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石木ダム事業認定取消訴訟判決を迎えるにあたって「私も一言」のお願い

2018年6月18日
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 石木ダム事業認定取消訴訟判決を迎えるにあたって「私も一言」のお願い
石木ダム建設絶対反対同盟を支援する会 水源開発問題全国連絡会

2013 年 9 月 6 日に国土交通省が石木ダム事業認定を告示しました。事業認定により、石木 ダムの起業者(長崎県と佐世保市)が、こうばる地区で生活されている皆さん 13 世帯の土地 と住居、共有地権者の共有地を収用することが法的に可能となりました。

すでに 4 軒の農地の 一部については補償金受け取りを拒否しましたが、起業者は供託して収用してしまいました。 長崎県収用委員会が残りすべての土地と家屋について収用・明渡裁決をこれから出すことにな りますが、13 世帯の皆さんは絶対に土地と家屋を明け渡さないと言明しています。ただし、補 償金受け取りを拒否しても起業者は供託することで収用してしまいます。家屋の取り壊しも可 能になります。

私たちは 2013 年 12 月に石木ダム対策弁護団を立ち上げ、先ずは自主解決を目指して、起 業者に対して石木ダムの必要性を明らかにすることを求めました。公開質問書の提出⇒起業者 からの回答⇒回答の説明会で質疑応答を各 3 回繰り返しました。2014 年 7 月、「川棚川は石木 ダムなしで戦後のすべての洪水に対応できる」と中村法道知事が明らかにしました。しかし、 治水・利水両面での必要性の説明に詰まるや、起業者は公開質問書への回答を拒否するように なりました。

やむなく 109 名の原告が 2015 年 11 月 30 日に長崎地方裁判所に石木ダム事業認定取消を求 める訴訟を提起しました。2016 年 4 月 25 日に第 1 回の口頭弁論、以来 2 年近くを経た 2018 年 3 月 20 日の第 13 回口頭弁論で裁判長は「これを以って結審とし、判決は 7 月 9 日午後 3 時」 と言い渡しました。
この石木ダム事業認定取消訴訟の中で、原告団・弁護団・支援者が一体となって、石木ダ ムの治水・利水目的が「石木ダムありき」のために作り上げたものであり、合理性は全くない ことを立証してきました。 これまでの訴訟の進行から、「事業認定を取消す」判決を私たちは確信していますが、多く の人がこの判決に関心を持ち、石木ダム事業認定取消を願っていることを裁判所に意思表示す ることが大切と考えています。

石木ダム対策弁護団はこの活動に際して、「事業認定取消訴訟のご報告」を緒方 剛 弁護士が発表しています。訴訟の経過が分かり易く報告されています。是非、ご一読ください。
「私も石木ダム事業認定取消を願っている」という趣旨の裁判所への葉書を投函いただくようお願いいたします。

「裁判所へ一言伝えたい」と思われる方は、「水源連だより80号」もしくは「こうばるからこんにちは8号」に同封された葉書を用いて、6月中には投函されるようお願いいたします。
葉書をお持ちでない方は、下記書式を使って投函されるようお願いいたします。

裁判所へ私も一言 郵便はがき用
裁判所へ私も一言 白紙葉書用紙用

印刷済みの白紙葉書用紙をご希望の方は、下記水源連事務局に一報をお願いします。

この件の問合せ先

水源連事務局
電話・FAX  045-877-4970
メール   mizumondai@xvh.biglobe.ne.jp

石木ダム事業、石木ダム関連訴訟の参照ページ

石木ダム問題のホームページ

石木ダム事業認定取消訴訟のホームページ

事業認定取消訴訟のご報告  弁護士 緒方 剛

1 はじめに

2018年3月20日、石木ダムの事業認定取消訴訟の第1審の審理が終わりました。 そこで、現在までにこの裁判で明らかになってきたことについてご報告させていただきます。
弁護団の毛利弁護士は、結審の日にこれまでの審理内容を整理し、弁護団としての意見を述 べさせてもらいました。以下の内容はその際の意見陳述の内容に少しだけ加筆したものです。

2 裁判の内容

この事業認定取消訴訟は,国が行った石木ダムの事業認定(強制収用をすることを認める行 政手続)の取消を求めるものです。 この裁判で、被告国は,石木ダムは,佐世保市の水道用水を確保するという利水面と,川棚 川の洪水対策という治水面の二つの点で必要性が高いので事業認定をしたとの主張をしてき ました。 しかし,これまで私たちは,2015年11月30日の提訴時以来,2年以上にわたって利 水面,治水面,いずれにおいても石木ダムの具体的な必要性は,全く存在しないことを主張し てきました。 そして,私たちは,既に提出した主張と証拠によって,石木ダムの具体的な必要性がないこ と,少なくとも,被告が,石木ダムが必要であることを何ら具体的に立証できていないことに ついては十分明らかにできたと考えていました。さらに,昨年12月と今年1月の計3日にわたり実施した3人の証人尋問によって,そのことが,さらに一層明確になったと確信しており ます。 以下、順番に、利水面と治水面について、これまでに明らかになった事情をご報告いたし ます。

