水源連:Japan River Keeper Alliance

水源開発問題全国連絡会は、ダム建設などと闘う全国の仲間たちのネットワークです

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八ッ場ダム建設工事の事業認定申請に向けた説明会の開催

2015年1月16日
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国交省関東地方整備局は未買収の八ッ場ダム予定地の強制収用に向けて事業認定申請の説明会を開催することを14日、発表しました。
水没予定地に住んでいる住民に圧力をかけようという魂胆です。関東地方整備局は形振り構わず、強硬姿勢をとろうとしています。

◇一級河川利根川水系八ッ場ダム建設工事の事業認定申請に向けた説明会の開催

(関東地方整備局HP)http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/yanba_00000043.html
一級河川利根川水系八ッ場ダム建設工事については、これまで多くの地権者のご協力を得て、平成26年12月末現在で約92パーセントの用地を取得し、順次工事を実施しているところです。
残る用地については、地権者の方々との交渉を重ねているところですが、一部の土地において、現時点では任意取得が困難な状況となっています。このため、任意での交渉だけではなく、土地収用法に基づく用地取得も視野に入れ、所要の手続きに着手することとしました。
つきましては、事業認定申請に向け、土地収用法第15条の14に基づき、当該事業の目的及び内容に関する説明会を下記のとおり開催することとしましたのでお知らせします。
開催日時:1月24日(土) 14時~15時30分(受付開始:13時30分)
会場:長野原町総合運動場 若人の館

別紙・参考資料

八ツ場、土地収用手続きへ 24日地権者らに説明会

〔上毛新聞 2015年1月14日(水) )http://www.raijin.com/ns/2015011401001879/news_zenkoku.html
国土交通省は14日、群馬県長野原町の八ツ場ダムで、強制収用を可能とする土地収用法の適用に向けた手続きに着手すると明らかにした。ダム本体の完成までに所在不明の地権者が多数いる共有地の取得を目指すという。
土地収用法に基づいた事業認定を申請するため、24日に地元で地権者や住民らに対し、事業の説明会を開く。
国交省によると、昨年末までに、ダムに必要な用地のうち約92%を取得している。担当者は「現在連絡の取れる地権者の土地については、あくまで話し合いでの任意取得を目指す」としている。

八ツ場ダムは21日、ダム本体のコンクリート打設に向けた基礎掘削工事を始める。(共同)

八ッ場ダム:完成へ動き加速 本体工事など、来年度予算案119億円 /群馬
(毎日新聞群馬版 2015年01月15日) http://mainichi.jp/area/gunma/news/20150115ddlk10010195000c.html
政府が14日に閣議決定した2015年度予算案に、八ッ場ダム(長野原町)の本体工事と生活再建関連予算として約119億円が盛り込まれた。
21日からはダムの基礎掘削工事がスタートし、事実上の本体工事に入る見込み。
建設予定地内の未買収用地については、強制収用につながる手続きが始まる。度重なる工期延期や建設中止宣言などの紆余(うよ)曲折を経た八ッ場ダムは今年、完成に向けた動きが加速しそうだ。【角田直哉】
国土交通省は当初、昨秋の本体工事着工を目指していたが、大雨の影響で吾妻川を迂回(うかい)させる工事に遅れが生じ、年明けにずれ込んだ。ダム完成は予定通り「2019年度中」を見込む。
国交省八ッ場ダム工事事務所によると、これまでに約92%の用地を取得済み。残る一部の用地については地権者との交渉による任意取得が難しく、土地収用法の適用も視野に入れた手続きを始めるという。
水没予定地には移転を拒んで住み続けている住民もいる。土地収用法では、国交相から事業認定を受けて正当な補償など所要の条件を満たせば、公共目的で強制収用して住民を立ち退かせることができると定めている。
国交省は、事業認定申請に向けた説明会を24日午後2時から長野原町与喜屋の町総合運動場・若人の館で開催する。八ッ場ダム工事事務所は「幅広くダム事業の必要性について理解を求める」という。
一方、地元から要望が出ていた起工式については、2月7日午前11時から若人の館で開催することが決まった。大沢正明知事は起工式について「大きな節目であり誠に喜ばしい。今後、工事が着実に進み、一日も早くダムが完成することを引き続き国に要求していく」との談話を発表した。

直轄ダム及び水資源機構ダムの平成27年度予算案

2015年1月15日
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1月14日(水)に、成27年度予算案が閣議決定されました。

