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沙流川水害訴訟:国が上告断念 住民側への賠償確定 /北海道
北海道日高町の沙流川水害訴訟で国の敗訴が確定しました。
沙流川水害訴訟:国が上告断念 住民側への賠償確定 /北海道(毎日新聞北海道版 2012年10月6日)
http://mainichi.jp/area/hokkaido/news/20121006ddlk01040162000c.html
03年の台風10号による豪雨災害を巡り、札幌高裁が国の責任を認め、約3190万円を住民側に支払いを命じた沙流川水害訴訟について、羽田雄一郎・国土交通相は5日、上告をしない意向を明らかにした。
住民側も上告せず、判決が確定する。河川を管理していた北海道開発局は「1審、2審判決の事実認定を受け入れることはできないが、それを理由に上告することはできず、やむを得ない」とコメントした。
判決によると、03年8月10日、門別町(現日高町)の沙流川上流にある二風谷(にぶたに)ダムが大雨で決壊しそうになったため、道開発局がダムの水を放流。下流の支流で逆流が起き、同町富川地区約55ヘクタールが冠水し床上浸水などの被害が出た。
原告側は「職員が水門を閉じず避難勧告より約50分早く避難したのが原因」と主張。1審・札幌地裁は「職員を先に避難させた理由はなかった。放水で確実に水位が上がることは予見可能だった」と、国の責任を認め、2審も支持した。
原告弁護団の市川守弘弁護士は「9年間も待たせず、被害が発生してすぐに賠償すべきだった。ダムが凶器になることは明らかで、国の対応は住民よりダム政策を優先させたもの」と批判した。【佐藤心哉】
◇原告ら声明「ダム依存やめて治水政策転換を」
国の上告断念を受け、原告らは喜びや治水への要望を口にした。
日高町の自営業、中村正晴さん(69)は「弁護士や支援者に支えられたおかげ」と喜ぶ。同じく原告の農業、矢野静雄さん(74)は「長かったが国が誤りという判断が出てうれしい。国は国民の安全を守ることを第一に治水をして」と話した。
1審の証人尋問で原告側証人になった小野有五・北大名誉教授(環境科学)は「国は二風谷ダムを利水ダムとして造りながら治水にも利用。治水用なら空にしておかなければならないのに、多目的に使ったため限界水位に達するのが早かった。国はダム政策を見直す必要がある」と話した。
原告弁護団は「判決は、住民の安全を軽視した国の河川行政のあり方そのものに警鐘を鳴らすもの。国はダムに依存しない治水政策への転換を」と声明を発表した。【山下智恵、佐藤心哉】
国側上告せず、敗訴確定へ 北海道日高町の沙流川水害訴訟(産経新聞 2012年10月6日)
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/trial/596632
2003年に北海道日高町で起きた沙流川の洪水被害をめぐる訴訟で、河川を管理する国の責任を認め約3100万円を住民側に支払うよう命じた札幌高裁判決について、
羽田雄一郎国土交通相は5日の記者会見で、上告しない意向を表明した。
住民側も上告しないため、判決は確定する。
9月21日の判決によると、03年8月の台風10号で、北海道開発局が水位の上がった沙流川上流の二風谷ダム10+ 件から放流した際、操作員が本流と支流の間の水門を閉じずに避難。支流に水が逆流し、家屋などが浸水した。
昨年4月の一審札幌地裁判決が水門操作の誤りを認め国に賠償を命じ、二審も続いた。
進む移転、細る地域 設楽ダムで水没予定の八橋地区(中日新聞愛知版 2012年10月18日)
進む移転、細る地域 設楽ダムで水没予定の八橋地区(中日新聞愛知版 2012年10月18日)
http://www.chunichi.co.jp/article/aichi/20121018/CK2012101802000037.html?ref=rank
(写真)地区外に移転し、解体された住宅跡。水道の蛇口が寂しく残る=設楽町八橋で
民主党政権が三年前に打ち出したダム建設計画の検証で、建設の動きが止まったままの設楽ダム。しかし、設楽町内の水没予定地では住民の移転が急速に進んでいる。
