各地ダムの情報
「石木ダムを断念させる全国集会」の講演の配布資料およびスライドと解説
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11月17日(日)に「石木ダムを断念させる全国集会」が川棚町公会堂で開かれました。
11月18日が家屋の明渡し期限になっていましたが、こうばるの13世帯は動じることなく、これまでの通りの暮らしを続け、長崎県と佐世保市に対して石木ダム建設を断念させる闘いを続けています。
この全国集会は奪われた土地を取り戻す新たな闘いのスタートとなる集会でした。
石木ダムは必要性が全くなく、地元住民を苦しめるだけの有害無益な事業です。この全国集会はそのことをあらためて確認する集会でもありました。
嶋津の方から最初に「石木ダムは治水利水の両面で全く不要」というテーマで30分間の講演を行いました。
この講演の配布資料と、講演で用いたスライドとその解説は次の通りです。
石木ダムは治水利水の両面で全く不要 配布資料20191117
石木ダムは治水利水の両面で全く不要 スライドと解説 20191117
治水に関して長崎県は、今年10月の台風19号豪雨のような未曽有の豪雨が川棚川流域に降る場合もあるから、石木ダムが必要だと言っていますが、それは全くの間違いです。
川棚川流域で1/100の雨量に対して石木ダムで対応できることになっているのは計画上も流域面積の8.8%に過ぎません。しかも、その中には港湾管理者の管理区間ということで堤防整備計画がない川棚大橋下流区間なども含まれているので、実際に石木ダムで対応できることになっているのは流域面積の4~5%にとどまります。したがって、1/100を超える未曽有の豪雨が降れば、石木ダムがあっても川棚川の各所で氾濫することになります。
さらに、1/100を超える雨が降れば、石木ダムが洪水調節機能を失ってしまうことも予想されます。
計画を超える雨が降ることもあることを考えれば、長崎県は石木ダムの建設に拘泥している場合でありません。その建設を断念して、川棚川流域の住民の生命と財産を本当に守ることができる治水対策に力を注がなければなりません。
利水に関しては、佐世保市は過去の渇水が再来すれば、市民の生活への影響が計り知れないものになると述べ、渇水の恐怖を煽って、石木ダムが必要だと宣伝しています。
しかし、過去の渇水到来時と現在は水需要の状況が大きく変わっています。佐世保市水道の一日最大給水量は1990年代後半から横ばいの傾向になり、2000年代になってから、ほぼ減少の一途を辿り、2018年度は1994年度の77%まで減少しています。
水需要の大幅な減少により、今の佐世保市は渇水に対応できる都市に変わっています。そして、これからも水需要の更なる減少が続くことは確実なので、佐世保市はますます渇水に強い都市になっていきます。
是非、上記の配布資料、スライドとその解説をお読みいただき、石木ダムが本当に無意味な事業であることを周りの方に伝えてくださるよう、お願いします。
石木ダム事業 住民「力で奪うのか」 長崎県は繰り返し公益性主張
11月18日、石木ダム建設に反対する住民ら約40人が長崎県庁を訪れ、石木ダムの計画断念を求める文書を提出しました。その記事を掲載します。
石木ダム事業 住民「力で奪うのか」 長崎県は繰り返し公益性主張
(長崎新聞2019/11/19 10:11) https://this.kiji.is/569330499597861985?c=174761113988793844
(写真)平田副知事(左)に宣言文を手渡す岩下さん=県庁
長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業で、水没予定の川原(こうばる)地区で暮らす反対住民13世帯の土地の明け渡し期限となった18日、住民らが県庁を訪れ、建設断念を求めた。明け渡しには応じない姿勢をあらためて見せた住民ら。一方の県側は同事業の公益性を繰り返し、主張は平行線をたどった。「行政代執行にならないようにすることが大事」としながらも、行政代執行を選択肢から排除しない考えを示す県。両者の溝は埋まる気配はなく、混迷の度合いを深めている。
