水源連:Japan River Keeper Alliance

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記者の目 西日本豪雨と国の破堤防止対策 「耐越水堤防」封じる茶番=福岡賢正(熊本支局)

2018年9月4日
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治水の要である耐越水堤防の普及を国土交通省が頑なに拒み続けています。この問題を取り上げた記事を掲載します。

記者の目
西日本豪雨と国の破堤防止対策 「耐越水堤防」封じる茶番=福岡賢正(熊本支局)
(毎日新聞2018年9月4日 東京朝刊)https://mainichi.jp/articles/20180904/ddm/005/070/007000c

(写真)決壊した小田川の堤防。天端は舗装されていた=7月8日、本社ヘリから加古信志撮影

西日本豪雨でまた越水によって堤防が決壊(破堤)し、岡山県倉敷市真備町で多くの人命が失われた。国はかつて推進した越水に一定時間耐える堤防(耐越水堤防)の整備を封印したまま、いつまでまやかしの対策を続けるのか。
2015年9月に茨城県常総市で起きた鬼怒川の破堤災害を受け、私は同年10月8日の本欄で「国は越水に強い堤防の整備に取り組め」と訴えた。2カ月後、国の諮問を受けた社会資本整備審議会も「越水等が発生した場合でも決壊までの時間を少しでも引き延ばすよう堤防構造を工夫する対策」の推進を答申し、国は越水の恐れが高い1級河川の約1800キロを20年度末までに補強する「危機管理型ハード対策」に着手した。
このため私はてっきり、国が「フロンティア堤防」や「難破堤堤防」の名で1997年から推進した耐越水堤防の整備に再び取り組み始めたと思っていた。「再び」というのは、ダム計画に反対する市民団体が耐越水堤防をダム不要論の根拠として主張し始めると、国は02年7月に突然、整備計画を全廃したからだ。
現行の強化策、効果は限定的
実は真備町を流れる小田川も危機管理型ハード対策の対象河川で、補強工事は15年度に終えている。その川が今回破堤したのが不思議で、国土交通省に聞くと、同対策は耐越水堤防とは別物で、限定的な効果しかないという。
越水破堤が起きるメカニズムはこうだ。(1)堤防の最上部(天端(てんば))を越えた水が陸側の斜面(裏のり)を流れ下る(2)重力で速度を増した水流の力で陸側の堤防最下部(のり尻)や裏のりの浸食が始まる(3)裏のりの浸食が進んで天端の一部が崩れ落ちる(4)そこに水流が集中し破堤する=図参照。
 それゆえかつての耐越水堤防は、のり尻、裏のり、天端という越水に対する弱点を、鋼線のかごに石を詰めた「布団かご」やコンクリートブロック、遮水シートやアスファルトなどで補強していた。大切なのは3カ所とも補強することで、フロンティア堤防が水深60センチの越流に住民の避難に必要な3時間程度耐えるとうたっていたのも、三つの弱点が水深60センチの越流に耐えるよう設計されていたからだ。
一方、現在の危機管理型ハード対策は、天端のアスファルト舗装と、のり尻のコンクリートブロックなどでの補強を単独または組み合わせるだけ。たとえ両者を組み合わせても、越流によってまず裏のりがえぐられ、天端のアスファルト舗装もやがて折れたり、傾いて流されたりして破堤する。
同対策について国交省治水課の菊田一行課長補佐は「国の研究所の実験でも効果は条件によりまちまちで、はっきり言えない。やらないより悪くなることはないということでやっている」と言う。審議会答申の「少しでも」という言葉は、「可能な限り」と同義と取るべきだと思うが、国は「少しでいいから」と読み替えて対策を立てていたのだ。
小田川で施された危機管理型ハード対策も、未舗装だった左岸400メートル、右岸140メートルの天端をアスファルト舗装しただけ。決壊したのは新たな舗装区間ではなく、それ以前に舗装された所だったが、天端のアスファルト舗装だけでは人命を守れないことが証明されたことになる。
3点セット拒否、理由はメンツ?
では国はなぜ耐越水堤防を造らないのか。菊田課長補佐は「決壊を完全には防げず、コストもかかる。今は安く早くやるのを主眼に対策を進めている」と説明する。だが3点セットで補強する際の費用を国は試算すらしていない。
3年前に越水破堤して災害復旧工事で建設された鬼怒川の新しい堤防も、天端とのり尻は補強されたが、裏のりは補強されていない。このため越水すれば再び破堤すると心配する専門家は多い。
その一人、石崎勝義・元建設省土木研究所次長(79)は「わずかな追加コストで残る裏のりを保護するだけで堤防は越水に対し格段に強化され、越水時間がよほど長くならない限り決壊しない。技術があるのになぜそれを使わないのか」と不思議がる。小田川の洪水についても石崎さんは「ピークの継続時間は短く、越水地点の堤防が3点セットで補強されていたら、決壊せずに氾濫水量もはるかに少なくて済んだ」と分析する。
国交省を辞めて同省が設置した淀川水系流域委員会の委員長に転じ、耐越水堤防の整備をダム建設より優先すべきだとする意見書をまとめた宮本博司・元近畿地方整備局河川部長(65)は言う。「もはや治水の解は耐越水堤防の整備しかないが、裏のり強化も加えて3点セットにすると、かつて我々が主張して国が否定した対策をやることになる。だから国は意地でもやらない」。官庁のメンツで有効な越水対策が封じられ、人命が失われ続ける。茶番は、即刻終わらせるべきだ。

