水源連:Japan River Keeper Alliance

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北海道・沙流川の平取ダムが運用開始 二風谷ダムは堆砂が凄まじく進行

国土交通省が北海道の沙流川(さるがわ)支流の額平川(ぬかびらがわ)に建設していた平取(びらとり)ダムが完成し、7月1日から運用が開始されました。

官報  平取ダム建設完了の告示20220701

沙流川には河口より約21キロメートの位置に二風谷(にぶたに)ダムが1998年に造られました。両ダムの位置は下図の通りです。総貯水容量は二風谷ダム3150万㎥、平取ダム4580万㎥です。

(沙流川総合開発事業  https://www.hkd.mlit.go.jp/mr/sarugawa_damu/tn6s9g0000000zll.html

二風谷ダムはアイヌ民族を司法の場で初めて先住民族と認めた札幌地裁判決の対象となったところです。

(「二風谷ダム判決25年 先住権回復足踏み」https://suigenren.jp/news/2022/03/28/16032/

沙流川におけるダム建設の重要な問題は、土砂供給量が非常に大きい河川であるので、ダムが速いスピードで流入土砂で埋まっていくことです。

二風谷ダムの当初計画では堆砂容量は550万㎥でしたが、堆砂の速度が速いので、2008年度の基本計画変更で1430万㎥にしました。(二風谷ダム定期報告書 2010.3)

しかし、総貯水容量3150万㎥に対して、2020年度末の堆砂量がすでに1280万㎥にもなっています(国土交通省の数字)。

そして、現地の状況を見ると、この数字以上の凄まじい状況になっています。

「流域の自然を考えるネットワーク」http://protectingecology.org/report/8441の報告に、下記の写真の通り、二風谷ダムは堤体の直近まで土砂で埋まっている状態が示されています。
撮影:2018年7月4日

ダム建設によって川をこのような惨状にしてしまってよいのかと思わざるを得ません。

平取ダムも同様に土砂堆積がかなりのスピードで進行していくことは必至です。

沙流川は土砂の流出が極めて大きいので、ダムを造ってはならない河川であるのに、ダムがまた造られてしまったのです。

平取ダムの土砂対策は下図の通りです。融雪期(4~5月中旬)は水を貯めることなく、水や土砂をそのまま流下する方式をとるというものです。

しかし、この方式は机上で考えたことであって、実際に計画通りに行くとはとても思われません。

黒部川の宇奈月ダムのように、排砂による生態系に与えるダメージも心配しなければなりません。

沙流川は平取ダムの完成により、深刻な問題を新たに抱えるようになりました。

 

平取ダムの運用

川内川洪水から50年 ダム容量倍増も「自然は想定を超えてくる] という見方は妥当か?

2022年7月11日
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鹿児島県の川内川(せんだいがわ)について南日本放送2022/07/07のニュース記事「川内川洪水から50年 ダム容量倍増も『自然は想定を超えてくる』」がありました。

2006年7月、川内川流域を未曾有の豪雨が襲いました。川内川の鶴田ダムは洪水調節ができなくなって、ただし書き操作を行い、計画最大放流量2400㎥/秒をはるかに上回る3600㎥/秒(最大)を放流しました。

鶴田ダム下流で氾濫被害の最も大きかったさつま町宮之城では計画高水位T.P.27.74mに対して、本洪水最高水位はそれを2.92mも上回る最高水位T.P.30.66mを記録し、大きな災害が発生しました。

その後、鶴田ダムの再開発事業が再度行われ、洪水調節容量が7500万㎥(当初は4700万㎥)から9800万㎥に増強されました(2018年度完了)。

しかし、昨年(2021年)7月10日の豪雨で鶴田ダムは下記のニュース記事(NHK2021年7月10日) のとおり、緊急放流直前の状態になりました。

この問題について、下記の記事は「ダム容量倍増も『自然は想定を超えてくる』」と報じていますが、このような問題のとらえ方が妥当なのでしょうか。

川内川水系河川整備基本方針の流量図(末尾に掲載)を見ると、川内川は鶴田ダムへの依存度がかなり大きい治水計画になっています。

ダム依存度が大きい治水計画であるために、鶴田ダムの緊急放流の事態が迫ると、危機的な状態になるのが川内川です。

川内川においては今後、ダム依存度を極力小さくする治水対策に転換していく必要があります。

  

