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ダム堆砂による海岸線後退の問題(神奈川県の酒匂川)( 2013年1月27日)
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ダムが引き起こす問題の一つとしてダムの土砂堆積(堆砂)によって下流への土砂供給量が減り、それによって海岸線が後退する問題があります。
この記事は神奈川県西部の酒匂川につくられた三保ダムによって、酒匂川河口付近の海岸線が150メートルも後退したという報告を取り上げたものです。
三保ダムは神奈川県営水道、横浜・川崎・横須賀市水道の水源確保を主目的にして神奈川県が建設したダムで、1978年に竣工しました。総貯水容量は6490万㎥です。
神奈川県東部でも、相模ダム等の堆砂による相模川河口部付近の海岸線の後退がだいぶ以前から問題視されてきています。
砂浜保全を考えよう、酒匂川の課題取り上げ専門家らが意見交換/小田原 (カナコロ 神奈川新聞社 2013年1月27日) http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1301260036/
砂浜の保全などについて話し合う「山・川・海の連続性を考える県民会議」が26日、小田原市城山の県立小田原高校で催された。同市などを流れる酒匂川の一部に土砂がたまる一方で、海岸線の砂浜が後退する課題などについて、専門家や漁業関係者らが意見を交わした。
県の主催で2回目。海岸浸食などの問題に、山と川、海を一体として対策を考える取り組み。前回の相模川に続き、酒匂川をテーマに行われた。
早稲田大学理工学術院教授の関根正人さんと、土木研究センター常務理事の宇多高明さんが基調講演。関根さんはダムが上流から流れる土砂をせき止めているメカニズムなどを紹介。
ただ「ダムの撤去は現実的ではない。ダムの存在を前提に代わる対策を考えることが大事だ」などと指摘した。
宇多さんは、土砂供給の減った酒匂川河口周辺の海岸線が約60年間で150メートル近く後退しているなど、西湘地域全般で砂浜の減少が進んでおり、今後もこの傾向が続く見通しを示した。その上で、近年の大型台風襲来による浸食や高波被害の状況を説明した。
討論会では、地元漁業関係者らが、「川よりも山の管理がされていないのが問題だ」「魚種が豊富だった昔の姿には戻れなくても、これ以上の悪化を防ぐ方法を考えねば」と指摘。
約250人が集まった会場からも「(下流部に)土砂が堆積して中州ができたり、川床が上がって少しの雨で避難勧告が出る場所がある」など対応を求める声が出ていた。
(写真)浸食のメカニズムなどを紹介する関根さん=県立小田原高校
全国のダム事業の検証状況(検証対象外を含む)
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2010年10月から始まったダム事業の検証により、問題ダム事業のほとんどは事業継続の方針が示されてきています。
事業推進の結論が先にある虚構の検証によって、必要性が希薄なダム事業に推進のお墨付きが次々と出ることは腹立たしい限りです。
今年度全国で事業中・計画中のダムについて検証対象外ダムも含めて、2013年1月26日現在の検証状況をまとめてみました。
どうなる?最上小国川ダム 県が仮排水トンネル事業を計画、漁協は反発(山形新聞 2013年01月25日)
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どうなる?最上小国川ダム 県が仮排水トンネル事業を計画、漁協は反発(山形新聞 2013年01月25日)http://www.yamagata-np.jp/news/201301/25/kj_2013012500656.php
公募委員を募集 川上ダムの検証・検討委 伊賀市(2013年1月23日)
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淀川水系の川上ダム計画を地元の三重県伊賀市が検証するための委員会の委員を公募しています。委員は学識経験者3人と同ダム建設促進期成同盟会1人、公募委員の5人の計9人を予定しているとのことです。学識経験者3人は宮本博司氏、千代延明憲氏、荻野芳彦氏です。いずれも淀川水系流域委員会でダムに対して批判的な意見を述べた方々です。この検証委員会に大きな期待を持つことができます。
