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石木ダムの情報

主文 審査請求を棄却する  (石木ダム事業認定取消請求裁決)

2021年1月11日
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2013年10月7日から7年2ヶ月経ちました。

裁決書

審査請求人
住所 ・・・・・・・・
氏名 ・・・・

上記審査請求人(以下「請求人」という。)が、平成25年10月7日付けでした
審査請求について、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第40条第2項の規
定に基づき、次のとおり裁決する。
なお、この裁決の取消しを求める訴えは、裁決があったことを知った日の翌日から起
算して6か月以内に、国を被告として提起することができる。ただし、裁決があったこ
とを知った日の翌日から起算して6か月以内であっても、裁決の日、の翌日から起算して
1年を経過したときは、裁決の取消しの訴えを提起することができない。

主文
審査請求を棄却する。
事 実

1 審査請求に係る処分
長崎県及び佐世保市が起業者である二級河川川棚川水系石木ダム建設工事並びにこれ
に伴う県道、町道及び農業用道路付替工事(以下「本件事業」という。) に関し、
九州地方整備局長(以下「処分庁」という。)が平成25年9月6日付けでした事業
の認定(九州地方整備局告示第15 7号。以下「本件処分」という。)

2 審査請求の趣旨
本件処分を取り消す、との裁決を求める。

3 審査請求の理由
本件審査請求の理由の要旨は、次のとおりである。

以下、当方(審査請求者)の審査請求に付した意見書と、処分庁の弁明書に対する当方からの反論書に記した反論に記した意見書とを基に審査庁が作成した、審査請求の理由が続いている。

その後に、裁決主文「審査請求を棄却する」の理由を記した、理由 が長々と記されている。

上にその冒頭部分を紹介した、2020年12月11日付けの裁決書(国土交通大臣 赤羽一嘉)が、石木ダム事業認定取消を求める審査請求人に届きました。
審査請求を提出したのが2013年10月7日ですから、7年2ヶ月が経過しての裁決です。これだけ時間をかけての審査なのですが、裁決理由は処分者(事業認定処分庁である九州地方整備局長)の弁明書記載事項の丸写し、もしくは、その補修文を貼り付けたうえで、「ダム建設案(申請案)が最も合理的であるとした処分庁の判断が不合理であるとは認められない。」と結論づける文ばかりでした。

行政不服審査法は、その主旨として、第1条で「この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを開くことによつて、簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。」としています(2014年に若干表現が変更がある)。「簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を図る」のであるからには、「処分庁の判断が不合理であるとは認められない。」では困ってしまいます。この事業によって、事業地居住民の生活の場を未来永劫に亘って奪い取るからには、「処分庁の判断が不合理であるとは認められない。」というのではまったくく不十分です
ダム事業予定地に指定されていなければ、事業地に居住されている皆さんが生活の場を追われる羽目にはならなかったからです。これらの裁決理由からは、生活の場を奪い取るほど必要性がある事業なのか否かをしっかり検証することを意識した裁決とは読み取れないからです。

今回の国土交通大臣による「審査請求棄却」裁決の取消を求めるには、国を被告として2020年12月11日の6ヶ月以内に提訴することになります。事業認定取消訴訟は不当にも2020年4月に「上告棄却」が決定しています。すでに事業認定に関する司法の判断は決定していますが、行政不服審査請求棄却裁決は新たな行政処分であることから、石木ダム対策弁護団と「事業認定取消を求める審査請求規約裁決取消訴訟」についてしっかり相談しようと考えています。(遠藤保男)

裁決書 20201211 PDF版 (送付された書類紙面をコピー)
裁決書 20201211 WORD版(反論記載用 審査請求理由と裁決理由、それへの反論をセットとして記載 判決理由への反論はこれから書き込み、取消訴訟に備える。)

事業認定取消を求める審査請求 関連書類

2013年10月7日審査請求段階

2015年1月15日 審査請求書への処分庁弁明書とそれへの反論関係

2017年5月17日「認定庁の公害等調整委員会からへの質問に対する回答」と当方からの反論

2019年1月16日 公害等調整委員会

 

 

 

 

 

 

 