3 利水面において石木ダムの具体的な必要性が全くないこと

最初に,石木ダム事業の利水面についてです。 佐世保市が主張する石木ダムの必要性とは,
①平成24年度の水需要予測により,将来的に 水需要が大幅に増えること,しかし,②現在の佐世保市の保有水源ではその需要をまかなうこ とができないという2点に尽きます。

(1)①平成24年度予測について

私たちは,まず,過去の佐世保市の水需要予測を検討した結果,平成24年度予測の内容 を検討するまでもなく,その内容がでたらめであることを指摘しました。
なぜなら,私たちが資料を入手できた佐世保市の過去6回の水需要予測においては,
①毎 回,需要予測の手法や数値がころころ変わり,そこに論理的一貫性や整合性は全くないこと、
②いつの時代の水需要予測においても,その当時の石木ダムの計画規模に見合う水の供給量 が必ず不足するという結果になっていること,
③そして,いつの時代の水需要予測も,その 後の実績値と大きくかけ離れた過大な需要予測であることが共通しているからです。 過去6回の需要予測が,その後の実績値と見事なまでに大幅に外れていること,その一方 で,その需要予測値がその当時の石木ダムの利用容量に見事なまでに一致することは,佐世 保市の水需要予測が,もっぱら石木ダム建設の必要性を捻出するために意図的に作成された ものであることを明確に物語っています。
そして,本件事業認定の根拠となっている平成24年度予測の内容を詳細に検討したとこ ろ,やはり石木ダム建設の必要性を捻出するという結論ありきのでたらめなものであること がはっきりしました。
佐世保市の平成24年度予測は,㋐生活用水,㋑業務営業用水,㋒工場用水の用途別予測, また,㋓負荷率や安全率の設定,いずれもが,何らの客観的根拠に基づかない不合理極まり ない数値を採用しています。 まず,㋐生活用水について,佐世保市は,渇水により市民は水を使うのを我慢しており, 生活用水の原単位量は,佐世保市と人口規模が類似する他都市と比較して最も少ないと主張 しました。しかし,当時の平成24年度予測の作成責任者であった田中証人の証言により, 受忍限界を超えていることに全く根拠はなく,他の14都市との比較アンケートについても, 杜撰で不合理であることが明らかになりました。 次に,㋑業務営業用水の小口需要では,佐世保市は,観光客数との相関が高いので,将来 的に人口が減少していくにもかかわらず,水の使用量が右肩上がり に増加すると予測して います。しかし,佐世保市の田中証人は,過去の予測では観光客数との相関に基づく予測を 一切採用しなかった理由,平成24年度予測から突如予測手法を変更した理由について,い ずれも「分からない」と答えるか,黙り込んで実質的な証言を拒否しました。同じタイミン グで,ハウステンボスを大口需要から小口需要に分類変更した理由についても矛盾した証言 しかできませんでした。また,被告の事業認定にお墨付きを与えた小泉教授でさえ,業務営 業用水の小口需要と観光客数との相関は,決して高くなく,「あるかないかといったらある」 程度にすぎないと証言せざるを得ませんでした。 そして,㋒工場用水については,平成24年度予測のでたらめさを象徴する工場用水の大 口需要であるSSKの予測については,佐世保市が,売上高が2倍になるから水需要が4. 88倍に増えるという虚偽記載をしていたことは既に明らかになっています。 田中証人の尋問により,SSKの需要予測は,SSKが自ら必要水量を具体的に算定し, 佐世保市に要望したものではないこと,佐世保市がSSKに事前に必要水量をきちんと問い 合わせることなく,何らの具体的な裏付けもとらずに,勝手に推計した机上の計算にすぎな いものであることが明らかになりました。SSKの需要予測は,客観的データに基づかない, 佐世保市による完全な創作であり,さらに言えば,捏造に近いとさえ言いうるものです。 ㋓負荷率,安全率についても,平成24年度予測から突然変更されているのですが、その 合理的理由や妥当性について,田中証人及び小泉教授は一切説明できませんでした。

(2)②保有水源について

以上のようなでたらめな需要予測をまかなうための保有水源が足りないという主張につい ては,佐世保市が,慣行水利権を保有水源から除外した理由について,私たちは,そもそも佐 世保市の主張が何らの法的根拠や客観的根拠がない間違ったものであることを主張してきま した。 今回の証人尋問でも,田中証人は,その合理的理由を一切説明できず,被告の主張とも矛盾 する支離滅裂で不明瞭な証言を繰り返しました。慣行水利権を保有水源から除外しないと,石 木ダム建設の必要性が出てこないからであることがより一層明らかになったと言えます。 なお,被告は,佐世保市の水需要予測の妥当性を担保するために2人の学者に意見書作成を 依頼しています。このうち,東京大学の滝沢教授は,証人尋問を拒否し,敵前逃亡したので論 外ですが,証人尋問に応じた首都大学東京の小泉教授も,意見書は,佐世保市のプレゼン資料 だけを鵜呑みにして,自らは文献やデータなどを一切調査もせず,佐世保市の言い分が正しい という前提で書いたことを証言しました。2人の意見書は,佐世保市の見解をオウム返しにす るだけの御用学者の極みのような代物です。