鬼怒川決壊提訴 原告語る「あれは人災」/「責任認めて」(記事の続き)

2018年8月13日
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8月7日、国に対して鬼怒川水害の損害賠償を求める提訴が行われました。この提訴に関する記事の続きを掲載します。

 

鬼怒川氾濫で集団提訴 常総市民29人ら
(東京新聞2018年8月8日)http://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/list/201808/CK2018080802000175.html

(写真)横断幕を持って水戸地裁下妻支部に向かう原告や支援する市民団体メンバーら=下妻市で

常総市で五千棟以上が全半壊し、関連死を含め十四人が死亡した二〇一五年の鬼怒川氾濫は、市民二十九人らが計約三億三千五百万円の国家賠償を求める集団訴訟に発展した。家族の死の責任の所在などを明らかにしたいとする原告ら。国土交通省OBからは、堤防決壊を防ぐ対策への国の責任を問う声も挙がった。 (宮本隆康)
七日午前、原告ら支援者ら約二十人が水戸地裁下妻支部に集まり、提訴の手続きをした。只野靖弁護士は「西日本豪雨の被災地に限らず、水害で泣き寝入りしている人たちを勇気づけるような訴訟になればいい」と話した。
提訴は、弁護士や「常総市水害・被害者の会」メンバーらが約一年半前から計画してきた。昨年十二月に説明会を開いて原告を募り、災害関連死で家族を失った遺族や自宅が浸水した人などで原告団を結成した。
泥水に漬かった自宅と家財の損害賠償や家族を亡くした慰謝料などを国に求めており、ほかにも訴訟への参加を考えている被災者もいるという。