“悪夢”が繰り返される可能性は? 1994年 「佐世保大渇水」 答はゼロ 

2020年12月11日
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1994年の「佐世保大渇水」の悪夢が繰り返される可能性?という記事をお送りしますが、この記事は問題の問いかけだけで、答が書いてありません。

その答は「繰り返される可能性はゼロ」です。

それは下図のとおり、佐世保市水道の給水量が1994年当時と比べて、大幅に小さくなっていて、同程度の渇水では給水制限をほとんど行わなくてもよいレベルになっているからです。


悪夢が繰り返される可能性は? 1994年 「佐世保大渇水」 石木ダム建設事業と水不足

(長崎新聞2020/12/6 11:00) https://this.kiji.is/708120468955774976?c=174761113988793844

 

(写真)少雨が続いた佐世保市では1994年8月1日に南部地区から給水制限が始まった。住民はバケツに水をため、節水を強いられた=同市大塔町

長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業。市は慢性的な水不足を理由にダムの必要性を訴える。引き合いに出されるのが1994年の「佐世保大渇水」。給水制限が264日間に及び、「佐世保砂漠」と呼ばれる事態に陥った。当時を振り返り、“悪夢”が繰り返される可能性はあるのか探った。

1994年8月1日。佐世保市には、目に見えない南北の“境界線”が引かれた。
空梅雨の影響で、水源に乏しい南部地区では貯水量が見る見る減った。市は水の供給を一定時間に制限する対策を決行。市職員ら約160人が、約8万1100人が暮らす南部地区へ向かい、各家庭や商店の止水栓を閉めて回った。
給水時間は1日10時間に設定。8月7日以降は5~6時間に短縮した。住民はこぞってポリタンクを購入。水が出る時間帯には職場を離れ、自宅の浴槽やバケツなどに水をためる姿もあった。シャワーや洗濯の残り水はトイレにも使い回し、節水を強いられた。
飲食店やホテルは大型タンクを設置するなどして営業を継続。学校や福祉施設、観光地…。あらゆる場所に影響は広がった。
住民の苦労や不安をよそに、太陽は容赦なく照り続けた。南部地区唯一の水がめ、下の原ダムの貯水率は20%を割り、さらに危険な水域へと入っていった。

■給水 1日わずか3時間 直近26年間は制限なし

佐世保の水不足は、急激に深刻さの度合いを増していった。
1994年8月24、25両日の計48時間、佐世保市は給水をわずか5時間に絞る措置を断行。さらに、26日以降は1日3~4時間に減らした。各地で渇水が問題化していたが、市の対策は「全国一厳しい」と言われた。水が出る時間帯は猫の目のように変わり、住民は困惑した。

(写真)給水時間に合わせた止水栓開閉作業の様子=1994年10月、佐世保市京坪町

市内の水道網は南部と北部で別々に敷設され、双方で融通ができなかった。
その境界にある稲荷町の理髪店は、わずか数百メートルの距離で南部に区分けされた。店長の瀬脇勝一さん(87)は「バケツのお湯を電動ポンプでくみ上げて洗髪していた。同じ市民なのに南北で生活環境がまるで違った」。店先から見える北部の町並みをうらやみながら眺めていた。
9月6日。給水制限はいよいよ15万1300人が住む北部地区に広がり、市内全域が対象に。市職員だけでは止水栓の開閉作業が間に合わず、10月25日からは各町内会に作業を委託した。祇園町一組の町内会長だった林俊孝さん(75)は「開栓が遅れると地域住民の関係が悪化しかねない。いやな仕事だった」。苦々しい表情を浮かべた。
水不足は消防活動にも影を落とした。各地の貯水池が干上がる可能性があり、消防隊員は担当区域を回り、消火に使えそうな水源を各自のノートにまとめ、警戒感を強めた。
給水制限下で惨事は起きた。12月4日早朝、市中心部の住宅地で火災が発生。いち早く駆け付けた60代男性は、ためていた水を掛けたが、「どうにもならなかった」。消防隊によって鎮火されたが、計4棟が全焼し、焼け跡から家族4人の遺体が見つかった。
当時消火栓は使用できる状態だったため、市消防局は「給水制限の影響はない」との認識を示した。ただ火災記録には初期消火は「なし」と記載された。現場にいた職員は言う。「放水は初期消火の基本。水道が使えない状況はリスクになる」
給水制限は翌年4月26日に解除され、市民はようやく渇水の長いトンネルを抜けた。市が投じた緊急対策費は約50億円に上った。その後も水不足の恐れは度々あったが、この26年間で、止水栓を閉める事態には至っていない。大渇水を教訓に南部と北部の水道管は一部連結され、一定量の融通が可能になった。
それでも、石木ダムの建設を推進する市民団体の寺山燎二会長(82)は「水源が乏しいことに変わりはない。ダムは暮らしの安心感になる」と訴える。
美容室を営み、当時、子育て中だった50代女性は「水がないと衛生環境を守れない。もし今渇水が起きたら、新型コロナウイルス対策との二重苦になる」と心配する。
石木ダムの建設で問題は解決するのか-。そう問い掛けると、女性は首をかしげて言った。
「それは分からない」