午前9時半、マイクロバスで県庁に到着した住民らは一様に硬い表情だった。9月、約5年ぶりに実現した中村法道知事との面会では計画の見直しを求めて頭を下げたが、直後の会見で知事がダム推進をあらためて表明したからだ。後日、「生活再建や地域振興に誠意を持って対応する」として再度の面会を求める書簡が届いた。「こちらの話は聞かず、話を聞けというのか」。住民側はいら立ちを募らせていた。
17日に同町であった反対集会で採択した宣言文を平田研副知事に手渡すと、土地収用法に基づき土地の所有権を失った住民の岩下和雄さん(72)が憤りをあらわに口火を切った。石木ダムの主目的である利水と治水の効果に疑問を呈し、事業継続を承認した県公共事業評価監視委員会についても「ダムを造りたい人たちだけを(メンバーに)入れて再評価した」と切り捨てた。
「(治水面で)緊急性があるなら河川整備を先にやるべきだ」「石木ダムを造らないと治水効果は上がらない」-。約1時間の面会。治水一つとっても住民と県側の主張は、この日も最後まで交わることはなかった。
18日は住民らが県と同市に工事差し止めを求めた訴訟の期日とも重なり、住民らは面会を終えた足で長崎地裁佐世保支部へ。住民の岩永正さん(68)は「県庁と裁判所で厳しい現実を感じた。県は本当に私たちの生活を力で奪い取るのだろうか」と行政代執行に警戒感をにじませた。「付け替え道路工事現場の騒音で目覚める日常に慣れてきているのが怖い。嫌なことが続くが、地元の住民は踏ん張って暮らし続けるしかない」。石丸穂澄さん(37)は自らに言い聞かせるように話した。
午後5時前、住民らを乗せたバスが川原に帰着。それぞれが家路につき、夕食の支度や犬の散歩などの日常に戻っていった。岩本宏之さん(74)は「暮らしに変わりはない。ただ土地の所有権を失い、保険や行政の手続きなどにどの程度影響があるのかは気掛かりだ」とぼやいた。
一方、「石木ダム建設促進佐世保市民の会」の寺山燎二会長(81)は「佐世保市民にとってダムは必要だということを理解してもらいたいが、私たちは静観するしかない」と淡々と語った。
長崎・石木ダム「計画断念を」
(共同通信2019/11/18 10:08) https://www.nishinippon.co.jp/item/o/560481/
石木ダムの建設予定地
(写真)長崎県の平田研副知事(左)に石木ダム建設の断念を求める文書を読み上げる住民の岩下和雄さん=18日午前、長崎県庁
長崎県と佐世保市が川棚町に計画する石木ダムを巡り、水没予定地に住む13世帯の明け渡し期限を迎えた18日、建設に反対する住民ら約40人が県庁を訪れ、計画断念を求める文書を提出し「河川改修など他の方法をやり尽くしてからダムを検討するべきだ」と訴えた。県は19日以降、行政代執行で土地や建物の強制収用ができるようになる。
出張中の中村法道知事の代理で対応した平田研副知事は、治水効果を強調し「行政代執行は選択肢から外さない。ダムで恩恵を受ける川棚町の人たちは大切な県民だ」と述べた。住民側は「そんな態度だから話し合いができない。私たちは県民ではないのか」と反発した。
長崎)あくまで立ち退き拒む 石木ダム明け渡し期限
(朝日新聞長崎版2019年11月19日0
県、代執行「排除せず」 長崎・石木ダム 反対派なお断念求める
(西日本新聞2019年11月19日 6時0分) https://news.livedoor.com/article/detail/17401144/
長崎県と同県佐世保市が計画する石木ダム事業(同県川棚町)は18日、立ち退きを拒む13世帯の宅地を含む全ての事業予定地が、県収用委員会の定める明け渡し期限となった。反対派はこの日、県に事業断念を要請したが、平田研副知事は住宅などを強制的に撤去する行政代執行について「選択肢として排除しない」との考えを示した。県は19日以降、行政代執行の手続きが可能になる。
