水源連:Japan River Keeper Alliance

水源開発問題全国連絡会は、ダム建設などと闘う全国の仲間たちのネットワークです

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「雨水の利用のための施設の設置に関する目標」と「雨水の利用の推進に関する基本方針」について

2015年3月11日
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3月10日、「国及び独立行政法人等が建築物を整備する場合における自らの雨水の利用のための施設の設置に関する目標」が閣議決定されました。
そして、国土交通大臣が「雨水の利用の推進に関する基本方針」を決定しました。
国交省のHPをご覧ください。
http://www.mlit.go.jp/report/press/water01_hh_000081.html
この閣議決定と大臣決定が実際にどの程度意味を持つのかはよく分かりません。
まず行われることは、「国及び独立行政法人等は、「最下階床下等で雨水の一時的な貯留に活用できる空間」を有する新築建築物において雨水利用施設の設置率を原則100%とする」ことのようです。

国土交通省

雨水の利用の推進に関する基本方針(大臣決定)について
平成27年3月10日 http://www.mlit.go.jp/report/press/water01_hh_000081.html
1.概要
  雨水の利用の推進に関する法律(平成26年法律第17号)第10条の規定に基づき、「国及び独立行政法人等が建築物を整備する場合における自らの雨水の利用のための施設の設置に関する目標」が、本日閣議決定されました。
また、同法第7条の規定に基づき、国土交通大臣は、「雨水の利用の推進に関する基本方針」を定めました。
詳細は別添を参照してください。
2.閣議決定日等
平成27年3月10日(火)
添付資料
報道発表資料(PDF形式)
概要(目標)(PDF形式)
概要(基本方針)(PDF形式)
国及び独立行政法人等が建築物を整備する場合における自らの雨水の利用のための施設の設置に関する目標について(PDF形式)
雨水の利用の推進に関する基本方針(PDF形式)

土丹層露出の相模川・三川合流点 被覆工事が完了(相模ダム、宮ケ瀬ダム等の影響)

2015年3月9日
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相模川の三川合流点で土丹層(軟岩)が露出し、その被覆工事が行われてきています。
土丹層露出の主因は、相模ダム、宮ケ瀬ダム等で土砂の流下が遮られたことにあると思います。これらのダムの堆砂は、茅ヶ崎海岸の砂浜喪失も引き起こしています。
土丹層露出の相模川・三川合流点 被覆工事が完了
(カナロコ by 神奈川新聞 2014年3月9日) http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150308-00130047-kana-l14
(写真)土丹の被覆工事が完了した厚木市側右岸
土丹層露出の相模川・三川合流点
厚木市内を流れる相模川の三川合流点付近の右岸で再露出した土丹層への応急措置として、県厚木土木事務所が進めてきた土砂の被覆工事がこのほど完了した。工事の実施は2度目。
前回の失敗を繰り返さないよう、新たにバイパス河道を設けて本川の流れを弱め、覆った土砂の定着を目指す。
同事務所は2012~13年度、土丹層が露出した厚木市側の河原、長さ約340メートル幅約40メートルの範囲に土砂約1万立方メートルを搬入して復旧工事を実施したが、昨夏以降、台風による増水などで半分程度が流出してしまった。
そのため、アユ漁が終了した昨年10月下旬から再度工事に着手。前回の教訓を生かして本川と並行する形で海老名市側に長さ約750メートル、幅約20メートル、深さ1~2メートルのバイパス河道をまず掘削。本川の水量を約3分の2に減らして浸食力を軽減させた。
今年1月からは、対岸の堆積土やバイパス河道掘削で発生した土砂など約8500立方メートルを土丹層の露出箇所に運び、覆った。費用は前回を上回る約4300万円を要した。
同事務所の相模川環境課は「今回は被覆土砂の流出対策を強化した。自然相手の工事なので試行錯誤の取り組みにならざるを得ない。効果の程度は今夏の台風の通過頻度にもよるが、引き続き保全状況を注視していく」と話している。
◆土丹層の露出問題
相模川、中津川、小鮎川が合流する地点から神川橋下流付近にかけて1998年以降、砂利の下にある土丹層(粘土層)が露出。過去の砂利採取、洪水による河床低下、ダム建設による流況の変化など複合的な要因とされる。
アユなど生態系への悪影響、景観や滑りやすいなど河川利用上の問題が懸念されているが、川岸の浸食が進行すれば堤防の安全性にも影響する可能性がある。抜本的な対策の実施に向けて国、県などが3月末までに土砂管理計画を策定する。

