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山鳥坂ダム2026年度の完成は困難【愛媛県】

2021年5月16日
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国土交通省が愛媛県の肱川に建設中の山鳥坂(やまとさか)ダムの完成が2026年度より遅れる見通しになったというニュースを掲載します。

このニュースの元になっているのは「『令和3年度 山鳥坂ダム工事事務所 ダム事業費等監理委員会』の 審議結果について 令和3年5月14日

https://www.skr.mlit.go.jp/yamatosa/kisya/pdf/210514.pdf」です。

この資料の3ページを見ると、付替県道に関する工事用道路は進捗度が86%で、まだ完成せず、仮排水トンネル等のダム本体工事はその先のことになっています。

そして、この記事に書かれているように(この資料の11~13ページ)、ダムサイト右岸下流域で大規模な地すべりが発生する危険性があることが判明して、その対策が必要となったのですから、ダムの完成は予定の2026年度よりかなり遅れると思われます。

肱川では2018年7月の西日本豪雨で野村ダムと鹿野川ダムの緊急放流により、ダム下流域は大氾濫し、凄まじい被害が発生しました。

肱川大氾濫の主因は肱川においてダム偏重の河川行政(山鳥坂ダムの建設推進)が続けられ、河川改修を後回しにし、なおざりにしてきたことにあります。

 

山鳥坂ダム2026年度の完成は困難【愛媛県】

(テレビ愛媛2021/05/15 12:18)

https://www.msn.com/ja-jp/money/other/%E5%B1%B1%E9%B3%A5%E5%9D%82%E3%83%80%E3%83%A0%EF%BC%92%EF%BC%90%EF%BC%92%EF%BC%96%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E3%81%AE%E5%AE%8C%E6%88%90%E3%81%AF%E5%9B%B0%E9%9B%A3-%E6%84%9B%E5%AA%9B%E7%9C%8C/ar-BB1gKnZ8?ocid=msedgdhp

肱川の治水対策として建設が予定されている山鳥坂ダムについて国は新たに「地すべり」対策の追加工事が必要として2026年度の完成は困難との認識を初めて示しました。

山鳥坂ダムは2026年度の完成に向け、現在ダム本体の建設工事に取りかかるため県道の付け替え工事が行われています。並行して地質調査を進めている国は、予定地のそばに工事によって大規模な「地すべり」が起こる可能性のある個所を発見。

追加の対策工事が必要として現在、予定されている2026年度の完成は困難との認識を初めて示しました。

国は地すべりが起こる可能性のある個所の撤去や、ダムの工事予定地を上流に変更するなどの対策を検討していて、できるだけ早く決定し公表したいとしています。

川辺川ダム緊急放流資料、熊本県も破棄 整備局へ「公表慎重に」

2021年5月15日
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川辺川ダムの緊急放流に関する試算資料を国土交通が破棄した問題で、資料の提供を受けていた熊本県も破棄していました。その記事を掲載します。

熊本県も国土交通省と一体となって、必要性が不明瞭な川辺川ダム計画を推進しているようです。

 

 川辺川ダム緊急放流資料、熊本県も破棄 整備局へ「公表慎重に」

(毎日新聞 2021/5/15 17:366) https://mainichi.jp/articles/20210515/k00/00m/040/150000c

川辺川ダムの水没予定地。予定地にあった民家は高台や村外に移転した=熊本県五木村で2020年11月19日、吉川雄策撮影

熊本県の川辺川で国が建設を検討しているダムの異常洪水時防災操作(緊急放流)に関する試算資料を、国土交通省九州地方整備局が破棄した問題で、資料の提供を受けていた県も破棄していたことが県への取材で明らかになった。整備局は2020年7月の九州豪雨の1・3倍以上の雨で緊急放流することになると試算していたが、県側が「地元が心配する」として公表には慎重を期すよう整備局側に求めていたことも判明した。

