水源連:Japan River Keeper Alliance

水源開発問題全国連絡会は、ダム建設などと闘う全国の仲間たちのネットワークです

ホーム > ニュース

ニュース

水源連の最新ニュース

千曲川はなぜ決壊したのか(上) 弱かった堤防と河床掘削怠ったツケ

2020年2月27日
カテゴリー:

• 元朝日新聞記者の杉本裕明さんが書かれた「千曲川はなぜ決壊したのか(上) 弱かった堤防と河床掘削怠ったツケ』を掲載します。

千曲川はなぜ決壊したのか(上) 弱かった堤防と河床掘削怠ったツケ
• 杉本裕明
(エコトピア2020年2月26日)https://ecotopia.earth/article-3412/

(写真)千曲川の決壊箇所は、鉄の矢板が打たれ、水が入ってこないようにしている。外側の埋めた土を重機で掘り返している(長野市)。杉本裕明氏撮影 転載禁止
昨年10月日本列島を襲った台風19号は各地に大きな被害をもたらしました。長野県では千曲川が氾濫し、長野市や千曲市などの住民は川から押し寄せた洪水に苦しみました。
一瞬のうちに家を失った人。泥水をかぶり、りんご園が台無しになった農家。過去の教訓が生き、助け合いの精神が生きていたこの地域では地域住民がいち早く避難し、被害の程度の割に死者は5人と、他の地域と比べて少ない数字でした。
いま、避難指示の方法などソフト面での対策が声高に叫ばれていますが、被害を大きくした堤防決壊がなぜ起こったのか、どうすれば被害を防げるのか、利根川なども含めてハード面から考えてみました。
ジャーナリスト 杉本裕明


決壊現場では埋めた土砂を掘削

(写真)工事現場は立ち入り禁止だ。(杉本裕明氏撮影 転載禁止 )
10月13日午前4時15分。長野市穂保の千曲川の堤防が長さ70メートルにわたって決壊した。その現場は11月はじめに視ている。当時は決壊現場を中心に鉄の矢板が川側に二重に打ち込まれ、浸水と浸食を防いでいた。1月末に再度訪れると、矢板の陸側に盛った土を掘削していた。
「どんな作業をしているのですか」と訪ねると、国土交通省千曲川河川事務所の担当者は「堤防の本工事のために、緊急対策として盛った土を除去しているのです。これが終われば本工事に着手します」と答えた。
少し上流で犀川が合流する千曲川は、このあたりで川幅が1キロあり、ゆっくり流れているが、その少し下流に行くと、川幅が何段階にもわたって120や260メートルに狭まり(立ケ花狭窄部)、川の流れを阻害する要因となっている。その後、千曲川は新潟県に入ると、信濃川となって日本海に流れ込む。日本でも有数の大河川である。
河口部では、流れの一部を大正時代に完成した大河津分水路と呼ばれる人工河川に受け、洪水対策をしている。1992年から2014年にかけて水量を調節するための洗堰や可動堰の改築工事が行われ、今回の台風19号では「洪水を日本海へ流しきることができ、『越後平野の守り神』等多くの賞賛を受けた」(信濃川河川事務所)という。
しかし、その上流では、長野県の穂保地区で堤防が決壊し、その少し上流の上田市では堤防が削られて上田電鉄の鉄橋の一部が落下した。
治水史が専門で伝統的な治水工法の提唱者でもある大熊孝新潟大学名誉教授は、先の信濃川下流が守られたことを評価し、「治水事業を採点するならば、100点をあげたい」と言う一方、この上流の決壊にはこう酷評している。
「実は、かつて常襲的な氾濫地域で、1918(大正7)年以来改修工事が鋭意進められてきたところであり、新幹線車両基地があるなど千曲川沿線でとられるべき最重要地域である。そこが氾濫したという点では、残念ながら0点といわねばならない」(『都市問題』2020年2月号)


決壊の要因は?

