資源機構ダムの予算(2009~2017年度)

補助ダムの予算 (2009~2017年度)

苫田ダムの治水転用「対応困難」 県広域水道企業団 国打診断る方針

2017年3月31日
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岡山県の直轄ダム「苫田ダム」の利水容量の一部を治水容量に転用する話がご破算になったという記事を掲載します。

苫田ダムといえば、地元の奥津町(現・鏡野町)に対して建設省等が行政圧迫を行って、ダム反対の町長が予算を組めないようにして3期にわたって辞任に追い込んだ強権行使の象徴的なダムです。

ダム反対の予定地住民に対しては子息の勤め先まで手を回して、翻意を迫ることまで行いました。

しかし、苫田ダムの必要性はありませんでした。

苫田ダムの水利権を持つ岡山広域水道企業団の水源構成は苫田ダム40万㎥/日、既得水源が9.3万㎥/日ですが、現在の1日最大取水量は10万㎥/日少しにとどまっています。

それも、岡山市などが自己水源の一部を企業団水に切り替えた結果であって、苫田ダムなしで水需給に不足をきたすことはありませんでした。

この記事では40万㎥/日のうち、10.5万㎥/日が買い手がないと書かれていますが、実態は責任水量制を岡山市等に押し付けたものであって、岡山市等は企業団の水を持て余しています。

余剰の利水容量を国が買い取って治水容量に転用する交渉が行われていましたが、買い取り額が5億円で安すぎるということでご破算になりました。

苫田ダムの治水転用「対応困難」 県広域水道企業団 国打診断る方針

(山陽新聞2017年03月30日 22時51分 更新)http://www.sanyonews.jp/article/509980/1/

苫田ダム(岡山県鏡野町)の利水容量を保有する岡山県広域水道企業団(県と関係17市町で構成)は30日、岡山市内で開いた運営協議会で、利水容量の一部を治水転用するため買い取りを打診している国に対し、「現時点では対応は困難」として断る方針を決めた。

国側の提示価格が低いことなどが理由という。

同企業団は31日にも国土交通省中国地方整備局に文書で回答する。ただ、国側から再度の転用依頼があった場合は再検討するとの内容も盛り込む。

苫田ダムの利水容量は日量約40万トン。このうち10・5万トンは買い手が付かず、県が調整水量として引き受けている。

同整備局は2015年8月、洪水調整に活用するため、11・7万トンを約5億円で買い取ると打診。

県と関係市町で協議を重ねていたが、約5億円で売却すると同企業団に約84億円の帳簿上の差損が生じることなどから、「国の買い取り価格が資産価格に見合わず、将来の企業団経営に悪影響を与える」「異常渇水が起きた場合に対応できるのか」といった慎重意見が出ていた。

二風谷ダム訴訟 判決20年 父から子へ「闘い」今も 権利回復、道半ば /北海道

2017年3月26日
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アイヌ民族を司法の場で初めて先住民族と認定し、国の事業認定と北海道収用委員会裁決をいずれも違法とした二風谷(にぶたに)ダム訴訟の札幌地裁判決があってから20年になります。

ダム本体が完成していたことを理由に、二風谷ダム建設差し止めの請求は棄却されましたが、先住民族と認定した判決は画期的でした。

その記事を掲載します。

なお、二風谷ダムは堆砂がひどく進行し、2015年3月末現在で堆砂率は総貯水容量の約4割に達しています。

溜まった泥の濁りがダムの下流域から河口沿岸域までおよび、シシャモの繁殖に多大な影響を与えているとされています。

「沙流川の今。2016年7月29日」 http://protectingecology.org/report/6462

土砂供給量が非常に大きい沙流川はダムを造ってはいけない河川であるにもかかわらず、現在、二風谷ダムの上流で平取(びらとり)ダムの建設が進められています。

二風谷ダム訴訟 判決20年 父から子へ「闘い」今も 権利回復、道半ば /北海道

(毎日新聞北海道版2017年3月25日 )http://mainichi.jp/articles/20170325/ddl/k01/040/232000c

アイヌ民族を初めて先住民族と認め、独自の文化への配慮を欠いた事業認定を違法とした二風谷ダム訴訟の札幌地裁判決から27日で20年。

父の遺志を継いで訴訟を起こした貝沢耕一さん(71)と、もう一人の原告でアイヌ民族初の国会議員、故萱野茂さんの次男志朗さん(58)が胸に抱くのは、先住民族としての権利回復は、道半ばとの思いだ。民族の誇りをかけた闘いは、父から子へと受け継がれ、今も続く。

