水源連:Japan River Keeper Alliance

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NHKクローズアップ現代 「豪雨被害を拡大!?あなたの町のダムは安全か?」

2019年7月11日
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NHKクローズアップ現代で7月10日(水)午後10時から
「豪雨被害を拡大!?あなたの町のダムは安全か?」の放映が行われました。
その放映の全文をNHKのHPで見ることができます。
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4306/index.html

私たちの命を守ってくれるはずのダム”。そのあり方が今、大きく問われている。去年の西日本豪雨で5人の犠牲者が出た愛媛県西予市では、ダムからの放流によって河川が急激に氾濫したことが被害の拡大につながった可能性が指摘されているのだ。取材を進めると、民間企業が管理するダムでは安全対策の議論が長年置き去りにされてきた実態も明らかに。今年も私たちに迫りくる豪雨の恐怖。“ダムがあれば安心”は本当なのか、水害から命を守るために今何が求められているのか、検証する。

※全国にある「放流量に制約があるダム」「堆砂による浸水のおそれがあるダム」のリストはこちらhttps://www.nhk.or.jp/gendai/kiji/146/index.htmlから
出演者
• 石井光太さん (作家)
• 武田真一 (キャスター) 、 高山哲哉 (アナウンサー)

豪雨被害を拡大?あなたの町のダムは安全か

被災した住民
「野村ダム始まって以来このような状態になっております。」
命を脅かす水害は、あなたの身近に迫っているかもしれません。西日本豪雨から1年。私たちの安全を守ってくれるはずの存在が、今、大きく問われています。
被災した住民
「ダムはやっぱり怖い存在でしかないです。凶器なんだなと。」
被災した住民
「野村も(ダムができて)だいぶ安全と言われて、すごく安心しとったんですけど。」
ダムにたまった水を急激に放流した結果、下流の川が氾濫し、住民が犠牲になったと言うのです。
高山哲哉アナウンサー
「水の代わりにたまっているのは、これ土砂ですよね。」
一方、極端に土砂がたまったダムは、大雨の度に洪水被害を引き起こしていました。取材を進めると、土砂により浸水を引き起こす危険性のあるダムは、全国にいくつもあることが明らかになりました。「私たちの命を守ってくれるはずのダム」。揺らぐ安全神話を検証します。
愛媛県南部、肱川(ひじかわ)流域に広がる野村町です。

野村町住民
「やばい、車が流されよった。怖いよー。」
ダムの下流2.5キロメートルにあるこの町では、放流からわずか20分で河川が氾濫、5人が犠牲になりました。あの日から1年がたつ今、住民たちは、ダムを管理する国に対して、改めて説明を求めました。
野村町住民
「こちらとしては、突然に(ダムの)放流で、その逃げる時間を奪われたと。ダムはやっぱり怖い存在でしかないです。私たちを守るものではなくて凶器なんだなと。」
国のダム担当者
「我々もルールというのは最初に決めて、それに基づいて操作をする。これを原則としていまして。」
あの日一体何が起きたのか?当時、野村ダムの操作にあたった責任者です。これまでにない大雨の予報に備え、ある準備を進めていました。「事前放流」と呼ばれる操作です。ダムにたまっている水を事前に減らし、容量を確保。その後、大雨が降っても、より多くの雨をダムにせき止めるようにするものです。
川西浩二 野村ダム所長
「大変な、これまでに経験のないような大洪水になる。びっくりしたというのが正直なところですね。」
夜になり、雨は激しさを増していきました。事前放流をしたにも関わらず、9時間後には、9割以上がたまってしまいました。
このままダムから水があふれると、施設が損傷、ダムをコントロールできなくなるおそれもあります。
それを防ぐには、「緊急放流」と呼ばれる操作を行わなければなりません。しかし、大量の水を一気に流すこの操作は、短時間で川の氾濫を引き起こすおそれがあり、最終手段とされています。
川西浩二 野村ダム所長
「誰も(緊急放流の)ボタンを押したくなかったと思いますよ。押したくないですけど押さなければいけない。」
7月7日午前6時20分、緊急放流を開始。下流の河川の能力を大幅に超える毎秒1,800トンを放流します。その頃、大雨は、ピークを迎えていました。
野村町住民
「さっきより(水位が)上がっとる。」
行政が避難指示を出してから1時間半。逃げ遅れた人たちが数多くいました。その1人、必死に屋根によじ登り、一命をとりとめた、小玉由紀さんです。