直轄ダム及び水資源機構ダムの予算案も発表されました。
直轄ダム水機構ダムの平成27年度予算案のとおりです。
補助ダムも実際には予算額の案が決まっているのですが、予算案が国会を通って箇所付けが発表されるまで、公表されません。

石木ダム計画、県の立ち入り調査阻止 地権者ら抗議「話し合いを」 (長崎県)

2015年1月14日
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何とも腹立たしい話ですが、石木ダム計画で長崎県が、4世帯の家屋・土地の強制収用を可能にする裁決申請のため、立ち入り調査を昨日(1月13日)強行しようとしました。地権者や支援者たちが抗議して阻止しました。西日本新聞と読売新聞の記事をお送りします。
昨日の抗議行動は石木川まもり隊のブログ http://blog.goo.ne.jp/hotaru392011 をご覧ください。
石木ダム計画、県の立ち入り調査阻止 地権者ら抗議「話し合いを」 (長崎県)
(西日本新聞長崎版 2015年01月14日) http://www.nishinippon.co.jp/nnp/nagasaki/article/138990
(写真)立ち入り調査に来た県職員(右の2人)に「ダムはいらない」「まず話し合いを」と抗議する地権者や支援者たち
立ち入り調査に来た県職員(右の2人)に「ダムはいらない」「まず話し合いを」と抗議する地権者や支援者たち

県と佐世保市が川棚町に計画する石木ダム事業をめぐり、県は13日、建設予定地の収用裁決申請に必要な調査や測量のため反対地権者が所有する家屋や農地に立ち入ろうとしたが、地権者や支援者たちの抗議を受けてこの日の調査を見送った。県は16日までの調査を通知しており「引き続きお願いする」としている。

調査は土地の強制収用を可能にする裁決申請のための手続きで、今回は4世帯の家屋・土地と2世帯の土地で、対象面積は計3万800平方メートル。
県職員や測量業者ら約40人は再三、複数のルートから予定地付近を訪れ「地権者の不利益にならないよう調査が必要」「事業認定されたことでダムの必要性は認められている」と調査に応じるよう求めたが、各所で地権者たちが阻止。
地権者たちは「私たちが納得できる話し合いをするのが先だ」「平行線だからといって強行するのか」と口々に訴えた。
家屋が調査対象となっている岩下秀男さん(67)は「必要のないダムは税金の無駄遣いでしかない」。帰省していた娘の甲斐久仁子さん(34)も幼い子どもたちと抗議行動に加わり「人として、古里を思う心はみんな分かり合えるものだと思う。石木ダム問題を広く知ってもらうことから始めたい」と話した。
県は昨年9月、付け替え道路工事に必要な別の4世帯の農地について裁決申請し、現在、収用委員会が審理している。

県、立ち入り調査できず 石木ダム 阻止行動で

(読売新聞長崎版 2015年01月14日)http://www.yomiuri.co.jp/local/nagasaki/news/20150113-OYTNT50071.html
(写真)立ち入り調査に訪れた県職員ら(手前)を拒む地権者ら

県と佐世保市が計画している川棚町の石木ダム建設事業で、県は13日、ダム予定地にある反対地権者の所有地への立ち入り調査を行おうとしたが、地権者や支援者の阻止行動を受け、この日の着手を断念した。

調査は未買収用地の強制収用に向けた手続きの一環で、補償額を算定するための家屋調査や測量を行うもの。県は実施期間を16日までと設定しているが、地権者側は阻止行動を続ける方針。
今回、対象となっているのは、未買収となっている反対地権者13世帯の住宅地や農地など約15万平方メートルのうち、昨年11月に収用手続きが開始された5世帯の約3万平方メートル。対象には4世帯の家屋も含まれる。
13日は午前9時半に県職員や委託業者ら約40人が現地に到着。地権者や支援者ら約60人が「強制収用は許さない」などと書かれた横断幕や看板を掲げて道路を遮り、立ち入りを拒んだ。
県石木ダム建設事務所の古川章所長が「適正な調査が行えなければ皆さんの不利益となる。協力をお願いします」と理解を求め、地権者側が「土地は売らない。まずは話し合いをしなさい」などと答える押し問答が15分ほど続いた。その後も県側は対象地に入ろうと複数回試みたが、いずれも地権者らに阻止された。
ダム事業を巡っては、国が2013年9月、土地収用法に基づいて事業認定し、県は用地の強制収用に向けた手続きが可能となった。今回の用地に先だって収用手続きが進んでいた農地5400平方メートルについても、県は昨年7月に立ち入り調査を試みたが、地権者側の阻止行動で断念。県は1980年に国土調査法に基づいて作成された図面を代用して、昨年9月に所有権移転に向けた裁決申請を行っており、今回も同様の経過をたどる可能性がある。
古川所長は「今回の対象には家屋が含まれており、調査が行えなければ外観などから最低限の推定しかできず、補償額の算定で地権者が不利益を被る」と主張。一方、今回の対象用地の家屋で妻と暮らしている岩下秀男さん(67)は「利水、治水のどちらの面でもダムは必要ない。このままここに住み続ける」と語気を強めた。

