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米国西部でダム3基撤去へ、自然再生めざす 生態系にもたらす恩恵が大きいダムを優先

2016年12月5日
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12月5日 米国のダム撤去についての記事を掲載します。
日本で撤去工事が進められているのは、熊本県・球磨川の荒瀬ダムだけです。残念ながら、荒瀬ダムに続くダム撤去の話がありません。
環境

米国西部でダム3基撤去へ、自然再生めざす

生態系にもたらす恩恵が大きいダムを優先

NATIONAL GEOGRAPHIC2016.12.02http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/c/120100019/
(写真)カリフォルニア州ベンチュラ郡のマティリヤ・ダムは、既にその役割を終え、川を自然な状態に戻すために撤去される予定だ。(PHOTOGRAPH BY RICH REID, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

 米国ワシントン州の中南部に住む先住民ヤカマ族は、あと10年もすれば、昔のように伝統のサケ漁ができるようになるはずだ。

 ただしそのためにはまず、ネルソン・ダムを撤去しなければならない。ネルソン・ダムは、ヤキマ川最大の支流ナチェズ川にある高さ2.4メートルの分水ダム。1920年代に建設されたが、現在は使われていない。ところがこのダムがあるために、サケの遡上が阻まれているという。(参考記事:「ダム撤去でサケは戻るか? アメリカ」

 ダム撤去を支持する人々は、2020年までに撤去工事を完了したいと願っている。実現すれば、魚や川の栄養分が下流へ運ばれるほか、洪水の危険性も低くなる。

 意外に思えるかもしれないが、ダムがなくなることで川の水量が増し、地域の気候回復力が高まるだろうと、ウィリアム・アンド・フローラ・ヒューレット財団で環境プログラムを取りまとめるマイケル・スコット氏は期待を寄せる。なぜなら、ダム湖に水を貯めたままにしておくと多くが蒸発して量が減ってしまうが、その水を下流へ送ってやれば、天然の帯水層へ水を補給することができるからだ。(参考記事:「干ばつが招く地下水の枯渇」

【動画】ダムがなくなった川に魚たちが戻ってきた(解説は英語です)。

 ネルソン・ダム撤去計画は、ヤカマ族と地元自治体、州政府、連邦政府の共同事業だ。ヒューレット財団が支援する3つのテストケースのひとつであり、ダム撤去への寄付金としては最高額となる5000万ドルを提供する。

 財団としては、ネルソン・ダムのように、撤去することで生態系にもたらす恩恵が大きいダムを最優先にしたいとスコット氏は言う。また、ダムが「無用の長物」と化していることも条件だという。つまり、既にダムとしての役割を終え、かえって周辺環境へ害を及ぼす恐れのあるダムを対象とする。

 このようなダムは、全米で1万4000基以上存在する。2020年までに、70%以上の米国のダムが築50年を超え、その多くが撤去候補となりうる。実際、ダム撤去の動きは広がり、現在も年間数十基が取り壊されている。問題は工事に莫大な費用がかかることだが、一方で古いダムを維持し、新しい基準に合わせて改修工事をするにもやはり巨額の費用が必要だ。(参考記事:「米国に広がるダム撤去の動き」

 これは、ただダムを取り壊すというだけの話ではないと、ヤカマ族の天然資源問題担当のフィリップ・リグドン氏は言う。環境と地域社会に最大限の恩恵をもたらすには、例えば当地のヤキマ盆地30年計画のように、より大きな環境再生計画の一環として撤去作業を進めるべきだという考えだ。ヤカマ族は1960年代、連邦政府との合意で、地域に生息する魚の半分を捕獲する権利を得たが、魚自体が存在しなければ、権利だけを所有していても何の意味もないことに気付いた。

 そこで政府や非営利団体と協力して、2011年には築100年近い高さ38メートルのコンディット・ダムを撤去した。それからわずか数カ月で、川にはニジマスが戻ってきたという。

(写真)魚の生息地を取り戻すために撤去されたオレゴン州ローグ川のサベージ・ラピッズ・ダム。同じく、ローグ川にある他のダムも間もなく取り壊される。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