小玉由紀さん
「ほんの2~3分の間に何か水がドバドバと押し寄せてきとるし、どうして?という感じやったんです。」
近くに住む母のユリ子さん(享年81歳)です。「水に押されて扉が開かない」という電話の声が最後の言葉でした。
小玉由紀さん
「何でたったの2~3時間の放流というか、水で、こんなに死んだり、みんなの財産がぐじゃぐじゃと流れたり、みんな何か夢やったらいいのにねと言って。」
どうすれば、命を守ることができたのか?
河川工学の専門家は、「緊急放流」のタイミングを遅らせることで、被害を軽減できたとしています。野村ダムでは、事前放流した後も、すぐにダムがいっぱいにならないよう、少しずつ水を放流し、水位の上昇を抑えていました。その量は毎秒300トン。専門家は、この量を毎秒500トンに増やせば、より水位の上昇を抑えられたと指摘。これにより、理論上は、緊急放流を2時間以上遅らせることができ、住民の避難がより進んだとしています。
今本博健 京都大学名誉教授
「実際にそれができていれば、少なくとも住民の方は、あんな被害は出なかったと僕は思います。」
しかし、野村ダムには、こうした操作ができない事情がありました。平成7年に起きた梅雨前線による洪水被害。この時、およそ毎秒500トンの放流を行ったところ、野村地区のさらに下流域では堤防がなかったところもあり、氾濫が起きたのです。以来、堤防の建設が計画されましたが、完成までは、放流量を毎秒300トンに抑えることになりました。十分に治水の機能を果たせないまま、野村ダムは西日本豪雨を迎えることになったのです。
被害を防ぐために、一体どうすればよかったのでしょうか?
ゲスト 石井光太さん(作家)
武田:この野村町のケースですね、命を守るために何か方法はなかったんでしょうか。
高山:そうですね。今、言われているのが避難指示を出すタイミング、これも1つの重要なポイントでした。実はですね、野村ダムとしては自治体に、午前2時30分には緊急放流を避けられないというふうに伝達をしていたんですけども、自治体としては雨の中、大雨です。そして、暗闇の中、住民の皆さんに避難していただくのはちょっとちゅうちょがあって、実際に伝えたのは午前5時を過ぎてからだったんですね。住民の皆さん、もっと早く知っていれば逃げることができたのではという声も聞かれました。
武田:そうですよね。
高山:こういったことを受けて、実は今年(2019年)の5月に自治体では、伝達のしかたを変えました。これまでは、緊急放流が決定してから住民に伝えるというルールだったんですけども、新しいルールは、ダムを見極めて、より早いタイミングで住民に注意を促すという改善が図られています。
武田:実際に住民の皆さんに話を聞かれた石井さんはどうご覧になりました?

石井さん:そうですね。僕は、これは単なる自然災害だけではないと思っています。もともとダムというのは、治水を目的として、日本全国にたくさん造られていったんですよね。その中で、ダムがあれば安全だというダムの安全神話というものが、いつの間にかできていました。実際に今回被害に遭われた方々にお話を聞いても、「ダムがあったから、絶対うちは大丈夫だと思っていた」というような言い方をするんですね。
ただ、災害というのは、想定外の時に起きるわけです。そういった時に、安全神話が崩れる瞬間というのがあるんですよね。本来であれば、崩れた時にどうしなきゃいけないか、どうするべきかということを事前に決めておかなければならないのに、そういったことがほとんど決められてこなかった。放水した時にどういったような状況になってしまうのか。本来はきちんとやっていかなきゃいけないのに、そこの部分が抜けてしまっていた。
武田:下流の堤防の整備が進んでいないために、野村ダムの運用には限界があったと。ダムだけではなくて、川全体で治水対策をとっておくべきだったという話がありましたけれども。
高山:そうですね。国土交通省に確認をしました。野村ダムのように、川の下流の整備が終わっていないということを理由に、放流量に制約があるというダム、全国の国が管理している河川に17か所あるということでした。専門家は、こうしたダムは、本来の治水能力を発揮できないため、大雨の際、緊急放流により氾濫するリスクが高まると指摘しています。

武田:北海道から九州までかなり存在しているわけですけれども、こうした危機感というのはなかなか共有されてないですよね。
石井さん:これには行政の縦割りの問題もあると思います。例えば、なぜきちんと早めに避難指示を出さなかったのかとダムのほうに言っても、それは自治体のことだからと。あるいは自治体のほうに、なぜ事前放流をしなかったのか。これはダムの話だからと。でも、住民からすると縦割りがどうなっているかなんて、正直な話どうでもいいんですよね。考えなきゃいけないのは、ダムを造ったからには、ダムの側も、自治体の側も、あるいは県の側も、国の側も、すべて1つになってきちんと住民を守るという意識がどうしても必要になるし、そこの部分が欠かせないのかなというふうに思っています。
高山:そもそも、ダムというと、我々は命を守ってくれる治水ダムというものをイメージしがちだと思います。この治水のほかに、実は利水という、利水ダムとも言われますが、農業、工業、発電、生活用水など、水を確保する。我々に恩恵をもたらしてくれるという側面もあるんですね。この利水を重視してダム建設を進めてきたために、下流の河川整備が遅れてしまったのではないかと指摘する専門家もいます。
武田:この利水ダムの中には、電力会社などの民間企業が管理するものもあります。そうしたダムの災害時の対応を巡って、大きな議論が巻き起こっています。