 

【混迷の石木ダム】長崎県知事、佐世保市長、 川棚町長のインタビュー記事

2020年11月24日
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長崎新聞が【混迷の石木ダム】というタイトルで、5人のインタビュー記事を連載しました。

2人は石木ダム絶対反対同盟の岩下和雄さんと石木川まもり隊の松本美智恵さんで、そのインタビュー記事は別稿をお読みください。。

残りの3人は行政側で、中村法道・長崎県知事、朝長則男・佐世保市長、山口文夫・川棚町長です。この3人のインタビュー記事を掲載します。

この記事を読んで最も腹立たしく思うのは、朝長佐世保市長の次の答えです。

-なぜ石木ダムが必要なのか。

朝長市長:1994年に大渇水が起きた。給水制限が264日間に及び、48時間のうち5時間しか水が出ない過酷な状況もあった。当時を知る市民は減ったが、あの苦しみは二度と経験させたくない。

-人口減少社会の中で、佐世保市の水需要予測は「過大」との指摘もある。

朝長市長:私たちは国の指針に基づいて予測し、国から事業の補助金をもらっている。国に認められた予測であり、市が独断で決めていない。

朝長市長は26年前に起きた大渇水を持ち出していますが、その後、佐世保市の水需要はどんどん減って、一日最大給水量は当時の73%にまで落ち込んでおり、仮に同程度の大渇水が来ても、問題になりません。

また、佐世保市がいまだに続けている水需要の架空予測について「国に認められているのだから」問題がないと、朝長市長は強弁していますが、ダム計画がなければ、実績乖離の予測をするはずがありません。

一方で、この架空予測を容認する国(厚生労働省)に対して強い憤りを覚えます。

 

【混迷の石木ダム】インタビュー・中村法道知事 代替案なく不退転の決意

(長崎新聞2020/11/19 11:53) https://this.kiji.is/701995600895968353

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業。事業採択から45年の歳月が流れ、県は家屋などを強制撤去できる行政代執行の一歩手前まで手続きを進めてきた。だが今も水没予定地に暮らす13世帯は反対の姿勢を崩さず、事態は混迷を深めている。互いが納得する形で解決する余地はないのか。中村法道知事に聞いた。
球磨川水害に関する意見書 水源連 1117
 -事業が進まない要因と県の責任をどう考えているのか。

 川棚川の治水の安全性確保と佐世保市の慢性的な水不足解消のため「ダム建設に依(よ)らざるを得ない」と、地元住民の理解が得られるよう歴代知事や職員が何度も戸別訪問するなど努力を重ねてきた。この間、1982年に強制測量を実施し、行政に対する不信感が相当大きくなったのは事実。この点について当時の高田勇知事はのちに「ご心労、ご迷惑をお掛けした」旨の発言をされており、私たちも同じ思いを申し上げてきた。ただそうした経過の中でも8割の地権者の方々から土地を提供していただいた。住民の安全安心の確保が強く求められる中、ダムがいまだに完成していないことに強く責任を感じている。