川内川洪水から50年 ダム容量倍増も「自然は想定を超えてくる」

[南日本放送2022/07/07 19:45] https://www.mbc.co.jp/news/article/2022070700057468.html?utm_source=dlvr.it&utm_medium=twitter

50年前の7月6日、局地的豪雨で川内川が氾濫し、死者・行方不明者8人の被害を出しました。ダムや河川の改修は進みましたが、水害はその後も繰り返し起きています。関係者は「自然は想定を超えてくる」と話し備えを訴えます。
(1972年の住民インタビュー)
「まさか家が流れるとは全然思わず、着の身着のままで船に乗ってようやくたどり着いた」
1972年7月6日。川内川流域では、現在の「特別警報」に匹敵する雨量の2倍以上の2日間で600ミリを超える雨が降りました。川内川は氾濫し、流域の広い範囲で浸水。
鹿児島県によりますと、死者・行方不明者8人、家屋の全壊や半壊、流失はあわせて472棟。浸水被害はおよそ2100棟に及びました。
(舟倉武則さん)
「川に行って魚をすくっていた。なにか流れてくるから何かなと思ったら、上流の建物が流れてきた」
舟倉武則さん(75)は、さつま町宮之城の川原集落で54年、衣料品店を営んでいます。
(舟倉武則さん)
「おいおい来たぞと、みんなそれぞれ三々五々自分の家に行って、何分もしないうちに、ここがどーんと。床から2メートル80センチきた」
50年前の大雨で舟倉さんが住む川原集落では、6棟が流され80棟が浸水しました。上流の湯田地区ではおよそ120棟が流され、宮之城温泉街は大きな被害を受けました。
国は、川内川の堤防を2メートルから3メートルかさ上げする工事を行ったほか、上流の鶴田ダムの容量を見直し、7500万立方メートルに増量しました。しかし…。
2006年、1972年を上回る5日間で1000ミリの雨が降り、再び川内川ははん濫。死者2人、およそ2300棟が被害を受けました。
下流への流量を抑えるため、2006年の災害後、鶴田ダムは大規模な工事を実施。1972年の災害以降1.8倍にした容量を、さらに1.3倍の9800万立方メートルに増量。ダム建設当初のおよそ2.3倍にしました。
鶴田ダムでは大雨が予想される場合、事前にダムを空にする「予備放流」を行っていますが、容量が7割を超え、その後、決壊のおそれがある場合「緊急放流」を行います。過去に行われたのは、大きな水害のあった1972年と2006年の2回で、去年7月の大雨でも一時、検討されました。
国は水害が起こるたびに対策を打ってきましたが、担当者は、ハード面の整備が進んだとしても「自然は想定を超えてくることを理解していて欲しい」と話します。
(鶴田ダム 廣松洋一所長)
「地域住民とともに意見交換、情報の発信の仕方を勉強してきて、地域の方の理解が深まっている地域だと思う。安全度がすごく向上したのは間違いない。しかし、それを上回る洪水は想定しておくべきもの」
去年7月の大雨で、舟倉さんの住む川原集落は、80世帯230人全員が高台にある公民館や知人宅などに避難しました。
(舟倉武則さん)
「ダムが放流するかもという情報が来たから。握り飯を持って昼飯も車の中で食べた」
50年前の水害以降、ダムや堤防などハード面の整備は進みましたが、舟倉さんは「自分たちが住む地域のリスクを知った上で、いざという時の避難行動に結びつけることが大切」と話します。
(舟倉武則さん)
「空振りでもいい。空振りでもいいから情報をもらって、早く避難することが大事。命があればまた再生、復興できます」
50年前の大水害は今も住民の記憶に残り、自ら学び、避難に繋げることの大切さを教えてくれています。

 

 鹿児島 さつま町 鶴田ダム 緊急放流見送り 国交省

(NHK2021年7月10日 12時39分)  https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210710/k10013131641000.html

国土交通省は、鹿児島県さつま町の川内川にある鶴田ダムについて「午前11時半ごろから緊急放流の可能性がある」としていましたが、現時点では見送ることを決めました。

今後の雨の状況によって再び実施する可能性が出てきた場合は、すみやかに周知するとしています。
川内川の水位は依然としてかなり高い状態にあり、洪水や氾濫のおそれがあるとして引き続き厳重に警戒するよう呼びかけています。

 

川内川水系河川整備基本方針〈2007年8月〉

 