去年(2018年)7月、岡山県で大きな被害が出た、高梁川(たかはしがわ)一帯。その上流にある、県内最大の中国電力・新成羽川(しんなりわがわ)ダム。今、それを巡って議論が沸き起こっています。先月(6月)開かれた、防災対策についての住民説明会。
高梁市住民
「事前に放流するわけ、前の日から。そうしたら、あそこまでならずに済んだんじゃないか。」
住民は、ダムが事前放流を行っていれば、下流に流れる水量を抑えられ、避難する時間も稼げた、と主張しています。
一方、中国電力は、そもそも発電や工場地帯に水を送ることを目的とする利水ダムは、事前放流など治水対策は義務づけられていない、と説明しました。
高梁市住民
「(昭和)47年も浸かりました。今回も浸かりました。」
これに対して、この地域の住民たちは、中国電力に対しては昭和40年代から繰り返し、事前放流を求め続けてきた、と応じました。
昭和47年、中国地方を襲った豪雨被害。この災害をきっかけに、治水義務のない民間ダムのあり方を巡って、国会の場でも大きな議論となりました。
当時、住民の代表として、国会で事前放流を求めた、国実明さんです。国実さんが問題視したのは、国の責任でした。実は緊急時は、国が民間企業に事前放流を指示できる、と定められた法律が存在します。
にもかかわらず、国がこれまで一度も指示を出すこと無く、豪雨被害が繰り返されてきたことに、やりきれない思いを感じています。

国実明さん
「なぜなんだと。またやったのか。なぜ直らないんだという、無念な気持ちというのがやはりずっと残っています。」
国は、なぜ事前放流の指示を出してこなかったのか。国土交通省の担当者は、民間企業の経営資源である水を、国が放出させるのはハードルが高い、と語ります。
空閑健 国土交通省企画専門官
「当然そこにお金も入るのかもしれません。事前に技術的な課題も含めてルールを作るというところが、今まで難しかったと。」
ダムの利水と治水、どう折り合いをつければいいのでしょうか?
石井さん:まず、利水なのか、治水なのかという議論がずっと行われているわけですね。どちらを優先するのか、あるいはどうバランスを取るのか。だけど、利水と治水ってよく考えてみると、利水っていうのはお金なんですよね。で、治水というのは命なんです。利水と治水っていう言葉でちょっとごまかされてしまっていますけども、やはり僕は、命かお金かというふうに考えた場合、命を優先する、それは当たり前のことだと思うんですね。
高山:先ほど映像でご覧いただいた中国電力の新成羽川ダムですが、ダムの目的は利水で、発電、それから、工業用水の供給など行っているものです。中国電力は今年の5月、去年の西日本豪雨を受けて、国の指示を待たずに、大雨が予想される時は事前放流をして、ダムの2割を治水のために空けるという方針を打ち出しました。住民は、2割じゃなくてもっとできるはずだというふうに声を上げているんですが、なぜ2割なのか、中国電力の担当者に話を聞きました。
吉岡一郎 中国電力 電源事業本部 部長
「もちろん技術的に下げることというのは可能ですけれども、実際に渇水になったときに、じゃあ誰が助けてくれるのかといったところを考えますと、やはり今回、設定した水位ぐらいがぎりぎりだろうというふうに思っております。」
高山:電力会社にとっては、実は水というのは大切な経営のための資源でもあるわけなんですよね。水がなくなってしまうと工場に水を供給することもできませんし、当然発電もできなくなってしまいます。そうすると、企業ですから大きな損失が生まれてしまいます。ある関係者は、具体的にいうと、億単位の損失につながるのではと話していました。こうした損失を誰が補償するのかも決まっていないという状況。
石井さん:例えば、自分でこれは危険だなと思って放流をしました。でも、予想とは違ってそこまで雨が降りませんでした。そして、経済的に大きな損失を出してしまいました。これは放流した側の責任になってしまうんですね。やはり国自体がきちんと、もしも放流してもいいよというのであれば、きちんとその補償を国が背負う、責任を背負うということは絶対しなきゃいけないことなんじゃないのかなと、僕は思っています。
武田:ダムが必ずしも安全を守ってくれるとは限らない実態を見てきたわけですけれども、取材を進めると、戦後、相次いで造られたダムの中には、今、深刻な危機に直面しているものもあることが分かってきました。
高山哲哉アナウンサー
「見えてきました。水の代わりにたまっているのは、これ土砂ですよね。」

山梨県にある「雨畑(あめはた)ダム」、民間の発電用ダムです。
1967年の完成以来、水と一緒に流れ込む土砂の堆積が進行。なんとダムの93%が土砂で埋まってしまいました。
高山アナウンサー
「こちらにはかつて使われていた吊り橋。もう私の膝下3~40センチくらいのところまで土砂が迫っています。」
一体なぜ、こうなったのか?ダムが川の水をせき止めると、水だけでなく、少しずつ土砂もたまっていきます。この現象を「堆砂」(たいしゃ)と言います。この堆砂が進みすぎると、川の底が土砂で上がり、ダムの上流が氾濫しやすくなります。

高山アナウンサー
「この辺りは、とにかく濁っていて流れが激しい。音も恐怖を感じます。」

この日は、2日で60ミリと平均的な雨の量でしたが、川はあふれる寸前でした。
そもそもダムは、100年間でたまる土砂の量をあらかじめ予想して設計されています。しかし、雨畑ダムでは、建設から50年たった今、すでに予想の2倍の土砂がたまっています。高いところから水が落ちれば発電できるため、土砂がたまったままでも、使い続けることが可能なのです。
今回NHKが取材したところ、たまった土砂による浸水のおそれを国が指摘しているダムが、全国に少なくとも35あることが分かりました。