県庁での要請には約50人が参加し、反対住民の岩下和雄さん(72)が「行政代執行すれば長崎の恥だ。全国民が見ている。それでもやるつもりか」と主張。17日に同町で反対派約700人が参加して開かれた全国集会で採択した「ダムは治水、利水の両面で全く不要」とする宣言文を提出した。
平田副知事は「治水面でダムが一番効果が高い」などと説明し、反対派からは怒号が飛び交った。出張中の中村法道知事は「期限を迎え、いまだ明け渡しいただけておらず残念。協力に応じていただけるよう働き掛けを続けたい」とのコメントを出した。
住民らが県と佐世保市にダムの工事差し止めなどを求めた訴訟は18日、長崎地裁佐世保支部で結審し、来年3月24日に判決が言い渡される。 (岡部由佳里、平山成美)
◇ ◇
■「みんな家族」「強制的」「仕方なか」 明け渡し期限、移転住民複雑
石木ダム事業が進む長崎県川棚町には、反対する住民がいる一方、さまざまな事情で用地を明け渡し、移転した人たちもいる。故郷に残った住民が土地の明け渡しを突きつけられ、同じ集落に住んでいた元住民は割り切れない思いを吐露した。
ダムが計画される川原(こうばる)地区で総代を務めた80代男性は、かつて「川原の思いを一つにする」と反対運動の先頭にいた。1982年、県が機動隊を投入して用地測量に踏み切った記憶は鮮明だ。「あそこまで強制的にやるとは思わなかった。むちゃくちゃだった」
先祖代々、200年以上受け継いだ土地は結局2003年に手放した。「川原が嫌で移ったわけじゃないが、高齢になって百姓をするのはきつい。いくら反対してもダムはできるとも思った。仕方なか」
川原に残る人たちに別れを告げるのはつらかったが、決断を悪く言う人は一人もいなかった。同じく川原で育った男性の妻は「みんな家族みたい。人間関係が良くなかったら、とっくに県に押し切られていた」と話した。
国の事業採択から44年の石木ダム計画。「長い、長すぎる。移転してから何年たつ? ダムになった自分の故郷は見たくない。かといってダムができなければ、なんで移ったのかという気持ちになる」。男性は複雑な胸中を打ち明けた。
一方、明け渡しに応じずに集落で暮らす川原房枝さん(79)は「それぞれ事情があった人もいる」と移転した元住民を思いやる。石木ダム工事差し止め訴訟原告の一人、岩本宏之さん(74)は「今秋もこの土地で稲刈りをした。生活を変えるつもりはない」ときっぱり語った。 (竹中謙輔、平山成美)
石木ダム建設反対で全国集会 反対派が宣言採択 新たな闘いへ運動拡大
11月17日(日)に「石木ダムを断念させる全国集会」が長崎県川棚町で開かれました。約700人が参加しました。
その記事とニュースを掲載します。
「石木ダム不要」訴え集会、長崎
(共同通信2019年11月17日 / 18:01) https://news.livedoor.com/article/detail/17394342/
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長崎県と佐世保市が計画する石木ダム(同県川棚町)の水没予定地に住み、建設に反対する13世帯の明け渡し期限が目前に迫った17日、住民や支援者ら約700人が同町で抗議集会を開いた。参加者は口々に「ダムは不要だ」と訴え、計画の中止を改めて求めた。
県は19日以降、行政代執行で13世帯の土地や建物を強制収用できる。集会の冒頭で住民の岩下和雄さん(72)は「県や佐世保市の暴挙は許せない」と強調。9月に中村法道知事と面会した際の知事の対応について「ずっと下を向いて顔を合わせようともしなかった。向き合って私たちの願いを聞いてほしい」と批判した。
【共同通信】
石木ダム建設反対で全国集会
(NHK2019年i11月17日 19時18分)https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20191117/5030005995.html