試算資料は九州豪雨の際に流域で50人が死亡した球磨川の治水対策を話し合う協議会の第2回会合(20年12月18日)に先立ち、整備局が県や流域市町村側に提示した。しかし、整備局は第2回会合に資料を出さず、毎日新聞の開示請求に対し「破棄した」と3月31日付で回答。ところが、こうした経緯を毎日新聞が5月3日に報じた後の11日になってホームページで試算結果を公表した。

 県「使わない資料、破棄は問題ない」

県球磨川流域復興局の水谷孝司局長は取材に、第2回会合前の打ち合わせで国から資料を提供されたことを認めた上で「途中段階の資料だったので処分した。知事には説明しなかった。使わない資料なので(破棄は)公文書管理上も問題ない。廃棄時期はよく覚えていない」と語った。また「地元が心配するような内容は慎重に出した方がいい」と整備局に伝えたことも明らかにした。

一方で緊急放流については「住民の関心が高く、しっかり検証した方がいい。ダムの大きさや構造などがある程度固まったら『こういう場合はこうなる』と正しい情報を伝えた方がいいと思っている」と語った。

整備局河川計画課の山上直人課長は、慎重を期すようにとの県側からの要望について「要請があったとは承知していない」とし、公表せず資料を破棄したのは「あくまでも整備局の判断だ」と強調した。

九州豪雨では球磨川上流の市房ダムで緊急放流寸前まで水がたまり、流域住民からは川辺川の新たなダムについても緊急放流を不安視する声が出ている。蒲島郁夫知事は20年11月に県議会でダム容認を表明した際、「ダムの効果やリスクについての正しい理解を流域の皆様からも得られるよう、説明責任を果たす」と述べていた。【城島勇人、平川昌範】

川辺川のダム、国が緊急放流巡る試算を公表 当初「破棄」と回答

2021年5月11日
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2020年7月の九州豪雨の1.3倍以上の雨が降れば、川辺川ダムは緊急放流することになるという計算を九州地方整備局が行っていて、しかも、その計算結果を公表せず、破棄したという毎日新聞のスクープ記事を5月2日に掲載しました。

「「九州豪雨の1.3倍で緊急放流」 国が公表せず破棄 検討中のダム」(毎日新聞2021年05月02日)https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/mainichi/nation/mainichi-20210502k0000m040151000c

九州地方整備局はこれはまずいとみて、廃棄したはずの計算結果を急きょ発表しました。毎日新聞、熊本日日新聞、西日本新聞の記事を掲載します。

九州地方整備局http://www.qsr.mlit.go.jp/index.htmlの発表は

「球磨川における「令和2年7月洪水を上回る洪水を想定したダムの洪水調節効果」について」http://www.qsr.mlit.go.jp/yatusiro/site_files/file/bousai/gouukensho/sankousryou/sankousiryou-tyousetu.pdf

で見ることができます。

しかし、この発表を見ると、川辺川ダムがあってもかなり氾濫することになっており、川辺川ダムが本当に必要な治水対策なのかと思ってしまいます。

西日本新聞の二つ目の記事で九州大の小松利光名誉教授のコメントが記されていますが、小松氏は根っからの川辺川ダム推進論者で、2000年代の川辺川ダム住民討論集会でも会場からダム推進の意見を度々述べていました。

今回のような問題ならば、今本博健先生や大熊孝先生のコメントをなぜ取らないのか、記者の姿勢に強い疑問を持ちます。

 

川辺川のダム、国が緊急放流巡る試算を公表 当初「破棄」と回答

(毎日新聞2021/5/11(火) 19:14)https://news.yahoo.co.jp/articles/b662ba30f54981fb2ab48e68b2a286818e9052c3/images/000