災害の後、北陸地方整備局に千曲川堤防調査委員会が設置され、現地調査と決壊の要因分析が行われた。それによると、決壊や鉄橋の落下の主な要因は、川の水が増えて、堤防を乗り越え、さらにそれが堤防の陸側の斜面(裏法面という)を削り取り、堤防の決壊や欠損を招いたという。
筆者が穂保の決壊現場を見ると、堤防の陸側の斜面がえぐられ、桜堤が崩落していた。住民が言う。「地域の人々がよく散歩をしては桜並木を楽しんでいましたが、こんな姿になるとは。無残です」
堤防の直下にはいくつもの水たまりが残っていた。洪水が堤防を乗り越え、洗掘してできた跡である。
なぜ越水(川の水が堤防を乗り越えること)が起きたのか。その原因を探るために、委員会にこんなデータが提出されていた。一つはこの区域の河床の断面図の変化を示したものだ。決壊地点を含む約6キロにわたって、2000年から2018年にかけて、川底の高さに変化がなかったかを見ている。 もし、この間に上流から土砂が流れてきて堆積していればその分、水面の高さが高くなり、堤防を乗り越えてもおかしくないからだ。しかし、結論からいうと、ほとんど変化は見られなかった。もう一つは、澪筋(みおすじ)と呼ばれる河床のもう一つの断面図だ。これは川底の形状の変化を見たものだが、これも大きな変化はなかったという。
ただ、河床の高さについてよくみると、決壊のあった箇所はまったく変化がないが、その前後を見ると、過去に比べて盛り上がっているところや、逆に下がっているところがある。下がった箇所は掘削が行われたところで、盛り上がったところは堆積しやすいところで、掘削をしてこなかったと想像できる。
北陸地方整備局の河川整備計画にともなう資料では、決壊のあった箇所の掘削工事は2023年までに行うとあり、その前後の箇所は2014年から行い、終了済みとなっていた。千曲川河川事務所に聞くと、「河道整備は下流から行うのが基本だが、上流の千曲川でも随時行われてきた。しかし、それはもっぱら砂利採取業者に頼んでやってもらう事業だった」と言う。
これに対し、元東京都環境科学研究所研究員で、水源開発問題全国連絡会(水源連)共同代表の嶋津暉之さんはこう分析する。 「千曲川の狭窄地点で、国土交通省が設定している計画高水位(堤防などを作る際に洪水に耐えられる水位として指定する最高の水位)と、実際に洪水時に流れた時の水位をプロットしたものを比べてみると、計画高水位で想定した流量が流れると、実際の水位が計画高水位を上回ってしまうのです。つまり、想定した最大の洪水を安全に流せる川でなくなってしまっているのです。この原因を考えると、河床の浚渫(しゅんせつ)を適宜行ってこなかったとしか思えません。今回災害が起きたことを反省して、国はしっかり浚渫に取り組むべきだと思います」
大熊名誉教授も同意見だ。「(国土交通省のデータをみると)今回の最大流量は計画高水位を1・5メートル下回っていたと考えられるから、本来はあふれないはずである。それがあふれた理由は、土砂が堆積し、洪水を流す河道断面積が減少し、相対的に堤防が低くなっていたとしか考えられない」(前述)。千曲川河川事務所は「川底に生えた樹木も流れを妨げる要因になるので、掘削と共に取り組みたい」というが、どこをどれだけ行うのかははっきりしない。