対象世帯が最も多い八橋(やつはし)地区では半数以上がすでに移転し、二十世帯を残すだけ。取り壊された家屋の基礎があちこちで見られ、主を失った田畑に雑草が生い茂る。二十八日は地区の祭りだが、「今年が最後になるかも」との声も出ている。
八橋地区は寒狭(かんさ)川(豊川)の支流や境川に沿って形成された集落。設楽町の中心地から長野県根羽村を結ぶ県道が走る。
◆名簿、消して黒く
区長を務める金田和幸さん(68)の手元にパソコンで打った住民の名簿がある。作成したのは二〇〇二年一月。五十七世帯が名を連ねた。転出のたびに黒インクで消し、名簿は真っ黒になった。
水没が予定されるのは、設楽町内の六地区計百二十四世帯。このうち八橋、川向(かわむき)、大名倉は地区そのものが消滅する。国土交通省設楽ダム工事事務所によると八月末現在、62%に当たる七十八世帯が補償交渉を終えている。
八橋地区では年内にさらに三世帯が移転する。「年が明ければますます加速し、来年末まで残るのは私を含め四、五軒ではないか」と金田さんは言う。
二十八日は八橋神社の祭礼。かつては余興や餅投げもあり、境内に子どもたちの歓声が響いた。最近は神事の後、ビールで乾杯してお開きだが「今年が最後かもしれんなあ」。金田さんは、真っ黒になった名簿を見ながらため息をついた。
◆桜の下で旧交を
一九四四(昭和十九)年まで小学校があった高台に樹齢百年ほどの桜の大木がある。「八橋のウバヒガン桜」と呼ばれ、住民たちが大切に守ってきた。毎年四月には、住民だけでなく、転出した人たちも集まり観桜会を開いている。
設楽ダムの満水時の湖面は標高四三七メートル。桜がそびえる高台は四五〇メートルで、辛うじて水没を免れる。金田さんは先ごろ、設楽町議会に「高台を『ふるさと公園』として整備してほしい」との要望書を提出した。
ダム検証の行方とは関係なく、怒とうのような勢いで進む地域社会の崩壊。
「好きこのんで出て行く人は誰もいない。みんな八橋が大好きなんです。年に一回、桜の下に集まって旧交を温めたい。私たちのささやかな願いです」
(鈴木泰彦)
<設楽ダム> 国土交通省が設楽町内の豊川上流に建設を計画する治水、利水の多目的ダム。高さ129メートル、幅400メートルの重力式コンクリートダムで総貯水量は9800万トン。
計画が提示されたのは1973年で、2009年に町が建設に同意した。計画発表当時は反対運動が起き、近年では建設是非を問う住民投票の動きもあった。民主党政権が09年に検証対象事業にした。
10月16日の利根川・江戸川有識者会議についての記事
10月16日の利根川・江戸川有識者会議についての記事を掲載します。
大熊孝委員、関良基委員、野呂法夫委員が奮闘され、発言内容の説得性、迫力とも事務局【関東地方整備局)および小池俊委員を圧倒しました。
しかし、座長の宮村忠氏は「意見は出尽くした。今後も平行線だろう」と述べ、議論を終える考えを示しました。
対応策を考えなければなりません。
議論平行線のまま 八ッ場ダム有識者会議 座長「事務局判断だ」(東京新聞群馬版 2012年10月17日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20121017/CK2012101702000152.html
八ッ場(やんば)ダム(長野原町)の本体着工の条件である「利根川・江戸川河川整備計画」の策定に向け、国土交通省関東地方整備局は十六日、第七回有識者会議を東京都内で開催した。
前回に続き、ダムの是非の根拠となる数値をめぐり合意は得られず、会議後、座長の宮村忠・関東学院大名誉教授は「あとは事務局の判断だ」と述べた。
争点は、利根川のある地点で水を安全に流せる量「目標流量」の数値。国交省の試算を「過大だ」とするダム反対派と、容認する委員の間で激しい議論が交わされた。
反対派の関良基・拓殖大准教授は「戦後の森林の成長で川に流れる雨量が減ったことを試算は考慮していない」と指摘。小池俊雄・東京大大学院教授は「戦後の変化は洪水を大きくしてもいる」と反論した。