辺川ダムの水没予定地。予定地にあった民家は高台や村外に移転した=熊本県五木村で2020年11月19日、吉川雄策撮影

2020年7月の九州豪雨被害を受けて国が熊本県の川辺川に建設を検討しているダムについて、国土交通省九州地方整備局が九州豪雨の1・3倍以上の雨が降れば異常洪水時防災操作(緊急放流)をすることになるとの試算を公表せず、資料を破棄していた問題で、整備局は11日、一転してホームページで試算を公表した。

整備局は取材に「当時の資料は破棄したが、その後に業務委託先のコンサルタント会社から出された報告書を基に今回の資料を作った」と説明した。

整備局は20年12月に流域の市町村長らに試算結果を示したが、流域住民を含む一般には公表していなかった。毎日新聞が関係文書を開示請求したところ、3月31日に「破棄した」と回答。一連の経緯を本紙が5月3日付で報道していた。

整備局が「参考資料」としてホームページで公表した文書は、09年に中止された従来の川辺川ダム計画と同規模のダムを造る前提で試算。九州豪雨の1・3倍以上の雨で緊急放流に移行し、緊急放流しなければ1・4倍の雨でダムの水があふれるとした。

整備局は試算結果を公表したことについて、取材に「データの整理ができたので公表した。報道とは関係ない」と答えた。

九州豪雨では球磨川が氾濫し、流域で50人が死亡。治水対策として事実上建設が決まった川辺川のダムについて、流域住民の間には「緊急放流で一気に水位が上昇して下流の被害が拡大する」との懸念が根強い。

京都大の今本博健(ひろたけ)名誉教授(河川工学)は「ダム建設の方向性が固まってから資料を出すのでは遅きに失しており、説明責任を果たしたと言えない」と批判。「緊急放流のデータは住民の不安をあおると考えて隠したのだろうが、逆に他にも隠していることがあるのではとの疑念を生むだけ。初めからオープンにして丁寧に説明すべきだった」と話した。【平川昌範、城島勇人】

 

「棄した」緊急放流の試算、一転公表 国交省、川辺川の流水型ダム

(熊本日日新聞 | 2021年05月11日 19:15) https://kumanichi.com/news/id225577流水型ダムの「緊急放流」の試算について公表したことを知らせる九州地方整備局のホームページ

国土交通省九州地方整備局は11日、熊本県の球磨川支流の川辺川に建設を検討している流水型ダムについて、「資料を廃棄した」としていた異常洪水時防災操作(緊急放流)に関する試算を一転、公表した。

九地整が八代河川国道事務所のホームページで公表したのは、昨年12月の第2回球磨川流域治水協議会に先立ち、流域の市町村長らに示した資料を作った際の試算。資料自体は「最終的な意思決定に与える影響がない」として、協議会で公表しないまま終了後に廃棄したという。

資料では、新たなダムの洪水調節容量を現行の川辺川ダム計画に基づき1億600万トンと仮定した場合、昨年7月豪雨の1・3~1・5倍の雨量で「緊急放流」に移行すると示していた。

資料を巡っては行政文書の専門家から「適切に保存・公開して議論を喚起すべきだ」との声も上がった。

資料を廃棄した試算を、改めて公表したことについて九地整は「お示しできる準備が整ったため公表した。きちんとリスクを示していきたい」と説明。一方で「現行のダム計画を用いた仮定の試算だ」と強調した。今後は新たなダムの検討を進め、洪水調節効果と併せてダムの限界についても公表するという。(宮崎達也)

 

川辺川「ダムの限界」熊本豪雨の1.3倍 貯留型、初の試算結果公表

(西日本新聞2021/5/12(水) 10:56)https://news.yahoo.co.jp/articles/872624095b5935c6fc16173cf7eddb32db77d6b6

昨年7月の豪雨で氾濫した熊本県の球磨川流域の治水対策を巡り、国土交通省九州地方整備局は11日、熊本豪雨を超える洪水時に、最大支流の川辺川にダムがあった場合の効果と限界を示す試算結果を公表した。現行計画の貯留型ダムは熊本豪雨の1・2倍の降雨量まで持ちこたえる一方、1・3倍以上で緊急放流に移行するという。