そもそも堆砂対策は、ダムを建設する時にどこまで考えられていたのか?ダムの建設が盛んに行われた高度経済成長期、それを推し進めた元官僚の証言を聞くことができました。
元通産省水力課 佐山實さん
「(土砂が)溜まれば何か対策すればいいという考え方ですね。たまるから水力をやめたとか、あらかじめ対策するということになっていないですね。とにかく日本の経済を支えるエネルギー、日本の食料を支えるダム。当時はまず堆砂という問題はまあ二の次ですね。」
対策を後手に回してきた堆砂の問題は今、深刻な事態を引き起こしています。熊本県の瀬戸石ダムです。

去年の西日本豪雨。瀬戸石ダムの6キロメートル上流では、川が氾濫し、町へ続く道をふさいでしまいました。
防災無線のアナウンス
「速やかに避難を始めてください。」
このダムは、国から土砂による洪水被害の危険性を17年も前から指摘され続けています。ダム上流の地域には、川の氾濫を避けるため、2度もかさ上げする工事を行った建物もありました。

高山アナウンサー
「(室外機を)あれくらいのところに置かないとダメなんですね。」
上流地域で旅館を経営 島元敏典さん
「梅雨時なんか3日4日続けて降ったらもう一面川ですよ。」
こちらの女性は、2度にわたって高い場所へ引っ越しました。ダムを管理する電気事業者は責任を認め、かさ上げや家の移転費用を補償しています。住民は被害を完全になくすための土砂の撤去を求めていますが、その計画は示されていません。
上流地域で暮らす 中村絹代さん
「いつまでこの繰り返しやって、どこで止まるんだろうと思う。そういう運命なんでしょうね。」
限界に達するダムの土砂問題、どうすればいいのでしょうか?
武田:ダムに、水ではなくて土砂がたまることによって、人々の暮らしが脅かされる。実際に住民の皆さんに電話で取材されたそうですけれども、なんておっしゃってたんでしょう。
石井さん:日常的に問題が起きているほうが圧倒的に多いんだという言い方をしてました。どういうことかというと、本当に小さな雨が降っただけで、まず交通網が全部止まってしまう。しかも数日間単位で止まってしまう。あるいは、下に置いてある、駐車場に置いてある車を全部上のほうに上げなきゃいけない。たった1回雨が降るだけですよ。先ほどのVTRの中でも、諦めてしまうような言い方をしていましたよね。これは運命だということを言っていました。それは、彼女自身が何回も何回もやり続けて、そういった状況をある種受け入れてしまっている。悲しいことなんです。これは。
武田:受け入れざるをえない。
石井さん:受け入れざるをえない。だから、彼女はそれを嫌なんだけども、運命として考えるしか、たぶん方法はなくなってきてしまっているんですね。
高山:旅館を経営されている男性は、言葉を飲み込むようにぽつりと、長年言ってきたんだけどねっていうふうに目に涙を少し浮かべられて。何も言わずにその地を去った皆さんもいらっしゃるそうなんです。
武田:それにしても、土砂は取り除くことはできないんですか?
高山:重機とか、あと、特別な船を浮かべて取り除くということは行われています。取材をした熊本の瀬戸石ダムでも、昨年度は全体の8%ほどの土砂を取り除いているんですが、ただこれ、運んだり管理したり、あるいは処理したり。これ全部、民間のダムの新たな負担になってしまうんですよね。こうした状況の中で、民のダムに国が関与することで問題解決につなげていこうという動きもあるんです。こちらはですね、発電用の利水ダムなんですけど、この容量の6分の1を国が治水のために買い取りました。プラス堆砂の対策も、官民合同でこれからは対策をしていきましょうという動きが、今、始まっていて、これが新たなモデルになるかもと、期待もされているんです。

武田:今、各地で大雨が続いているわけですよね。もちろんこうした対策をどんどん進めるべきだとは思うんですけれども、今、起きている洪水のリスクに対して、住民の皆さん、どういうふうにこれに向き合っていけばいいのか。取材でどんなことを感じましたか?
高山:発電用の利水ダムのはずなのに、このダムのおかげで僕らは守られているんだよとおっしゃる方、何人もいらっしゃったんですよね。ですから、自分たちの身近にあるダムがなぜ安全なのか、危険性はないのか疑ってみて、いざという時に、ハザードマップがなくてもどんなふうに避難をするのかというシミュレーションを個々人がやる。自分の命を守るという取り組みをぜひしていただきたいというふうに思いました。
武田:石井さん、高度経済成長とともにダムが増えてきた。本当に巨大なインフラなわけですけれども、それが今、大きな問題に直面しているわけですよね。ダムの運用が刻々と今、変わりつつある社会の姿であるとか、あるいは地球環境に応じて、使い方や管理のしかた、変えていかなきゃいけないと思うんですけれども、どういうふうにご覧になりますか。
石井さん:ダムというのが安全神話だとか、経済神話の中で、高度経済成長期にいっぱいできたんですけども、それは今、ほったらかしになってしまっているんですね、極端な言い方をしますと。全部ダムの特色っていうのは違うし、ダムの持っている機能も違うし、その河川の、川沿いに住んでいる人たちの生活状況って全く違う。だからこそ、住民と自治体が国に任せるのではなくて、住民と自治体が1つになって、きちんと、このダムのどこが危険なのか、直すべきところがあるとしたらどこなのか、住民はどういうふうに意識しなきゃいけないのかということをきちんと考えて、情報を明らかにして、そして、それを避けるためにはどういうふうにすればいいのか。そういうことを1つ1つやっていかなければならないのではないのかなと。
高山:NHKで今回、取材でいろんなダムの状況というのを取材しましたので、その一部になるんですけども、今回番組を通じて、みなさんにお伝えしていこうと思っています。
武田:ダムの恩恵だけではなくて、これ以上の被害を生まないために、そのリスクですね。それも見つめていくべきだと。
石井さん:そうですね。
武田:そういう時に来ているってことですね。
石井さん:はい、そう思います。
武田:ありがとうございました。