◆訴訟支援の旧建設省OB 「堤防決壊は人災」
(写真)「堤防決壊は人災」と語る石崎さん=つくばみらい市で

「堤防決壊は人災だ」。旧建設省土木研究所の元次長で、訴訟の支援団体の共同代表になった石崎勝義さん(79)=つくばみらい市=はそう語る。鬼怒川決壊を受けて被災者支援に参加。国が一九九〇年代、想定以上の雨に備えた堤防強化策を始めながら、撤回した問題を指摘している。
九六年の旧建設省の白書には「計画規模を超えた洪水による被害を最小限に抑えるため、破堤しにくい堤防が求められる」と明記。同様の記述は五年連続で白書に書かれ、五カ年計画では、決壊しにくい「フロンティア堤防」の整備が盛り込まれた。
フロンティア堤防とは、陸側の法(のり)面に遮水シートを入れるなどして水の浸食を防ぎ、川から水があふれても決壊しにくくする工法。決壊を防げれば、市街地などに流れ込む水は堤防を越える分だけになり、被害も減らせる。
二〇〇〇年に設計指針が出先機関や都道府県に通知され、全国で計二百五十キロの整備を計画。実際に四つの河川の計約十三キロで工事が実施された。しかし、〇二年に設計指針を廃止する通達が出された。
国土交通省は「効果が定量的にはっきりしなかったため」と説明するが、旧建設省河川局のあるOBは「ダムの反対運動の間で、代わりの治水策としてフロンティア堤防の推進論があったからだ」と証言。ダム建設を優先したい論理で方針が変更されたとみる。
石崎さんは今月、西日本豪雨で堤防が決壊した岡山県倉敷市真備町を視察。「鬼怒川と同じで、堤防が強化されていなかったのが第一の原因」と指摘する。「堤防内に遮水シートを入れるだけなら、それほど予算はかからず、一般的に被害は床下浸水程度で済む」と強化の必要性を訴えている。 (宮本隆康)

常総水害で国提訴 被災住民ら 河川管理の不備指摘
(茨城新聞 2018/8/8(水) 4:00配信) https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180808-00000004-ibaraki-l08

(写真)横断幕を持って水戸地裁下妻支部に入る住民側の関係者ら=7日午前11時ごろ、下妻市下妻乙

2015年9月の関東・東北豪雨で、鬼怒川の堤防決壊などによる水害に遭ったのは国の河川管理に不備があったためとして、常総市の被災住民らが7日、国を相手に計約3億3500万円の損害賠償を求めて水戸地裁下妻支部に提訴した。原告は、被災した19世帯29人と1法人。住宅や家財の被害のほか、避難生活にかかった費用や慰謝料などを請求した。

訴状によると、堤防から水があふれ出た同市若宮戸では河畔砂丘しかなく、無堤防状態が放置された。しかし、掘削などの際、河川管理者の許可が必要とされる「河川区域」に国が指定せず、豪雨前の14年に太陽光発電事業による掘削を放任したと指摘。その後の治水対策も不十分だったと訴えている。

また、堤防が決壊した同市三坂町では、堤防の高さが周辺より低かったのに、国がかさ上げや拡幅を怠ったと主張した。

さらに、市の中心部を流れる八間堀川の排水ポンプの運転が遅れたことで、両地区であふれた水が八間堀川の氾濫につながり、被害を拡大させたとしている。

提訴後に会見した原告団の共同代表世話人の片倉一美さん(65)は「堤防が造られなかったり、かさ上げされなかったりと、手を付けるべき所に何もしなかったことは国の責任だ」と訴えた。

原告側の只野靖弁護士も「河川管理に瑕疵(かし)があり、人災の面が強い。でたらめな河川行政がまかり通っている」と批判した。

豪雨では、鬼怒川決壊などで常総市の約3分の1に当たる約40平方キロが浸水した。同市によると、市内では災害関連死12人を含む計14人が死亡し、5千棟以上が全半壊した。

国交省の担当者は「訴状がまだ届いていないので、コメントできない」と話した。(高岡健作)

鬼怒川決壊提訴 原告語る「あれは人災」/「責任認めて」
(茨城新聞2018/8/8(水) 4:00配信) https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180808-00000005-ibaraki-l08

(写真)原告の一人、高橋敏明さん
鬼怒川の堤防が決壊した関東・東北豪雨から間もなく3年。取材に応じた被災者たちは7日、提訴に至った胸の内を明かした。

常総市原宿で花き園芸会社を営む高橋敏明さん(64)は会社と自宅が浸水。休業損害を含む賠償を求めている。

高橋さんの会社は鬼怒川の水があふれた若宮戸の現場から約1キロ。当時、丹精込めて育てた花々が泥水に浸かった。水害から3年たった今でも、会社の売り上げは以前の7割。再建途上だと話す。