長崎県などが進める石木ダムの建設に反対する集会が、建設予定地の川棚町で開かれました。
石木ダムは、長崎県と佐世保市が水道水の確保や洪水対策を目的に、川棚町で建設を進めていますが、一部の住民の理解が得られないまま、ことし5月、長崎県の収用委員会が、ダムの建設に必要なすべての土地の強制収用を可能にする裁決を出し、18日、建物の移転などを伴う用地の明け渡し期限を迎えます。
17日の集会には、建設に反対する住民や団体のメンバーなど合わせておよそ700人が参加しました。
この中で、ダムの建設に反対する全国各地の団体で作る、「水源連=水源開発問題全国連絡会」の嶋津暉之共同代表は、治水対策に必要なものは堤防の整備であり、ダムの建設ではないなどと訴えました。
そして、住民の松本好央さんが「皆さんと力を合わせて地元を守り続けていくことを誓います」と決意表明を行いました。
このあと、「1日も早く建設を断念させたい」などとする宣言文が採択されました。
大阪から訪れた70歳の男性は「ダムが必要ないことがよくわかった。人ごとだと思わず、問題について知ることが大切だと感じた」と話していました。
石木ダム 反対派が宣言採択 新たな闘いへ運動拡大
(長崎新聞2019/11/18(月) 11:30) https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191118-00000003-nagasaki-l42
(写真)石木ダム事業に反対する集会で、ダムに頼らない治水政策を紹介する嘉田氏=川棚町公会堂
長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設に反対する住民や市民団体は17日、同町内で「石木ダムを断念させる全国集会」を開いた。水没予定地に住む13世帯の土地が18日に、土地収用法に基づく明け渡し期限を迎えるのを前に、「新たな闘いのスタートとなるよう、運動を広げよう」とする大会宣言を採択した。
集会は13世帯でつくる石木ダム絶対反対同盟など7団体が主催し、県内外から約700人が参加。水源開発問題連絡会の嶋津暉之共同代表と、滋賀県知事時代に県内の六つのダム計画を中止、凍結した嘉田由紀子参院議員が講演した。
嶋津氏は、県と市が主張する石木ダムの治水・利水効果を検証。治水について「石木川より上流域には効果がない」「下流域も公共下水道の内水氾濫は防げない」などと指摘した。利水についても「人口減などで給水量は減少している」とし「治水、利水の両面でダムは不要」と訴えた。
嘉田氏は、ダムだけに頼らない治水政策のあり方を紹介。国内のダム事業で、居住者がいる建物の行政代執行は前例がないとして、「石木ダムは即刻中止すべき」と断じた。
今年9月に国会議員、地方議員で立ち上げた「強制収用を許さない議員連盟」の代表で、東彼波佐見町議の城後光氏は「本県だけでなく、住民の人権に関わる全国的な問題。さらなる議員の参加者を促し、行政にプレッシャーを掛けていきたい」と述べた。
住民の松本好央さんは壇上で古里への思いを吐露した。「県に思いが伝わらず残念だ。気持ちは変わらないが、仲間が増えたことが変わった。18日以降も変わらない日常を続けていく」と決意を述べると、客席から拍手が湧いた。
集会の参加者は18日に県庁を訪れ、大会宣言を県に提出する予定。
石木ダム反対の連帯 地権者・市民・議員 力強く 長崎で集会
(しんぶん赤旗2019年11月18日(月))http://jcp.or.jp/akahata/aik19/2019-11-18/2019111801_04_1.html
(写真)活動報告をする「石木ダムの強制収用を許さない議員連盟」のメンバーら=17日、長崎県川棚町
長崎県と佐世保市が川棚町に計画する石木ダム事業をめぐり、「石木ダム建設絶対反対同盟」など県内7団体は17日、川棚町公民館で「石木ダムを断念させる全国集会IN川棚」を開催しました。全国各地から約700人が参加しました。