「環境政策を市民の手に」 4.6 日弁連シンポ へ!

2015年3月9日
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シンポジウム「環境政策を市民の手に~オーフス条約の実現に向けて~」

河川法16条の2で、「4  河川管理者は、前項に規定する場合において必要があると認めるときは、公聴会の開催等関係住民の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。」とされています。その措置として、公聴会やパブリックコメントが行われていますが、近年は批判的意見がその大半を占めていても何ら反映されることはなく、まったく無視され続けています。
このような、河川管理者による河川法16条の2の形骸化を食い止め、ダム等の事業計画の上位計画である河川整備計画策定に住民の意見を反映させることが、今の水源連の課題であることを総会で確認してきています。
政策決定に住民の意見を反映させるツール(システム)として、オーフス条約があります。 オーフス条約とは、「市民による環境情報へのアクセス・政策決定参加・司法アクセスを定めた条約」のことで、環境法の国際標準ともいえる条約です(日弁連HPより)。日本はこの条約を批准していません。
オーフス条約を日本に批准させることは、ダム問題・道路問題・湿地問題等に関わる私たちの重要課題です。

日本弁護士連合会が、「(オーフス条約が規定している事項について、)日本国内の現状がどうなっているのかを明らかにし、オーフス条約の基準を日本に導入することの必要性について検証します」という主旨で、シンポジウム「環境政策を市民の手に~オーフス条約の実現に向けて~」を下記の通り開催します。
皆さんも是非、私たちとこのシンポジウムに参加され、環境政策への住民参画を一緒に進めましょう。

日時 2015年4月6日(月) 18時00分~20時00分(開場:17時30分)
場所 弁護士会館17階1701会議室会場地図)(千代田区霞が関1-1-3 地下鉄丸ノ内線・日比谷線・千代田線 「霞ヶ関駅」B1-b出口直結)
参加費 無料
参加対象 どなたでも御参加いただけます(定員120名(先着順))

icon_pdf.gifチラシ(PDFファイル;657KB)

詳しくはこちら

 

ダム計画反対のデモ隊、警察の強制排除に絶叫 フランス

2015年3月7日
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フランスのダム問題についての新しいニュースです。このニュースは表題と動画だけで、内容が分かりませんので、昨年12月の解説記事も掲載します。

ダム計画反対のデモ隊、警察の強制排除に絶叫 フランス

AFPBB News 2015年3月7日(土)12時30分配信) http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150307-00010006-afpbbnewsv-int

(動画)
 【3月7日 AFP】フランス南西部のリル・シュル・タルン(Lisle-sur-Tarn)で6日、ダム計画に反対するデモ隊が警察に強制排除された。(c)AFPBB News

ダム建設反対と緑の党と欧州委員会 [編集]