「商売を始めて45年。築き上げてきたものが一瞬で壊滅的な被害を受けた」と話し、「掘削された自然堤防を国が放置したから水害が起きた。あれは人災だった」と訴える。

水害5カ月後に亡くなった妻を思い、訴訟に踏み切った人もいる。自宅が床上浸水に見舞われた同市水海道森下町の赤羽武義さん(78)。赤羽さんの妻は災害関連死と認定された。

「あの水が来るまでは妻も普通に暮らしていた。妻の死の責任が国にあるということを裁判で認めてもらいたい」。赤羽さんは一言一言、かみしめるように語った。(今橋憲正)

 

 


関東・東北豪雨  鬼怒川氾濫、国を提訴 茨城の住民ら30人「管理に不備」

2018年8月13日
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2015年9月の関東・東北豪雨では鬼怒川下流部で堤防が決壊し、無堤地区で大規模な溢水があって、その氾濫が茨城県常総市の鬼怒川左岸側のほぼ全域におよび、凄まじい被害をもたらしました。
この鬼怒川水害は、氾濫の危険性が極めて高い箇所を放置してきた国土交通省の誤った河川行政が引き起こしたものです。
そこで、8月7日、国家賠償法により、被災者30人が国に対して損害賠償を求める裁判を起こしました。この提訴についての記事とニュースを掲載します。

関東・東北豪雨「高さ不足の堤防放置で浸水」 住民ら国を提訴
(NHK 2018年8月7日 16時53)分https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180807/k10011567881000.html

3年前の「関東・東北豪雨」で鬼怒川の堤防が決壊し大きな被害が出た茨城県常総市の住民などが、大規模な浸水が起きたのは堤防の高さが不足していたのに国が放置したためだなどとして、3億3000万円余りの損害賠償を求める訴えを起こしました。
訴えを起こしたのは、平成27年9月の「関東・東北豪雨」で鬼怒川の堤防が決壊して2人が死亡しおよそ8000棟が浸水する被害が出た常総市の会社や住民およそ30人で、7日、水戸地方裁判所下妻支部に訴状を提出しました。
原告は、川沿いにある「若宮戸地区」では砂丘林が堤防の役割を果たしていたのに、国が十分な規制をしなかったために民間の事業者による砂丘林の掘削工事が行われ、浸水を防げなかったと主張しています。さらに、「上三坂地区」では毎年の測量で堤防の高さが不足しているのを知りながら放置したことが決壊につながったなどとして、国に対しおよそ3億3500万円の損害賠償を求めています。
これについて国土交通省関東地方整備局は「訴状が届いていないのでコメントできない」としています。
原告弁護団の弁護士「人災の側面が強いと考える」
原告の弁護団の只野靖弁護士は「近年は全国各地で水害が起きているが、鬼怒川の浸水被害については人災の側面が強いと考えている。国にはまず事実をきちんと明らかにしてもらいたい。今回の裁判が、同じように水害で苦しんでいる人たちが治水の在り方を見直すきっかけになるのではないか」と話しています。

鬼怒川決壊で国に賠償請求=茨城・常総市の住民ら―水戸地裁支部
(時事通信 / 2018年8月7日 11時57)分https://news.infoseek.co.jp/article/180807jijiX468/

2015年9月の関東・東北水害で、鬼怒川の堤防が決壊し甚大な被害を受けた茨城県常総市の住民ら約30人が7日、被害が生じたのは河川管理者である国に責任があるとして、約3億3500万円の損害賠償を求める訴訟を水戸地裁下妻支部に起こした。
訴えたのは、堤防決壊により大きな被害を受けた同市内3地区で、住宅や工場などが浸水した約30人。
訴状によると、管理者である国は、堤防の役割を果たしていた砂丘林を河川区域に指定せず、民間事業者による掘削を放任。また、堤防のかさ上げが必要と認識していながら、対応を怠ったことなどが水害の原因になったとしている。
関東・東北水害では、茨城と宮城、栃木各県で計20人が死亡。常総市では堤防決壊で市街地が浸水、約5000の家屋などが半壊以上の被害を受けた。
弁護団事務局長の只野靖弁護士は「この水害は人災の面が強い。今まで国は水害被害の責任を取ってこなかった。泣き寝入りしてきた人たちを勇気づけられれば」と話した。
国土交通省関東地方整備局の話 訴状が届いていないので、コメントできない。
[時事通信社]