水問題の専門家で水源開発問題連絡会の嶋津暉之共同代表と、前滋賀県知事の嘉田由紀子参院議員が講演しました。
公共事業チェック議員の会から、立憲民主党の初鹿明博、大河原雅子両衆院議員、日本共産党の田村貴昭衆院議員が連帯あいさつし、田村氏は「長年住みなれた土地を奪ってはならない」と訴えました。
現在、国会議員・地方議員合わせて94人が参加する「石木ダムの強制収用を許さない議員連盟」から共産党の地方議員を含む23人が登壇し、代表の城後光波佐見町議が活動を報告。「石木ダムは人権問題。それを許してはならない」と力を込めました。
愛媛県や三重県など全国各地から参加した市民団体の代表も発言し「ともに新たなダムを造らせないため手を握り合っていこう」とエールを送りました。
地元地権者の松本好央さん(44)は「家も土地も奪われてしまった今だからこそ、人としてのあり方、石木ダムは必要なのかを問うていく。みなさんとともに川原(こうばる)を守り続けていくことを誓う」と声を震わせ決意を述べました。
最後に集会宣言を拍手で確認しました。
長崎)ダム断念を!700人集結 嘉田氏、知事権限強調
(朝日新聞長崎版2019年11月18日0
反対派集会に700人 18日、明け渡し期限 石木ダム
(西日本新聞 2019/11/18 6:00) https://www.nishinippon.co.jp/item/n/560429/
(写真)集会で、壇上から激励する全国の支援者たち=17日、長崎県川棚町
長崎県と同県佐世保市が計画する石木ダム事業に反対する住民や支援者らの全国集会が17日、事業予定地の同県川棚町であった。立ち退きを拒む13世帯の宅地を含めた全予定地が、18日に県収用委員会が定めた明け渡し期限を迎える中、700人が参加。「ダムは治水、利水の両面で全く不要。一日も早く断念させる」とする宣言文を採択した。
集会では、ダム建設に反対する各地の住民でつくる水源開発問題全国連絡会の嶋津暉之共同代表と、滋賀県知事時代に六つのダム事業を中止や凍結した嘉田由紀子参院議員が講演。嘉田氏は知事のころ、県公共事業評価委員にダム慎重派を選び、事業の見直しにつなげたことを紹介した。
支援者は九州外からも訪れ、三重県の浜田不二子さん(69)は「ダムありきのやり方はどこも同じ。強制収用するなんて許されない」と語った。宣言文は18日、長崎県に提出する。 (平山成美)
利根川上流ダム群の治水効果の発表(関東地方整備局)
関東地方整備局が11月5日に台風19号豪雨に対する利根川上流ダム群の治水効果の速報値を発表しました。
「台風第19号における利根川上流ダム群※の治水効果(速報) ~利根川本川(八斗島地点)の水位を約1メートル低下~」
http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/river_00000474.html
相模川についても次の発表をしました、「台風第19号における相模川上流2ダムの治水効果(速報)~相模川本川(神奈川県厚木地点)の水位を約1.1メートル低下~」http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/river_00000475.html
利根川上流ダム群の治水効果の発表についての記事とニュースを掲載します。
利根川についての発表値は八斗島地点での上流ダム群の治水効果であって、八ッ場ダムをはじめ、各ダム個別の効果は示されていません。
記事によれば、「各ダム個別の治水効果は検証しておらず今後行うかも未定。仮に行う場合でも時間はかかるといい、今回の大雨による治水効果も現段階では「分かっていない」」ということですから、
八ッ場ダムだけの効果はわからないままになりそうです。
しかし、上流ダム群の治水効果は各ダム個別の効果を積み上げて計算されるはずですから、各ダム個別の効果は不明という関東地方整備局の説明は理解できません。