九地整によると、川辺川ダムが緊急放流に移行する条件や下流域への影響を公表するのは、1966年に建設省(当時)が計画を発表して以来初めて。九地整は、検討中の流水型ダムについても「設計や洪水調節ルールが定まった段階でダムの効果と限界を公表する」としている。

 

試算は、現行計画の利水容量と洪水調節容量を合わせた1億600万トンを治水に使う設定。貯水量の8割の8800万トンに達した段階でダムへの流入量と同量を緊急放流する。

熊本豪雨の1・2~1・5倍の降雨量4パターンを想定したところ、いずれもダムが1億トン近く貯水し、減災効果はあるという。ただ、1・3倍になると、毎秒1083トンを緊急放流。1・4倍で同1733トン、1・5倍で同2724トンと放流量が増えていく。

熊本豪雨で広範囲に浸水した人吉市地点で、緊急放流時のピーク流量も解析。ダムがあったとしても、1・3倍の降雨量では熊本豪雨時を上回る同7905トンに達し、1・4倍で同8756トン、1・5倍で同9578トンとなるという。 (古川努)

川辺川ダム建設予定地

 

ダムの限界知り備え可能に 川辺川・試算公表 識者「避難に活用を」

(西日本新聞2021/5/12 11:30 )  https://www.nishinippon.co.jp/item/n/737174/

国土交通省九州地方整備局が11日に公表した川辺川ダムの「限界」の試算。どの程度の降雨量で緊急放流に移行し、下流にどんな影響を及ぼすのか、1966年の計画発表以来初めて数字で示された。検討中の「新たな流水型ダム」との比較はできないが、識者は「ダムの限界を理解することで、命を守る備えができる」と訴える。

九地整は昨年7月の熊本豪雨後、県や流域市町村との治水協議で、川辺川ダムがあった場合に浸水範囲が減り、安全性が高まるとする「効果」を強調してきた。

一方、今回の試算が示したのは「限界」だ。熊本豪雨の1・2倍の降雨量までは、ダムの治水効果は最大限発揮されるが、1・3倍以上になると貯水の限界を迎え、流入量と同じ水量を下流へ流す「緊急放流」へと移行する。

さらに、1・5倍の豪雨が降った場合、緊急放流後に人吉市地点では、安全に流下できる流量の2倍以上が押し寄せることになるという。水位は急激に上昇し、逃げ遅れれば命に危険が及ぶ可能性もある。

九州大の小松利光名誉教授(防災工学)は「(熊本豪雨でも)線状降水帯が少しずれていれば1・5倍の降雨量はあり得た」と指摘し、「気候変動の影響で線状降水帯が大きくなっている。九州では、どの1級河川で起きてもおかしくない」と警鐘を鳴らす。

その上で「ダムはある程度の豪雨から命と財産を守る。限界を超えれば緊急放流するが、コントロールはできる。この仕組みを理解し、避難に生かすことが非常に大事」と訴える。 (古川努)

千曲川では治水対策の一環として堤防強化対策を実施中

2021年5月5日
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2019年10月の台風19号豪雨では千曲川は穂保(ほやす)で堤防が決壊するなど、各所で洪水が溢れ、凄まじい氾濫になりました。

この千曲川で下記のニュースの通り、その後、様々な治水対策が実施されてきています。

千曲川の治水対策で特に注目すべきは堤防強化工法が一部の区間が実施されてきていることです。

千曲川で実施されてきている治水対策は千曲川河川事務所のHPで見ることができます。

「国土交通省 千曲川河川事務所 千曲川堤防調査委員会」http://www.hrr.mlit.go.jp/river/chikumagawateibouchousa/index.htm の

第5回 千曲川堤防調査委員会 令和2年12月16日(水) 配付資料一式  http://www.hrr.mlit.go.jp/river/chikumagawateibouchousa/chikuma-05.pdf