(欧州連合ものがたり2014-12-17 00:27) http://euandjapan.blog.so-net.ne.jp/2014-12-17

今回は、環境問題です。 一国の政治に、EUがどういう影響を与えうるのかというのが今回のテーマです。
sivens.jpg
フランスで、10月から11月にかけて、連日大きなニュースになっていたダム建設問題です。 まずは、簡単に事件の概要を説明します。
フランスの南西部、タルヌ県にある湿地帯のテスク渓谷というところで、ダムの建設計画がありました。シヴァンス(Sivens)・ダムという名前で、
農業用水という名目でした。 最初の計画は1969年、現在の計画の形は1989年からのものです。
反対する地元民や環境保護の活動家は、長年闘い続けてきましたが、今年に入って軍警察が、反対する人々が居座っていた
テント・やぐらを、何度かにわたって強制排除を始めました。日本人の中には「成田みたい」という人もいます。
そしてとうとう10月25日、植物学を専攻している学生のレミ・フレスさん、21歳が、機動隊の手榴弾が
背中にあたり、即死してしまったのです。これを機に反対運動が激化、パリやトゥールーズでも反対のデモが起こり、逮捕者続出という事態になりました。
毎度のことながら、言いたいことがあるとちゃんと主張して行動するフランス人には関心します。
(国会周辺でのデモ活動について、「単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらないように思われます」と自分のブログに書いた有力政治家がいたそうですが、頼むから首相にならないでください。世界で日本が極右国家になったと思われてしまいます。日本人はおとなしいけど、言いたいことがあったらデモなどで行動するのは、世界の常識、特に民主主義国家の常識です)
年月が経つうちに、ダムという形での用水そのものの必要性が減じたという問題もあり、まるで長良川の河口堰のような事態になっています。 ロワイヤル環境大臣は、ダムの規模が35
パーセント過剰であり、共同利用できる貯水池をつくることを提案、計画の撤退にまでは言及していないものの、代替案を考えると発表しました。ちなみに、個人貯水池は、もうたくさんあります。 緑の党では、官憲の行き過ぎに対して、カズヌーブ内務大臣の辞任を要求する要人があらわれるなど、騒動になっています。
日本も同じですが、国、県、地元の利権、建設会社、農業関係者たちの利益が複雑にからみあっていますので、なかなか難しい問題です。
これがどう欧州連合と関係あるかといいますと、このダムは、2割程度、EUの農業援助が入っているのです。正確には「農村開発のための欧州農業基金」です。他は国や地方自治体などです。このようにEUがかかわってくるのは、全然珍しいことではありません。
建設反対派にとっては、EUの欧州委員会は「思わぬ味方」だそうで。なぜなら、欧州委員会がフランスに対して、EUの環境ガイドラインを侵害しているといって、違反手続き措置を始めるらしいからです。委員会の広報官は、「書類を調査しているところ」で、「まだ違反手続きのための段階には入っていない」と言ってますが。
なんでこうなったかと言いますと。 フランス南西部から選出されたエコロジストのCatherine Greze欧州議員が、もう2011年から5回にわたって、欧州委員会にこのダム建設に関して、質問をなげかけてきたからです。彼女は54歳、フランスのヨーロッパ
エコロジー緑の党に所属しています。そして、グローバル・グリーン・コーデイネーションにも所属しています。これは何かというと、2001年にオーストラリアのキャンベラで設立されたもので、一言で趣旨をいうなら「世界の緑の党が団結しましょう」というものです。 彼女は「もし欧州がフランスに対して違反手続き措置を始めるなら、欧州基金は補助金を停止し、計画は放棄されるでしょう」と言っています。
ル・パリジャン紙の情報筋によると、欧州委員会は2013年11月に、フランスに対して「水に関する欧州ガイドラインの要請が、このダム建設によって脅かされていないか」を確認するために、必要な情報を提出するようにすでに求めているそうです。 Catherine Greze欧州議員はさらに、2月24日にも、13ヘクタールもの湿地帯が破壊されるせいで、欧州の規範に完全に反するのだから、このプロジェクトは維持できないはずだと、欧州委員会に新たな質問をしたとのこと。 10月26日に若い学生が死亡したせいで、政府の判断で建設は停止されています。前述したように、環境大臣のロワイヤル女史は、3人の専門家を現地におくり、規模の調整をはかるか、ダム以外の別の方法をとるかを検討し始めています。
もしこれが日本だったら、時間が経って人々の関心が薄れるのを待って、再びぞろ利権がからむ人たちが建設をなし崩しに再開するでしょう。でも、フランスの場合、国内だけでも政権交代があるし、人々は日本人ほど大人しくないです。さらに加えて、緑の党の議員が欧州規模で訴えるという方法を駆使しています。世界規模だと、たかだかダム一つくらいは、もっと深刻な問題が多すぎて埋もれてしまうかもしれませんが、EU規模なら、十分効果があると思います。
さて、もし今後フランス政府が、EUから欧州委員会の署名入りの手紙を受け取ったら、公けにしなくてはいけなくなるでしょう。違反行為の最初の手続きとは、いわば訴訟の前段階になるわけです。もしフランス政府がEUの満足のいく返事をすぐに返せなかったら、欧州委員会は、EU裁判所にフランスを訴えることになります。ただでさえ難しい問題になっているのに、フランス政府がそんなリスクを侵すのかどうか。 環境の権利に詳しい弁護士によると、「欧州委員会は軽率にこれらの手続きに入ることは決してないので、もし本当にやるとなったら、もうダム建設プロジェクトはおしまいだろう」と語っています。
いつもいつも、国内問題は国内だけ、一国だけで解決し、せいぜい
アメリカ様の圧力を利用するしかない日本にとっては、「共同体」ということそのものが理解されていないと、常々感じています。共同体とは何か、どう一国の社会に影響を与えているのか、この記事で少しでも伝わるといいのですが。