その点で、「八斗島地点の水位を約1メートル低下」という今回の発表にどの程度の根拠があるのか、大いに疑問です。ダムの効果を発表しておかないと、印象が悪いということで、とにかく発表したように思われます。
なお、当方が示した本豪雨における八ッ場ダムの治水効果の推定値は栗橋地点で17㎝の水位低下でした。
「利根川における八ッ場ダムの治水効果について 現時点のコメント」https://suigenren.jp/news/2019/10/14/12424/
八斗島地点と栗橋地点では約50㎞の距離があり、下流に行くほど、ダムの効果が小さくなっていきますので、今回の関東地方整備局の発表値とそのまま比較することは困難です。とりあえず、関東地方整備局の今回の発表の計算根拠資料を開示請求しましたので、その資料が得られたら、可能な範囲で検討してみたいと思います。
台風19号大雨 危険水位超え抑制 7ダムの治水効果を検証 /群馬
(毎日新聞群馬版2019年11月6日)https://mainichi.jp/articles/20191106/ddl/k10/040/116000c
国土交通省関東地方整備局は5日、台風19号による大雨に対する利根川上流ダム群の治水効果の速報値を発表した。大雨でこれらのダムには水が計約1億4500万立方メートル(1立方メートルは1トン)たまったという。その結果、観測基準点のある伊勢崎市八斗島地点での観測最高水位は、これらのダムがないと仮定した場合よりも約1メートル低い約4・1メートルにとどまり、氾濫危険水位4・8メートルを超えなかったとしている。
同ダム群は、矢木沢、奈良俣、藤原、相俣(以上はみなかみ町)、薗原(沼田市)の5ダムに加えて、本格稼働前に安全性を確認するために水をためる「試験湛水(たんすい)」を実施中の八ッ場ダム(長野原町)と藤岡市と埼玉県神川町にまたがる下久保ダム、草木ダム(みどり市)の計8ダムで構成され、今回の調査では草木ダムを除く7ダムの合計の治水効果を検証した。
八ッ場ダムには1億4500万立方メートルの半分以上を占める約7500万立方メートルの水がたまった。同整備局担当者によると、各ダム個別の治水効果は検証しておらず今後行うかも未定。仮に行う場合でも時間はかかるといい、今回の大雨による治水効果も現段階では「分かっていない」と話している。
八ッ場ダムについて赤羽一嘉国土交通相は、先月の参院予算委員会で「試験湛水を開始したばかりで水位が低かったため、予定の容量より多い約7500万立方メートルをためることができた」と説明。このことが下流の氾濫防止の大きな要因になったとの見方を示していた。【西銘研志郎】
台風19号 利根川 7ダム治水効果で水位1m低下
(群馬テレビ2019/11/7(木) 10:51配信) https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191107-00010000-gtv-l10
国土交通省関東地方整備局は、台風19号で八ッ場ダムなど利根川上流の7つのダムの治水効果により、利根川の水位がおよそ1メートル低下したと推定されると発表しました。
国土交通省関東地方整備局は、台風19号で、八ッ場ダムを含む利根川水系の7つのダムが1億4500万立方メートルの水を貯留したと発表しました。利根川の水位は伊勢崎市八斗島地点で最高水位4.1メートルを観測しましたが、関東地方整備局では、ダムが全てないと仮定した場合、およそ1メートル水位が上昇し5.1メートルとなり、氾濫危険水位の4.8メートルを超えていたと見ています。
流域ごとの貯留量はみなかみ町の八木沢、奈良俣など利根川本流域がおよそ3900万立方メートル、八ッ場ダムがおよそ7500万立方メートル、藤岡市の下久保ダムがおよそ3100万立方メートルでした。
台風19号で感じた「先人に感謝」という言葉の耐えられない軽さ 「八ッ場ダムの奇跡」は権力者側への称賛
台風19号について流布している「八ッ場ダムの奇跡」などは権力者側への称賛です。問題の本質を突いた論考を掲載します。