「堤防整備怠った」鬼怒川氾濫 住民ら30人が国提訴
(テレ朝NEWS 2018/8/7(火) 17:23配信)https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20180807-00000030-ann-soci
(映像あり)
鬼怒川が氾濫して被害を受けた住民が国を訴えました。
2015年9月の関東東北豪雨で鬼怒川の堤防が決壊して大規模な水害が発生し、茨城県常総市では14人が死亡しました。水害の原因は国が堤防の整備を怠ったためなどとして、常総市の住民ら30人が国に対して3億3500万円の損害賠償を求める訴えを起こしました。
原告の赤羽武義さん(78):「(Q.ずっと水は引かなかった?)引かなかった。幾日も引かなかったね」
赤羽さんの家も1階が水につかり、妻の芳子さん(当時75歳)は、避難生活で体調を崩して亡くなりました。
原告の赤羽武義さん:「女房の死(の原因)はどこにあった。それがやっぱり今回の提訴にふみ切った理由」
訴えに対して国側は、訴状が届いていないのでコメントはできませんとしています。

鬼怒川氾濫、住民ら30人が国を提訴
(TBS NEWS 2018/8/7(火) 13:03配信)https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20180807-00000049-jnn-soci
(映像あり)
鬼怒川の堤防決壊などによる水害は、河川の管理に問題があったためだとして、被災した住民らが国に損害賠償を求める裁判をおこしました。
訴えを起こしたのは、3年前、鬼怒川が氾濫し、堤防の決壊で被災した周辺住民ら30人です。原告の住民らは、国は鬼怒川のダム建設に巨額の予算を投じる一方で、河川改修がなおざりとなり、堤防の整備が進んでいなかったなどと主張。鬼怒川の氾濫は、国の河川行政の過ちによるところが大きいとして、治療費や住宅の修繕費、慰謝料など、あわせておよそ3億3500万円の損害賠償を求めています。(07日11:17)

関東・東北豪雨  鬼怒川氾濫、国を提訴 茨城の住民ら30人「管理に不備」

(毎日新聞2018年8月7日 東京夕刊)https://mainichi.jp/articles/20180807/dde/041/040/032000c

2015年9月の関東・東北豪雨で、鬼怒川が氾濫して被害を受けたのは国の河川管理に不備があったためとして、茨城県常総市の住民ら約30人が7日、総額約3億3500万円の損害賠償を国に求める訴訟を水戸地裁下妻支部に起こした。
訴状によると、鬼怒川は同市若宮戸で越水したが、付近は私有地で堤防がなかった。砂丘が堤防の役割をしていたが、国は土地の掘削などに許可が必要な河川区域に指定せず、ソーラーパネル設置に向けた民間業者による掘削を止めなかったと主張。周辺は最大約4・5メートル低くなり、国は14年7月に応急対策として土のうを積んで約1・6メートルかさ上げしたが、水があふれた。
原告側は、若宮戸では国土交通省が治水計画で規定した計画高水位(氾濫せずに耐えられる基準)に達していなかったと指摘。「無堤防のまま放置し、掘削を放任したのは管理に明白な瑕疵(かし)がある」と訴えた。
三坂町でも堤防が決壊。堤防は約20年間で約50センチ沈下したが、国はこれを把握しながら放置したとしている。
この豪雨で、同市は市域の3分の1に当たる約40平方キロが浸水。市内の住宅被害は全壊53棟、大規模半壊と半壊は計約5000棟に上り、災害関連死の12人を含めて14人が死亡した。【宮田哲】