 -ダムの治水、利水効果について県・佐世保市と反対住民の主張は溝が深いが、埋められると思うか。

 これまでに河川の氾濫が起きた降水量には現在進めている河川改修で対応できるが、それ以上の100年に1度かつ最も危険な雨の降り方でも、住民の生命・財産を守るという水準で事業を進めている。利水では人口は減少しているのに水の需要予測が過大と指摘されているが、一定の余裕量は必要。全国のダムも同様に推計されている。時間をかけて説明すれば理解していただけると思う。だが事業を白紙に戻さなければ話し合いに応じないといった主張が繰り返され、耳を傾けてもらえない状況が続いており非常に残念だ。

 -県幹部は昨年9月以来の知事との面談を働き掛けているが、住民は先に工事の中断を求めている。

 大規模災害が頻発するような状況では一刻も早い環境整備は行政の責務。話し合いが進まなければ工事再開もあり得る、との前提で話し合うことはあるかもしれない。実現すれば、まずはダムの必要性を理解してもらうことが最も重要になる。幾通りもの選択肢の中から今の案を選んできた経過があり、さまざまな疑問に答えられる。

 -知事は行政代執行について「(2022年3月までの)任期中に方向性を出したい」と述べている。

 住民の理解を得て事業を完成させるのがベスト。行政代執行は最後の最後の手段。状況の推移を見極めながら総合的かつ慎重に判断したい。

 -行政代執行に踏み切れば、県も世間から批判されダメージは大きい。現実的な選択肢になり得るのか。

 新たに50戸以上の移転を伴う河川拡幅や、海水淡水化装置の導入など、相当コスト高になってもダム以外の手法を選択するという県民・市民の意見が多く出てくれば話は別だが、現実的に考えると代替案はない。不退転の決意で事業に臨まなければならないと考えている。行政代執行がやむを得ない局面となれば、批判やお叱りを甘んじて受ける覚悟で進めなければならない。

 -それは政治生命を懸けるという意味か。

 行政代執行をするのであれば、まさに政治生命を懸けた決断が必要になる。

 

【混迷の石木ダム】インタビュー 朝長則男 佐世保市長 渇水の苦しみ 二度と

(長崎新聞2020/11/21 14:00T) https://this.kiji.is/702714763617387617

(写真)朝長則男 佐世保市長

 -なぜ石木ダムが必要なのか。

 戦前から佐世保は、旧日本海軍が造ったダムに頼りながら発展した。戦後は米軍や自衛隊の基地ができ、造船で工業化も進んだ。急激に人口が増える中、十分な水を確保できない状態が続いていた。そうした中、1994年に大渇水が起きた。給水制限が264日間(8月1日~95年4月26日)に及び、48時間のうち5時間しか水が出ない過酷な状況もあった。当時を知る市民は減ったが、あの苦しみは二度と経験させたくない。備えとして、石木ダムで必要最小限の水を確保したい。

 -反対する住民らと真剣に向き合ってきたか。

 市長就任直後の2007年5月から毎月現地へ出向き、(反対する)13世帯を戸別訪問するなどしてお願いを続けた。当初は耳を傾けてくれる住民もいたが、09年に事業認定を申請してから態度が厳しくなった。何度も怒鳴られたりして、警察を含め周囲から「危ない」と注意を促された。以来、訪問を控えているが、(住民を説得したい)気持ちは変わらない。

 -知事は昨年9月に反対住民と面談した。市長はしばらく対面していない。

 県に対応を任せており、知事から同席を求められればいつでも出向く。ただ、(反対派との)行政訴訟も続いており、今は議論をするタイミングではないとも感じている。

 -事業への理解が深まらない要因は。

 反対する住民には理解してもらえないが、佐世保市民と川棚町民の大半は事業の必要性を理解している。(反対する)市民団体は、住民への同情や、ダム自体を認めたくないという考えもあるのかもしれない。(理解の程度を)ひとくくりには言えない。

 -人口減少社会の中で、佐世保市の水需要予測は「過大」との指摘もある。

 私たちは国の指針に基づいて予測し、国から事業の補助金をもらっている。国に認められた予測であり、市が独断で決めていない。

 -代替策はないのか。

 コストを無視し、いくらでも公金を使えるのであればあるのかもしれない。ただ、海水淡水化装置にしても漁業者との調整など多くの課題が出てくる。さまざまな可能性を調査した上で石木ダムが最適という結果が出た。漏水対策や再生水の活用などの取り組みも続けているが、まとまった水量を確保できるダムの代替策としては「現実論」にならない。私から建設の中止を言い出すことはない。