台風19号で感じた「先人に感謝」という言葉の耐えられない軽さ
(現代ビジネス2019/10/26(土) 11:01配信) https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191026-00068036-gendaibiz-soci&p=1
写真:現代ビジネス
「八ッ場ダムの奇跡」
首都圏を直撃した非常に強い台風19号。
東京でこそ、可能性が視野に入れられていた荒川の氾濫などは起きなかったものの、全国各地で河川の氾濫などが発生し、多くの被害を与えた。
自民党の二階幹事長は被害について、「まずまずに収まった」と論じたが、実際の被害、特に氾濫などによる流通の停滞や倉庫の浸水、工場機械の破損など、産業に対する経済的影響はまだ十分に算出されておらず、なにをもって「まずまず」と論じたのか不明である。
少なくとも、大規模な自然災害による被害の大きさがハッキリと判明するのは、だいぶ経って後というのは常識であり、二階氏の発言は大規模災害を理解していないとしか考えられないのである。
さて、広い地域に被害を与え、まだ被害の全貌は明らかではない台風19号だが、台風も峠を越したころに、ネットでは「八ッ場ダムの奇跡」というツイートがささやかれていた。
それは「八ッ場ダムが首都圏を氾濫から救った、八ッ場ダムスゲー」という内容のツイートである。八ッ場ダムは10月に入ってから試験湛水を行っており、本来であれば3~4ヵ月かけて満水にする予定だったのが、今回の台風で一気に満水になったことを指して、これを「利根川の氾濫を抑え、首都圏を守った奇跡」であると主張しているのである。
(写真)10月12日の東京都・多摩川
手放しで喜べる話ではない
だが、八ッ場ダムで発生したのは奇跡ではない。本来であればゆっくり満水にし、その後、溜まった水をゆっくりと抜くことで、周辺にがけ崩れなどの、水圧による悪影響が発生しないか、ダムの機能はしっかり働くかを確認するのだが、今回の台風による降雨で試験不十分のまま満水となったという、イレギュラーな事態なのである。
今の所、周辺への悪影響は見られていないようだが、まかり間違えば八ッ場ダム自体が災害の主要因となる可能性もあり、奇跡などと手放しで喜べる話ではない。
さらに、広い利根川水系で、八ッ場ダムの存在1つがあったからと氾濫から首都圏が守られるはずもない。治水はあくまでも堤防の整備や流域面積の確保といった積み重ねである。本気で八ッ場ダムが首都圏を救ったと主張しているなら「無邪気」としか言いようがない
しかし、奇跡だと言っている方も、それくらい承知でツイートをしていたのだろう。ツイートの本当の目的は決して八ッ場ダムを称えることではなく、かつて事業仕分けにおいて八ッ場ダム計画を中止させようとした、民主党政権を叩くことである。その主張の本質は「もし、民主党政権が八ッ場ダム計画を中止させていたら、今回の台風で首都圏は氾濫の被害にあっていた」というものである。
かつての民主党政権は「コンクリートから人へ」という公約を掲げていた。本来はゼネコンなどに金をばらまく形で雇用を確保するセーフティネットを否定し、政府から直接必要な人にお金を渡す、新たなセーフティネットの形を志した言葉であったはずだ。しかし、ネットではこのことを逆手に取り、台風や洪水などの被害がある度に、さも民主党政権のせいで、その被害が発生したかのような政治的主張がなされてきた。
河川が氾濫すれば、すぐに「スーパー堤防があれば、氾濫は防げた」と主張する。氾濫した地域が最初からスーパー堤防化の計画がなかった区域であっても、とにかく騒いで民主党政権に対して悪印象を植え付けたモノ勝ちと、ひたすら騒ぎ続けるのである。
今回、八ッ場ダムを奇跡と翼賛した人たちの中には、民主党政権叩きというイデオロギーに染まった大人がたくさん含まれていた。政治的な当てつけのために奇跡だなどと大げさに褒め称えられた八ッ場ダムは、果たしてそれを光栄だと思うのだろうか?