反対派が測量調査を阻止

(長崎新聞 2014年1月14日)  http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150114-00010004-nagasaki-l42
(写真)県側の立ち入りを拒否する調査対象の地権者、岩永さん(中央)=13日午前11時2分、川棚町
反対派が測量調査を阻止
長崎県が東彼川棚町に計画している石木ダム建設事業で、県は13日、反対地権者13世帯のうち4世帯の家屋と土地などの収用裁決申請に向け、測量調査のため現地に立ち入ろうとしたが、地権者ら反対派約70人から阻止され、この日は調査を見送った。
県が同事業で家屋の強制収用に向けて具体的な行動を取るのは初めて。調査は16日までの予定で、14日も立ち入りを試みる。
調査対象は4世帯の家屋、土地のほか農地などを含む計3万平方メートルで、地権者は6人。県は昨年11月25日、対象地の収用裁決申請に向けた準備に着手。1年後を期限に県収用委員会に裁決申請できる。調査は申請に必要な土地調書と物件調書の作成に必要な手続き。
午前9時半から反対派が対象地に出入りできる3カ所で待機。県石木ダム建設事務所(同町)の古川章所長が家屋鑑定コンサルタント、測量業者ら約40人とともに対象地に近づくと、地権者の代表格、岩下和雄さん(67)が「ダムには反対。測量は阻止する」と声を上げた。古川所長は調査への協力を求めたが、対象地内に農地を所有する岩永正さん(63)が「何回来ても絶対に(土地は)売らない」と突っぱねた。
県はこの日、2ルートから計5回、対象地への立ち入りを試みたが、いずれも反対派が阻止した。
県側はこの日のやりとりで、対象の地権者6人全員が拒否の意思を文書で提出すれば調査を中止する可能性も示唆。地権者側は「調査をやめるのならば14日に文書を提出する」としている。

石木ダム建設:測量調査、地権者が立ち入りを阻止 強制収用裁決申請へ 期間は16日まで /長崎

(毎日新聞長崎版 2015年01月14日)http://mainichi.jp/area/nagasaki/news/20150114ddlk42010533000c.html
県と佐世保市が川棚町に計画している石木ダム建設事業を巡り、県は13日、反対地権者4世帯の家屋や土地などの強制収用裁決申請に向け、測量を目的とした立ち入り調査を試みたが、地権者らに阻止され、この日の調査を断念した。県は16日までを調査期間としている。
13日午前9時半ごろ、県石木ダム建設事務所の古川章所長ら職員と測量業者ら約40人が建設予定地に到着すると、地権者や支援者ら約60人は横断幕や看板を掲げ、調査対象の土地に通じる道を封鎖。「帰れ」「土地を奪うな」などと気勢を上げた。
古川所長は「ご協力お願いします」などと同意を求めたが、地権者は「県知事は話し合いに応じよ」などと述べ、阻止した。
立ち入り調査は、裁決申請に必要な調書を作成するために必要で、対象は地権者4世帯の家屋を含む用地約3万平方メートル。県は昨年7月にも他の地権者の農地約5400平方メートルの立ち入り調査を試みたが阻止され、断念していた。
古川所長は「測量調査への協力を要請し続けたい」と話すが、地権者の岩永正さん(63)は「うちの水田は前の代から受け継いできた土地。前々から売らんと言い続けている」と県の対応に憤っている。【梅田啓祐】

子供の声消えた 産業衰退過疎止まらず(中止になった細川内ダムの計画地)

2015年1月4日
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2000年に中止が決まった徳島県の直轄ダム「細川内ダム」の計画地「旧木頭村」について読売の記事の続きです。