参議院議員選挙に向けて、8政党へのダム問題に関するアンケート調査報告

2022年6月30日
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参議院議員選挙に向けた8政党へのアンケート調査

ダムは、水道用水の確保・水害の防止・土砂災害の防止等の目的のため、高度経済成長以後、巨費を投じて建設されてきました。現在、日本の河川には約2500基のダムが存在します(砂防ダムを除く)。2010年度以降に行われたいわゆるダム検証では、対象とされた84ダム計画のうち、「無駄なダム」と指摘されていた問題ダム事業のほとんどが継続となりました。検証により、中止になったダムはほんの少しありましたが、それらの中止ダムは事業者の都合、もしくは反対運動の高まり等により、中止の方向が出ていたものでした。
近年、ダムをめぐる社会状況は大きく変化しています。人口減少、水需要の長期的減少傾向、気候危機による水災害の大規模化・広域化で、新規のダム事業に巨費を投じ続けることは持続可能な社会の実現に逆行する状況となりました。欧米では、河川環境の回復や財政負担の軽減のため、ダムが撤去される時代となっています。一方、日本の河川から撤去されたのは熊本県の荒瀬ダムのみです。
これからの日本において、ダムに関する政策をどのように転換するか・しないかは、日本社会のあり方、日本で暮らす私たちが受ける「国民の生命、財産を守る行政」のあり方を決定するものです。
7月10日投開票日とされた参議院議員選挙に候補者を擁立する各政党に対して、ダムに関する政策を伺い、同選挙での投票の判断材料とさせていただくことを目的に、 共産党・ 国民民主党・ 公明党・自由民主党・ 社民党 ・日本維新の会 ・立憲民主党・ れいわ新撰組の8政党へダムに関する政策を伺うアンケート調査を行いました。6月24日を回答期限と設定させていただきました。

2022参院選 政党アンケートお願い 提出版 PDF 743kb

 2022年6月29日現在の回答集約結果を掲載します。皆様の投票行動の参考にご活用ください。未着分については、到着次第、集約結果に反映させて掲載いたします。

 2022_参議院選政党アンケート回答集約_20220629-2 PDF 135kb

2022_参議院選政党アンケート回答集約_20220629  以下図表版

秋田県東成瀬村(雄物川水系成瀬川)に建設中の成瀬ダムは2026年度完成予定で工事進行

2022年6月29日
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残念な情報ですが、国土交通省が秋田県東成瀬村(雄物川水系成瀬川)に建設中の成瀬ダムが2026年度完成予定で、工事が進行しているという記事を掲載します。

成瀬ダムは昨年(2021年)6月に工期が2024年度から2026年度に延長され、事業費が1530億円から2230億円へと、700億円も増額されることになりました。 https://suigenren.jp/news/2021/06/06/14684/

完成予定まであと4年というところで、700億円も増額するのですから、ダム事業者がやりたい放題という感じがします。

成瀬ダムは治水利水の両面で必要性がないダムです。「成瀬ダムは本当に必要ですか?」https://suigenren.jp/wp-content/uploads/2012/09/naruse.pdf

成瀬ダムを中止させるべく、地元住民が2009年に工事差し止めを求める住民訴訟を起こして闘い続けました。水源連もこの裁判に関わりました。https://suigenren.jp/news/2014/06/04/5802/

しかし、2015年4月に仙台高等裁判所秋田支部で、住民側敗訴の判決が出ました。

まことに残念なことですが、裁判で成瀬ダムを中止させることができませんでした。

末尾に成瀬ダム予定地の「赤滝と能恵姫伝説」を記しておきます。

 

成瀬ダム工事現場ツアー 55トントラックや無人重機

(読売新聞2022/06/28 05:00)https://www.yomiuri.co.jp/local/akita/news/20220627-OYTNT50379/

発破ツアーで訪れる展望台から望む成瀬ダムの本体工事現場(11日、東成瀬村で)

作業が休みの日は、巨大重機の前で記念撮影ができる場合もある

東成瀬村で4年後の完成に向けて建設が進む成瀬ダムの工事現場を見学する無料のバスツアーが行われている。先端技術を駆使して巨大なダムを造り上げる様子を間近で見る、迫力いっぱいの45分間だ。

