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2020年「堤防決壊ラッシュ」の危機! 全国で放置される「ダム優先、堤防軽視」の利権構造が日本を沈没させる
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現河川行政の問題の本質を突く論考記事を掲載します。
2020年「堤防決壊ラッシュ」の危機! 全国で放置される「ダム優先、堤防軽視」の利権構造が日本を沈没させる
(週プレNEWS 2019/1/4(土) 6:10配信) https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200104-01104500-playboyz-soci&p=1
(写真)決壊した千曲川の堤防は、その後周囲に鋼板を打ち込む補強工事が施工され、昨年10月30日に仮堤防が完成した
正月早々にこんな話をするのもなんだが、もはやこう言うしかない。「日本の水害は人災だ」と。
昨秋、連続で襲来した大型台風のみならず、年々ヤバさを増す日本の水害。その中でも「堤防の決壊リスク」についてリポートする。
河川の洪水を水際で食い止める堤防の強化は、異常気象化の進む日本で水害から人命や財産を守るために絶対欠かせない。しかし、なぜか国の腰は重い。その裏には何があるのか?
■重大な欠陥があった千曲川の堤防
昨年10月12日、静岡県伊豆半島に上陸した台風19号は関東・東北・中部地方で71の河川と140の堤防を決壊させた。そのことについて、京都大学名誉教授で河川工学者の今本博健氏がこう話す。
「日本の堤防は土で造ることが原則になっています。そのため、外見はコンクリートでも中身は土です。しかも、堤防に適した土質で造られているとは限りません。実際には崩れやすい細かな砂で造られている場合もあれば、ゴミが交じっていることもある。
水位が堤防を越えてあふれる『越水』や、増水した川の激流で堤防の法面(のりめん=斜面)が削られる『洗掘』などで、簡単に決壊するというのが実情です」
だからこそ堤防はその兆候を察知する日常点検や、脆弱(ぜいじゃく)になった箇所の補強が重要なのだが、台風19号による大雨で千曲川(ちくまがわ・長野市)の堤防が決壊したケースでは「そこに見落としがあった可能性がある」と今本氏はみる。
千曲川を管理する国土交通省北陸地方整備局によると、10月13日の午前0時50分頃に、決壊現場付近の千曲川の水位は堤防の最上部に達し、約2時間後にはさらに水位が80cmほど上昇した。
今本氏の現地調査ではその後、「約1kmの区間にわたって川が越水」し、「あふれ出た水の勢いで裏法面(住宅側の斜面)が削られて堤防は見る見る痩せ細り、最後には裏法面が崩れる形で決壊が起きた可能性がある」という。
国交省や専門家の多くは「想定外の雨量が原因」と強調するが、千曲川の堤防には重大な”欠陥”があった。
千曲川を長年調査し続けてきた、長野市在住の中沢勇氏は、2013年に出版した著書『千曲川への遺言』(川辺書林)で千曲川の越水・氾濫の危険性を警告していた。中沢氏がこう話す。
「今回決壊した堤防付近は長年にわたって上流から運ばれてきた土砂が堆積(たいせき)し、河床(河底)が上昇していました」
堤防は本来、洪水時に川が氾濫する危険が最も高くなると想定される水位(計画高水位)から一定の余裕(余裕高)を持たせた高さで設計される。千曲川の余裕高は1.5mとされていた。
「しかし、河床の上昇で余裕高が低くなった。千曲川は越水・氾濫の危険性が増していたのです」(中沢氏)
現地を視察した今本氏もうなずく。
「国交省が公表しているデータから推察すると、千曲川の決壊現場付近では増水した川の流量が9000tになれば水位は計画高水位に達しますが、決壊時の流量は約8500tだった。
河床の土砂を取り除く掘削工事や堤防補強が万全であれば決壊は免れていたはず。ここに河川を管理する立場にある国交省に瑕疵(かし)があった可能性があります」