差別の歴史問う

雪が残る3月上旬の、平取町二風谷地区。穏やかに流れる沙流川に、二風谷ダムの巨大な水門が立つ。「子どものころ、向こう岸の畑に行くための丸木舟がいくつもあった。川遊びもできたよ」。貝沢さんは、ダムができる前の思い出を語った。

住民の7割がアイヌ民族の血を引くとされる二風谷では1970年代からほぼ毎年、舟下ろしの伝統儀式「チプサンケ」を再現してきた。82年にダム建設事業が始まり、北海道開発局が進めた用地買収に対し、文化継承が途絶えるとして土地明け渡しを拒否したのが貝沢さんの父正さんと、萱野茂さんだった。

裁判で問われたのは、差別の歴史そのものだ。アイヌ民族は明治以降の同化政策でアイヌ語や固有の習慣、生活の基盤だった狩猟や漁労を否定され、北海道旧土人保護法により、不慣れな農業が奨励された。

森、本来の姿に

「政府にアイヌの声を届けたい」。92年に亡くなった正さんの言葉は今も、貝沢さんの胸に残る。97年3月の判決後、同7月に旧土人保護法は廃止、アイヌ文化振興法が施行された。

貝沢さんは現在、開拓の名の下に切り倒された森を本来の姿に戻そうと、山林を買い取り、木を育てるNPO法人「ナショナルトラスト・チコロナイ」の理事長を務める。チコロナイは「私たちの沢」を意味するアイヌ語で、萱野茂さんが名付けた。買い取った土地約30ヘクタールに、伝統的な衣服の材料になるオヒョウなどを植えてきた。

この20年で「若い世代がアイヌ文化に関心を持ち始めた」と変化を感じるものの、「民族の権利や生活を改善しようと裁判を闘ったが、状況は変わらない。振興法はアイヌの権利を一切うたわず、文化を博物館に押し込むようなものだ」と、貝沢さんは批判する。

アイヌ語伝える

大学進学後、東京で暮らしていた萱野志朗さんは、カナダの先住民族との出会いをきっかけに、民族の言葉の大切さに気付いた。故郷に戻って父の下で一からアイヌ語を学び、現在は「萱野茂二風谷アイヌ資料館」の館長を務める。

2006年に亡くなった父に代わって地元の小中学生にアイヌ語を教え、現在も大人向けの教室を続ける志朗さん。「アイヌ語を失えば、民族が長年培ってきた価値観や知識も伝わらない。子どもや孫の世代に文化をどう受け継いでもらうのか、アイヌ自身もビジョンを持たなければならない」と強調した。

政府施策、文化振興に偏り

海外で先住民族の権利を認める流れが広がる中、政府は二風谷ダム訴訟の札幌地裁判決から10年余り過ぎた2008年6月、官房長官談話で初めてアイヌ民族を先住民族と認めた。だが政府のアイヌ施策は文化振興に偏っており、先住民族としてのアイヌの権利は具体化していない。

1997年3月の札幌地裁判決はアイヌ民族を「わが国の統治が及ぶ前から北海道に居住し、なお独自の文化およびアイデンティティーを喪失していない社会的な集団」として、先住民族と認定した。

07年9月に日本も賛成して国連総会で採択された「先住民族の権利に関する宣言」は、先住民族に自決権や文化的伝統を実践する権利、土地や資源に対する権利などを広い範囲で認めている。

権利宣言の採択に加え、北海道洞爺湖サミット(08年7月)の開催を控えてアイヌ民族が海外からも注目されるようになったことが、政府にアイヌを先住民族と認めるよう求める衆参両院の決議と、決議を受けた官房長官談話につながった。

政府は白老町に整備する「民族共生の象徴となる空間」の基本方針を14年6月に閣議決定。20年の東京五輪・パラリンピックに合わせた国立アイヌ民族博物館の開館のほか、生活や教育を支援する新法制定も検討されているものの、民族の権利についての議論は深まっていない。

二風谷ダム訴訟で原告側弁護団長だった田中宏弁護士は「単なるハコモノ造りではなく、同化政策の歴史に向き合わなければならない」と語る。

恵泉女学園大の上村英明教授(先住民族論)は「過去の政策や歴史に理解を深めないまま、日本社会がどう責任を取るかが定まっていないため、権利が実現していない。行政主導ではなく、政治や司法の場でもアイヌ民族への政策を問い直すべきだ」と強調した。