国土交通省成瀬ダム工事事務所が「なるせダムアドベンチャーバスツアー」と題して企画した。

同ダムは国直轄事業で総事業費は2230億円。工事が本格化し、現場では普段見ることができないような大型重機が稼働しているという。

ツアーは、ダム上流の展望台を発着し、同事務所職員の説明を受けながら通常は立ち入りできない工事現場を巡る。巨大動物のような55トントラックとすれ違ったり、重機が遠隔操作で無人走行する様子を見たりし、非日常的な冒険気分を味わえる。

工事中の今しか見ることができない光景とあって、県外から参加するダムファンも。新潟市の男性(50)は「ここは規模がすごい」と満喫した様子。現場の様子は日々変わるため、同事務所は「何度でも参加して見てほしい」としている。

一般向けツアーは今月11日に始まった。隔週土曜の開催で、来月は9、23日に予定している。10月まで。出発時間は午前9時半、同10時半、同11時半、午後1時半、同2時半、同3時半の計6回。定員は各回10人で先着順に受け付ける。

参加希望者は、同事務所ホームページに掲載されている申込書に記入し、メールかファクスで送る。

問い合わせは同事務所(0182・23・8450)へ。

 

赤滝と能恵姫伝説

成瀬ダム建設予定地の区域内には、古くから県南地方の住民に「雨乞いの神様」として崇められている「赤滝」があります。江戸時代後期の民俗学者、菅江真澄が栗駒山に向かう道すがら立ち寄って、「駒形日記」に記録したという由緒ある場所です。
かつての赤滝神社は、日照りの年にはお参りにくる農家の人たちが、村の中から延々の列を作っていたほど厚い信仰を集めていた場所だと聞きます。赤滝神社の由来は、今を遡ること280年余り昔の伝説の女性、能恵姫に源を発しています。能恵姫は、農民たちを渇水と洪水の不安から救うために、竜神と化して赤滝に住みついたと言い伝えられています。赤滝は、この地域の昔を偲ばせる貴重な文化遺産です。

『どうかダムを止めて』という能恵姫の涙声が、聞こえてくるようです

 

 

「人柱だったのか」豪雨被害怒り 集団訴訟、原告団長立石さん訴え (岡山県・小田川真備水害訴訟)

2022年6月29日
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2018年の西日本豪雨で被災した倉敷市真備町地区の住民ら49人が、国などに損害賠償を求めた訴訟の口頭弁論が6月22日、岡山地裁でありました。その記事を掲載します。

真備水害訴訟について2020年、2021年のニュース記事も掲載しておきます。

この水害で家族の命、財産を失った原告の方々の文章を読むと、怒りと悲しみで胸が一杯になります

真備水害訴訟については弁護団のHP http://mabisuigai.starfree.jp/index.html もご覧ください。

 

 「人柱だったのか」豪雨被害怒り 集団訴訟、原告団長立石さん訴え

(山陽新聞2022年06月22日 18時29分)https://www.sanyonews.jp/article/1276114

岡山地裁前で横断幕を掲げて行進する原告団=22日午前10時45分

2018年の西日本豪雨で被災した倉敷市真備町地区の住民ら49人が、決壊した河川を管理していた国などに損害賠償を求めた訴訟の口頭弁論が22日、岡山地裁(上田賀代裁判長)であり、原告団長で岡山民俗学会名誉理事長の立石憲利さん(84)=総社市=が、自身の被害について意見陳述した。
立石さんは00年ごろに倉敷市真備町辻田の2階建て住宅を購入し、書庫や書斎として活用していたと説明。豪雨で1階が水没し、民俗や民話に関する資料など5千点以上を廃棄せざるを得なくなり「極度に落ち込んだ」と述べた。
その上で「大きな被害を出してようやく、堤防の補強工事など対策が進んだ。私たちは人柱だったのか」と怒りをにじませ、「国などの責任をはっきりさせないと被災者は浮かばれない」と訴えた。
原告側弁護団によると、立石さんは5月に原告団長に就任した。岡山地裁では、別の被災者や犠牲者の遺族計215人も国などに損害賠償を求めて係争中。

 

 

西日本豪雨で大規模な水害 住民と遺族ら国などに損害賠償求め提訴 岡山・倉敷市真備地区

(KSB瀬戸内海放送 2021/6/25 18:50)https://news.ksb.co.jp/article/14380926

2018年7月の西日本豪雨で岡山県倉敷市真備町を流れる小田川が決壊するなどして、大規模な水害が起きたのは治水対策が不十分だったためとして、住民とその遺族らが国などに対して損害賠償を求める訴えを起こしました。