ラオスのダム決壊1年 農業再開進まず 中国資本進出に農薬汚染の懸念も

2019年7月11日
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昨年7月にラオス南部でダムの決壊事故があり、死者40人が超え、1万人以上が被害を受けました。被災地の現状についての記事を掲載します。。

ラオスのダム決壊1年 農業再開進まず 中国資本進出に農薬汚染の懸念も
(Sankeibiz 2019.7.11 05:00( http://www.sankeibiz.jp/macro/news/190711/mcb1907110500005-n1.htm

死者40人超、1万人以上が被害を受けたラオス南部アッタプー県にあるダムの決壊事故から間もなく1年。ラオス政府は合弁事業で建設工事を担当した韓国大手財閥SKグループ傘下のSK建設などとともに被災者の救済に当たってきたが、いまなお多くの農民たちは家屋や田畑を失ったまま将来の見えない不自由な生活を余儀なくされている。一方、土砂で埋め尽くされるなど被害の甚大だった地域の周囲では、中国資本が土地の使用許可を得てバナナ農園の開設を表明するなど「復興」に向けた動きも始まっている。本格的な雨期のシーズンを迎えた6月下旬、被災地近郊を訪ねた。
(写真)アッタプー県で、田おこしのため水田に向かうポームさん一家。末っ子のプー君(手前)も喜んで手伝う。
(写真)未舗装路が続き、雨期になるとあちこちで寸断される

◆原因は人為的?
「この辺りは水の被害は少なかったけど、しばらくは田植えはできなかった。今、こうして農業ができることに感謝しているよ」。そう話すポームさん一家の水田は、決壊事故のあったチャムパーサック県パクソン郡の水力発電用ダム「セーピアン・セーナムノイダム」の下流、アッタプー県サナームサイ郡にある。同郡は最も被害の大きかった地域で、6つの村で7000世帯が家を失い、基幹産業である農業や林業は大打撃を受けた。ポームさんのように仕事を再開できた人は少ない。
事故は昨年7月23日夜に起こった。建設中だった同ダムが台風による増水であえなく決壊し、鉄砲水が下流の村々を襲った。翌朝までに7つの村が冠水し、田畑や牛、馬などの多くの家畜が流された。政府は国家緊急災害に指定。行方不明者の発見や被災者の保護に当たったが、今でも正確な死者・行方不明者数が分からないばかりか、被災に伴う精神的ショックや衛生面の問題から体調不良を訴える人は後を絶たない。
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地下資源や目立った産業を持たない内陸国のラオスでは、豊富な水を使った水力発電による電力輸出が国家総輸出額の3割を担う。2017年末現在で計46の水力発電所が稼働。なお54カ所が建設あるいは計画中だ。タイや中国へ電力を輸出するための送電施設も新たに50カ所以上で工事が進められている。セーピアン・セーナムノイダムによる発電事業では、タイのラーチャブリー発電が送電を担当。多くがタイに輸出されることになっていた。
決壊は当初指摘された「予想を超えた雨量が原因」(SK建設)ではなく、強度の不足など人為的なミスが引き起こしたとの見方が広がっている。ダム技術を通じて水資源利用の国際的指導的役割を果たしてきた国際大ダム会議(本部パリ)の独立専門家委員会は、SK側が主張してきた「天災」や「不可抗力」を否定する明確な見解を打ち出している。今後は人為性の具体的な検証が行われる。

◆強者が弱者縛る構図
一方、被害の大きかった6つの村では、いまなお土砂が住宅地や田畑を覆い、住民は仮設の住居などで先の見えない不安な生活を送っている。こうした中、中国資本がラオス政府から許可を得て、比較的被害の少なかった被災地周辺でバナナ農園を新設する動きが広がっている。被災した地元住民の雇用を名目としている。
このうち、サナームサイ郡ピンドン村では約2000ヘクタールの使用が新たに認められ、農園で働く労働者の募集が始まった。また、地理的にベトナム寄りのサーマッキーサイ郡にあるベトナム資本のバナナ園では、中国資本が参加して約3000ヘクタールだった農地を約1万ヘクタールにまで拡張する整地が続けられている。同地にはこれまでゴム園が広がっていたが、ゴムの国際価格の下落から転作が決まり、伐採されることになった。
こうしたバナナ農園では100~200人単位の被災した住民が新規で雇用されているが、多くの人々は応じようとはしない。彼らが求めるのは農業の再開であり、口々に懸念を示すのは中国式バナナ農法による汚染だ。稲作農家のポームさんも、そうした中国資本の進出を疑問視する一人。「中国の農法は農薬を多用する。その結果、土地は痩せ、われわれが住むこの地域の水は汚染が深刻化してしまう。われわれは農業を再開したいだけなのに」と語る。