 -県は、家屋などを強制的に撤去する行政代執行も選択肢の一つとする。行政代執行を認めるか。

 総合的な要素の中で知事が最終的に判断すること。現段階で私が言及することはないが、これまでの知事の発言は支持する。

 -市は行政代執行を知事に請求できる。任期中に請求する考えはあるか。

 市民や議会から「知事に言うべき」と求められれば、知事に相談するかもしれない。ただ、今はそこまでの状況とは考えていない。


【混迷の石木ダム】インタビュー<完> 【混迷の石木ダム】インタビュー<完> 山口文夫 川棚町長 状況打開 難しい

(長崎新聞2020/11/23 13:54) https://this.kiji.is/703472377812485217?c=39546741839462401

(写真)山口文夫 川棚町長

 -用地の取得が完了した現在も、13世帯約50人の町民が住み続けている。地元町長として現在の状況をどう見ているのか。

 町では11人の死者を出した1948年をはじめ、複数回の水害を経験した。現在も川棚川下流域に住んでいる町民は多く、治水は重要な課題だ。石木ダムへの協力を長らくお願いしてきたが、13世帯の皆さんに理解してもらえず残念に思う。先祖代々受け継いだ土地を離れたくないという強い思いがあるのだろう。だが、すでに移転した8割の住民にも同じく古里への強い思いがあり、苦渋の選択をした。移転者からは「先祖が眠る墓を掘り起こす時が一番苦しかった」「私たちの決断は何だったのか。やりきれない気持ち」「提供した土地が無駄にならないようにダムの早期完成を望んでいる」という声を聞いた。どちらに対しても行政の責任がある。

 -就任当初からダム推進を訴えてきた。ダム問題についてどう取り組んできたのか。

 就任した2010年は事業認定申請後で、表立っての行動はできなかった。民主党政権下で全国のダム事業の再検証があり、さまざまな方法を議論した結果、やはり石木ダムが最も現実的だと思った。この時期に地元住民と知事の公開討論会を設けることができ、議論は6時間に及んだ。私自身さまざまなルートを使って反対住民との接触を試みたが「町は関係ない」と言われたりして糸口をつかめなかった。反対住民の弁護団が結成され、法廷闘争に移って以降、町として動くのがさらに難しくなった。

 -地元町長として状況打開に動く考えはないのか。

 非常に難しい。残念ながら説得する機会すら持てない状況だ。数年前、水没予定地の川原地区の自治会長から「町長として県に反対を訴えてほしい」と要望を受けた。今までになかった動きだったので、町政懇談会で話し合おうと打診したが断られた。現在、川原地区の住民は土地の権利を失っているが、住んでいる以上は町民であり、町として自治会活動を支援する責務がある。こうしたつながりを通して、何とか話し合う機会を捉えたいが。

 -昨年の町議選では川原地区の反対住民が最多得票で当選した。ダムを巡る町民世論をどう見ている。

 これまでもダム反対を訴える議員はいたが、町議会では過去3回ダム推進が決議された。地権者の8割が移転し、歴代町長も推進の立場だ。こうした状況を総合的に判断して、ダムの必要性を理解している町民が多数とみている。

 -県は家屋などを強制撤去する行政代執行も選択肢から除外しない構えだ。万が一、代執行となった場合に町としての対応は。

 現段階で知事は「早期に話し合いに応じてもらえるように粘り強く呼び掛ける」と述べている。その姿勢を評価しているし、私自身代執行は望まない。話し合いで何とか解決できないかと思っている。代執行は知事の判断であり、今の段階で私がコメントすべきではない。町としては町政懇談会に応じてもらい、協力してもらうようにお願いするしかない。

 

石木ダム建設絶対反対同盟の岩下和雄さんと、石木川まもり隊の松本美智恵さんのインタビュー記事

2020年11月24日
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有害無益な石木ダムを中止させるために活動を続けている石木ダム建設絶対反対同盟の岩下和雄さんと、石木川まもり隊の松本美智恵さんのインタビュー記事を掲載します。