訴えを起こしたのは、倉敷市真備地区で被災した住民と遺族ら84世帯、215人です。

西日本豪雨で娘の遥さん(当時27歳)と孫の愛ちゃん(当時5歳)を亡くした三宅常男さんも参加しています。

2018年7月の西日本豪雨で倉敷市の真備地区では、小田川の堤防が決壊するなどして地区の4分の1が浸水。51人が亡くなりました。

訴えによると小田川の付け替え工事を行ってこなかったことや河川内の樹木を伐採してこなかったことなどが水害につながったなどとして国、岡山県、倉敷市に約6億4000万円の損害賠償を求めています。

(り災者の会/吉田勤 会長)
「尊い命が50何名奪われた、家が崩壊した責任が倉敷市にも県にもあると思います」

(娘と孫を亡くした/三宅常男さん)
「まだ3年経っても踏ん切りはつきません。国も県も本当のことを言わないからもう何してもふたをしてしまうから」

岡山河川事務所は「訴状が届いておらず、コメントは差し控えさせていただきます」とコメントしています。

 

西日本豪雨の被災者ら、河川管理巡り国など提訴 岡山

(日本経済新聞2021年6月25日 19:48 ) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF258920V20C21A6000000/

提訴後、記者会見する原告の三宅常男さん㊨と吉田勤さん(25日午後、岡山県倉敷市真備町地区)=共同

2018年の西日本豪雨で岡山県倉敷市真備町地区の河川が氾濫し、甚大な浸水被害が出たのは、河川などの管理が不十分だったのが原因だとして、地区住民ら215人が25日、国や県、市に計約6億4000万円の損害賠償を求め、岡山地裁に提訴した。

原告は、地区の被災者らでつくる任意団体「り災者の会」の会員ら。岡山地裁では、同会とは別に「真備水害訴訟原告団」の約40人が国や県、市、中国電力に計約8億6千万円の損害賠償を求めて既に提訴している。

訴状によると、地区を流れる小田川と支流の堤防が決壊。地区の4分の1が浸水し、災害関連死を除き51人が死亡した。住民側は、国と県が堤防を改修せずに低いまま放置したと主張。堤防の切れ目にあり、増水時に閉める必要がある「陸閘(りっこう)」と呼ばれるゲートを、県と市が閉鎖しなかったとしている。

さらに国に対し、増水時の小田川の水位を低下させるため高梁川との合流地点を下流に移す工事を先送りにしたと批判。高梁川水系にある新成羽川ダム(岡山県高梁市)の放流量の調整を設置者の中国電力に指示するのを怠ったとしている。

提訴後、「り災者の会」会長の吉田勤さん(75)らは真備町地区で記者会見。「訴訟を通じて行政の災害への考えを改めてほしい」と話した。

豪雨で娘(当時27)と孫(同5)を亡くした倉敷市の会社員、三宅常男さん(62)は「3年たっても(心が)安定しない。同じ思いをする人が出ないよう、一歩を踏み出さないといけないと思った」と述べた。〔共同〕

 

 

真備水害訴訟 第2回口頭弁論で原告が全国の河川改修計画などの提出求める 岡山

( KSB瀬戸内海放送 2021/7/7 18:31) https://news.ksb.co.jp/article/14389397

西日本豪雨で被災した岡山県倉敷市真備町の住民らが、行政の不備が水害を引き起こしたとして国などに損害賠償を求めた裁判です。7日の第2回口頭弁論で原告は、堤防工事の遅れを改めて指摘しました。

西日本豪雨(2018年7月)

倉敷市では西日本豪雨で災害関連死23人を含めた75人が犠牲になりました。
訴状によりますと原告49人が、国、岡山県、倉敷市ダムを管理する中国電力に、合わせて約10億2000万円の損害賠償を求めています。

真備水害訴訟 原告側会見

原告側は7日の第2回口頭弁論で小田川の堤防の改修工事が遅れていたと指摘し、国などに対して全国の一級河川の改修計画などの提出を求めました。

これまでの裁判で被告側は損害賠償の責任はないとして争う姿勢を示しています。

 

