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東京都水道局 見える化改革 報告書 (監理団体を使っての民営化、公共から民間への一種の民営化)
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東京都水道局が「見える化改革 報告書 「水道」」をまとめました。
都政改革本部会議(第21回)(1月23日)会議資料http://www.toseikaikaku.metro.tokyo.jp/kaigisiryou21.html
に掲載されています。
東京都水道局 見える化改革 報告書 「水道」
http://www.toseikaikaku.metro.tokyo.jp/kaigi21/03-2_mierukakasankoushiryou.pdf
見える化改革 報告書 「水道」(抜粋版)
http://www.toseikaikaku.metro.tokyo.jp/kaigi21/03-1_mierukakaigishiryou.pdf
見える化改革の意図するところは水道法が改正され、民営化(施設運営権の譲渡)の道が開かれたことに対して、都水道局として対抗措置を講じるところにあると思います。
見える化改革 報告書の中で気になったところを取り出して添付します。
都水道局の事業規模は非常に大きく、総支出は年間3650億円(2017年度)もありますので(14ページ)、現体制で多くの人々、会社が利益を得ています。
都水道局は人員の削減に邁進してきました。1974年度は7825人であったのが、2018年度は3791人となり、半分以下になっています(12ページ)。
人員の削減に伴って、水道業務のかなりの部分を監理団体に委ね、監理団体を通して民間業者に任せるようになりました(14ページ)。、
この監理団体は水道料金徴収業務等を代行する㈱PUC(Public Utility Services Center)と、水道施設の管理、施工、水質調査分析等を行う東京水道サービス㈱です(13ページ)。
前者は代表取締役が小山隆・元東京都水道局次長、都水道局の出資比率84.5%、後者は代表取締役が増子敦・元東京都水道局長、都水道局の出資比率51%であり、いずれも都水道局の外郭団体で、いわば天下り団体です。
東京都多摩地域に至っては、水道の自主経営を行っている武蔵野市、昭島市、羽村市の三市を除くと、各市町の水道部はなくなり、この二社が水道業務を担っています。
今回の見える化改革では㈱PUCと東京水道サービス㈱を統合し、監理団体を一つして、現体制を強化して構築していくことになっています(48ページ)。
そのように強化することによって、年間総支出3650億円もあって、多くの人々、会社が利益を得ている現体制を守り、外資の参入を防ごうとしていると考えられます
そう意味で、水道法改正が企図した施設運営権の譲渡という民営化ではないけれども、監理団体を使っての民営化、公共から民間への一種の民営化が都水道局では進められ、それが今後一層推進されていくことになります。
そのことの是非も問われるべきだと思います。
関連記事を掲載します。
都、水道局傘下団体を統合 料金徴収など業務一体化
(産経新聞東京版2019.2.4 07:01) https://www.sankei.com/region/news/190204/rgn1902040007-n1.html
都は水道局の傘下にある監理団体で、浄水場の管理運営や水道管の工事などを行う「東京水道サービス」と、料金の徴収業務やお客さまセンターなどを担当する「PUC」を統合し、新たな監理団体を設立する方針を明らかにした。業務を効率化して水道事業の経営基盤を強化し、公共性の維持や経営の効率化を狙う。
1月下旬に開かれた都政改革本部会議で提示した。水道事業は全国的に人口減少や施設の老朽化など将来的な課題を抱えている。また、改正水道法の成立で民間参入がこれまでより促進される可能性がある。
このため都は、監理団体を統合し、水源や浄水施設の管理運営から料金徴収やお客さまセンターなどの業務を一体化することで、コスト削減やサービス向上を目指す。運営権の民間への売却などは行わず水道事業を維持していく方針で、将来的には経営が厳しい他自治体の水道事業の受託なども視野に入れている。
都の水道事業をめぐっては昨年、都内9区で供給している工業用水道(工水)を移行・激変緩和期間を経た上で廃止して上水道に切り替える条例が成立している。工水は昭和39年から供給が始まったが、設備が老朽化して更新費用に2300億円以上かかるとの試算が出たほか、需要もピーク時から大きく落ち込み今後の需要増も見込めないとの予測があり、方向転換に大きくかじを切っている。