を見ると、その11~24枚目に千曲川52~60㎞の区間で実施する堤防強化対策の内容が書かれています。

堤防強化対策は堤防ののり面をブロック等を覆うものです。

実施する工法は一様ではなく、区間によって異なっています。

実施時期は2023年出水前までとなっています(最終ページ)。

ここで計画されている堤防強化工法でよいかどうか、堤防の専門家の意見をお聞きする必要がありますが、

国土交通省の思惑で約20年間封印されてきた堤防強化工法が千曲川に導入されていくことは今後の治水対策のあり方として大変喜ばしいことだと思います。

15枚目下段に「粘り強い河川堤防と耐える堤防は別物である」というただし書きがありますが、これは国土交通省の今までの方針との関係で書かれたものであり、粘り強い河川堤防と耐える堤防は基本的に同じものだと考えてよいのではないでしょうか。、

耐越水堤防工法に関心のある方は上記URL の資料をご覧ください。

 

長野県 千曲川の治水対策として川幅拡張に着手 2027年度プロジェクト完成を目指す

(EXCITEニュース  2021年5月5日 08:31 ) https://www.excite.co.jp/news/article/Fujiyama_water_11239/

2019年10月の台風19号で堤防が決壊し大水害が発生した長野県千曲川流域で、国土交通省千曲川河川事務所は、緊急治水対策プロジェクトの一環である千曲川の川幅拡張工事をスタートさせた。今回工事が行われるのは、台風19号で堤防が決壊した長野市穂保地区の5kmほど下流に位置する立ケ花狭窄部と、飯山市の戸狩狭窄部の2カ所。立ケ花狭窄部は、穂保地区のなかでも川幅が非常に狭く穂保付近の4分の1程度しかない。そのため、大雨の際には立ケ花狭窄部より上流で水位が極端に上昇刷る傾向がある。

緊急治水対策プロジェクトには千曲川の川幅拡張工事以外に、台風19号で決壊した堤防をコンクリートブロックで覆う堤防強化工事、水位が上昇して堤防を超える可能性が高くなったときに水を引き入れる遊水地の整備、国土交通省所有の大町ダムと東京電力ホールディングスが管理する高瀬ダムと七倉ダムの連携による洪水調節容量の増加などがあり、いずれも工事や地権者との交渉などがすでに進んでいる。

なかでも遊水地の整備については、千曲川流域5カ所に設置する予定をしているが、国による土地の買取りや、万が一の際に水没させることを地権者に了承してもらう必要があるなどで、設置までに時間を要する。東京電力ホールディングス管理のダムについても、東京電力ホールディングスに発電用ダムを使った治水についての経験や知識がないため、システムの構築からスタートすることとなり、課題が残っている。千曲川の緊急治水対策プロジェクトは、2027年度のプロジェクト完成を目指すとしている。

「九州豪雨の1.3倍で緊急放流」 怒る九州豪雨の被災者 緊急放流の試算を国が破棄 川辺川ダム建設

2021年5月2日
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川辺川ダム問題に関する記事を掲載します。

2020年7月の九州豪雨の1.3倍以上の雨が降れば、川辺川ダムは緊急放流することになるという計算を九州地方整備局が行っていて、しかも、その計算結果を公表せず、破棄したという記事です。

「都合の悪い情報だから隠しているのではないか」、九州豪雨の被災者から怒りの声が上がっています。

2020年7月の九州豪雨において球磨川流域で雨量がひどく大きかったのは川辺川流域ではなく、他の支川流域であって、川辺川ダムが当時あっても氾濫による死者をなくすことにはあまり寄与しなかったとされています。

九州地方整備局の上記の計算ではもっと雨量が大きかったら、今度は川辺川ダムが緊急放流する事態になっていたというのですから、球磨川では川辺川ダムなしの真っ当な治水対策が推進されるべきです。