■こんなにもある”危ない河川”
河川の堤防は維持管理が不十分だと脆(もろ)さが出る。旧建設省(現国交省)の土木研究所の元次長・石崎勝義(かつよし)氏がこう話す。
「粘土層など軟弱な地盤の上に造られた堤防は、その重みによって圧縮され、年1、2cm程度のスピードでじわじわと沈下します。15年に決壊して多くの犠牲者が出た鬼怒川の堤防も、決壊箇所は数十年をかけて最大1m30cmほど沈下していました」
国(国交省)が管理する河川の堤防のなかで、洪水時に越水や決壊が予想される箇所は「重要水防箇所」として指定されている。堤防の高さが足りなかったり、堤防が痩せていたり、過去に法面が崩れたり、水漏れが発生したが、その対策が取られていない箇所がこれに当たる。
重要水防箇所は河川ごとに公表されているが、その数はゾッとするほど多い。
東京都を流れる多摩川の下流域では堤防の総延長105kmのうち、約50kmの区間で320ヵ所。大阪府を流れる淀川は74kmの堤防のうち16.6kmの区間で79ヵ所。徳島県を流れる吉野川と那賀川(なかがわ)では144kmの堤防のうち、およそ6割に当たる約88kmの区間が「重要水防箇所」とされていた。
今回、千曲川の堤防が決壊したエリアも高さ不足で重要水防箇所に指定されていた。さらに2018年7月の西日本豪雨でも3つの重要水防箇所で堤防が決壊。これが岡山県倉敷市真備(まび)町で約50名の死者を出す原因にもなった。
このように、河川の氾濫や堤防の決壊の”兆候”が放置され、多くの人命が犠牲になる被害が近年相次いでいるのだ。
ところで、水害から人命を守る日本の治水は大きく、ダム整備と河川整備のふたつに分かれる。河川整備には川の拡幅工事や河底の浚渫(しゅんせつ)、堤防の築造や改修などが含まれるのだが、「ダムの建設や補強に予算が優先的に回され、河川整備が後回しにされてきた経緯がある」(今本氏)という。
だが、ダムの治水効果は限定的だ。前出の今本氏がこう話す。
「台風19号のときは八ッ場(やんば)ダム(群馬県)が東京・荒川などの氾濫を防いだと見る向きもありますが、当時、八ッ場ダムは試験運用中でたまたま空っぽの状態でした。もし、通常運用されていたら緊急放流されていた可能性も否定できません」
そのダムの緊急放流には大きな危険が伴う。
一昨年の西日本豪雨では愛媛県・肱(ひじ)川の野村ダムが満杯になり、安全とされる基準の6倍の量を放流した。結果、下流の堤防が決壊して肱川が氾濫、8人が亡くなった。
この緊急放流に国交省は「操作規則どおりで適切だった」と言うが、今本氏は「その操作規則自体に誤りがなかったかを検証する必要がある」と指摘する。ちなみに当時、緊急放流の操作を行なった現場の職員3名は精神的なショックを受け、「現在も休職している」(今本氏)という。
だが一方で、ダムは大手ゼネコンに莫大(ばくだい)な利益を生み、誘致した自治体には補助金が、誘致に貢献した政治家には建設業界から多額の政治献金が還流される。ダムは国交省にとって欠かせない利権なのだ。経済誌記者がこう話す。
「その”うまみ”は堤防補強の事業とは比較になりません。例えば八ッ場ダムの場合、86年当初の基本計画の事業費は2110億円でしたが、01年には4600億円に倍増され、16年には当初額の2.5倍となる5320億円まで膨らみました。
国交省はコストが増えた要因を地滑りの安全対策(141億円)や地質の見込み違い(202億円)、工期の延長などと釈明しましたが、受注業者から地元選出の自民党議員や県議会議員に多額の献金が流れ、その献金業者の多くが談合も疑われる90%超の高落札率で工事を受注していた事実が明らかになった。
ダムマネーをめぐるこうした癒着構造は批判の的となり、民主党政権に代わってからダム事業は一時トーンダウンしましたが、第2次安倍政権下でジリジリと予算が増えていったんです」
前出の石崎氏がこう続ける。
「これまで東京都など一部を除く、ほとんどの県の土木部長のポストは国交省の役人の”指定席”になっていました。市町村でも、土木部の部長に国交省の役人が出向しているケースが少なくありません。現在は減りつつありますが、こうして”ダム最優先”の治水政策が行政の末端までコントロールされているのです」