映画にもなったマティリヤ・ダムの例

 もうひとつ、ヒューレット財団の支援で近いうちに取り壊しが予定されているダムが、カリフォルニア州ベンチュラ郡にある高さ51メートルのマティリヤ・ダムである。「ダムネーション」というドキュメンタリー映画で取り上げられ、巨大なハサミでダムの壁をふたつに切ろうとしている落書きが登場する。ベンチュラ川の支流に1947年に建設されたが、大量の泥が沈殿し、そもそもの目的である農業用水の確保がもはやできなくなっている。

【動画】映画「ダムネーション」より。ダムができる前のアリゾナ州グレンキャニオン (解説は英語です)。

 ベンチュラに本社を置くアウトドア用品のブランド「パタゴニア」は、ヒューレット財団やその他の団体と協力して、2020年までにダム撤去に必要な資金集めを行っている。実現すれば、カリフォルニア州史上最大のダム撤去工事となる。(参考記事:「米最大のダム撤去計画、解体作業始まる」

「マティリヤはパタゴニア本社のすぐ近くにあって、ぜひとも取り壊すべきだと考えています」と、同社の環境問題担当副社長、リサ・パイク・シーヒー氏は言う。川にすむ魚やその他の生き物はもちろん、釣りや川下りを楽しむ人々のためにも、「自然な環境を取り戻したいと願っています」(参考記事:「ダムの壁に張り付き、塩をなめるヤギ」

ローグ川の場合

 ヒューレット財団の第3のターゲットは、オレゴン州南西部を流れるローグ川の盆地に建設された、複数の小規模ダム群と関連の構造物である。本流の一部は連邦政府の保護区に指定されているものの、その他の場所にある構造物は、既に本来の役割を終え、かえって魚や養分の流れを阻害している。

 財団は、ローグ盆地パートナーシップおよびローグ川流域評議会と協力して、向こう10年間で最大50カ所のダムや障害物を撤去する計画を立てている。支援者らは、大きな意味のある第一歩であるとしながらも、まだ先は長いと話す。

 ダム撤去の目的は、水、そして自然環境の再生であり、世間の関心は強いとスコット氏は言う。「それに、撤去には爆破工事が伴うとなれば、注目度が高まります」

2015年9月鬼怒川水害に関する日弁連の会長声明と調査結果報告書の発表

2016年12月4日
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日弁連が2015年9月鬼怒川水害に関する会長声明と調査結果報告書を2016年12月2日に下記のとおり、発表しました。

 

2015年9月鬼怒川水害の調査結果報告書の発表に当たり、改めて、ダム依存から脱却し、総合治水及び堤防の強化を求める会長声明

http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2016/161202_2.html

 

当連合会は、茨城県常総市を中心に発生した2015年9月の鬼怒川水害(以下「本水害」という。)に関して調査を行い、

本日、その結果を取りまとめた調査報告書日弁連 鬼怒川水害の調査報告書20161202

http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/100617_2.pdf)を発表した。
本水害では、常総市三坂地区で鬼怒川の左岸堤防が破堤するとともに、同市若宮戸地区でも溢水が生じ、また、鬼怒川に排水される八間堀川が氾濫を起こすなどして、同市市域の約3分の1に当たる約40㎢が浸水するなど、極めて甚大な被害が発生した。
当連合会は、2010年6月17日付け「ダム依存から脱却し、総合治水及び堤防の強化を求める意見書」において、総合的な治水対策の実施及び当面の対策として既存堤防の強化を提言した。本水害が同提言後の一級河川本川の破堤を伴う大規模水害であったことから、本水害の原因等について調査及び考察を行い、今後への提言を含めて、調査報告書として取りまとめた次第である。