決壊しない堤防はなぜできないのか

(写真)堤防の外側は、深くえぐれていた。堤防を越流した水が掘り返した結果だ。杉本裕明氏撮影 転載禁止
もう一つ、嶋津さんが指摘するのは堤防のもろさだ。千曲川河川事務所が、破堤した堤防の天端(「てんば」と読む。頂上部のこと)に設置したライブカメラを見ると、10月12日から流量が増え、13日午前0時55分に越水が始まったことを確認している。
さらに午前2時15分にカメラが倒壊した。千曲川河川事務所の職員が言う。「天端に電柱を立ててその上にカメラを設置して監視していましたが、越流で堤防の基礎が緩くなり、電柱がぐらぐらし、倒れてしまったのです」。これでは監視カメラの用をなさない。
ただ、長野市は、氾濫の危険性が高くなっていると、長沼や豊野などの千曲川沿いの地区に対し、12日午後6時に避難勧告を出し、午後11時40分には避難指示を出している。ある住民が言う。「この地域では避難訓練も行っており、住民が過去の経験から水害の怖さを知っていた。私も近所のお年寄りを伴い、一緒に避難しました。消防団も機能した。家とりんご園はだめだったけど、命は助かった」
(写真)堤防の改修工事は行われているが、洪水被害を受けた長野市長沼地区はこの通りだ。杉本裕明氏撮影 転載禁止
この堤防を見る限り、天端はアスファルト舗装をし、さらに幅4メールの桜堤が整備してあった。桜堤は、市民の憩いの場にするという意味合いもあるが、堤防を補強する役目もあった。しかし、今回の水害によって、桜堤は何の役にも立たなかったことがわかる。
この数年起きた洪水による堤防決壊の事例の多くで見られたように、ここでも洪水が堤防を乗り越えて堤防の陸側の斜面を崩し、崩壊を招いた。
2015年9月の鬼怒川水害では、鬼怒川が決壊し、多くの住民が犠牲になった。その反省から国土交通省が打ち出したのが「危機管理型ハード対策」だ。越水対策として、堤防を強化し、決壊までの時間を引き延ばすとともに、河道掘削を進め、流下能力(川を安全に流す)を向上させ、水位低下を図るという。
では、この方針に基づいて行われる堤防とはどんな構造なのか。 千曲川の決壊した箇所について、北陸地方整備局の堤防調査委員会に提案され、委員会が了承した堤防の補強策はハード対策として決められた補強対策で、▽天端のアスファルト舗装▽法肩(堤防の頂上と法面=斜面のこと=と接合部分)をコンクリートブロックなどで保護▽法尻(斜面と地上の接合部分)をコンクリートブロックで覆う▽川側の法面(斜面)をブロックなどで覆うことから成り立っていた。
国土交通省は今回の台風19号で、この堤防のハード対策が一定の効果をもたらしたと評価している。「台風19号による洪水では、荒川水系都幾川において、対策を実施した箇所において、初めて越水が発生したが、堤防の決壊には至らなかった。一定の効果を発揮したものと考えられる」(治水課)。ただ、都幾川の決壊した箇所の周辺を見る限り、土を盛っただけで、その上に細い道路があるだけに思える。 嶋津さんはこんな疑問を呈する。
「天端など一部分を補強しただけで、根本的な対策になるのでしょうか。その欠陥があらわとなったのが、2018年7月の西日本豪雨です。岡山県の高梁川支流の小田川が決壊し、多くの犠牲者を出しました。この小田川の決壊箇所は、堤防のハード対策をされていたところでした。このハード対策は、堤防の天端をアスファルト舗装しますが、陸側の斜面は強化されません。洪水が堤防を乗り越え、斜面を崩し、数カ所で決壊しました。国は中途半端な『ハード対策』でなく、越水しても破堤しにくい耐越水堤防の整備に一刻も早く着手すべきです」