ラオス南部のアッタプー県ではかつて砂金が取れ、ちょっとしたゴールドラッシュに沸いた時期があった。2000年代半ばのことだ。この時も、中国資本とベトナム資本が先を争うように現地に入り、川底の土砂をさらった。砂金1グラム当たり、掘り返される土砂は1トンにも上る。アッタプーの自然環境は激変し、周囲に住む村々では呼吸器や皮膚に異常を訴える子供たちが続出するようになった。
予期せぬ人災のダム決壊事故から1年。ようやく復興が始まったのもつかの間、現地の人々は中国やベトナム資本によるかつての悪夢に再び苦しめられようとしている。被災者の補償もほとんど行われていない。いつまでも続けられる強者が弱者を思いのままにしようとする構図に、国際社会はもう少し目を向けたほうがいい。(在バンコクジャーナリスト・小堀晋一)

魚類迷入試験が開始 霞ケ浦導水事業、那珂川から取水し影響検証へ

2019年7月9日
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霞ヶ浦導水事業の工事中止を求める裁判は昨年4月末に東京高裁で那珂川漁協と国土交通省との間で和解が成立し、漁業への影響がないようにする条件が和解条項に盛り込まれました。
国土交通省は7月2日、那珂川からの取水試験を行って、魚類への影響を調査することを下記の通り、発表しました。
那珂川から霞ヶ浦への計画導水量は15㎥/秒ですが、その導水路は一部しかできていないので、完成済みの桜川への導水路を使って3㎥/秒の規模で取水試験を行うというものです。

国土交通省・霞ヶ浦導水工事務所の発表 http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/dousui_00000034.html
魚類迷入試験(那珂川から桜川への試験通水)を開始します。

この試験通水が7月8日から開始されました。3年間の試験通水です。その記事を掲載します。
那珂川から霞ヶ浦への取水施設は半分程度しかできていないので、試験験水の結果を見て、取水施設の残りの工事に取りかかるという話になっています。
那珂川から霞ヶ浦への那珂導水路は1/3しかできていませんが(43.1kmのうち、14.2km完了)、那珂導水路の残りの工事を試験通水と並行して進めるので、導水事業の完成予定は今のところ、2023年度となっています。
導水事業の実際の完成はかなり遅れるのではないかと思いますが、東京高裁の裁判で那珂川の漁協が折角、和解に持ち込んだのに、事業がどんどん進んでいくようで、先行きが心配されます。

 

魚類迷入試験が開始 霞ケ浦導水事業、那珂川から取水し影響検証へ【動画】
(下野新聞2019/7/9 5:00) https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/192533

(写真)那珂川から導水した水を桜川に流す桜機場=8日午後、水戸市河和田町 (写真)魚類迷入試験が始まった那珂川取水口。完成した水門4門のうち、手前の2門から那珂川の水が取水された=8日午後、水戸市渡里町町(写真)魚類迷入試験が始まった那珂川取水口。完成した水門4門のうち、手前の2門から那珂川の水が取水された=8日午後、水戸市渡里町
(写真)那珂川からの試験通水が始まった取水口。魚類の吸い込み量などを調べる迷入試験が行われる=8日午後
茨城県の霞ケ浦と那珂川、利根川を地下トンネルで結び水を行き来させる霞ケ浦導水事業で、国土交通省霞ケ浦導水工事事務所は8日、水戸市渡里町の那珂川取水口から試験的に取水し、魚類の迷入(吸い込み)量やその対策の効果を調べる試験を始めた。事業は1984年の着工から35年を経て、那珂川から初めて取水する段階を迎えた。
和解後初の「意見交換」 国交省、魚類迷入試験など説明
同事務所によると、魚類迷入試験は水門8門からなる取水口のうち、試験のために先行整備した下流側の4門を使用する。3年程度かけて対策の在り方を検証した上で、2023年度末までに残り4門を含め事業を完成させる計画。
この日は午前10時半から午後4時まで、4門のうち最も下流側の2門から毎秒1・5トンを取水。地下トンネルを通り、約5キロ離れた桜機場(水戸市河和田町)まで運ばれ、桜川へ放水された。
今後は徐々に取水の頻度や量を増やし、8月末からは24時間単位などで取水する予定。漁協関係者が特に吸い込みを懸念するアユの仔魚(しぎょ)(幼魚)が降下する秋は夜間を含め取水し、どの時期や時間帯に取水を停止すれば吸い込みをより防げるか分析する。
事業を巡ってはアユなど那珂川水系の水産資源に悪影響を及ぼす恐れがあるとして09年、本県と茨城県の漁連・漁協5団体が取水口建設差し止めを求め、国を提訴。18年4月に和解が成立し、工事が再開した。
同事務所は「試験結果などを示し、漁協関係者の皆さまには引き続き丁寧に対応していきたい」としている。


茨城)魚類の吸い込み防止試験を開始 霞ケ浦導水事業

(朝日新聞茨城版2019年7月9日

 

霞ケ浦導水 那珂川から初の取水 魚吸い込み試験開始
(茨城新聞2019/7/9(火) 4:00配信) https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190709-00000003-ibaraki-l08