 

「九州豪雨の1.3倍で緊急放流」 国が公表せず破棄 検討中のダム

(毎日新聞2021年05月02日18時32分)https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/mainichi/nation/mainichi-20210502k0000m040151000c

2020年7月の九州豪雨被害を受け、国が熊本県の川辺川に建設を検討しているダムについて、国土交通省九州地方整備局が九州豪雨の1.3倍以上の雨が降れば異常洪水時防災操作(緊急放流)をすることになると計算していたことが関係者への取材で判明した。整備局は計算結果を公表しておらず、毎日新聞の開示請求に関係文書を「破棄した」と回答した。流域住民の間では「緊急放流で一気に水位が上昇すれば下流の被害が拡大する恐れがある」との懸念が根強く、専門家はリスクを公表して議論すべきだと指摘する。

九州豪雨では熊本県の球磨川が氾濫し、流域で50人が死亡。国や県、流域自治体でつくる「球磨川流域治水協議会」が支流の川辺川でのダム建設を含む治水対策を議論している。

関係者によると、20年12月18日の第2回協議会に先立ち、整備局は「【参考】今次洪水を上回る洪水を想定した場合におけるダムの洪水調節効果の推定について」と題した文書を流域の市町村長らに提示。川辺川に建設するダムの洪水調節容量を1億600万トンと仮定した上で、計算上、今回の九州豪雨の降り方の1.3倍以上でダムの容量の限界に近づき、その場合は緊急放流に「移行する」としていた。

文書は、仮に緊急放流をしたとしても、下流の流量はダムがない場合のピーク流量に比べれば少ないと強調する内容だった。しかし、整備局が数日後の協議会で配布した資料には盛り込まれず、現在まで公表もしていない。

文書の有無について整備局が取材に「コメントできない」と答えたため、毎日新聞は情報公開法に基づき文書の開示請求をした。これに対し、整備局は3月31日付で「破棄している」と回答。理由は「意思決定の途中段階で作成したもので、当該意思決定に与える影響がないものとして長期間の保存を要しないと判断し」たとしている。

ダム建設は正式に決まったわけではないが、国交省が21年度予算に調査・検討費を含むダム事業費5億5500万円を計上するなど、事実上建設に向けて動き始めている。

九州豪雨では24時間に489.5ミリの雨が降った球磨川沿いの湯前(ゆのまえ)町など熊本県内9地点で24時間雨量の観測史上最多を更新。川辺川が流れる五木村は9地点に含まれず413.5ミリだった。京都大の今本博健(ひろたけ)名誉教授(河川工学)は「九州豪雨ではダム予定地の下流域に線状降水帯がとどまったが、仮に上流域にとどまれば、今回の1.3倍以上の雨になることは十分あり得る。ダム建設の意思決定に影響がないはずはなく、住民にリスクを知らせずダム建設の議論を進めるのは許されない」と批判する。【平川昌範、城島勇人】

◇川辺川のダム計画

従来計画は貯水型の多目的ダムだったが旧民主党政権が2009年に中止。九州豪雨後に熊本県の蒲島郁夫知事がダム容認に転じたことで、普段はダム底部の穴から川の水がそのまま流れ、大雨時だけ水をためる流水型で新たに検討が始まった。流水型ダムは水をためきれなくなると上部から自然に越流する仕組みが多いが、国土交通省は洪水調節効果を上げるため開閉操作ができるゲート付きにする方向で検討している。

◇国土交通省九州地方整備局の文書の内容(抜粋)

・今次洪水を上回る洪水として、今次出水の雨量を1.20〜1.50倍したケースを想定し、新たな流水型ダムが存在した場合の各地点流量の推定を実施

・1.30、1.40、1.50倍のケースにおいて、ダム下流各地点にてピーク流量の低減効果が確認されたものの、ダム地点の流量がピークから下降する段階で洪水調節容量が不足し、異常洪水時防災操作へ移行