エジプトなど3カ国、ルネッサンスダム運用方法で暫定合意

2015年3月7日
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ナイル川に建設予定の巨大ダム「ルネッサンスダム」について3カ国が暫定合意に達したという記事です。容量630億m3の巨大ダムです。
エチオピア大使館の情報、IPS  japan の関連記事も掲載します。
エジプトなど3カ国、ルネッサンスダム運用方法で暫定合意
(ロイター2015年 03月 6日 13:26 ) http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPKBN0M20AD20150306
[ハルツーム 6日 ロイター] – エジプト、スーダン、エチオピアの3カ国は、ナイル川に建設予定の「ルネッサンスダム」の運用方法で暫定合意に達した。エジプトのムガーズィー水資源・かんがい相が6日明らかにした。
ルネッサンスダムはイタリアのサリーニ・インプレジーロが建設を請け負い、発電能力は6000メガワットとなる見込み。ただ農業、工業から飲料までさまざまな水資源をナイル川だけに依存するエジプトがダム建設を懸念し、3カ国の外相と水利相がハルツームで3日間にわたり協議していた。
ムガーズィー水資源・かんがい相は「ルネッサンスダム運用の制度と仕組み、およびダムについての協力体制で原則合意した」と述べた。
またスーダンのカルティ外相は3カ国が「東ナイル盆地とルネッサンスダムからどう利益を得るかで原則的に合意した。今回の合意文書は3カ国の関係で新たな1ページになる」と述べ、今後は各国が合意を最終承認するとの見通しを示した。
(エチオピア大使館)
グランド・ルネッサンス・ダム http://www.et.emb-japan.go.jp/comp_photo%20for%20news%20articles/ci_5.pdf
①場所:スーダン国境から40km
②費用:4,000億円(48億USD)
③目的:発電用(他国へ売電し、灌漑には利用しない)
④発電能力:5,250MW(世界第10位)
⑤ダム湖容量等:面積1,680km2、容量630億m3
⑥工期:6年半
⑦設計・積算:イタリア・サリニ社
※資金調達法:建設国債発行(約1000億円発行済)
ディアスポラ、公務員、一般市民への購入を促している。
満期5年(金利5.5%)、満期5年以上(金利6%)の2タイプ。
利子配当1回/半期
ナイル川をめぐる激しいエジプト・エチオピアの対立
(IPS japan 2014年?) http://www.ips-japan.net/index.php/region/africa/2033-egypt-prepares-force-nile-flow-2
【カイロIPS=キャム・マグレイス】
昨年6月、エジプトのムハンマド・モルシ大統領(当時)が、エチオピアがナイル川上流で続けているダム建設に対抗して、「交渉のテーブルには全ての選択肢が用意されている」と述べた際、軍事介入まで示唆するのはジェスチャーに過ぎないと見られていた。しかし専門家の間では、エジプトは自国への歴史的な割当水量を巡る権益確保については本気であり、もしエチオピアがアフリカ最大規模になることが確実視されている水力発電ダムの建設を継続するならば、軍事介入のオプションもあながち排除できないだろう、との見方も出てきている。
エジプトとエチオピアの関係は、エチオピアが2011年に42億ドルをかけた水力発電用のグランド・ルネッサンス・ダム(貯水量:740億立方メートル)の建設に着手して以来、急速に悪化してきている。