多くの山村は過疎化の問題に直面していますが、もし細川内ダムができていたら、旧木頭村は過疎化が一層進んでいたのではないでしょうか。
元村長の藤田恵さん(水源連顧問)のお話しも紹介されています。
子供の声消えた
(読売新聞 2015年01月04日)http://www.yomiuri.co.jp/osaka/feature/CO012651/20150104-OYTAT50005.html
 
産業衰退過疎止まらず
「メーン」「ドォー」
元日の朝、徳島県旧木頭村(きとうそん)(現那賀(なか)町)の体育館。小学生たちの剣道場「木頭錬心館」の初げいこは、帰省したOBらも加わり、約40人でにぎわった。
広場が少ない山あいでもできる剣道は、戦前から盛んだった。村民らが平家の落人の血を引いているからだとの伝承まであり、「村技」と言われてきた。
特産のユズを加工販売する会社「黄金の村」を作った藤田恭嗣(やすし)(41)も小4の頃から通った。当時は約30人が練習に励み、県大会の団体戦で優勝を重ねた。
だが、今では6人に減り、チームを組むことさえ難しい。「村で子供の声をほとんど聞かなくなった。寂しいもんです」と、約40年間ボランティアで指導してきた岡田豊(60)は嘆く。
深刻な過疎は、若年層がやせ細った、極めていびつな人口構成に表れている。
村の面積の98%は山林。人口が現在の3倍の4115人とピークだった1965年当時、基幹産業の林業は、国の「拡大造林」政策で活況に沸いた。補助金を受け、建材やパルプ用の木材を大量に切り出し、スギやヒノキの苗を植える。それでも木材は不足し、どんどん値上がりした。
林業に従事した元村議の田村好(よしみ)(84)は、当時の様子を鮮明に覚えている。
どの山も人手が足りず、他県から出稼ぎが押し寄せた。宿舎となる旅館は10軒ほどあり、映画館もあった。父が営む商店では酒やたばこが飛ぶように売れ、「今年の売り上げは400万円」と聞かされた。サラリーマンの平均年収が40万円余りだった頃の話だ。
田村は振り返る。「徳島市に出て『木頭から来た』と言えば、なんぼでもお金を貸してくれた。木頭は、金持ちの代名詞やった」
伐採された木を引き取る業者には当時、木材引取税が課せられた。村が得た税収は63年度、1018万円で、歳入全体の1割を占めた。村の財政は潤った。
64年の木材輸入の全面自由化で、安価な「外材」が流通し始め、時代の時計はカチリと音を立てた。
76年秋、台風の豪雨で6人が死亡する大規模な山崩れが起き、復旧工事が急ピッチで始まった。4年後、林業からの転職が進んだ建設業の就業人口は林業を追い越した。その結果、国が村内で計画する「細川内(ほそごうち)ダム」への期待も高まったのだ。
だが、建設業は今、公共事業の削減で苦境と向き合う。木頭にある5業者の受注額は、98年度の17億円から、2012年度には7億円に激減。県建設業協会那賀支部参事の川原武志(69)は「明るい話題は何ひとつない」とこぼす。
「平成の大合併」も、大きな変化をもたらした。
村は05年、那賀川下流の4町村と合併した。役場の本庁がある最下流の旧鷲敷(わじき)町まで、車で1時間。「木頭支所」は地域振興室だけになり、かつて60人以上いた職員は10人に減った。
副支所長の北岡仁志(56)は「決定権もマンパワーもなくなり、地域のことを地域で決められなくなった」と複雑な心境を明かす。
木頭にある2小学校と1中学校の児童・生徒数は現在、57人。唯一の高校分校は05年春に廃校となり、今年、中学を卒業する6人全員が木頭を出ていく。
産業が廃れ、人材も減る現状に、かつて「ダムに頼らない村づくり」を進めた元村長の藤田恵(75)は「たった一人でいい。『村を活気づけたい』とがむしゃらになれる人間がいれば、流れは変わるはず」と話した。そして、こう続けた。
「過疎化は何十年も前から続いてきた、この国の構造的な問題。私らがじたばたしても、変わらんかった。止めるんは、ダムよりずっと難しかった」(敬称略)
少子化により、日本の人口は2008年の1億2808万人をピークに減少に転じた。地方では、大都市圏への転出が人口減に拍車をかけている。
民間の研究機関「日本創成会議」は昨年5月、2010~40年の30年間に、全国の半数の市区町村で、出産の中心世代となる20、30歳代の女性が半分以下に減るとの推計を発表。これらの自治体を「消滅可能性都市」と呼んだ。人口流出の要因として、働く場が少ないことを挙げた。
那賀町の若年女性数は、522人(10年)から85人に減ると推計され、減少率は83.7%。四国で最も高く、全国でも13位だった。全国ワースト1は、群馬県南牧(なんもく)村の89.9%だった。
(写真)木頭錬心館の初げいこで黙想する子供ら。普段は6人の道場も、大勢が帰省してにぎわった(1日)