耐越水堤防とは

嶋津さんが指摘した耐越水堤防は「フロンティア堤防」とも呼ばれる。実は旧建設省(現国土交通省)の土木研究所が開発した。陸側の斜面を遮蔽シートとコンクリートブロックで覆い、天端はアスファルト舗装、陸側の斜面と地面の接触部分をコンクリートブロックで固めたものだ。
このフロンティア堤防は、兵庫県の加古川や茨城県の那珂川など9河川で施工された実績がある。しかし、おかしなことが、国土交通省で起きた。
嶋津さんが語る。「建設省は2000年に『河川堤防設計指針第3稿』を出し、その中で耐越水堤防の普及を図るとしていましました。ところが、その後方針が変わってしまいました。2001年12月の熊本県の川辺川ダム住民討論会で、耐越水堤防を整備したらダムはいらないと住民から指摘され、耐越水工法を導入すると、ダムを推進できないと考えたのでしょうか。2002年に先の指針を廃止するとの通知が出されました。それ以来、耐越水堤防は国土交通省が認めない工法になってしまいました。」 「国土交通省の河川・ダム事業予算は約6,400億円あり、ダム関連はおおよそ3分の1あり、これを耐越水堤防の予算に回せば治水は大きく進む」
国土交通省は、都幾川で、ハード対策を行った箇所は決壊しなかったと明かしている。同じく決壊が3カ所にのぼった那珂川では、一部の区間で耐越水堤防が建設されたところがあり、見事に越水に耐えていた。だが、同省はそのことには一言も触れていない。
(写真)「堤防の強化と河床の掘削を急ぐべきだ」と提唱する嶋津暉之さん。八ッ場あしたの会提供参考・引用文献
『水源連だより』(2020年1月22日水源開発問題全国連絡会)
『都市問題』(2020年2月号)
『河川』(2020年1月号)
『科学』(2019年12月

2/13 「石木ダム強制収用を許さない! 東京行動」報告

2020年2月25日
カテゴリー:

2/13 3行動;「最高裁上告決起集会」、「厚労省と国交省へのヒアリング」「石木ダム強制収用を許さない!東京集会」   速報 

 「次回は4月2日予定」はコロナ禍で中止しました。

4月2日に予定していたヒアリング事項とその回答

いずれの回答も要点を外しているので、ヒアリングの機会を検討中です。

                    

長崎県の石木ダム建設のために、川原(こうばる)地区 13 世帯の人たちが住まいや田畑を強制収用され、ふるさとが奪われようとしています。
必要性のないダムのために、「強制収用」という人権侵害が行われています。

長崎県が無駄な石木ダム建設のために土地と住居を強引に収用し終えています。13世帯皆さんを暴力的に追い出す行政代執行(家屋の取壊し)は長崎県の手中にあります。一方、こうばるの住民とその支援者が事業認定は違法とその取消を求めて提訴したのが2015年。2018年4月の長崎地裁不当判決に次いで、昨2019年11月の福岡高等裁判所は行政の裁量権だけを認めるという、あまりにも酷い不当な判決を下しました。
こんなでたらめな判決を許さないと、2019年12月10日、上告しました。

「最高裁は司法の役割をキチンと守れ」、上告にあたっての決起集会を最高裁判所のお膝元、三宅坂小公園でもちました。全国から50有余名が駆けつけました。
決起集会では、これまでの訴訟経過から、あまりに説得力のない高裁判決なので従うことができない、行政の裁量権の名の下であのデタラメなやり方をそのまま認めているのでは司法の役割放棄でしかない。それにストップをかけるためには上告せざるを得ないとの説明でした。参加された皆さんも、石木ダムのやり方が許されるようでは自分たちも許せない、力をを合わせて勝ち抜こう、と決意を表明していました。

 

この日は、決起集会終了後に15時から、佐世保市が「水が足りない。水源開発を」と嘘ばかりついて進めている石木ダムへの水源開発事業に、その1/3の補助金を出している厚労省と、要りもしない石木ダム事業の治水面にその半分もの国費を出すと共に、強制収用への道を開いた国土交通省へに対して、「石木ダム事業の必要性を質す「公共事業チェック議員の会」によるヒアリング」を持ちました。
多くの国会議員が駆けつけて、「事実をしっかり見れば石木ダムが不要なことは分かるはず。こんな酷い事業に国の金を使うことは許されない。このようなダムで50年以上もコウバルの皆さんをダム漬けにしてきたのは重大な人権侵害。ダムの必要性について立ち止まって見直す、13世帯の皆さんが納得できる説明ができなければ、止めるしかないですか」と、長崎県と佐世保市に再考を促すよう話し合うことを厚労省と国交省に要請しました。