石木ダム事業の予算計上に反対地権者らが抗議
長崎県は来年度予算に石木ダムの本体工事の費用を盛り込みました。来年度の石木ダムの当初予算は19.18億円です。しかし、地権者が断固たるダム反対の意思を表明しているのですから、本体工事を推進できる見通しがあるわけではありません。反対地権者への脅しでしかありません。
これに対して、反対地権者が長崎県庁前で抗議行動を行いました。そのニュースと記事を掲載します。
石木ダム 地権者らが県に抗議
(NHK 2019年02月19日 12時36分)https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20190219/5030003274.html
川棚町で建設が進められている石木ダムをめぐり、長崎県が新年度の当初予算案に初めて本体工事の費用を盛り込んだことを受け、建設に反対する地権者らが県庁前で抗議活動を行いました。
抗議活動を行ったのは石木ダムの地権者や地元・川棚町の住民、それに長崎市に住む支援者などおよそ20人です。
石木ダムは、長崎県と佐世保市が水道水の確保や洪水対策を目的に285億円をかけて川棚町に建設を進めているもので長崎県は2022年度の完成を目指し、新年度の当初予算案に今年度のおよそ2倍にあたる19億1800万円の事業費を計上し、初めて本体工事にかかる費用を盛り込みました。
19日の活動に参加した人たちはこれに抗議しようと、県庁前で「建設絶対反対」と書かれた横断幕を掲げ、予算案に建設費用を計上するよりもダムを使わずに水道水の確保や洪水対策を考えることが知事の責務だと訴えるビラを配っていました。
抗議活動に参加した地権者の炭谷猛さんは「水不足はここ20年、起きていない上に人口減少が続いているなかでダムが必要かどうか、知事は考えればわかるはずだ」と話していました。
石木ダム事業の予算計上に反対地権者らが抗議
(テレビ長崎2019年2月19日 19:03) http://www.ktn.co.jp/news/20190219235413/
県が東彼・川棚町に計画している石木ダム建設の本体工事費を新年度予算案に計上したことを受け、19日県庁前で地権者らが抗議の声を上げました。
県庁前では職員の通勤時間に合わせ、石木ダム建設に反対する地権者や支援者たちがビラを配り、改めて「石木ダムは必要ない」と訴えました。東彼・川棚町の石木ダムをめぐっては、ダム湖に沈む県道の付け替え工事が進んでいます。また県は、新年度の当初予算案に初めてダム本体の工事費用を盛り込み、関連事業費として19億1800万円を計上しました。
地権者 炭谷猛さん「人口は2万人も減っていくわけだからその先それだけの水が必要かどうか、とういうのは県民がおかしいんじゃないか(と思う)状況に来ているし」「総合的に知事に判断してもらいたい」
中村知事は2020年度のダム完成を目指し「地権者の協力が得られれば本体工事に着手したい」としていますが、地権者側が求めている「直接対話」はいまだ実現していません。
反対地権者ら県庁前で抗議 石木ダム事業費増額で
(長崎新聞2019/2/20 16:00) https://this.kiji.is/470768950957474913?c=174761113988793844
長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、県が事業費を増額しダム本体の工事費を予算案に初めて盛り込んだことを受けて、反対地権者や、事業に反対する市民ら約10人は19日、県庁前でダム建設中止を訴えた。
県は新年度当初予算案に、付け替え県道やダム本体の一部についての測量設計費や工事費などとして19億1800万円を計上。本年度当初予算と比べて10億円余り増額した。
反対地権者の一人、炭谷猛さん(68)らは県庁前で横断幕を掲げ、登庁する県職員らに反対を訴えるチラシを配布。
ダム建設の必要性が薄らいでいることや、県民や市民の中に反対が根強いことなどを訴えた。
炭谷さんは報道陣に「県の人口が減っている中で、なぜ必要なのか。行政代執行をしてまでつくる必要はない。中村知事は事業中止を決断してほしい」と語った。
(写真)県庁職員らにダム事業中止を訴える炭谷さん(左)ら=県庁前
「つらい」砂防ダム計画受け入れで故郷喪失…住民葛藤 九州豪雨の被災集落