同整備局が示し、大熊孝・新潟大名誉教授が「水没していない所が水没したことになっている」として撤回を求めている一九四七年のカスリーン台風の氾濫の図について、東京新聞の野呂法夫特別報道部次長は現地での聞き取りを踏まえ「水没はなかった。とんでもない図だ」と批判。同整備局側は「元データも算出方法も示している」との返答に終始した。
また同整備局側は「目標流量を設定するのは関東地方整備局。その後、施設計画を含む案を、この会議に提示する」と今後の流れを明らかにし、争点が決着されなくても審議を進めたい模様だ。
(伊藤弘喜)
利根川水系の流量議論打ち切り 有識者会議(上毛新聞 2012年10月17日)
http://www.raijin.com/ns/3113503961095605/news.html
国土交通省関東地方整備局は16日、八ツ場ダム(長野原町)の本体着工条件となっている利根川水系の河川整備計画の策定に向けた「利根川・江戸川有識者会議」を都内で開き、
前回、前々回に続き今後20~30年で安全に流すことを目指す洪水量(目標流量)について協議したが、賛否が分かれた。
会議終了後、座長の宮村忠関東学院大名誉教授は報道陣に「議論は出尽くした」と述べ、目標流量の議論は打ち切り、次回以降は整備内容などの協議に移ると説明した。
整備局は利根川流域は人口や資産が集中していることから、目標流量は他の河川よりも高い70~80年に1度の洪水規模に当たる毎秒1万7000トン=基準点・伊勢崎市八斗島(やったじま)町=が妥当と提案している。
関良基・拓殖大准教授は過去60年間の基準点で実測された最大流量1万トン(1998年)を基に、80年に1度の洪水規模を算出すると1万3000トンとして「安全にみても1万4000トンだ。1万7000トンで国民が納得できるのか」と主張した。
清水義彦・群馬大大学院教授は甚大な被害を出したカスリーン台風(1947年)で利根川上流域3地点での観測値から流量は約1万7000トンと算出されていることから「(過去に)あったものを根拠にするのは一理ある。国交省が示した目標流量は妥当だ」と述べた。
目標流量の議論を打ち切る方針について、ダム建設に反対する水源開発問題全国連絡会の嶋津暉之共同代表は「1万7千㌧の目標流量の科学的根拠に疑義がある。もっと議論しなければいけないのにおかしい」と批判した。
整備局は有識者会議については河川法に基づき「意見を聞く場であり、何かを決める場ではない」とあらためて説明。会議での意見を踏まえ、整備局が目標流量を設定するとした。今後の会議のスケジュールは未定としている。
目標流量意見一致せず 八ッ場有識者会議(読売新聞群馬版 2012年10月17日)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20121016-OYT8T01752.htm
利根川水系の河川整備計画策定に向けた有識者会議が16日、東京都内で開かれた。座長の宮村忠・関東学院大名誉教授は会議後記者団に、これまで続けてきた目標流量の議論について「意見は出尽くした。今後も平行線だろう」と述べ、議論を終える考えを示した。
河川整備計画は、八ッ場ダム(長野原町)の本体工事着工の条件とされ、議論の焦点はダムなどの施設計画に移るが、今後の日程は明確になっていない。
16日の会議では、洪水時に安全に水を流せる「目標流量」について引き続き議論が交わされた。
国土交通省は、70~80年に1度発生する洪水にも対応できるよう、伊勢崎市八斗島での目標流量を毎秒1万7000立方メートルとする案を示している。
これに対し、ダム反対派の関良基・拓殖大准教授は、地中への水の浸透率などが十分に考慮されていないとし、「解析モデルに誤りがある」などと主張。
一方、日本学術会議の分科会メンバーとして同整備局が示した値を妥当と認めた、小池俊雄・東大大学院教授は計算根拠を示しながら、「国交省の計算は間違いない」と指摘した。別の委員からも賛否両論が出て、意見は折り合わないまま、予定の2時間で終了した。
「意見出尽くした」 利根川・江戸川有識者会議 「目標流量」賛否割れる(下野新聞 2012年10月17日 朝刊)
http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/local/news/20121016/901071