■ことば

二風谷ダム訴訟

平取町の二風谷ダム建設を巡り、地権者である故萱野茂さんと貝沢耕一さんが北海道収用委員会に、土地強制収用の裁決取り消しを求めた行政訴訟。札幌地裁は1997年3月27日の判決で、アイヌ民族を司法の場で初めて先住民族と認定。ダム建設がアイヌ文化に与える影響について調査を怠り、アイヌ民族の文化享有権を軽視したと指摘し、国の事業認定と道収用委裁決をいずれも違法とした。ダム本体が完成していたことを考慮し、請求は棄却した。

韓国政府、4大河川の水質悪化を認定…「堰を開いて大量放流」

2017年3月22日
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韓国では李明博政権時代に4大河川事業漢江洛東江錦江栄山江の4大河川を浚渫して、堰を多数建設する事業)が進められ、生態系を大きく破壊したとされています。

この4大河川の水質悪化問題についての記事を掲載します。

 

韓国政府、4大河川の水質悪化を認定…「堰を開いて大量放流」

ハンギョレ新聞 2017/3/21(火) 17:20配信 )https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170321-00026845-hankyoreh-kr

国土部など「ダム-堰-貯水池連係運用」委託研究結果 2カ月以上放流すればアオコ現象に一部改善現れる 専門家「反復的なアオコ解決の本質的対策にはならない」 大量放流で魚介類の斃死など、また別の問題も

 政府がアオコで生態系が破壊されている4大河川の水質を改善するために、長時間にわたり堰の水門を開いて水を大量放流することにした。堰によって詰まっていた水を流れるようにするということだが、政府も4大河川の水質悪化の深刻さを認めたわけだ。だが、一時的な放流で毎年繰り返されるアオコを改善できるかには疑問が残り、水が抜けて魚介類の斃死などの憂慮も出ている。

国土交通部、環境部、農林畜産食品部は20日、こうした内容が含まれた「ダム-堰-貯水池連係運用方案」委託研究結果を発表した。今回の委託研究は首相傘下の4大河川事業調査評価委員会が勧告したものだ。委託研究はダムと堰から水を放流した時、4大河川の水質改善効果を調べた。堰の水位を「地下水制約水位」(周辺の地下水に影響を与えない水位)まで低くするなど、水を大量に長期間(74~121日)放流した時、洛東江(ナクトンガン)、錦江(クムガン)、栄山江(ヨンサンガン)のアオコが一部改善されることが明らかになった。水が持続的に流れれば水質が良くなるという話だ。

政府もすでに堰から大量放流できるように規定を変更した。堰の管理規定によれば、洪水や渇水を除いては常に管理水位(堰の最高水位)を維持するよう定めていたが、昨年12月にアオコなどの水質改善のために堰の水位を「揚水制約水位」(農業用揚水場の取水に影響を与えない水位)や地下水制約水位まで低くできるようにした。

だが、堰の水を大量放流するとは言っても、再び堰の水門を閉じればアオコの発生が繰り返される可能性が高い。一時的に水質を改善させることはできるが、川を蘇らせるには力不足だ。さらに大きな問題は、委託研究報告書の内容どおり、アオコを解決するために2カ月以上にわたり地下水制約水位まで水を放流することが現実的には難しいという点だ。国土交通部関係者は「雨が少なければ農業用水も不足しかねず、堰の水を長期間大量放流することは容易でない」と話した。

大量放流による弊害も解決を要する課題だ。今年2~3月に6個の堰を地下水制約水位まで低くして放流試験運用をしてみたところ、水位が低くなって一部地域では魚道が閉鎖され魚の移動が困難になった結果、魚介類の斃死の懸念も指摘された。こうした理由から政府は魚道16カ所、揚水場25カ所に対する改善が必要で、それには638億ウォン(約64億円)がかかると推定した。4大河川事業に22兆ウォン(現在価値で2兆2千億円)の予算が必要とされ、現在もなお毎年数千億ウォンの管理費が投入されているが、水質改善のためにもまた財政を使わなければならないということだ。

カトリック関東大学のパク・チャングン教授(土木工学)は「地下水が影響を受けない範囲まで堰の水位を下げるために大量放流するということは、水が流れてこそ水質が維持されるということを政府自身も確認したということ」としながら「これは4大河川事業以前に戻してこそ川を蘇らせることができるという意味」と話した。パク教授は「4大河川の堰のために悪化した水質を、4大河川の堰の水を利用して改善するということで、あまりにも呆れ返る状況」と付け加えた。

キム・ソヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

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