(写真) 山あいを流れる那賀川に沿って点在する旧木頭村の集落(昨年12月、本社ヘリから) 記事へ(写真)山あいを流れる那賀川に沿って点在する旧木頭村の集落(昨年12月、本社ヘリから)

計画浮上47年「もう限界」 住民生活設計できず 城原川ダム(佐賀)

2015年1月4日
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佐賀県の直轄ダム「城原川ダム(じょうばるがわダム)」は計画浮上から47年、半世紀が迫ろうとしており、必要性があるとは思われません。中止を決定して地元の生活再建策を進めるべきです。
=国策と地方=(4) 城原川ダム
(佐賀新聞2015年01月04日 ) http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/141802
■計画浮上47年「もう限界」 住民生活設計できず
「治水は喫緊の課題」-。昨年10月、佐賀市で城原川ダム(神埼市)の会議が開かれた。九州地方整備局幹部は冒頭と最後のあいさつで、「差し迫って重要」を意味する「喫緊」を繰り返した。だが、その言葉と事業のスピード感は一致しない。この日の流域自治体と協議する「検討の場」の準備会の再開でさえ、3年10カ月を要した。
計画浮上から47年、半世紀が迫ろうとしている城原川ダム。住民はダム建設をめぐり賛否を争ってきた。当初、城原川の洪水対策と都市用水確保などを目的にしていたが、当時の井本勇知事が2001年に利水を断念し、焦点は治水の必要性に移った。
03年、知事に就いた古川康氏は、流域委員会や首長会議の場を設けた。05年には「環境と治水が両立する未来型」として、洪水時にだけ水をためる治水専用の「流水型ダム」建設を国に申し入れた。この時点で30年以上の月日が流れ、住民は建設推進派、反対派ともに「やっと決着した」。安堵(あんど)感をにじませていた。
ところが国交省が提案の結論を出す前に、「コンクリートから人へ」を掲げた民主党が09年に政権を獲る。城原川ダムは再検証の対象となり、再び建設計画が止まった。その後、具体的な検証は進まず、計画は宙に浮く。12年末に自民党政権に戻っても進展なく、再開した準備会も代替案の検証結果は示されなかった。
「もう、限界」。準備会を傍聴したダム水没予定地の地区住民らでつくる「城原川ダム対策委員会」の眞島修会長(77)は、言葉を絞り出す。地区は高齢者ばかり、家屋もぼろぼろ。将来の生活設計さえ、できないままだ。「すぐにダム問題に取り組んでくれる人を選びたい。でも、誰もダムに触れない」
候補者の訴えで聞こえてくるのは子育てや教育、産業振興…。治水対策としてダムの必要性を問う佐賀新聞社の調査に、4候補の答えは分かれる。
飯盛良隆候補は「今後の自然災害を計算上の理論で防ぐことはできない」と必要性を否定。樋渡啓祐候補は近年の集中豪雨に触れ「治水対策には万全を期す必要があり、ダムは有効な手段」と指摘する。山口祥義候補と島谷幸宏候補は賛否を明確にせず、山口候補は「早急にダム事業の検証を進めてもらいたい」、島谷候補は「環境、文化財、治水効果などを総合的に検討しないと分からない」。
池田直氏、香月熊雄氏、井本氏、古川氏-。知事が4人交代してもなお、結論が出ない城原川ダム問題。「古川さんも、国の方針が出たら…と受け身で、大きなウエートがなかった感じを受けた。次の知事にはもっと国へ積極的な提案をしてくれることを期待したい」と、ダムによらない治水対策を訴える「城原川を考える会」の佐藤悦子代表(61)。
賛成、反対によらず、一致するのは「この問題、そして住民を置き去りにしないで。早く結論を」との思い。住民は悲痛な思いを抱きながら、知事選を見つめている。
「ダム早期建設着手」を訴える看板横に貼られた知事選ポスター。車で少し走ると「反対」の看板も立つ=神埼市脊振町岩政倉今
(写真)「ダム早期建設着手」を訴える看板横に貼られた知事選ポスター。車で少し走ると「反対」の看板も立つ=神埼市脊振町岩政倉今

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