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2017年9月の九州北部豪雨では、福岡県朝倉市で、大量の土砂や流木が集落を飲み込み、甚大な被害が発生しました。
その対策ということで、長期避難している2集落が戻れなくなってしまう大型砂防ダム4基が計画されています。この問題を取り上げた記事を掲載します。
「つらい」砂防ダム計画受け入れで故郷喪失…住民葛藤 九州豪雨の被災集落
(西日本新聞2019/2/18(月) 11:07配信) https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190218-00010003-nishinpc-soci
(写真)大型の砂防ダム4基が計画され、ほとんどの世帯が集落に立ち入れなくなる可能性がある乙石集落=福岡県朝倉市杷木松末
九州豪雨で甚大な被害を受けた福岡県朝倉市杷木松末(ますえ)の乙石、小河内の2集落で計画されている砂防ダム建設について、国土交通省や同市の担当者らが17日、地元主催の勉強会で詳細を説明した。、集落は長期避難世帯に認定され現在も住民が住めないが、砂防ダムが建設されれば、ほとんどの住民が集落に戻れなくなる。同省は今秋にも着工したい考え。計画を受け入れれば「故郷」を失うことになる住民は、難しい決断を迫られている。
【地図】砂防ダム建設が計画されている集落
勉強会には2集落の住民ら約60人が参加し、冒頭のみ公開された。市によると、同省から計画内容の説明があり、住民側からは生活再建支援策などについての質問も寄せられたという。
住民によると豪雨前の乙石集落には約10世帯、小河内集落には20世帯近くが居住。2集落とも河川の氾濫で多くの家が流され、住民は市内外のみなし仮設住宅などで生活している。
国交省は1月中旬、2集落に砂防ダム計画を初めて説明した。同省によると、赤谷川水系乙石川の最上流部にある乙石集落に、最大で幅120メートル、高さ14・5メートルになる計4基の砂防ダムを築堤し、川をせき止める。推定で約8万7千立方メートル堆積する土砂と流木約6千立方メートルを受け止め、土石流の発生を防ぐ考えだ。
小河内集落を流れる小河内川沿いにも地滑りの可能性がある山があるほか、土砂約9万6千立方メートル、流木約3千立方メートルがあると推定。小河内川をせき止めて最大で幅76メートル、高さ14・5メートルの砂防ダム2基の建設が計画されている。
同省は2022年度末までの完成を目指しており、同省九州北部豪雨復興出張所は「おおむね5年間の施工期間内に間に合わせるため、この計画で地元の理解を得たい」と話す。
(写真)小河内集落では砂防ダム2基が計画されている=福岡県朝倉市杷木松末
ただ、砂防ダムが建設されれば2集落の大部分は住むことができなくなる。勉強会後、乙石集落の男性は「故郷の家に帰れなくなるのは本当につらい。ただ乙石より下流の人々の安全を考えれば(建設受け入れは)やむを得ないのかなと思う」と力なく語った。
集落への思いも強く、乙石では最下流にある砂防ダム外側エリアなどを対象地に、一部住民の集団移転の話も出ている。
浸水被害大でも死者ゼロ 西日本豪雨、命守った自主防災
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昨年7月の西日本豪雨災害では、小田川とその支川の氾濫により、倉敷市真備町で51人の方が亡くなりました。
しかし、すぐ近くの総社市下原地区では、自主防災により、早期避難が行われ、犠牲者が出ませんでした。
その記事を掲載します。
浸水被害大でも死者ゼロ 西日本豪雨、命守った自主防災
(朝日新聞2019年2月18日1
あすへのとびら 水道をどう守る 手放さぬ道を考えよう(信濃毎日新聞の社説)
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水道法改正について信濃毎日新聞の社説を掲載します。
「水需要が頭打ちになることが分かっていながら、利水ダムを造り続け、水道事業者の経営悪化を助長してきた。今日の事態は国が招いたと言っていい。」
「一つ一つの事業で将来予測を示し、民営化や委託が適切なのかを見極める必要がある。税の使い道や受益者負担を含め、決めるのは住民自身でなければならない。」
という真っ当な意見が書かれています。
あすへのとびら 水道をどう守る 手放さぬ道を考えよう