エジプト政府は、8500万人の国民の水需要の100%をナイル川に依存しているため、上流に位置するエチオピアでこのダムが2017年に稼働し始めると下流への水供給量が減らされるのではないかと危惧している。エジプト水資源・灌漑省の当局者は、このダム建設によってエジプトはナイル川の水資源の2~3割を失うとともに、(自国のナセル湖の貯水量が減少するため)アスワンハイダムによる発電量の3分の1を失うことになると主張している。
一方エチオピア政府は、グランド・ルネッサンス・ダムの建設は、エジプトの割当水量に関してなんら悪影響はないと主張している。エチオピア政府は、このダムの優れた発電能力(概算で6000メガワット)により、ゆくゆくはエネルギーの自給を達成し、電力輸出で経済苦境から脱却することを企図している。
「エジプト政府は、ナイル川からの割当水量は、安全保障にかかわる問題だと見ています。一方でエチオピアにとって、建設中のダムは国家の威信の源(とりわけ1980~90年代に同国を襲った大飢饉からの再生の象徴)であり、これからの経済発展に不可欠なものなのです。」と戦略アナリストのアハメド・アブデル・ハリム氏はIPSの取材に対して語った。
エチオピアは昨年5月に水流の方向事業転換を開始し、エジプトの怒りを掻き立てることになった。エジプト国内では、一部の国会議員から、エチオピアが工事を中止しなければ、軍隊を派遣するかエチオピア現地の反体制勢力を支援するなどの策を取るべきだとの声も出てきている。
これに対してエチオピアは先月、軍関係者がダム建設予定地を訪れ、建設事業を守るために「代償を払う覚悟がある」と国営テレビに対して語るなど、事態はエスカレートの兆しを見せている。
エジプト政府は、大英帝国時代に締結された条約を根拠に、エジプトには少なくともナイル川の流量の3分の2を使用する権利があり、ダムや灌漑用水路の建設といった開発プロジェクトをナイル川上流地域で行うことに関して、拒否権を持っていると主張している。
英国が1929年に作成したエジプトとスーダン間のナイル川の割当水量に関する合意(1959年に改訂)は、ナイル川の上流地域にあたる国々に相談することなく締結された。
1959年の合意では、ナイル川の年間平均水量840億立方メートルのうち、エジプトが555億立方メートル、スーダンが185億立方メートルを利用できると定めている。残りの100億立方メートルは、エジプトが1970年代に建設したアスワンハイダムによってできたナセル湖で蒸発してしまう。他方で、ナイル川に接する他の9か国には何の権利も与えられなかった。
この取り決めは、ナイル川上流の国々に対して不公平な内容に見えるが、ナイル川以外にも水源として降雨を期待できる上流の赤道地帯に位置する山岳国家とは異なり、砂漠気候に位置するエジプトとスーダンは、ほぼすべての水需要をナイル川に依存している。
「ここまで危機感が高まっている理由の一つとして、このダムの建設によってエジプトの取水量が実際どの程度影響を受けるのか誰も知らないという現状があります。エジプトは全くナイル川に依存した国です。ナイル川がなければ、エジプトは存在しないと言っても過言はないのです。」とカイロにあるアメリカン大学(AUC)のリチャード・タットワイラー氏はIPSの取材に対して語った。
エジプトの懸念には正当な根拠がある。同国の「人口一人当たりの最大利用可能水資源量」は僅か660立方メートル(1700立方メートルが最低基準とされ、これを下回る場合は「水ストレス下にある」状態、1000立方メートルを下回る場合は「水不足」の状態、500立方メートルを下回る場合は「絶対的な水不足」の状態を表す:IPSJ)で、既に世界最低レベルにあるが、これから50年の間に人口が倍増しさらなる水不足が予想されている。