総務省のデータを見ると、17年10月時点では岩手県、山形県、千葉県、福岡県、長崎県など17県で、国交省の役人が土木部門のトップに着任していた。
■堤防強化の特効薬はすでに存在するが……
国交省は来年度予算として、ダム整備(1834億円)とほぼ同額の1814億円を河川整備に投じる見込みだ。この数字を根拠に、国交省は「決してダム依存ではない」(治水課)と強調している。
だが、西日本豪雨や台風19号で被害を受けた被災地の復旧に予算が集中したことで、そのほかの地域の堤防補強など、重要水防箇所のカバーが遅れているのは否めない。
さらに、こんな問題もある。石崎氏が言う。
「国交省の河川整備、特に堤防の建設や補強の設計に無視できない問題がある。堤防は国交省の政令(河川管理施設等構造令)に基づいて設計され、そこには堤防満杯の水位ではなく、計画高水位までの川の圧力に耐えられるよう設計すれば良しとされているだけで、越水対策には言及すらしていないんです。これでは越水や決壊に関しては”国は責任を持てない”と言っているのと同じです」
近年は異常気象の影響で、想定を超える雨が長時間にわたって降り、河川の越水を封じ込め切れない事態が相次いでいる。
「日本における堤防決壊の7、8割は、川の水が堤防を越えることで引き起こされる『越流破堤(えつりゅうはてい)』。千曲川や鬼怒川で起きた決壊もこれが原因でした。やはり、日本の治水政策で、今重視しなければいけないのは堤防の強化です。しかし、国交省は堤防整備に関して驚くほど消極的なんですよ」(石崎氏)
その姿勢はこんなところにも表れている。実は、効果的に堤防を強化する工法はすでにいくつか存在している。
「そのひとつが『アーマー・レビー工法』です。堤防の裏法面は越水で簡単に浸食され、決壊に直結しますので、アスファルトやブロック、止水シートで被覆することで堤防全面を”防水化”させます。費用は1m30万円から50万円と、ダム建設に比べれば格段に安く整備が進められるものでした。
旧建設省時代の土木研究所で開発され、加古川(兵庫県)の堤防で実施した試験施工でその効果が実証された後、2000年に想定以上の雨で堤防が決壊する水害を防ぐ方法として、『フロンティア堤防』の名称で本格的に整備されることになりました」(石崎氏)
97年の建設白書によると、治水事業5ヵ年計画として「越水に対し耐久性が高く破堤しにくいフロンティア堤防の整備を進める」と明記されている。その内容は全国に通知されたという。
「その後、全国の河川で計250kmの整備が計画され、信濃川(新潟県、長野県)など計13kmで工事が行なわれました」(石崎氏)
だが、02年に突然、この事業は廃止された。
「熊本県の川辺川(かわべがわ)ダムの建設計画に反対する市民団体が、『これがあればダムなんていらないじゃないか!』と、フロンティア堤防を根拠にダム不要論を声高に訴えるようになり、これを数多くのメディアが取り上げた。
こうした世論の動きに、『ダム建設の妨げになる』と危惧した建設省河川局OBの横やりがあったんです。以後、建設白書や河川堤防の設計指針に明記されていたフロンティア堤防に関する記述はすべて削除され、計画自体が葬り去られてしまいました」(石崎氏)
効果的な堤防強化策はほかにもある。今本氏がこう話す。
「堤防内部に鋼矢板(こうやいた・鉄の板)を打ち込む工法もそのひとつ。東日本大震災のとき、偶然工事中だった水門の周辺の堤防に使われていたのですが、津波で周囲の堤防が全壊するなか、鋼矢板が打ち込まれた箇所だけは微動だにしなかった。
コストは1m100万円程度とアーマー・レビー工法に比べれば高いですが、それでも補強を決壊リスクの高い箇所に絞ればダム建設よりは安価に済む。現在、南海トラフ地震に備え、高知県では海岸や河川の複数の堤防強化にこの工法を採用しています」
しかし、高知県以外でこの工法を取り入れようとする動きはほどんどない。