4 治水面において石木ダムの具体的な必要性が全くないこと

次に治水面についてです。 治水面においては,①計画規模,②基本高水流量,③ダムによる効果の3点のいずれの点に おいても,石木ダム建設の具体的必要性がないことが明確なものとなりました。

(1)①計画規模 計画規模を設定するための長崎県評価指数というものがあるのですが、これは全国的な比較 や全国的基準と比較すると異常なもので、ダムを造るために恣意的に設定されています。 また,計画規模を設定するための基礎とした多くの事情のうち、唯一河道状況のみ昭和50 年当時のものを用い,他のものは全て平成17年当時のものを用いています。この間(昭和5 0年~平成17年)に、河道の整備が行われ、氾濫する見込みの面積はずっと小さくなってい るはずなのです。どうしてこんなことをしているかというと、昔の河道を用いた方が、広い範 囲で洪水被害が生じる予測ができる一方で、最近の資料を用いた方が洪水時の被害金額などを 多くすることができるためです。長崎県はダムを造るために都合の良い数字だけを拾い集めて 使っているのです。 そして,計画規模はダム事業計画に着手するや、理由なく3倍以上に跳ね上がっているとい った恣意的な設定変更がなされているのです。
(2)②基本高水流量(洪水時に想定される流量) 長崎県は、技術基準に沿って治水計画を策定したと主張します。しかし、技術基準が求める 1時間当たりの降雨量(降雨強度)が生じる確率について,あえてこれを検討していません。そ の結果,実際には500年~1000年に一度しか生じないような異常に大きな流量を基本高 水流量として設定しています。すなわち,長崎県は技術基準が求める検討(棄却検定)をあえて 回避し,非現実的な流量を基礎とした治水計画を策定しているのです。 また、自ら計画規模に応じた1時間当たり最大雨量の予測をしていたにもかかわらず、これ と矛盾するような(大幅に上回る)最大雨量となる降雨予測波形を使って異常に大きな流量を 作成しているのです。長崎県は、本当は100年に1度という確率では基本高水流量とされる 流量とならないことは分かっているのですが、ダムを造るためにあえて過大な流量を設定した のです。 言い換えれば、このようにしてまで非現実的な流量を設定しなければ,石木ダム建設の必要 性が捻出できなかったことが明らかになりました。
(3)③石木ダムの効果 石木ダムによらずとも過去に生じた全ての洪水を防ぐことができます。そればかりか,万が 一基本高水流量として設定されている異常な流量となる降雨があっても計画堤防高よりも低 い水位で川を流下することができます。
さらには,長崎県が検討したという治水代替案は客観的・合理的に検討されたものではあり ません。加えて,既往洪水にて問題となった内水氾濫・支流氾濫への石木ダムの効果は一切検 証されていないのです。すなわち,石木ダムによって治水上現実的な効果があるかどうかは検 討されていないのです。 そして,長崎県が想定する洪水が発生した場合でも、ダムが効果を発揮する堤防高を超える 流量となるのは僅か1時間にも満たない時間のみです。それ以外の場合には全くダムは役に立 たないのです。 このため、長崎県の意見を前提としても、㋐100年に一度の頻度で生じるかもしれない豪 雨時に,㋑僅か1時間に満たない時間帯にて,㋒堤防高ではなく計画高水位(計画上予定する 水位)を僅かに超える水位となることを防ぐためにのみ石木ダムが必要だと主張されているの です。 (4)ダムありきの検討しかなされていない 長崎県の治水責任者浦瀬証人は,本件石木ダム計画は,昭和50年の段階でダムを造るとい うことは確定しており,その後はこれを作ることを前提に技術基準や中小河川改修の手引きに 整合する体裁となるように「確認」をしただけであることを明言しています。 ゼロベースでの見直しなど全く行っていないのです。 川棚川の河川整備方針,整備計画のいずれも単に形式的に数字合わせを行っただけで,具体 的な必要性の有無の検討など行われていません。 これを真摯に検討していれば,石木ダムの必要性がないことは明白ですし,事業認定をなす こと自体不合理であることは被告国も分かっていたはずです。

5 まとめ

このように,石木ダムの具体的な必要性は,利水面,治水面いずれも存在しないことが証拠 上はっきりとしました。 結局,石木ダムの必要性とは,「水はたくさんあればそのほうがいい」,「防災対策はあるに こしたことはない」というレベルの必要性にすぎないのです。 具体的な必要性もないのに,13世帯の地権者を強制的に排除してまで,巨額の費用をかけ て、具体的必要性のない石木ダムを建設するなど、社会的常識としては考えられないことです。 また多くの長崎県民,佐世保市民も,そのような暴挙を望んではいません。 この違法不要なダム建設事業の事業認定を取り消すことは、裁判所の責務です。裁判所が公 正中立な立場なのであれば、本事業を即座に中止すべきであること、事業認定を取り消すべき であることは十分に理解してもらえたはずです。 2018年7月9日には、第1審の判決が言い渡される予定となっています。良心にしたが った適切な判決が出されることを強く期待しています。

以上

 

 

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