「国の人災明らか」 花卉壊滅被害の原告

(写真)「明らかな人災。責任を認めさせたい」と話す高橋敏明さん=茨城県常総市若宮戸の鬼怒川河畔で

鬼怒川の氾濫から間もなく3年になるが、多くの被災者は再建途上にある。高橋敏明さん(64)=茨城県常総市=もその一人で、農園が浸水して壊滅的な被害を受け、原告団に加わった。高橋さんは「対策を尽くさなかった国の人災は明らか。責任を認めさせたい」と語気を強める。
「砂丘が堤防の役割をしているのをみんな知っていた」。氾濫後に築かれた堤防から鬼怒川を見つめながら、高橋さんはつぶやいた。越水したのは民間業者が掘削した砂丘周辺で、国も砂丘の役割を認識していたという。
高橋さんは代々続く農家。越水地点から東に約800メートル離れた場所にある温室16棟で、観葉植物の鉢植えや花卉(かき)類を生産していたが、地上1メートルの高さまで浸水した。丹精して育てた植物は泥に埋まり、全15万鉢の9割近くがだめになった。
「再建は無理かもしれない」と感じたが、一緒に働く長女(38)から「あきらめちゃだめ」と励まされた。多くのボランティアも訪れ、顔まで泥だらけになって片付けを手伝ってくれた姿を見て、「負けてはいられない」と立ち上がった。
売り上げは水害前の7割にも届かず、設備を修理するために受けた融資の負担がのしかかる。一方で、育成に3年かかるポトスの鉢植えを来春、出荷できるめどが立った。高橋さんは自分に言い聞かせるように口を開いた。「もう一息頑張らないと」【宮田哲】

鬼怒川被災者ら、国に3・3億円賠償求め提訴 2015年の茨城豪雨
(産経新聞2018.8.7 12:20)http://www.sankei.com/affairs/news/180807/afr1808070010-n1.html

宮城、茨城、栃木の3県で8人が死亡した2015年9月の関東・東北豪雨で、茨城県常総市の鬼怒川の堤防決壊などによる水害に遭ったのは河川管理の不備が原因として、周辺住民らが7日、管理者の国に計約3億3500万円の支払いを求めて水戸地裁下妻支部に提訴した。
弁護団によると、原告は被災した19世帯と1法人。家財、建物の損害や慰謝料などを請求した。
鬼怒川は豪雨の際、常総市若宮戸で大規模に水があふれ、同市三坂町では堤防が決壊し、市総面積の約3分の1に当たる約40平方キロが浸水。5千棟以上が全半壊し、市内では2人が死亡した。
訴状によると、若宮戸地区には元々堤防がなく、砂丘林が自然の堤防になっていた。だが、掘削や建物を建築する際に河川管理者の許可を必要とする「河川区域」に国が指定せず、豪雨前に太陽光発電事業による掘削を放任したと指摘。その後の治水対策も不十分だったと訴えている。
また、三坂町で決壊した堤防の高さは周辺に比べて低く、経年による沈下が進んでいたのに、国が改修を急がなかったと主張。両地区からあふれた水は市中心部を流れる八間堀川の氾濫要因にもなり、被害を拡大させたとしている。
国土交通省関東地方整備局の担当者は「訴状が届いておらずコメントできない」としている。

孫を守れなかった…長年の悲願、そのダムすら越えた土砂(治山ダムは有効か)

2018年7月16日
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西日本豪雨では、広島市安芸区に今年2月に完成したばかりの治山ダムを大量の土砂が越え、団地の住民4人が亡くなりました。その記事を掲載します。
全国で砂防ダム、治山ダムが何十万基とあり、これからも限りなく建設されようとしていますが、砂防ダム、治山ダムに本当に意味があるのか、改めて考える必要があります。