国交省は15年の鬼怒川決壊を契機に再度、堤防強化に本腰を入れ、その手法は「危機管理型ハード対策」と呼ばれる、天端(てんば・堤防の上部)と裏法面の最下部の2点を補強するものだ。
「それでは不十分です。あふれた川の水で最も損傷を受けやすいのは堤防の裏法面で、ここが削られることが決壊に直結するのです。裏法面を補強しないことには意味がありません。実際、昨年の西日本豪雨ではこの危機管理型ハード対策で整備された小田川(岡山県)の堤防が脆くも崩れ去りました。
国はかたくなに、堤防強化で最も肝心な裏法面の補強をやりたがらない。本当に水害をなくしたいという思いがあるのでしょうか。水害が起きれば事業予算も増える。そのために意図的に堤防強化を軽視しているんじゃないかと疑ってしまうくらいに、国交省の河川政策はズレています」(石崎氏)
現在、国の治水政策は国交省の治水課が担っている。ダム事業も堤防強化事業もこの部署の担当だが、石崎氏の言う「建設省OB」は今も背後で治水行政を操る”裏ボス”的存在なのだという。
異常気象が深刻化するなか、日本の水害は予想がつかないほど凶悪化しているが、国の治水政策はダム利権にからめ取られて、進歩がない。今年、昨年よりも凶暴な台風や大雨が襲ってくる可能性は低くないし、もしそうなったら、このままではさらに多くの堤防が決壊するだろう。
取材・文/興山英雄 写真/時事通信社
「石木ダム 強制収用を許さない!東京行動12.24」の配布資料
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12月24日は既報の通り、「石木ダム 強制収用を許さない!東京行動12.24」として、国土交通省へ申し入れと国会議員会館での報告集会が行われました。
報告集会では私から「石木ダムは治水利水の両面で全く不要」というタイトルで講演しました。
その時の配布資料をは
12月24日石木ダム問題東京集会の配布資料(嶋津)のとおりです。
お読みいただきたいと思います。
石木ダム問題は切迫した状況になっていますので、地元の新聞、テレビには石木ダム問題が結構取り上げられていますが、石木ダムがいかに無意味なダムであるかということについてはきちんと報じられていません。
せいぜい、集会での報告のほんの一部が紹介されているだけです。
石木ダムがいかに無意味なダムであるかということが具体的に報じられれば、つまらないダムをつくって地元住民の生活を壊すなという声がもっともっと広がっていくと思います。
治水面では1/100の大雨に備えるために石木ダムが必要だと、長崎県は主張していますが、実際には、川棚川流域で1/100が大雨が降った場合、石木ダムで対応できるのは流域面積の4~5%に過ぎません。
利水面では佐世保市は渇水の到来に備えるために石木ダムが必要だと主張していますが、佐世保市は近年、水需要が大きく減少してきていますので(1994年度から2018年度まで23%減少)、過去の渇水が再来しても、十分に対応できる都市になっています。
佐世保市は今や渇水に強い都市になっているのであって、これからは人口の減少による水需要の一層の縮小により、ますます渇水に強い都市になっていくのですから、石木ダムは無用の長物です。
石木ダムがいかに無意味なダムであるかということを拡散してくださるよう、お願いします。
国交省に事業認定見直し要請 石木ダム問題 議連と市民団体
12月24日、石木ダム建設に伴う強制収用に反対する議員連盟と県民ネットワークが石木ダムの事業認定の見直しを求める要請書を国土交通省に提出しました。
その後、参議院議員会館で既報の通り、報告集会を開きました。
その記事を掲載します。
国交省に事業認定見直し要請 石木ダム問題 議連と市民団体
(長崎新聞2019/12/25 11:45) https://this.kiji.is/582399347918996577?c=174761113988793844
(写真)国交省の職員に事業認定の見直しを訴える炭谷さん(右)=国土交通省