 【混迷の石木ダム】インタビュー 絶対反対同盟 岩下和雄さん 「話し合い」今が機会

(長崎新聞2020/11/20 12:15) https://this.kiji.is/702358070994617441?c=174761113988793844

(写真)岩下和雄さん

-石木ダム建設事業に反対する理由をあらためて。

ひと言で言うと、私たちの生活を犠牲にするだけの効果も利益もないから。川棚川の治水は堤防補強と河底のしゅんせつで十分対応でき、その方が安くて早い。県は当初「河川改修に30~40年かかるが、ダムはもっと早い」と説明した。初めから河川改修すれば、今ごろ完了していたはずだ。

-佐世保市の利水については。

計画当初、同市は将来的に日量17万トンの水が必要だから石木ダムの6万トン(現在は4万トン)で補うと言っていたが、今年の給水実績は多くて日量7万トン弱。もう必要なくなったということ。どうしても足りないというなら、地下ダムなどの方法もある。市の水需要予測は必要以上に多く、実際の保有水源も過小評価だ。

-県は「話さえ聞いてくれれば、理解してもらえる」と主張している。

だったら強引な方法をやめて、私たちの同意を得るべきだ。1972年の予備調査前には「地元の同意を得てから建設する」と約束した覚書も交わしたのに破られた。私たちは「必要性の話し合いならいつでも応じる」と言ってきた。応じなかったのはむしろ県側。移転を前提にした補償交渉しかしようとしなかった。

-今後、県側と「話し合い」のテーブルに着くための条件はあるのか。

現時点の工事の中断。県は「白紙撤回」が条件ととらえているようだが、そんなことは言っていない。話し合いの結果として白紙に戻ることを望んでいる。県もダム建設を望むなら、両者で対等に意見を交わし、私たちの同意を得てから工事を再開すればいい。「工事は続ける。話し合いに応じろ」は対等と言えない。

-ダム用地の地権者の8割は同意した。

最初から移転を望んでいた人もいる。絶対反対同盟から移転した人は22世帯のうち9世帯で半分に満たない。彼らも個別の事情で移転したのであり、ダムに賛成したかのように言いはやすのはおかしい。

-県は行政代執行も選択肢から除外しない構えだ

ありえない。全国的に見て、これだけの人が実際に生活を営む土地での代執行は、ダムに限らず例がない。強行すれば、これまでダムに関心がなかった人にも支援の輪が広がるだろう。だから県は工事をストップしてでも、私たちと話し合う必要がある。今が一番いいタイミングではないか。本当は強制収用前に話し合ってほしかったが。

-13世帯の結束に変わりはないのか。

何ら変わらない。むしろこれまでの強硬策で、県への不信感は大きくなった。私たちは移転しても、今のように地域に溶け込んだ生活はできない。それぞれに老後の計画や夢もあったのに、10年前に付け替え道路工事が始まってからは現場で抗議する毎日。みんなで広場に集まり、グラウンドゴルフを楽しむこともできなくなった。老後の生活がダムで犠牲になったことは悲しい。一日も早くこの問題が解決することが、一番の願いだ。

 

【混迷の石木ダム】インタビュー 石木川まもり隊・松本美智恵さん 市民生活困っていない

(長崎新聞2020/11/22 09:57) https://this.kiji.is/703048208706372705

(写真)石木川まもり隊 松本美智恵代表

-活動を始めた経緯は。

2008年に埼玉県から佐世保市へ移り住んだ。当時から、「石木ダムは市民の願い」とアピールする市の姿勢に疑問を感じていた。市民とは一体誰なのかと。ダムの勉強会に参加し、建設予定地の住民が「なぜ佐世保の犠牲にならなければならないのか」と訴える姿にショックを受けた。水事情を調べるうちに、新しいダムが必要なほど市民は生活に困っていないと分かった。多くの人と情報を共有するため、09年にホームページを立ち上げ、市民団体の代表として活動を始めた。