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(信濃毎日新聞2019年2月17日)https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190217/KP190216ETI090007000.php
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水道事業の民営化に道を開く改定水道法が今年、施行される。
使用量は減り、収益が悪化して水道管の更新は遅れ、担当職員の減少と高齢化も進む―。政府は、地方自治体が担う水道事業の現状を挙げ、法改定で経営基盤の強化を図るとした。
これまでも国は、地方の財政難や行政効率の向上を理由に、公共事業の民間委託を推進してきた。人口減少社会への備えは必要なものの、十分な議論もないまま、暮らしに直結する水までもが市場原理にさらされ始めている。
今回の改定で、多くの識者が懸念を示したのは「コンセッション方式」の導入だった。民間の資金と手法を活用して社会資本を整備する「PFI」の一方式で、経営責任と施設所有権は自治体に残し運営権を売却する。
欧米の各都市で1980年代から、こうした方式が採用された。世界銀行が融資条件とし、途上国でも水道の民営化が加速した。
ところが、株主配当や役員報酬が上乗せされて料金が数倍に高騰する、水質が悪化する、情報が非開示になる、といった問題が相次ぐ。途上国では貧困世帯への給水が止まり、川の水を使った住民の間で感染症がまん延するといった深刻な問題も起きている。
オランダの非政府組織「トランスナショナル研究所」によると、2000〜16年に、少なくとも世界267都市が「再公営化」にかじを切っている。
安倍晋三首相は「自治体が事業の最終責任を維持する。民営化ではない」と強弁する。まやかしではないか。現場が危ぶむのは、技術職員がさらに減り、企業の経営が適正かどうかを自治体が判断できなくなる点にある。
改定法には、もう一つの選択肢として広域化が盛られている。総務省は1月、40〜50年先を見通した「水道広域化推進プラン」を22年度末までに作るよう都道府県に通知した。財政支援を拡充する方針を立てている。
<広域化にも懸念が>
自治体間の連携ならば…と考えるのは早計のようだ。
市町村議会が直接、議決できなくなり、住民の意思が反映されにくい状況で、民営化の流れも決まる恐れがある。自治労連公営企業評議会事務局長の近藤夏樹さんはそう指摘する。
遠隔操作に用いるIT機器の導入と維持更新費、送配水にかかるエネルギー費用、塩素などの薬品代が増し、国の言うコスト削減は必ずしも見込めない。
無論、一定の集約化は避けられない。近藤さんは、技術力を保持する事業体(人口の多い市など)に周辺の町村が職員を派遣して技術力を維持する「公公連携」。非営利の第三者機関を設け、職員OBらを採用して技術を伝える「公民連携」を提言する。
「住民の関心事である災害時対応の強化にもなる。ただ、早く始めなければ間に合わない」と近藤さんは話す。地域の自然・社会条件に応じて、自治体が主体的に関わる広域化が要点だ。
長野県は17年3月に「県水道ビジョン」を策定している。中山間地が多い地形では経営統合は難しい。現在、広域圏ごとの協議会が水質検査や維持管理の共同化を中心に、連携のあり方を話し合っている。コンセッション方式を検討する自治体はない。
ただ、県内には水道担当職員が1人、2人という村もある。将来にわたって技能を維持できる仕組みを探らなければならない。
<住民参加を通じて>
憲法で保障された健康で文化的な生活と水は切り離せない。採算性に目を奪われずに水を守るべき国が、逆方向を向いている。
国は02年の水道法改定で民間委託の門戸を広げた。団塊世代の退職や平成の大合併と時期が重なったのに、水道職員の新規採用を控えるよう「助言」もした。
水需要が頭打ちになることが分かっていながら、利水ダムを造り続け、水道事業者の経営悪化を助長してきた。今日の事態は国が招いたと言っていい。
政府は1999年にPFI法を制定し、改定を重ねている。道路や空港、給食センター、運動施設、森林や種子の管理でも規制を緩め、幅広い公共領域に民間事業者が参入してきている。
人口減少時代に自治体だけで公共サービスを担い切れない、との論法をうのみにはできない。一つ一つの事業で将来予測を示し、民営化や委託が適切なのかを見極める必要がある。税の使い道や受益者負担を含め、決めるのは住民自身でなければならない。
欧州では地域交通や教育、医療、福祉など、さまざまな分野で再公営化が進む。人も費用も足りないのなら、市民の参画や大胆な組織改革を視野に、自治再構築の手だてを考えたい。