なお、市長の岡本栄氏は元関西テレビのアナウンサーで、昨年9月に市長になりました
(毎日新聞伊賀版 2013年 1月24日) http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130124-00000214-mailo-l24◇利水について答申
本体未着工の川上ダム(伊賀市)について、岡本栄市長は23日、検証委員会の公募委員要項を発表した。検証委を2月上旬にも発足させ、利水面の必要性について答申を求める。
記者会見で岡本市長は「広くいろいろな立場の方の意見を聞きたい。主体は市民で、市政への参加意識をもってもらいたい」と公募の狙いを説明した。
公募委員の対象は、市内に在住か在勤、在学する20歳以上の男女で、5人以内とした。800字以内で「川上ダムに対する思い」をまとめ、提出してもらう。
◇5回ほど会合、治水の議論も
検証委は5人以内の公募委員のほか、学識経験者3人と「川上ダム建設促進期成同盟会」の1人で構成。3月末までに5回程度の会合を開き、利水面に限って岡本市長に答申する。
治水については「国、県の管轄のため」(岡本市長)、答申対象にはしないが、議論は自由とした。出席委員には、市の報酬規定に従い1回6000円が支給される。
応募・問い合わせは市公共事業対策室(0595・43・2326)。締め切りは31日。市ホームページ(www.city.iga.lg.jp)にも詳細を掲載している。【伝田賢史】
〔伊賀版〕
1月17日、「ダム検証のあり方を問う科学者の会」が「八ッ場ダムと利根川整備計画の要請書」を提出
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「ダム検証のあり方を問う科学者の会」が太田昭宏国交大臣に対して八ッ場ダムと利根川整備計画の要請書(科学者の会)(12kb)を提出しました。
代表の今本博健先生、川村晃生先生が提出し、国交省記者クラブで記者会見を行いました。
1997年に河川法が改正され、それまでの第16条「工事実施基本計画」が第16条「河川整備基本方針」、第16条の2「河川整備計画」の二つに分かれました。水系としての最終的な整備目標を定めるのが「河川整備基本方針」です。
この河川整備基本方針で治水整備最終目標安全度、基本高水流量(安全度に見合った潜在的最大流量)、計画高水流量(川に負担させる流量)、流量調整の必要の有無が判断されます。基本高水流量>計画高水流量の場合は洪水があふれることになるので流量調整施設が必要となります。具体的施設については河川整備計画に引継がれます。
20~30年のスパンで実際に河川を水系として整備することに関して定めたのが第16条の2「河川整備計画」です。具体的なダム事業計画はこの河川整備計画のもとに策定されることになっています。河川整備計画は環境の視点を加えて、その水系に詳しい人(学識経験者)、流域住民、自治体の意見を反映させて策定することとされています。詳しくは「河川法16条・16条の2 議事録含む」をご覧ください。
八ッ場ダム建設事業はこれまで「工事実施基本計画」に基づいて進められてきました。利根川水系河川整備基本方針は2006年2月14日に策定されましたが、利根川水系河川整備計画は策定されていないからです。河川整備計画策定が義務付けられたのが1997年なので、実にこれまで16年ものあいだ八ツ場ダム事業は本来の上位計画ナシで進んできました。1997年河川法改正時に「基本方針・整備計画策定までは工事実施基本計画をそれらとみなす」と附則が着いているので、利根川水系河川整備計画なしで八ッ場ダム建設事業が進んできたことは違法とは言えないかも知れないが、限りなく違法に近い脱法であることは疑う余地がありません。
環境の視点、流域住民との合意形成の視点等に重きを置いた利根川水系河川整備計画の策定は最早喫急の課題です。
八ッ場ダム事業を盛込んだ河川整備計画の策定が本体着工の条件とされていることから、関東地方整備局は何が何でも八ッ場ダムを同計画に位置付けることだけを目論んでいます。
私たち利根川流域住民は、多様な生物相を育み、水産資源豊富な利根川を蘇らせるべく内容=「利根川水系まるごとラムサール登録湿地」を利根川水系河川整備計画に盛込ませるべく取組みを進めます。