-佐世保市は水不足に備えるために石木ダムが必要だと主張している。

人口減少に伴い、全国各地で水の需要は減る。これは国が認める厳然たる事実。佐世保市の昨年度の一日最大給水量は約7万4千トンで、20年前と比べて3割近く減っている。市民が飲み水にも困るような状況であればともかく、私たちは普段通りの生活ができている。市は事故や災害などの備えとしてダムが必要と言っているが、「もしも」のために、現地で暮らしたい人々の居住権や生活権を奪っていいはずがない。

-石木ダムは市民生活の安心につながるのではないか。

ダム本体の事業費は285億円だが、佐世保市は関連施設の更新を含めて(概算値で)総額445億5千万円を負担する。これには、国の補助金も含まれるが、巨額の事業であることに代わりはない。水道料金は施設整備や維持管理などの費用を基に決まるので、将来的な値上げは目に見えている。ダムに多くのお金を使うことで、老朽化した水道施設の更新などに手が回らなくなる心配もある。こうしたマイナスの側面は市民に知らされていない。

-佐世保市は18年度決算時点で約127億円の事業費を使った。建設を中止すれば無駄にならないか。

過去に投じた事業費は戻らない。それでも、これから確保しなければならない莫大(ばくだい)な予算を削減できる。本来はダムの予算を別の水源対策に当てるべきで、佐世保市は雨水や再生水の活用が、(先進的な)他都市と比べて遅れている。ダム以外の方法で水を確保しようとする姿勢が見えない。

-知事や佐世保市長に何を求めるか。

まずは工事を中断し、反対する住民が求める「ゼロベース」の話し合いに応じるべきだ。どうしてもダムが必要というならば、逃げずに対話をしてほしい。

-行政代執行に対する懸念は。

行政代執行は住民の生活を破壊する行為。絶対にやるべきではないが、民主国家の日本で決断できるはずがない。むしろ恐ろしいのは、県がこのままお金と時間を浪費し続けること。反対する住民が高齢化し、力尽きるのを待ち続けるかもしれない。住民に苦しみを与え続けてダムを造り、佐世保市民には重い財政負担を強いる。それが最悪のシナリオではないか。

最高裁、石木ダム国事業認定取り消し棄却 住民「それでも闘う」

2020年10月13日
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腹立たしい限りですが、石木ダムの水没予定地の住民らが国に事業認定取り消しを求めた訴訟で、最高裁が住民側の上告を退ける決定をしました。

その記事とニュースを掲載します。

(最高裁判所からの決定通知、住民側からの「最高裁決定に対する声明」はこちらを参照願います。)

住民らはこれとは別にダム工事そのものの中止を求める裁判も起こしていて、今月から福岡高裁で控訴審が始まっています。

 

石木ダム 住民敗訴確定 事業認定取り消し訴訟 最高裁、上告退ける

(長崎新聞2020/10/13 11:00)https://www.47news.jp/localnews/5367342.html

(写真) 石木ダム建設予定地周辺。現在も反対住民13世帯約50人が暮らしている=9月9日、東彼川棚町(小型無人機ドローン「空彩4号」で撮影)

長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、水没予定地の住民らが国に事業認定取り消しを求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(小池裕裁判長)は、住民側の上告を退ける決定をした。ダムの必要性を一定認め、住民側を敗訴とした一、二審判決が確定した。

決定は8日付。通知文によると、原判決に憲法違反や重大な手続きの不備がある場合に最高裁に上告できると規定した民事訴訟法の条項に照らして、住民側の上告理由は「該当しない」として棄却した。

石木ダムは佐世保市の慢性的な水不足解消と川棚川の治水が主な目的。県と同市は土地収用法に基づき、全用地の権利を取得したが、現在も水没予定地には事業に反対する13世帯が暮らしている。

住民らは2015年11月に「必要性のないダムで土地を強制収用するのは違法」として国に事業認定取り消しを求め、長崎地裁に提訴した。利水、治水両面でのダムの必要性が主な争点になったが、同地裁は18年7月、佐世保市の水需要予測や県の治水計画を「不合理とは言えない」と判断。ダムの公益性を一定認め、住民側の請求を棄却した。