国土交通省関東地方整備局は16日、八ツ場ダム(群馬県)の本体工事着工の前提となる利根川水系の河川整備計画策定に向けた「第7回利根川・江戸川有識者会議」を東京都内で開いた。
洪水時、安全に流下させることを目指す目標流量について協議し、賛否それぞれの意見が出た。座長の宮村忠関東学院大名誉教授は会議後、報道陣に「目標流量については意見が出尽くしたと思っている」との見解を示した。
国交省は70~80年に1回の割合で発生する洪水を想定。利根川の基準点(群馬県伊勢崎市内)で、安全に流す目標流量を「毎秒1万7千立方メートル」としている。会議では目標流量に関連し、計算方法など学術的な議論が交わされた。
国交省が示すデータの算出方法の不備や資料の誤りを指摘する意見の一方、「国交省の計算は間違いではない」「目標流量は妥当」とする声もあった。
八ッ場ダム建設:利根川有識者会議 「目標流量」は棚上げ、一致できず 個別整備の検討へ /群馬(毎日新聞群馬版 2012年10月17日)
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20121017ddlk10010151000c.html
八ッ場ダム(長野原町)本体工事着工の条件である利根川水系の河川整備計画の策定に向け、第7回利根川・江戸川有識者会議が16日に東京都内で開かれた。
ダム建設の根拠となる「目標流量」についての議論で一致点が見られず、座長の宮村忠・関東学院大名誉教授は議論をいったん打ち切り、八ッ場ダムなど個別の整備内容の検討に入る方針を示した。
目標流量は、1947年のカスリーン台風並みの水害があった場合、被害が出ないようダムなどで調節すべき流量のことで、国土交通省関東地方整備局は毎秒1万7000トンと算出している。
これに対し、複数の委員が根拠資料や算出モデルの不整合性を指摘していた。【奥山はるな】
長﨑県議会、意見書可決 2012年10月16日 堀江ひとみ議員の反対討論
長﨑県議会、意見書可決 2012年10月16日 堀江ひとみ議員の反対討論 (石木川まもり隊のホームページより)
10月15日、長崎県議会は本会議において、石木ダムの事業認定申請を求める意見書を採択しました。賛成38、反対5、棄権2でした。
反対した議員の一人、堀江ひとみ議員の反対討論をご紹介します。
「ただいま議題となりました石木ダム事業認定手続きの進展を求める意見書につきましては、以下の理由で反対いたします。事業認定が、地権者との話し合いの場をつくるためと言っても、強制収用に道を開く 手続きそのものです。事業認定手続きは、住民の不安と不信を募らせるばかりです。
30年前の機動隊導入による強制測量が引き起こした事態への反省もなく、再びこれを繰り返すならば、地権者のみならず県民の理解を得ることは到底できません。
「生まれ育ったここで農業を続けたい」「ここに住み続けたいだけなんだ」という、住民の憲法で保障された権利は、誰であっても、踏みにじることは許されません。
強制収用という野蛮な行為は、絶対にすべきではありません。
国は石木ダムの事業継続を決定しましたが、「地域の方々の理解が得られるよう努力することを希望する」と、意見をつけています。
国が求めた努力をせずに知事は、国土交通省九州地方整備局に対し、事業認定手続きを求めました。県民からは、こうした行動が、不誠実で一方的な行動であり怒りさえ感じるとの声が寄せられました。
本意見書を、県議会が採択することは、反対土地所有者のみなさんとの話し合いの場も、さらに遠ざけると判断します。
本意見書では、佐世保市の安定的な水資源確保のために、石木ダムが必要不可欠な事業として、多くの人が認めていると述べていますが、そうは思いません。
いま佐世保市が提供できる水の、提供能力は、安定水源・不安定水源と合わせて、毎日平均、9万2,000トンです。佐世保市民の使用水量は、1万トン近い漏水も入れて7万4,000トンです。9万2,000トンの水があって、使用している水量は7万4,000トン。おつりがきます。
水不足ではなく、佐世保市の水は足りています。それなのに、新たに1日4万トンの石木ダムが、どうして必要なのか。説明がつきません。