孫を守れなかった…長年の悲願、そのダムすら越えた土砂
(朝日新聞2018/7/15(日) 21:17配信) https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180715-00000080-asahi-soci
2014年、広島市内で77人が死亡した土砂災害を経て、同市安芸区に今年2月に完成したばかりの治山ダム。しかし、西日本豪雨で大量の土砂がダムを越え、団地の住民4人が亡くなった。ダムの建設を10年以上、要望してきた男性の18歳の孫も行方不明に。「ダムができて安心してしまったんよ」。やりきれない思いが消えない。

【写真】梅河団地奥の治山ダム=2018年7月15日午後、広島市安芸区矢野東7丁目、小川智撮影

広島市安芸区矢野東7丁目の梅河(うめごう)団地。豪雨に見舞われた6日夜、約60棟の民家のうち約20棟が土砂にのまれ、倒壊した。

団地に住む神原(かんばら)常雄さん(74)は、10年以上前から「砂防ダム」の必要性を市に訴えてきた。

きっかけは、1999年6月、広島県内で32人の死者・行方不明者が出た豪雨だった。知人の工場にも土砂が流れ込み、犠牲者が出た。「同じことになっちゃいけん」と考えた。

気になっていることもあった。団地の端の、山の斜面に接した部分に深さ2メートルほどのため池があった。引っ越してきた四十数年前、ここでコイを飼っていたが、雨が降るたび少しずつ浅くなる。三十数年で池は砂で埋まった。山の斜面が削れ、池に砂がたまっていったのでは――。「これは危ない」と神原さんは動き始めた。

市役所に足を運び、「砂防ダムを造ってほしい」と訴えた。「通い続けていると、だんだん『切実なんじゃねえ』と取り合ってくれるようになった」

14年8月、広島市の安佐南区、安佐北区で77人が犠牲になる土砂災害があり、いよいよ、行政の動きも加速した。昨年8月、県は梅河団地の奥で土石流を未然に防ぐ「治山ダム」の建設に着手。予算4750万円。幅26メートル、高さ8メートルのダムが今年2月、完成した。

着工直前に団地の集会所で開かれた説明会。「これで安心じゃね」と住民らが言葉を交わす中、県や市の職員が繰り返しこう訴えていたのを、神原さんは覚えている。

「これで安心できるわけではありません。何かあったら必ず逃げて下さい」

■「安心してしまったんよ」

団地が土砂に襲われる数時間前の、今月6日午後。神原さんは高校の期末試験を終えた孫の植木将太朗さん(18)を車で迎えに行き、同じ団地内の孫の家まで送った。

夜になり、雨が強まった。孫の家は50メートルほどしか離れていないが、山の斜面に近い。外出していた将太朗さんの母親に電話し、将太朗さんを自分の家に避難させるよう伝えた。「すぐに行かせる」と返事があった。

その数分後、「ドドーン」という音が響いた。外を見ると、土砂が崩れ、山側の家々が潰されていた。半壊した隣家から「助けて」と叫び声が聞こえた。降りしきる雨の中、隣の家の人を窓から必死で引っ張り出した。避難してくるはずの将太朗さんの姿は、どこにも見えなかった。

「あと1分、わしが早く電話していたら、助かっていたかもしらん」。「いくら役所の人に『安心しちゃいけん』と念押しされてもね、やっぱりダムができてうれしかったし、安心してしまったんよ」。そう振り返る。

あの後、崩れた団地を歩き回り、将太朗さんの名前を呼んでみた。返事はなかった。

「山の上の岩が数千年そこにとどまっていたとして、それが明日落ちてこない保証はない。しょうがないんよ。そう思うことにしている」

自分に言い聞かせるように、神原さんは繰り返した。(土屋香乃子、半田尚子)

■広島県内のダム整備

広島県によると、県内には「砂防ダム」が約2千基、「治山ダム」が約7500基ある。砂防ダムは、大雨で土石流が起きたときに土砂をせき止める役割を担う。一方、治山ダムは、崩れる恐れがある山の谷部分などに設置され、谷に土砂を堆積(たいせき)させることで傾斜を緩くし、森林を維持することで土石流を起きにくくするのが目的という。