「田中正造に感謝」に目を疑った
八ッ場ダムと同じ利根川水系で、主に北関東を中心に流れる「渡良瀬川」。群馬と栃木と埼玉に囲まれたところに「渡良瀬遊水地」が存在する。遊水池とは、河川の市街地への氾濫を防ぐために、川をあえて一時的に氾濫させるために整備された土地のことである。水があふれることが前提なので当然、人が住むことはできないが、普段は水が無いことから、公園などとして活用される場合もある。
東京から近いところでは、日産スタジアムを始めとした様々なスポーツ施設を有する「新横浜公園」も、鶴見川の遊水池として設計されている。今回の台風では遊水池としての機能を果たして水没し、水が引き、整備が終わるまで、施設が閉鎖された。
渡良瀬遊水地にも今回の台風で大量の水が流れ込み、普段は緑が生い茂る自然豊かな湿地が、大量の水で覆われた光景がTwitterなどに投稿されている。
しかし、僕はその光景を見た人の中に、とんでもないことをいう人を見つけた。曰く「田中正造に感謝」というのだ。
僕は栃木県の佐野市出身だ。栃木県佐野市で生まれた子供たちは、佐野出身の名士として田中正造のことを詳しく習っている。詳しくない人たちのために、田中正造が何をしたのかをざっくり説明する。
近代化が求められていた1800年代後半。栃木県の山中にあった足尾銅山から排出される煙が山の木々を枯らしていた。そこを流れる渡良瀬川は洪水を起こし、下流地域に鉱毒を撒き散らした。この惨状を食い止めようと、衆議院議員だった田中は国会で質問や演説を行うが、国は十分な対処をしなかった。
(写真)渡良瀬川と筑波山(photo by iStock)
彼の一生への冒涜ではないか
やがて田中は議員の職を辞すと、これまで以上に鉱毒問題に取り組んだ。1901年には明治天皇に命がけの直訴までして、問題を解決しようとした。その後、公害事件の被災地でもある栃木県下都賀郡谷中村に湧水池を作る計画が浮上。これは治水のための計画でもあったが、同時に鉱毒問題運動の中心地であった谷中村を廃村にして、反対運動を沈静化してしまおうという狙いがあったと言われている。
田中はこれに徹底的に対抗し、住民の移住が開始されても谷中村に住み続けた。田中が亡くなった時には無一文であったと言われ、死ぬまで苦しむ農民のために戦い続けた政治家として、今なお語り継がれている。
そして、この話の中に出てくる遊水池が、現在の渡良瀬遊水地である。田中正造は死ぬまで渡良瀬遊水地に反対をしていた。そんな人間に対して、渡良瀬遊水地が機能したことを「田中正造に感謝」という言葉で褒め称えるのは、僕には彼の一生を冒涜する言葉であるとしか思えないのである。
この「田中正造に感謝」という言葉には、その前段階がある。それが「先人に感謝」という言葉である。この言葉が今回の台風で、たくさんツイートされていた。
先人に感謝するのはいい。だが、それは誰のための感謝なのだろうか?
権力者側への称賛
治水工事。特にダム建設や荒川放水路のような大規模な工事を行うことで、誰が犠牲になったかといえば、元々その土地で暮らしてきた、権力を持たない生活者である。
八ッ場ダムも、そもそもなぜ民主党政権が計画の中止を打ち出したかといえば、その土地に暮らした地元住民たちの反対運動があったからである。田中正造がどうして直訴をしたかといえば、足尾銅山という富国政策の下に、多くの住民たちが被害を受けたからである。
治水が多くの人達の安全を守ったり、社会に利益をもたらすことには疑問の予知はない。しかしその一方で、治水には多くの土地が必要であり、それらは多くの人達から「徴収」したもので成り立っているのである。十分な補償を受け取った者もいれば、納得の行かないまま立ち退かざるを得なかった人もいる。現代である八ッ場ダムにすら反対する人たちはいた。人権というものが確立されていなかった古い時代であればあるほど、そこに暮らした人たちはもちろん、工事に動員された人たちなど、多くの人が苦しんだことは想像に難くない。
だからこそ我々は、彼らの苦悩や被害を十分に学び、理解した上で、彼らの方を向いて厳かに頭を下げなければならないのである。それで初めて「先人に感謝」という言葉が感謝と謝罪、そして先人たちの思いを決して忘れないことなどを含む、様々な意味を持つのである。
しかし、今回聞こえてきた「先人に感謝」の声は、とてもそのような態度には思えなかった。
先人に感謝といいつつ、彼らは先人たちの苦悩を理解してはいない。それは「大規模工事を行った先人たちスゲー!!」という、苦しんだ生活者への感謝というよりは、権力者側を向いた称賛の声であった。先人たちに対して後ろめたさがあるのではなく、本当に心の底から、先人が国のために喜んで土地や労力を提供したと考えるかのような「先人に感謝」だった。その言葉に込められた意味のあまりの軽さに、僕はめまいを覚えたのだった。
最後に。
なぜ僕がこの「先人に感謝」という言葉の軽さを論じなければならないと考えたのか。それは僕たち就職氷河期世代は確実に後世の人たちにこう言われるだろうから。
「不況のマイナスを全部負担してくれてありがとう。先人に感謝」と。
赤木 智弘