控訴審の福岡高裁も一審判決を支持。「事業によって得られる公共の利益は失われる利益に優越する」として19年11月、住民側の訴えを退けた。

住民側は上告理由書で「誤った事実を基礎とする事業計画は違法で、違法な事業により、国民の意思に反して財産を奪うのは違憲」などと主張したが認められなかった。

 

 最高裁、石木ダム国事業認定取り消し棄却 住民「それでも闘う」

(西日本新聞2020/10/13 6:00) https://www.nishinippon.co.jp/item/n/653737/

石木ダム予定地

長崎県川棚町に県と佐世保市が計画する石木ダム建設を巡り、反対する住民らが国の事業認定取り消しを求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(小池裕裁判長)は住民側の上告を退ける決定をした。8日付。住民側敗訴とした一、二審判決が確定した。

同町川原(こうばる)地区の石木ダム建設予定地で暮らす原告は、最高裁の決定に憤りと落胆をにじませながら、反対運動を継続する思いを口にした。

「川原地区13世帯の人権はどうでもいいのかしら。現場を一度も見ることなく決定するなんて」。岩永みゆきさん(59)は納得がいかない表情。川原房枝さん(79)も「主張を聞いてもらって判断が下されると思っていた。少しだけ望みを持っていたので心外」と残念そうに話した。

住民は長崎県と佐世保市に工事差し止めを求める訴訟も起こしたが、今年3月の一審判決で請求棄却されるなど敗訴が続いている。

「八方ふさがりたい…」。岩下秀男さん(73)は言葉を詰まらせたが「それでも闘い続けることに変わりはない」と言い切った。

予定地の住民の土地や建物は土地収用法の手続きを経て、2019年に国が所有権を取得。県の行政代執行による強制収用も可能となった。住民が毎日のように座り込んでいる場所の近くでは、本体着工に向けた県道付け替え工事が進む。

「今回の結果を受けて県側が勢いづくかもしれないが、こちらは絶対に動かない。座り込みは続ける」。岩本宏之さん(75)は淡々とした口調で、固い意思を示した。

一方、中村法道知事は「ダム建設事業の公益上の必要性について、理解が得られ、早期にご協力いただけるよう、努力を続けたい」とコメントした。 (岩佐遼介、徳増瑛子)

  

石木ダム「事業認定取り消し訴訟」住民敗訴確定

(NBC長崎放送2020/10/13(火) 11:58配信)https://news.yahoo.co.jp/articles/dd9a74949adf7a4d13e11c3d5ffb32e1566799a2

(映像あり)

石木ダム建設予定地に住む住民らが国を相手に土地の強制収用の根拠となっている「事業認定」の取り消しを求めていた裁判で最高裁判所は住民側の上告を退けました。この裁判は、国が石木ダムを土地収用法に基く「事業」と認定したことに対し住民側が「佐世保の水道水は足りていて川棚川の洪水対策も河川改修で対応できるためダムは必要ない」などとして「事業認定」の取り消しを求めていたものです。裁判では一審、二審とも利水面・治水面でのダムの必要性を認め建設によって得られる公共の利益は損失よりも大きいとして住民らの請求を棄却。判決を不服として住民側が去年12月に上告していました。最高裁第一小法廷は今月8日付で上告を退ける決定を行い住民側の敗訴が確定しました。なお、住民らはこれとは別にダム工事そのものの中止を求める裁判も起こしていて、今月から福岡高裁で控訴審が始まっています。

 

長崎・石木ダム訴訟で住民側敗訴確定 最高裁上告退ける

(毎日新聞2020年10月13日 西部朝刊)https://mainichi.jp/articles/20201013/ddp/041/040/003000c

長崎県川棚町に県と佐世保市が計画する石木ダム建設を巡り、反対する住民らが国の事業認定取り消しを求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(小池裕裁判長)は住民側の上告を退ける決定をした。8日付。住民側敗訴とした1、2審判決が確定した。

石木ダムは佐世保市の水不足解消や、川棚町の治水を目的に計画。国は2013年に事業認定し、反対住民らが15年に提訴した。1審の長崎地裁は18年7月に請求を棄却し、2審の福岡高裁も支持した。

1、2審はいずれも利水・治水面でダムの必要性を認めていた。

 

長崎新聞 論説 (2020/10/15)

 

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