 

怒る九州豪雨の被災者 緊急放流の試算を国が破棄 川辺川ダム建設

(毎日新聞 2021/5/2 22:02)https://mainichi.jp/articles/20210502/k00/00m/040/189000c

九州豪雨で氾濫し、重機での川底の土砂撤去が進む球磨川を見つめる鳥飼香代子さん=熊本県人吉市で2021年4月27日午後0時20分、城島勇人撮影

「都合の悪い情報だから隠しているのではないか」。2020年7月の九州豪雨で氾濫した熊本県の球磨川の治水対策として、支流の川辺川で検討されているダム計画を巡り、国土交通省九州地方整備局が九州豪雨の1・3倍以上の雨で緊急放流に踏み切ることになるとする文書を作成しながら公表していなかった。ぎりぎりで回避された球磨川上流の市房ダムの緊急放流におびえた被災者からは公表しない国への不信の声が上がった。

 「データがなければ必要かどうか選べない」

「私たちは7月4日に緊急放流への警戒を呼びかけられ、不安でいっぱいになった。データを出さないなんて、怒り以外にない」。熊本県人吉市の鳥飼香代子さん(72)は話す。

豪雨が発生した7月4日の午前6時半、県は市房ダムが貯水容量を超える恐れがあるとして2時間後の同8時半に緊急放流を予定していると発表。結果的に放流はされなかったが、下流の住民らは警戒を強いられた。

自宅が1・8メートル浸水し、半壊の認定を受けた鳥飼さんは20年11月、県がダム建設についての意見を住民から聴くため開いた聴取会に「7・4球磨川流域豪雨被災者の会」の共同代表として出席。仮に市房ダムが緊急放流されていれば被害が拡大していたのではと疑い、緊急放流した場合の水位上昇などの数字を出すよう県に求めたが回答はないままだ。

ダムを含む球磨川の治水対策の議論が交わされている「球磨川流域治水協議会」に参加できるのは国、県、市町村長や専門家だけ。住民が参加できないままダム建設が既定路線になりつつある現状にいらだちを募らせる鳥飼さんは「最悪の事態を想定したデータを出してもらわなければ、ダムが必要かどうかも選びようがない」と訴える。

九州地方整備局は緊急放流に関する文書を「破棄した」としている。熊本県球磨村で被災した市花保さん(50)は18年の西日本豪雨で緊急放流が実施された愛媛県の肱川(ひじかわ)の例を挙げ「緊急放流は住民が一番知りたい情報だ。破棄したなんてとんでもない」と憤慨。川辺川のダムの緊急放流に関する文書を見た流域自治体の関係者も「まさに我々の関心事だった。万が一、緊急放流で被害が出れば責任問題になる。はっきりしないままでは進めない」と語った。

国は球磨川流域の治水対策としてダムのほか、遊水地や田んぼダムの整備なども打ち出している。地元で遊水地案が浮上している人吉市中神町城本の町内会長、林茂さん(71)は「ダム建設に賛成でも反対でもない」と前置きし「都合の悪い情報も隠してほしくないし、ガラス張りであってほしい。都合のいい情報しか出さないなら治水事業にも協力できなくなる」とくぎを刺した。

 専門家「誤解を招きやすいからこそ説明を」

ダム建設や緊急放流に理解を示す専門家も「丁寧な説明が必要だ」と指摘する。京都大防災研究所の角哲也教授(水工水理学)は「ダムはブラックホールではなく、水は無限にはためられない。ダムが満水に近づいた場合、ダムの水があふれて急激に川の水が増えないよう計画的に緊急放流することが必要だ」と説明。さらに「下流の流量を見ながら洪水が重ならないように放流する」と述べる。

角教授は国が川辺川に検討している規模の貯水容量があれば、九州豪雨を上回る大雨が降っても洪水のピーク後まで緊急放流には至らず、十分な洪水調節機能を発揮するとも分析。その上で「誤解を招きやすい問題だからこそ、分かりやすい説明をしてほしい」と国に注文する。