(写真)魚類迷入試験に伴い、水戸地下トンネルに初めて水を通した那珂川の取水口=水戸市渡里町
霞ケ浦と那珂川、利根川を地下トンネルで結ぶ霞ケ浦導水事業で、国土交通省は8日、那珂川から初めて取水した。取水による魚の稚魚などの吸い込み量を調べる「魚類迷入(吸い込み)試験」を開始し、那珂川と桜川を結ぶ那珂導水路水戸トンネル区間(6・8キロ)で水を通した。試験は月に数回ずつ、午前8時から午後6時までの時間帯に行う。1984年の建設着手から35年を経て、初めて那珂導水路に水が流れた。

同日午前10時半、水戸市渡里町に完成した那珂川の取水口が開門されると、直径約4メートルの導水管に水が流れ込んだ。同市河和田の桜川の放流口の水門も同時に開かれ、那珂川の水が桜川に勢いよく放出され始めた。初日の通水は5時間半行われ、水門は午後4時に再び閉じられた。

国交省関東地方整備局霞ケ浦導水工事事務所によると、事業計画水量は最大で毎秒3トンの導水だが、当面は1・5トン。9月に3トンまで増やす予定だ。

利根川・荒川水系水資源開発計画】リスク管理型へ見直し しかし、フルプランの役目を終わったので、廃止すべき

2019年7月8日
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7月4日に国土交通省の国土審議会水資源開発分科会利根川・荒川部会が開かれました。利根川・荒川水系の水資源開発基本計画(フルプラン)をリスク管理型へ抜本的に見直しして、今年度中に計画案をまとめることになっています。
この会議の内容を建設通信新聞が伝えていますので、その記事を下記に掲載します。

この会議の配布資料は国土交通省のHP http://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/water02_sg_000098.html に掲載されていますので、ご覧ください。

水資源開発促進法に基づき、全国で6指定水系(利根川及び荒川、豊川、木曽川、淀川、吉野川、筑後川)の水資源開発基本計画(水需給計画)(略称フルプラン)が定められています。この6指定水系ではダム等の水源開発事業に対してフルプランが利水面での上位計画になります。従来の6指定水系のフルプランは目標年次が2015年度であって、期限切れのまま、放置されてきました。水資源行政のいい加減さを示すものです。
なお、ダム等事業の治水面の上位計画は1997年の河川法改正前は各水系の工事実施基本計画、改正後は各水系の河川整備計画です。
今年の4月に、6指定水系の中でようやく、吉野川水系フルプランが2030年度を目標年次として新しくつくられました。6指定水系の中で新規のダム等の水源開発の計画が現在ないのは、吉野川水系だけですが、この吉野川水系の新フルプランが先につくられました。利根川・荒川水系では八ッ場ダム、思川開発、霞ヶ浦導水事業、豊川水系では設楽ダム、木曽川水系では木曽川水系連絡導水路、淀川水系では川上ダム、天ケ瀬ダム再開発、筑後川水系では小石原川ダムといった新規水源開発事業がありますが、吉野川水系では富郷ダムが2000年度に完成した後、新規の水源開発計画がありません。
吉野川水系に次いで、利根川・荒川水系のフルプランを新たにつくるため、今回、上記の国土審議会利根川・荒川部会が開かれました。
このフルプランの役目はとっくに終わっています。もともとは水需要の増加に対応するため、必要なダム等の水源開発事業を法的に位置づけるために水資源開発促進法が制定され、各指定水系のフルプランがつくられました。
しかし、1990年代になって都市用水の需要の増加がストップし、減少傾向を示すようになると、フルプランの内容が大きく変わってきました。水需要が減少傾向になると、実績と乖離した予測を行うにも限度がありますので、ダム等の水源開発事業はより厳しい渇水年に対応するために必要という内容に変わってしまいました。
そして、その後も水需要の減少傾向が続いていますので、これからつくるフルプランは既往最大渇水年を想定するということで、もっともっと厳しい渇水年を想定してつくられることになっています。
この既往最大渇水年を想定すると、国土交通省の計算では今進行中の水源開発を進めても、かなりの水不足になります。
国土交通省の資料を見ると、その水不足はソフト対策(節水機器の普及、節水意識の啓発、用途をまたがった水の転用、地下水の保全と利用、・・・)で乗り切るとしています。これを国土交通省はリスク管理型フルプランといっています。
しかし、このようなソフト対策で大幅な水不足を乗り切ることができるならば、新規の水源開発事業は元々不要であったという話になり、フルプランをつくる意味がなくなっています。
それでも、各指定水系のフルプランの改定作業が行われようとしている理由はフルプランを延命して、国土交通省水資源部の組織を維持することにあります。
水需要の減少時代になってから、フルプランの役目はとっくに終わっているのですから、水源開発促進法とともに各指定水系のフルプランは廃止されるべきです。

【利根川・荒川水系水資源開発計画】リスク管理型へ見直し 水資源開発の促進から水の安定供給に
[ 建設通信新聞2019-07-05 ] https://www.kensetsunews.com/web-kan/341193