石木ダム計画も含めた水需要予測は、一日13万トンです。これは人口の約2倍ある長崎市が毎日使用している水量です。人口は長崎市の半分しかないのに、使う水の量は長崎市と同じぐらいの、水需要を求めるということ自体、いかに過大な需要設定であるか、明らかです。
9月24日付毎日新聞では、「石木ダムの水需要予測プラスに転じる材料乏しく」と、報じています。佐世保市の11年度水使用の実態は、需要予測に反して、予測値よりも約2万6千トンも低くなりました。
水需要予測が実態にあわないこと。過大な需要設定であることが、多くの県民に明らかになってきました。必要のない石木ダム建設は直ちに中止を。この声が、以前にも増して県民、市民、町民の間でひろがりを見せています。こうした県民の声に応える立場から、意見書には反対です。
以上、反対討論といたします。」
最上小国川ダム 漁業権問題で本体着工不透明(読売新聞山形版2012年10月16日)
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最上小国川ダム 漁業権問題で本体着工不透明(読売新聞山形版2012年10月16日)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/yamagata/news/20121015-OYT8T01162.htm
作業用道路建設のため切り倒された杉。真新しい看板も設置されている(15日、最上町富沢で)
県が建設を計画する最上小国川ダム(最上町)で、本体工事に先立ち、作業用道路の取り付け工事が始まった。流域の漁業権を持つ地元漁協は反対しており、事業の先行きは不透明な状況になっている。(宮本清史、影本菜穂子)
最上町富沢の現場付近では15日、関係者が県道沿いに「工事中」の看板を設置したり、下草を刈ったりする作業に追われた。工事は13日から始まり、すでに約150本の杉を伐採。今月下旬には重機が投入され、積雪期も除雪しながら、来年2月まで作業を続ける。
県河川課によると、同ダムは予定地から約2キロ下流の赤倉地区などを、50年に一度の洪水から守るのが目的。県は2006年、「自然への影響が少ない」などとして、通常時は水をためず川の流れを残す「穴あきダム」での建設を決めた。
総事業費約64億円で、15年度の完成を目指す。今年3月末現在で用地取得などに約17億5400万円を投じ、今年度は作業用道路建設などで5億7200万円を予算計上している。
◇
ダム建設を要望しているのは、川岸まで温泉旅館が立ち並ぶ赤倉地区の住民。洪水被害にたびたび見舞われ、1974年7~8月の集中豪雨では、死者こそ出なかったものの、278戸が床下浸水し、被害総額は約23億円に上った。
赤倉地区でダム建設を推進する期成同盟の早坂義範会長は「今も数年に一度、旅館が床上浸水したり、温泉に川の水が逆流したりする被害が出ている。ダムが完成するまでは、枕を高くして眠れない」と訴える。
一方、「ダムが造られれば、川の環境は大きく崩れ、アユに影響は避けられない」として反対するのは、地元の小国川漁協(沼沢勝善組合長、組合員約1100人)。同川は体長25センチを超える大型アユが釣れる川として知られ、シーズン中は全国から釣り客が訪れる。
同漁協によると、アユやヤマメなどの漁獲による売り上げ額は、「組合員全体で年間約2~3億円。組合の遊漁料収入は同約2000万円」と説明する。
◇
こうした中、漁業権を巡る問題が焦点になっている。
県議会9月定例会予算特別委員会で、ダム反対派の草島進一議員が「漁協が同意しない限り、ダム本体の着工はできないことを認めるか」と質問。岡邦彦・県土整備部長は「今年度発注した工事は、漁業権の及ばない陸地部の範囲で実施するものだ」と直接答えず、「漁協から同意が得られるよう誠心誠意努力する」と4回繰り返した。
本体着工には漁業補償が必要になるが、漁協は任意の交渉に一切応じていない。土地収用法では、漁業権も関係者に補償した上で収用できると定めているが、国土交通省土地収用管理室によると、実際に漁業権を強制収用したケースはないという。
県は現時点で、同法の適用については明言していないが、沼沢組合長は「仮に強制収用となっても、裁判で争う」としており、県が今後、どのような対応を示すか注目される。