14年の広島市の土砂災害を受け、県や国は県内74カ所で砂防ダムや治山ダムの建設などの対策を計画、今年5月までに66カ所が完成している。

梅河団地奥の治山ダムを7日、確認した県によると、ダムは決壊しておらず、大量の土砂がたまっていたという。担当者は「ダムとしての一定の機能は果たした。ダムがなければ、今回の被害はもっと大きかったはずだ」と話す。(永野真奈)

治水の教訓/土地の歴史を共有せねば(神戸新聞社説)

2018年7月12日
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今回の西日本豪雨はすさまじい水害でした。NHKニュース7月11日 22時57分は、今回の記録的な豪雨で、これまでに全国で175人が死亡し、62人の安否が不明であると報じています。
そして、きわめて多くの方が避難所での生活を余儀なくされ、生活再建に苦悩しています。また、断水により、日常生活に支障をきたしている地区が数多くあります。

今回の記録的な豪雨で浮き彫りになったことはダムが肝心の時に役に立たないことであり、もう一つは、住んでいる土地の安全性の問題です。
後者の問題を指摘する神戸新聞の社説を掲載します。

この点であらためて注目すべきは滋賀県の流域治水推進条例です。2014年3月に当時の嘉田由紀子滋賀県知事がつくりました。
「氾濫の危険のあるところに極力住まないようにする、住むならばそれなりの対応策をとること」を具現化した条例です。
しかし、残念ながら、その後、滋賀県のほかに流域治水推進条例を制定する自治体は出てきていません。また、国土交通省もそのような動きがありません。

治水の教訓/土地の歴史を共有せねば
(神戸新聞2018/07/1)2https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201807/0011437332.shtml

西日本豪雨は九州から東海まで広範囲にわたって災害をもたらした。温暖化による気候変動で、河川の氾濫や大規模な土砂崩れがどこにでも起こりうることを痛感させられた。
ただ、甚大な被害を受けた場所には、過去にも水害に襲われていた所も少なくない。住んでいる土地ではどういう災害が起きやすいかを知り、命を守るための備えを強化したい。
岡山県倉敷市真備町地区では高梁川の支流の堤防が決壊した。地区の3割に当たる1200ヘクタールが浸水し、家屋にいた高齢者ら40人以上が犠牲となった。
同地区は1972年にも洪水被害を経験している。市は浸水域を示すハザードマップを各世帯に配布し、氾濫を防ぐために支流の合流地点を変える工事が秋に始まる予定だった。
そうした地区の特性が、住民に十分伝わっていたのか疑問だ。決壊の危険性が十分に認識されていれば、避難を早め多くの命が救われた可能性がある。
広島市では山裾の住宅団地が土石流に襲われた。4年前にも別の山裾で大規模な土砂災害があり、何度も土石流が重なった上に住宅が造成されたことが明らかになっていた。
同様の危険性がある急斜面の住宅団地が市内に多数あり、対策の必要性が指摘されていた。今回の現場に教訓が生かされていたのか、検証が必要だ。
家を建ててはいけない所という伝承が、開発の中で消える。災害の歴史を伝える地名が市町村合併などで変わってしまう。
土地の評価が下がるからと、過去の災害情報は積極的に公表されてこなかった。結果、水害の危険性が高い場所に建てられた病院や学校も珍しくない。経済成長の中で、先人の教訓が日本中で軽んじられてきたことも省みるべきだ。
今回の水害では、ダムの放流や流木で被害が拡大した例も多く見られる。土砂が蓄積してダムの貯水力が失われていることや、人工林が荒廃しているといった上流の実態も、下流の住民の命にかかわる情報だ。
総合的な治水を進めるために歴史と教訓を地域全体で共有し、災害に強い地域づくりに生かしていかねばならない。

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