調査の結果、鬼怒川においては、湯西川ダム建設事業に治水負担額として約1144億円もの支出を行う一方、下流の茨城県側は、既存堤防が流下能力不足等により脆弱であるにもかかわらず、堤防整備等が遅々として行われず放置された上、下流の河道負担を軽減する上流域での森林整備等の流域対策も採られず、三坂地区の破堤や若宮戸地区の溢水につながったことなどが明らかになった。また、総合治水が採り入れられず、流域の森林及び水田の貯留機能や既存河川施設の活用及び適切な避難対策やハザードマップの活用等の被害軽減方策がなされていなかったことも明らかとなった。

本年における、台風10号による降雨を原因とした岩手県での二級河川小本川の氾濫、北海道石狩川水系空知川並びに十勝川水系札内川での破堤氾濫及び台風16号による降雨を原因とした宮崎県延岡市での北川の氾濫など、水害が話題にならない年はない。毎年のように頻発する水害の被害を防止・軽減し、住民の生命・身体・生活財産を守るためには、各流域において総合治水方式へと治水対策を抜本的に見直すとともに、その実現と平行して、脆弱な既存堤防を強化し、破堤を生じないよう対策を講じることが喫緊の課題である。

本調査報告書の発表に当たり、当連合会は、改めてダム建設や堤防の改新築・河道掘削などの河道整備ではすべての洪水を河道に閉じ込めることは不可能であるとの認識をもとに、従来型の洪水対策から脱却し、流域全体で洪水を受け止めるという発想に立ってハード面・ソフト面にわたる総合的な治水対策を実施すべきこと、及び、かかる総合的な治水対策を推進しつつも、既存堤防の破堤を防止するため、速やかにその強化を求めるものである。

 

2016年(平成28年)12月2日

日本弁護士連合会

会長 中本 和洋

『八ッ場ダム・思川開発・湯西川ダムの裁判報告 6都県住民 11年のたかかい』刊行のお知らせ

八ッ場ダム等住民訴訟は、2004年11月に東京、群馬、栃木、茨城、埼玉、千葉の6都県の住民が、各都県等を被告として、八ッ場ダム等への公金支出差止め等を求めて提起した裁判です。栃木県の住民は思川開発事業、湯西川ダムを含めた3ダムを対象とした裁判を展開しました。本書はこの11年間にわたる裁判の記録をまとめたもので、資料編も含めて204ページになります。

本書は、八ッ場ダム等住民訴訟がどういうものであったのかを多くの人に知っていただくため、さらに、裁判の成果を後世に残すため、刊行しました。11年間の裁判における住民側の主張と立証のポイントを記述し、八ッ場ダム等の3ダムがいかに無意味なダム事業であるかを理解できるようにまとめました。3ダムの問題はダム問題全体に共通しているところが多々あると思います。

自費出版で1000部、一冊1000円(実費)、送料は一冊につき120円350円です。(現在注文が減って、月に1~2件の送付となり団体割引のような契約が4月で打ち切られたため、350円に改定させていただきました。)
是非、下記の郵便振替口座でご注文・送金いただき、貴重な記録としてお手にとってお読みくださるようお願いします。

郵便振替口座: 00120-8-629740 八ッ場ダムをストップさせる東京の会

連絡先  東京の会・田中清子 Tel: 042-467-2861  Fax: 042-467-2951
深澤洋子 Email:bbjaga@jcom.home.ne.jp

目次

はじめに

八ッ場ダム等住民訴訟11年を振り返って

第1章 ダム事業の概要

第2章 裁判に至るまで~6都県の住民はなぜ立ち上がったのか

第3章 裁判の経過と内容

第4章 裁判で明らかにしたこと

第5章 裁判の成果と運動の拡がり

第6章 裁判から得た教訓と今後の活動

第7章 法廷の内と外

資料編

2週間遅れの裁判報告 (石木ダム事業認定取消訴訟第3回口頭弁論)

2016年11月15日
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10月31日、事業認定取消訴訟第3回口頭弁論  長崎地裁にて