一方、ナイル川上流域の国々も人口増加の問題に直面しており、それに伴う農業用水や飲み水の需要をナイル川からの取水で賄おうという考えが魅力的な選択肢として浮上してきている。
2010年、エチオピア、ケニア、ウガンダ、タンザニア、ルワンダのナイル上流域5か国はエンテベ協定を結び、これまでの協定に代わって、他のナイル川流域の国の水の安全保障に「重大な」影響を与えないかぎり、ナイル川に関するあらゆる活動を認めると取り決めた。ブルンジも翌年、この協定に署名した。
エジプトは、この新協定を断固拒否した。しかし、これまで数十年に亘って貧しいナイル川上流域諸国に対する影響力を駆使して水利開発を抑え込んできたエジプト政府も、今やナイル川の水資源に対する支配権が失われていっている現実に直面している。
「エチオピア政府の行動は前代未聞です。かつてナイル川上流域の国が下流域の国の承諾を得ることなく一方的にダム建設に踏み切ったことはありません。もし、他の上流域の国がエチオピアの前例に続いた場合、エジプトは深刻な水不足に陥ることになるでしょう。」とカイロに本拠を置くアフリカ研究所(Institute for Africa Studies)のアイマン・シャバーナ氏は、昨年6月にIPSの取材に対して語っている。
エジプト政府はこの協定を「挑発的だ」として、グランド・ルネッサンス・ダムの建設が下流地域に及ぼす影響が明らかになるまでエチオピアに建設作業を停止させるよう国際機関に提訴した。エジプトの政府関係者は外交的手段による危機回避を切望する旨を表明しているが、治安当局筋によるとエジプト軍当局はナイル川に関する国益を守るためには軍事力を行使する用意ができているという。
ウィキリークスに掲載された軍事情報機関「ストラトフォー」からの漏洩された電子メールによると、2010年、ホスニ・ムバラク大統領(当時)はエチオピアによるダム建設を空爆で阻止する計画を打ち出し、スーダン南東部に出撃拠点となる空港を建設していた。
しかし、ナイルの問題に関してはエジプトの同盟国だったスーダンが2012年にグランド・ルネッサンス・ダムに対する反対を取り下げ逆に支援に回ったことで、エジプトは窮地に追い込まれている。
AUCのタットワイラー氏によると、ダム建設による自国への影響が最小限に止まると判断したスーダン政府は、むしろこの巨大プロジェクトがもたらす恩恵に着目しはじめたのだろうという。グランド・ルネッサンス・ダムが稼働すれば、下流地域の洪水制御や灌漑という点でもメリットが発生するうえに、エチオピアの電力需要を満たしたあとの余剰電力を、国境をまたぐ送電線を通じて電力事情が切迫しているスーダンに引き込めるメリットも期待できる。
また研究の中には、エチオピアにおける水力発電ダムを適切に制御すれば、洪水被害を軽減できるのみならず、エジプトが取得する全体的な取水量を増やすことも可能だとするものも出てきている。砂漠地帯にあるエジプトのアスワンハイダムよりもより涼しい気候のエチオピアのダムで貯水することで、太陽熱に奪われる河川の水量を大幅に抑制できるのである。
しかし、エジプト政府はグランド・ルネッサンス・ダムの貯水にかかる5年とも10年ともいわれる期間に、自国への水量割り当てが少なくなることに深い懸念を示している。この点についてタットワイラー氏は、「エチオピアが必要なのは電力です。水力発電ダムは堰き止めた水を通過させて初めて発電ができるのです。」と述べ、エチオピア政府がその期間に下流への流れを大幅に制限したり停止したりする可能性は低いと指摘している。(原文へ)
翻訳=IPS Japan

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