 そもそも「緊急放流」とは

緊急放流は大雨でこれ以上水がたまり続けるとダムの容量をオーバーし、最悪の場合決壊しかねない状況になった時に、ダムのゲートを人為的に開けて水位を下げる操作を指す。東日本各地で記録的な大雨となり広範囲に被害をもたらした2019年10月の台風19号の際は六つのダムで実施された。

緊急放流自体はダムの運用に元々織り込まれた操作で、専門家も過度に危険視すべきではないと言う。とはいえ、放流直後は下流の水位が一気に増えるため、住民が不安に思うのは当然だ。九州豪雨の際は球磨川の上流にある市房ダム(熊本県水上村)が緊急放流寸前まで追い込まれた。結果的に雨が弱まり緊急放流は回避されたものの、放流を始める水位まであと10センチに迫り、球磨川の氾濫で既に浸水被害を受けていた下流の住民からは被害拡大を心配する声が上がった。

18年の西日本豪雨で氾濫した愛媛県の肱川(ひじかわ)では、上流の野村ダム(西予(せいよ)市)と鹿野川(かのがわ)ダム(大洲(おおず)市)で緊急放流が実施された。両市では氾濫で8人が死亡しており、被災者や遺族は国の不適切なダム操作が浸水被害を招き、住民への周知も不十分だったなどとして国と両市に損害賠償を求めている。西予市で避難指示が出たのは緊急放流の約1時間前、大洲市では5分前だった。

NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は「地域住民の生命や生活に関わる問題で都合の悪いデータを出していないと思われれば行政の信頼性を損ない、将来に禍根を残す」と指摘する。豪雨を機に一度は中止になった川辺川でのダム建設が「復活」したが、賛否は今も割れている。住民がこれ以上ダムに翻弄(ほんろう)されることがないようオープンな議論が求められる。【城島勇人、平川昌範】

 

「緊急放流」試算、国交省が廃棄 川辺川流水型ダム資料

(熊本日日新聞 | 2021年05月07日 07:10) https://kumanichi.com/news/id219617

国土交通省九州地方整備局は6日、熊本県の球磨川支流の川辺川に建設を検討している流水型ダムについて、昨年7月豪雨の1・3倍以上の雨量で異常洪水時防災操作(緊急放流)に移行すると試算した資料を廃棄していたことを明らかにした。

「緊急放流」は、ダムが満水に近づき決壊などの危険性があると判断した時に、上流からの流入量をそのまま下流に流す操作。資料では新たなダムの洪水調節容量を、現行の川辺川ダム計画の洪水調節容量に利水分も加えた1億600万トンと仮定。7月豪雨の1・3~1・5倍の雨量では下流のピーク流量を減らす効果は発揮するものの、容量が不足して緊急放流に移ると試算していた。

九地整は昨年12月18日の第2回球磨川流域治水協議会に先立ち、流域の市町村長ら関係者に資料を示していた。しかし、協議会の配布資料には含めず、終了後すぐに廃棄したという。熊本日日新聞は関係者への取材から同日付の朝刊で、雨量が1・3倍以上で緊急放流に移行する試算を報じていた。

九地整は「協議の途中段階で作成した資料で、最終的な意思決定に与える影響がないものとして長期間の保存は必要ないと判断した。資料にあったデータを隠そうとした意図はない」と説明。今後、新たなダムの緊急放流についても検討を進め、公表していく考えを示した。

行政文書の管理に詳しい熊本大法学部の原島良成准教授は「市町村長に示した試算が公開に適さないほど未熟とは考えにくい。ダムのリスク評価と密接に関わるデータが『意思決定に与える影響がない』との説明は不合理だ。適切に保存・公開して議論を喚起すべきだ」と指摘した。(宮崎達也、高宗亮輔)

 

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