真備町水害訴訟 西日本豪雨での小田川の水位上昇 国へ責任追及

( KSB瀬戸内海放送 2021/10/27 19:32) https://news.ksb.co.jp/article/14469267

西日本豪雨で被災した岡山県倉敷市真備町の住民らが、行政の不備が水害を引き起こしたとして国などに損害賠償を求めた裁判です。原告側は、小田川の中洲の樹木を「伐採すべきだった」とし、責任は国にあると訴えています。

この裁判では西日本豪雨で被災した原告48人が国、岡山県、倉敷市、ダムを管理する中国電力に合わせて約10億2000万円の損害賠償を求めています。

小田川の中洲(2018年7月27日)

27日の第3回口頭弁論で原告側は、小田川の樹木が生い茂ったことで水位を最大で69センチ上げていたという国交省の元職員の試算を開示。国は伐採をしなければならなかったと主張しました。

これまでの裁判で被告の国側は小田川の樹木を伐採する義務はなかったと主張しています。

さらに原告側は被災者が情報公開請求に100万円以上を負担していることを明かし、国側へデータなどの開示に協力してほしいと呼び掛けました。

(真備水害訴訟弁護団/金馬健二 弁護士)
「基本的には本件は損害賠償請求の形になっているが、二度とこういうことが起こらないようにするという大きな目的なので両方とも事案を解明する責任がある。出すべきものは出してほしい」

 

西日本豪雨は「人災」か 国などを訴える被災者の主張 岡山・倉敷市

( KSB瀬戸内海放送2020/4/7 18:15 )https://news.ksb.co.jp/article/13851470

(映像)西日本豪雨は「人災」か 国などを訴える被災者の主張 岡山・倉敷市

2018年の西日本豪雨で大きな被害を受けた倉敷市真備町の住民が15日、国などに損害賠償を求める裁判を起こします。

訴状案が固まり、提訴前の4日、最後の弁護団の集会が開かれました。大きな主張の一つは約50年前から訴えがあった河川の工事の遅延です。

(真備水害訴訟弁護団/金馬健二 団長) 「今回の水害が自然災害として不可抗力のものではなく国や県、市、あるいはダム管理会社が瞬時に対応していば避けられた、いわゆる人災であるという思いを持つに至りました」

4日、「真備水害訴訟弁護団」が最後の集会を開き訴状の内容を確認しました。原告は真備町の被災者32人です。2018年の西日本豪雨で、倉敷市の真備地区では高梁川の支流の小田川などが氾濫したり堤防が決壊したりしました。

地区の4分の1にあたる約1200ヘクタールが浸水し4646棟が全壊、51人が亡くなりました。原告は行政などの対応の不備が被害の拡大につながったとして国、岡山県、倉敷市、ダムを管理する中国電力に対し6億6000万円の損害賠償を求めて15日、岡山地裁に提訴します。

この裁判ではダムの事前放流量が十分でなかったことや、倉敷市の避難態勢の不備など各被告の責任を追及します。そのうち大きな主張の一つが小田川の付け替え工事の遅延です。

国は川の氾濫の危険性を認識し、高梁川と小田川の合流点を付け替える計画を1971年に発表していました。しかし、構想から約50年間、工事は行われませんでした。

原告は付け替え工事が完了していれば、合流点の水位は約5メートル下がり、浸水被害は起きなかった可能性が高かったとして工事の実施を長年放置した国の責任を追及します。

また…

(真備水害訴訟弁護団/賀川進太郎 事務局長) 「樹林の伐採もされていないということが大きな原因の一つであろう、これも国の責任ということになります」

小田川の中に生い茂っていた大量の木や草が川を流れにくくしたことで、水位の急激な上昇を招いたとしています。

渡辺清裕さん(70)はこの樹林化の放置に疑問を持ち、原告に参加しました。渡辺さんの自宅は真備町箭田、小田川の近くです。

(渡辺清裕さん) 「あそこの線、あれが水浸かった場所ですね」

2階から1メートル80センチまで浸水し、自宅が全壊しました。 (渡辺清裕さん) 「ここは久しぶり歩くの、いつも散歩してた」

渡辺さんは小田川に生い茂る草木を見て、不安に思っていました。

(渡辺清裕さん) 「こんな木がずーっと、流れない。もう何回もしとんすよ、地元の人が昔からね。伐採してくれと。自分のためばっかりじゃない。長い長い裁判になるかもしれない、黙ってたらよくならない」

豪雨から1年9カ月。復興は進んでも被災者の戦いはまだ続いています。

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