17時からは同じ会議室での「石木ダム強制収用を許さない!東京集会」を持ちました。

・川原地区 13 世帯の人たちの想いを伝えます。
・「石木ダムは不要!」、誰もが自信を持てます。
・「石木ダム不要! 私はこう思う!」、エールを交換しあいましょう。

そうなんです。石木ダムは不要! 石木ダム止めよ! をしっかり伝えあう会でした。

参加された国会議員の皆さんを初めとして、皆さん心からの思いを交わす場になりました。

この日の締めくくりとして、全員で行動宣言を採択し、「強制収用やめろ!」「石木ダムNO!」をかざしました。

ここも見てね!

0213 石木ダム強制収用を許さない東京行動報告 PDF 2.0MB
—3行動の報告です。息づかいが伝わっていれば良いのですが・・・・!
公共事業チェック議員の会 ヒアリング次第 出席職員名簿
20200213厚労省ヒアリング質問事項
20200213国土交通省ヒアリング事項
石木ダムは治水利水の両面で全く不要(嶋津さん報告)
「石木ダム強制収用を許さない!東京行動」宣言
「石木ダム強制収用を許さない!東京集会」配布資料集

当日の実況中継ビデオ4部作 一挙公開!!

当日の活動ビデオ記録、皆さんの想いがぎっしり詰まった記録です。

速報 緊急集会「石木ダム再評価」 3月1日 佐世保市中央公民館講堂

ご存知のように、佐世保市による石木ダム再評価は既に2回が終了し、次回は意見書のとりまとめになるだろうと思われます。
専門性も科学性も客観性も無い、まるで石木ダム推進委員会のような審議の有様に、傍聴された方は皆さん唖然としておられました。
しかし、残念ながら、このような現状を多くの長崎県民はもちろん、佐世保市民もほとんど知りません。
市民県民の知らない所で、形だけの再評価を済ませ、事業が強行されていきます。
結果、貴重な税金や水道料金が、人権侵害と自然破壊に垂れ流され続けます。
そんな現実を変えるには、やはり知る事、伝える事から始めるしかありません。
石木ダムの問題点を一番論理的にわかりやすく語ってくださる、水源連の嶋津さんに佐世保に来て頂き、今回の再評価の問題点をしっかり指摘していただくことにしました。また、2月13日の東京行動の報告なども合わせて緊急集会を開催することとしました。

水は足りない? 石木ダム推進、佐世保市の根拠は

2020年2月25日
カテゴリー:

佐世保市が石木ダムが必要だとする話は二つの虚構でつくられています。
一つは水需要が大幅に増加していく話、もう一つは水源が現状でも不足しているという話です。
水需要の実績が確実な減少傾向にあるのにもかかわらず、市は水需要が大幅に増加していくという架空予測を行っています。
もう一つの問題、保有水源について市は安定水源が許可水利権の77000㎥/日しかないとしていますが、実際には渇水時にも十分に使われている慣行水利権22,500㎥/日があります。
この佐世保市の水需給計画に疑問を投げかける記事を掲載します。

 

水は足りない? 石木ダム推進、佐世保市の根拠は
(朝日新聞長崎版2020年2月25日 9時00分)

石木ダムなくても水足りる? 佐世保市、今年度は安定水源の範囲で確保へ

2020年2月20日
カテゴリー:

石木ダムの水源が必要だとしている佐世保市水道の2019年度の一日最大給水量が73,690㎥/日にとどまる見通しであるという記事を掲載します。2018年度の一日最大給水量は77,968㎥/日でした。
佐世保市は安定水源が77,000㎥/日しかないと言っていますが、2019年度の一日最大給水量はその77,000㎥/日の範囲にも収まる見通しだということです。
正しくは浄水場でのロスを考慮しなければなりませんが、そのロス率として実績値の5%分の水量を加えても約77000㎥/日になり、市が言う安定水源の範囲にほぼ収まります。
実際には市が不安定水源としている28,500㎥/日のうち、23,500㎥/日は安定水源であって、近年の渇水年である2007年度の渇水期間中も市が言う安定水源と同程度の取水の安定性がありました。
これからは人口の減少に伴って、佐世保市水道の給水量がさらに減少していくことは確実です。給水量の減少で石木ダムの必要性がますます希薄になってきています。

 

石木ダムなくても水足りる? 佐世保市、今年度は安定水源の範囲で確保へ
市「安定供給必要」 反対派「人口減考慮を」
(朝日新聞西部本社 2020年2月18日)

 

耐越水堤防工法を検討し始めた国土交通省(「河川堤防に関する技術検討会」の配布資料)

2020年2月18日
カテゴリー:

2月14日に国土交通省で「第1回 令和元年台風第19号の被災を踏まえた河川堤防に関する技術検討会」が開かれました。その配布資料が下記の通り、国土交通省のHPに掲載されましたので、お知らせします。

今回の資料を見ると、興味深いところがいくつかあります。
資料2-1 河川堤防の現状 の10ページに被覆型の耐越水堤防(アーマーレビー、フロンティア堤防)の実施例(9河川)が示されています。ただし、「試験施工」となっています。

耐越水堤防工法の実施例(国交省検討会資料20200214)
この耐越水堤防は私たちがその普及を求めてきたものです。旧・建設省が一度は2000年に全国に耐越水堤防工法を普及させようと関係機関に「河川堤防設計指針(第3稿)」を通知したのですが、2002年になって、国土交通省がその通知を撤回し、その後は国土交通省が認めない工法となりました。
2001年12月に川辺川ダムの是非をめぐる住民討論集会があり、そこで、耐越水堤防を導入すれば、川辺川ダムは要らないのではないかと指摘されました。ダム推進のために耐越水堤防工法がお蔵入りになったと推測されます。

資料3-1 越水を想定した河川堤防強化にあたっての課題 の5ページで「越水を想定した河川堤防強化」として、被覆型の耐越水堤防工法が示され、「裏法面をシートやブロック等で被覆した堤防 100~150万円/m程度」という工費も書かれています。

私たちが1mあたり50~100万円と言っていたので、少し高めですが、大差はありません。
次の6、7ページに「コンクリート等の剛体により土堤法面を被覆した場合、沈下等による内部盛土の空洞化に対して、維持管理上 の注意を払う必要がある。」などの検討事項が書かれていますが、この工法に対して拒絶反応を示してきた従来の国土交通省の姿勢からみると、かなり変わったように思います。

台風19号による洪水では国管理河川の12箇所・県管理河川の128箇所で堤防決壊が発生したので、国土交通省も背に腹はかえられず、封印してきた耐越水堤防工法の検討を始めたように考えられます。
この耐越水堤防工法によって全国の堤防が強化されていくことを強く期待します。


令和2年2月14日 国土交通省 治水課

第1回 令和元年台風第19号の被災を踏まえた河川堤防に関する技術検討会の配付資料 http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/gijutsu_kentoukai/dai01kai/index.html

資料目次資料目次
• 議事次第
• 資料1-1 開催趣旨
• 資料1-2 規約、委員名簿
• 資料1-3 進め方
• 資料2-1 河川堤防の現状
• 資料2-2 国管理河川の決壊要因(堤防調査委員会の検討)
• 資料2-3 県管理河川を含めた決壊の要因や特徴の分析
• 資料3-1 越水を想定した河川堤防強化にあたっての課題
• 資料3-2 論点と検討の方向性

↑ このページの先頭へ戻る