午後2時から長崎地方裁判所で石木ダム事業認定取消訴訟第3回口頭弁論が開かれました。
前回7月19日の口頭弁論で当方が提出した第1準備書面(利水に関した当方の主張)第2準備書面(治水に関した当方の主張)に対する被告・九州地方整備局からの反論として被告側の第1準備書面(利水面)第2準備書面(治水面)が9月20日に提出されていました。
今第3回口頭弁論は、私たち原告側から被告への再反論、ということで、10月24日付けで原告側第4準備書面(利水)第5準備書面(治水)を裁判所に提出していました。 当日(10月31日)の口頭弁論では、第4準備書面(利水)の骨子を高橋弁護士が、第5準備書面(治水)の骨子を緒方弁護士が口頭で説明しました。
第4準備書面(利水)の骨子は、「佐世保市が水道水源として石木ダムに依存しなければならないとする4万m3/日の実態は石木ダムを造るために作り上げたもので、科学的根拠は全くない。今後、水需要が急激に上昇することなどありえない。」と述べています。
第5準備書面(治水)の骨子も、「数多くのごまかしを重ね石木ダムの必要性を作り出したもので、実際にはたとい100年に1回という豪雨が来ても、川棚川の石木川合流点下流部を安全に流下する」ことを述べています。

口頭弁論終了後には裁判報告会が持たれ、弁護団からの説明と意見交換を行いました。
この日の動き、新聞報道については、「石木川まもり隊」のブログに詳細に記載されています。是非、ご覧下さい。

次回口頭弁論予定日

次回第4回口頭弁論は2017/1/16と予定されています。

厚労省の「水道事業の維持・向上に関する専門委員会」が水需要の大幅な減少を予測

2016年11月1日
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厚生労働省の「水道事業の維持・向上に関する専門委員会」が今年3月から開かれてきています。10月26日の第7回会議では報告書の骨子案が示されました。
その骨子案には次の通り、「今から約40年後、日本の人口は8600万人程度となると推計されている。それに伴い、水需要も約4割減少すると推計されている」と書かれています。
その根拠資料を厚労省水道課に聞いたところ、下記の第1回の参考資料2-2にある添付のグラフ第1回委員会参考資料2-2とのことでした。
2009年の全国水道の有収水量3700万㎥/日が2060年には2200万㎥/日まで減るという予測です。減少率は約40%です。
人口だけでなく、家庭用原単位も減ることになっていて、国立社会保障題・人口問題研究所の人口推計を使って計算すると、人口は32%減、原単位は12%減です。
このように、厚労省も今後、水道の需要が人口の減少と原単位の減少で大きく減っていくことを認識しているのです。
ところが、一方で厚労省は、石木ダム事業参画の佐世保市の架空水需要予測をそのまま容認しています。
この専門委員会の座長は滝沢智東大教授で、滝沢氏は石木ダムの事業認定の際に、九州地方整備局に対して、佐世保市の架空水需要予測にお墨付きを与える意見書を出しています。
その意見書に対して、ダム検証のあり方を考える科学者の会が公開質問書 https://suigenren.jp/news/2014/06/03/5410/ を送付しましたが、なしのつぶてでした。
表と裏の顔を使い分ける厚労省と、滝沢智東大教授に対して怒りを禁じえません。

第8回水道事業の維持・向上に関する専門委員会 資料
報告書の骨子案(たたき台)http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000141000.pdf
1。水道事業をめぐる現状と課題
○ 現在、我が国の水道は9 7.8%の普及率に達し、水道は、国民の生活の基盤として
必要不可欠なものとなっている一方、以下に掲げる喫緊に解決しなければならない課題

を抱えている。
○ 人口減少社会が到来し、今から約40年後、日本の人口は8600万人程度となると
推計されている。それに伴い、水需要も約4割減少すると推計されている。給水量の減

少は直接料金収入の減少につながり、特に小規模な水道事業者(注:簡易水道事業者を

含む。以下同じ。)において、財政状況の急激な悪化が懸念される。

第1回水道事業の維持・向上に関する専門委員会 資料
平成28年3月22日(火)
参考資料2-2:水道事業の基盤強化方策に盛り込むべき事項(PDF:4,419KB)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000137087.pdf

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