長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設問題で、行政代執行による土地、建物の強制収用に反対する超党派の議員連盟と市民団体が24日、国土交通省に事業認定の見直しを求める文書を提出した。見直すに当たって2月末までに協議の場を設けることも要請した。
議員連盟によると、要請は当初、国交副大臣と面会し、文書を直接手渡す予定だったが、23日に国交省側から会えない旨の連絡があり、総合政策局の事務方が対応。連盟、団体は要請の際「対応を変えるのはおかしい」と抗議した。
要請文は赤羽一嘉国交相宛て。「住民との合意がないまま進められている強制収用は極めて深刻な人権侵害で、現代日本では到底許されない」とし、石木ダム建設の是非を再検討するべきだと主張している。
地権者の一人で川棚町議の炭谷猛さんは「事業認定を取り下げ、地権者13世帯を日本国民として認めてほしい。大臣に必ず伝えてほしい」と訴えた。
住民強制排除やめよ 長崎・議連と県民ネット 石木ダム建設見直し要請
(しんぶん赤旗2019年12月25日) http://www.jcp.or.jp/akahata/aik19/2019-12-25/2019122515_02_1.html
(写真)国交省の担当者(手前)に要請書を手渡す超党派の議員と県民ネットワークのメンバー=24日、東京都千代田区
長崎県と同県佐世保市が川棚町川原(こうばる)地区に計画する石木ダム建設に伴う強制収用に反対する議員連盟と県民ネットワークは24日、同ダム建設の事業認定を見直すよう赤羽一嘉国土交通相に要請しました。
要請書は、ダム建設予定地に住む13世帯を行政代執行で排除しようとする動きについて「極めて深刻な人権侵害だ」と指摘。2013年の事業認定そのものが現実に合わないとして「住民を強制的に排除して行うダム建設が本当に必要なのか、再検討すべきだ」と強調しています。
また、来年2月末までに議員連盟・県民ネットワークとの協議の場を設けるよう求めました。
赤羽氏や副大臣は応対せず、要請書は国交省の担当者が受け取りました。
要請後の報告集会では、水源開発問題全国連絡会の嶋津暉之共同代表が「石木ダムは治水・利水の両面で不要」と題して講演しました。
長崎県から3人の地方議員が参加。川原地区に住む炭谷猛・川棚町議(無所属)は「13世帯の誰もが川原での生活が一番いいと思い続けています。まだダムは影も形もできていません。中止させるまで頑張り続けたい」と力を込めました。
議員連盟のメンバーでもある日本共産党の田村貴昭衆院議員は「石木ダムは(当初の計画から)50年がたっても完成していません。全国に支援の輪を広げ、無謀な計画を断念させる運動を広げていきたい」と述べました。
石木ダム強制収用、苦悩する前町長 今秋、反対派団体に参加
長崎県川棚町の石木ダム問題で、町長在職中は事業を推進してきた竹村一義さんが、反対派の市民有志でつくる「石木ダム・強制収用を許さない県民ネットワーク」に加わりました。
その記事を掲載します。
石木ダム強制収用、苦悩する前町長 今秋、反対派団体に参加
(西日本新聞2019/12/24 6:00) https://www.nishinippon.co.jp/item/n/570772/
(写真)ダム用地の強制収用が可能になる事業認定を国に申請することについて記者会見する当時の金子原二郎長崎県知事(中央)。竹村一義さん(右)は川棚町長として同席した=2009年10月、長崎市
地域の人間関係分断招いた
長崎県川棚町の石木ダム問題で、町長在職中は事業を推進してきた竹村一義さん(72)が今秋、反対派の市民有志でつくる「石木ダム・強制収用を許さない県民ネットワーク」に加わった。ダム事業自体には反対ではないが、用地の強制収用が可能になった今、予定地で立ち退きを拒む13世帯を公権力で排除することには疑問を抱く。複雑な胸中を語った。
竹村さんは町議を経て、2002~10年に町長を務めた。事業主体の県と同県佐世保市が09年10月、土地収用法に基づいて、強制収用が可能になる事業認定を国に申請する際には、知事や市長と並んで記者会見した。「半ば無理のある話し合いをしてでも、早く解決させた方が地権者にとってよいのではないか」と考えていた。