国土交通省は、首都圏を流れる利根川・荒川水系の水資源開発基本計画をリスク管理型へ抜本的に見直す。年度内に計画案をまとめる。同計画は全国7水系で定めており、リスク管理型への見直しは吉野川水系に続いて2例目。定量的な供給目標量を設定してダムを整備するなど需要主導型で水資源開発を進めてきたが、国土審議会の2017年5月の答申を踏まえ、危機的な渇水などのリスクに対応する視点を加えて計画を変更し、「水資源開発の促進」から「水の安定供給」へ転換する。
4日に開いた国土審議会水資源開発分科会利根川・荒川部会に見直し方針を示した。利根川・荒川水系を見直した後、他水系でもリスク管理型への変更を進める。水資源開発基本計画は閣議決定案件。 需要主導型で策定した現計画は、発生頻度が比較的高い渇水時を基準に水の安定供給を目指す内容だった。リスク管理型の計画では、危機的な渇水など「発生頻度は低いものの、水供給に影響が大きいリスク」を供給の目標に追加する。定量的な供給目標量は設定しない。目標の達成に必要な対策はハードに加え、ソフトを位置付ける。計画期間はおおむね10カ年に設定し、PDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを導入。中間年に対策効果などを点検し、必要に応じて計画を見直す。
同計画は、産業と人口の約7割が集中する▽利根川水系▽荒川水系▽豊川水系▽木曽川水系▽淀川水系▽吉野川水系▽筑後川水系--の全国7水系で策定しており、利根川水系と荒川水系は1つの計画として定めている。利根川・荒川水系の現計画は、ハード対策に水資源機構が南摩ダムを建設する思川開発事業や、国土交通省の八ッ場ダム建設事業、霞ヶ浦導水事業などを位置付けている。
大規模災害や危機的な渇水など水供給を巡る新たなリスクの顕在化を踏まえ、国土審議会が17年5月にまとめた「リスク管理型の水の安定供給に向けた水資源開発基本計画のあり方について」の答申は、水供給のリスクへの対応や水供給の安全度を総合的に確保するための水資源開発基本計画とすることを求め、ハードに関しては既存施設を徹底活用すべきとした。
これに沿って先行してリスク管理型へ見直し、4月に閣議決定した吉野川水系の計画は、ハード対策に早明浦ダム再生事業を新たに盛り込んだ。

西日本豪雨1年 ダムが水が怖い 愛媛・西予、緊急放流で集落浸水 「再発防止策不安」残ったのは数世帯

2019年7月8日
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昨夏の西日本豪雨では野村ダムの緊急放流によlり、肱川が氾濫し、西予市野村町地区で5人が亡くなりました。「「天災ではなく人災だ」との思いは被災者から今も消えない。ダムの操作規則が変更されるなど、ハード・ソフト両面で対策が進んだが、不安を拭えずにいる」という被災者の声を伝える記事を掲載します。


西日本豪雨1年 ダムが水が怖い 愛媛・西予、緊急放流で集落浸水 「再発防止策不安」残ったのは数世帯

(毎日新聞大阪夕刊2019年7月8日) https://mainichi.jp/articles/20190708/ddf/007/040/010000c

西日本豪雨でダムの緊急放流後に肱川(ひじかわ)が氾濫し、5人が亡くなった愛媛県西予市野村町地区。「天災ではなく人災だ」との思いは被災者から今も消えない。ダムの操作規則が変更されるなど、ハード・ソフト両面で対策が進んだが、不安を拭えずにいる。【中川祐一】

三島町集落
四国地方が梅雨入りした6月26日。久しぶりに雨が降る中、小玉由紀さん(60)は自宅の前を流れる肱川を見つめていた。「また、どばっと雨が降ったらどうなるんやろう」
昨年7月7日午前6時20分。集落上流にある野村ダムが貯水の限界に達し、国土交通省野村ダム管理所は流入量とほぼ同量を放流する「異常洪水時防災操作」を実施した。川の水位は急上昇して集落はあっという間に濁流にのみこまれ、小玉さんの母ユリ子さん(当時81歳)も亡くなった。

(写真)新たに設置された危機管理型水位計。橋の向こうに三島町の集落がみえる。豪雨以前は川沿いに家が建ち並んでいた=愛媛県西予市野村町地区で2019年6月28日、中川祐一撮影
国は6月、野村ダムなどについて大雨の初期段階で放流量を増やすなど操作規則を変更。小玉さんの家の前の橋には同月、ダム管理所などがきめ細かく水位を把握するため新型の水位計が設置された。
ただ小玉さんは「電光掲示板などで放流量をもっと簡単に分かるようにしてほしい」と話す。どれだけ川の様子に気を配っていても、大規模放流があれば一気に水位は高くなる。それが西日本豪雨から得た最大の教訓だ。
小玉さんの家がある三島町集落ではすべての家が浸水被害を受けた。国の「防災集団移転促進事業」を使い全住民が高台などへまとまって移ることも検討されたが、反対意見もあって立ち消えになった。
集落に残ると決めているのは数世帯にとどまる。仕事場のある別の町に妻と引っ越すことを考えている建築業の男性(67)は「ダムがあるから安心と思って家を建てたが、もう水が怖い。住民説明会に行ってもダム管理所は言い訳ばかり。聞いてもしょうがない」と胸の内を明かす。
多くの人が今も仮設住宅で暮らしているため、集落には更地や空き家が目立つ。「以前は夏の夕方になると、風が通る橋に自然と人が集まってみんなで涼んだ。ずっと続くと思ったのに……」。小玉さんがさみしそうに言った。

(写真)更地が目立つようになった三島町集落を歩く小玉由紀さん=愛媛県西予市野村町地区で2019年7月8日午前9時53分、中川祐一撮影

 

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