それから10年間、反対住民と県が話し合う場はほとんどなかった。今年9月には法に沿って、予定地の所有権が住民から国に移った。県は住民を強制的に立ち退かせる行政代執行ができるようになり、両者の溝は深まるばかりだ。
県も09年当時は「話し合いを進めるための事業認定だ」と説明していた。「住民を説得できなかった力不足を、今となって強い権力に頼るしかないのか。あのときの説明に立ち返れば強制収用はできないだろう」
川棚町で生まれ育った。立ち退きを拒む13世帯の中には中学時代の同級生がいる。予定地から移転した住民にも知り合いがいた。狭い地域の人間関係は公共事業によって分断された。「ダム計画がなければ遭わなかった苦しみ」を知るからこそ、やり切れない。
ダム事業そのものには反対ではない。大規模化する集中豪雨被害や、佐世保市民が苦しんだ渇水を防ぐ効果はあると思う。それでも、強制的に進めるのは釈然としない。
9月、県民ネットワークに加入した。「『今更なんば言いよっとか』と言う人もいるだろうが、ささやかな意思表示だ」。町長退任後、石木ダム関連の取材に応じたのは初めてという。
中村法道知事は「強制収用は最後の最後の手段。その前にご理解いただける機会があれば、努力を重ねたい」と話す。だが、竹村さんは首をかしげる。これまで住民や県民が、理解できるような努力をしてきたのか疑問を覚える。
石木ダム事業が国に採択されて来年は45年になる。「いよいよダムができるところまできた、とは思わない。本当にできるだろうか」。探るように言葉を継いだ。 (平山成美)
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【ワードBOX】石木ダム事業
長崎県と同県佐世保市が、治水と市の水源確保を目的に、川棚町の石木川流域に計画。1975年度に国が事業採択し、総貯水量は548万トン。当初完成予定は79年度だったが、県は延期を繰り返し、今年11月には2025年度に見直した。県収用委員会の裁決に基づき、予定地で暮らす反対住民の土地や建物の所有権は国が取得。11月18日の明け渡し期限を過ぎ、県の行政代執行による強制収用の手続きが可能になった。福岡高裁は同29日、国の事業認定取り消しを求めた住民らの訴えを棄却した。
真備の住民ら 国や岡山県を提訴へ 治水対策など争点に損賠請求
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2018年7月の西日本豪雨で、大勢の方が亡くなる大水害を引き起こした小田川氾濫について、被災した倉敷市真備町地区の住民が国などを相手に損害賠償を求める訴えを起こし、来年3月に提訴します。
その記事をお送りします。
小田川氾濫の原因として最も重要なのは、高梁川の支川「小田川」の下流部への付け替えが1970年ごろに計画されたにもかかわらず、国土交通省がその付け替え事業を実施してこなかったことです。
付け替えの計画がされたので、小田川下流部は計画堤防高が現況堤防高よりかなり低いという異常な状態が放置されてきました。
計画堤防高は、達成すべき堤防高の高さであって、それが現況堤防高より低いのですから、堤防の嵩上げが行われない状態が半世紀も続いてきました。
小田川の付け替えを計画したものの、ずっと実施してこなかった国土交通省の責任は重大だと思います。
真備の住民ら 国や岡山県を提訴へ 治水対策など争点に損賠請求
(山陽新聞 2019/12/22 07:00)https://www.msn.com/ja-jp/news/national/e7-9c-9f-e5-82-99-e3-81-ae-e4-bd-8f-e6-b0-91-e3-82-89-e5-9b-bd-e3-82-84-e5-b2-a1-e5-b1-b1-e7-9c-8c-e3-82-92-e6-8f-90-e8-a8-b4-e3-81-b8-e6-b2-bb-e6-b0-b4-e5-af-be-e7-ad-96-e3-81-aa-e3-81-a9-e4-ba-89-e7-82-b9-e3-81-ab-e6-90-8d-e8-b3-a0-e8-ab-8b-e6-b1-82/ar-BBYelje
(写真)山陽新聞社 西日本豪雨で面積の3割が水没した倉敷市真備町地区=2018年7月9日
昨年7月の西日本豪雨で小田川と支流が決壊し、甚大な浸水被害を受けたのは河川やダムの管理が不十分だったためとして、被災した倉敷市真備町地区の住民が国などを相手に損害賠償を求める訴えを岡山地裁に起こすことが21日、分かった。小田川の治水対策や新成羽川ダム(高梁市)の事前放流の在り方などを争点とする方針で、来年3月にも提訴に踏み切る。
岡山県内の弁護士約20人でつくる「真備水害訴訟弁護団」が準備を進めており、年内をめどに原告団を立ち上げる。現時点で約30世帯が参加を表明。他に相当数の世帯が検討しており、弁護団が最終的な意向確認を行い、賠償請求額を確定させる。
弁護団によると、国が治水対策として今年11月に本格着工した小田川の付け替え工事について、約50年前にも付け替えが計画されていたが、実現しなかった経緯から「国は工事の必要性を認識しながら先延ばししてきた」と訴える予定。新成羽川ダムに関しては、豪雨の際に河川法を踏まえて事前放流を指示しなかったとして国を追及し、ダムを管理する中国電力(広島市)の運用責任も問う構えだ。
さらに、河川の流下能力低下を招いているとして地元住民が再三要望していた小田川中州の樹林伐採、堤防の切れ目を板などでふさいで流水を防ぐ設備「陸閘(りっこう)」の活用、豪雨の際の避難指示―などを巡り、国と岡山県、倉敷市の責任を指摘するとしている。
弁護団は昨年12月、真備町地区の被災者からの相談を機に結成。住民有志や防災を専門とする大学教授らを交えて決壊現場の視察を定期的に行い、賠償請求が可能かどうかについて検証を重ねてきた。
豪雨で真備町地区は町域の3割に当たる約1200ヘクタールが水没し、直接死で51人が亡くなった。弁護団長の金馬健二弁護士(岡山弁護士会)は「国や自治体に災害への備えができていれば防ぐことができた被害は多い。二度と同じことが繰り返されないよう、責任を追及していく」と話している。
岡山・真備の住民が国や県を提訴へ 西日本豪雨で浸水被害「河川管理やダムの運用に問題」
(毎日新聞2019年12月26日 21時44分) https://mainichi.jp/articles/20191226/k00/00m/040/301000c
(写真)堤防が決壊し(中央下)、街を濁流が覆い尽くした小田川=岡山県倉敷市真備町地区で2018年7月8日午前10時7分、本社ヘリから加古信志撮影
西日本豪雨(2018年7月)で浸水被害が起きたのは河川管理やダムの運用に問題があったためだとして、岡山県倉敷市真備町地区で被災した住民が国や県、市、中国電力を相手取り岡山地裁に損害賠償訴訟を起こす方針を決めた。提訴は20年3月になる見込みで、弁護団によると原告団には現在、約30世帯が参加の意向を示している。
真備町地区は、豪雨で1級河川・高梁川に流れ込む小田川や、その支流の堤防計8カ所が決壊し、地区の3割に当たる約1200ヘクタールが浸水。約5700棟が全半壊し、水死などの直接死で51人が亡くなった。
弁護団によると訴訟では、たびたび浸水被害に悩まされてきた住民が長年にわたって、水害の原因となる高梁川と小田川の合流地点を下流部に付け替えるよう要望していたにもかかわらず、国は先延ばししてきたと指摘。小田川支流の堤防強化工事が不十分だった上、切れ目を板などでふさぐ「陸閘(りっこう)」が適切に閉鎖されなかったなどとして、県や市の責任も問う。
また高梁川上流のダムについても、「豪雨に備え、事前放流をして水位を下げておくべきだった」として、所有する中国電力の運用責任も追及する方針。弁護団長の金馬健二弁護士は「今後、真備と同じことが各地で起きないよう、問題点を指摘したい」と話している。【林田奈々】