水源連:Japan River Keeper Alliance

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伊賀市水道と川上ダムの問題 2015年5月18~19日の報告

嶋津暉之

川上ダムの目的の虚構

川上ダムは(独)水資源機構が淀川水系の木津川上流に建設する予定の多目的ダムです。恣意的なダム検証の結果として、昨年8月に国交大臣から事業継続のゴーサインが出ました。2022年度完成予定で、再来年度には本体工事に入るとされています。

しかし、川上ダムも必要性がすでに失われています。目的は①淀川本川及び木津川沿川の洪水調節、②三重県伊賀市への水道用水の供給、③木津川の流水の正常な機能の維持、④既設ダム(高山ダム、青蓮寺ダム、布目ダム、比奈知ダム)の堆砂除去のための代替補給です。

④は他のダムでは例がない目的で、2011年2月の川上ダム事業実施計画第2回変更の前にはなかったものです。奈良県水道と西宮市水道が撤退し、三重県水道(伊賀市)の利水予定量がほぼ半減したことによるダム規模の縮小を防ぐために加えられた目的です。既設ダムの堆砂除去はそれぞれのダムで工夫して実施するものですが、なりふり構わず、堆砂除去の代替補給が川上ダムの目的に加えられました。紙面の都合で説明を割愛しますが、①、②、③の目的もダム無しで何も困ることはありません。

水資源機構にとって重要であるのは水源開発である②の目的です。①、③、④は河川事業であって、水資源機構は水源開発を含む事業を行うことが法律で決まっており、もし②の目的がなくなると、水資源機構は川上ダムの事業者になることができません。その場合はダム計画を一度ご破算にして、国交省の直轄ダムとして再策定するしかありません。淀川水系のダム事業から大阪府水道などの利水予定者が次々と撤退する中で、伊賀市のみが川上ダムに参加し続けていますが、その参加が水資源機構の生命線になっているのです。

 

伊賀市水道にとって川上ダムは全く不要

2012年9月に初当選した岡本栄伊賀市長は伊賀市の参加の是非を判断するため、川上ダムに関する検証検討委員会(委員長 宮本博司氏)を設置しました。公開の場でその是非をめぐって盛んな議論が行われました。しかし、岡本栄市長は結局、伊賀市幹部の意向に沿って、2013年12月に川上ダムに参加することを表明しました。

しかし、伊賀市は(合併前の上野市時代も含めて)今まで給水制限が行われたことがなく、水需給には余裕があります。これから水需要が縮小していく時代において川上ダムの水源が必要であるはずがありません。木津川の自然を根底から壊す不要な川上ダムの建設を何としてもストップさせるため、「木津川流域のダムを考えるネットワーク」が反対運動を粘り強く進めています。

昨年11月に同会の浜田不二子さんから今本博健先生を通して「伊賀市にとって川上ダムの水源が本当に必要なのか」をあらためて検証してほしいという依頼がありました。そこで、伊賀市、三重県、近畿地方整備局への情報公開請求で様々なデータを入手して解析し、今年3月に「伊賀市水道と川上ダムの問題」という報告をまとめ、伊賀市にとって川上ダムの必要性が皆無であることを明らかにしました。

去る5月18日に地元の方と今本博健先生とともに、伊賀市水道部を訪れて、その報告の内容を説明して回答を求め、記者会見も行いました。また、翌19日には「川上ダム問題の本質を問う」というタイトルの市民向け講演会で今本先生が治水問題、私が利水問題の講演を行いました。

「木津川流域のダムを考えるネットワーク」がこれを契機に、伊賀市に対してあらためて川上ダムからの撤退を求める運動を広く展開する決意を抱いています。伊賀市が撤退すれば、上述のように、水資源機構は川上ダムの事業者としての資格を失い、川上ダム計画が瓦解することになりますので、水源連としても全力を尽くしたいと考えています。

詳しくは、

伊賀市水道部に提出した報告書 伊賀市水道と川上ダムの問題2015年5月18日

講演資料 伊賀市水道と川上ダムの問題の要約(スライド)2015年5月18日

新聞記事 川上ダム問題の記事2015年05月19日

をそれぞれご覧ください。

長崎県・石木ダム問題 パタゴニア日本支社長が7月4日特別講演

2015年6月19日
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長崎県・石木ダム問題 パタゴニア日本支社長が7月4日特別講演
(Net IB News 2015年06月15日 15:53)http://www.data-max.co.jp/0615_dm1718/
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長崎県と佐世保市が計画を進めている長崎県東彼杵郡川棚町の石木ダム建設に反対する市民団体が、7月4日(日)午後1時から、アルカスSASEBOで反対集会を開催する。
集会では、今年4月にダム建設反対運動への全面支援を表明した米アウトドア用衣料製造販売のパタゴニア日本支社・辻井隆行支社長が特別講演を行う予定。参加費は無料となっており、より多くの市民へ、ダム建設計画への問題提起を行う。
パタゴニアは、米国でも環境保全の観点からダムのあり方を問う活動を行っており、石木ダム反対運動への支援や現地視察を行ってきた。
石木ダムの建設は、6月12日に、県が中断していた付け替え道路の工事を5年ぶりに再開。反対する地権者らがいない早朝に機材を搬入するかたちで行われた。反対する側からは、不意打ちとも言えるやり方に怒りの声もあがっている。
新たに建設されるダムの洪水対策上の必要性や、人口減少が進む佐世保市の水需要など、さまざまな点で疑問の声があがるなか、進められようとしている建設工事。長崎県は、納得してもらうことをあきらめ、強行手段をとっていくのだろうか。
14日の集会では、石木ダム対策弁護団の講演や、地権者による訴えも行われる。
【山下 康太】

4大河川開発は日照りで役立たず…水を引いてくるだけで数千億ウォン(韓国)

2015年6月17日
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4大河川開発は日照りで役立たず…水を引いてくるだけで数千億ウォン

(ハンギョレ新聞 6月17日(水)15時33分配信) http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150617-00021030-hankyoreh-kr

江原道の嶺東・嶺西、京畿道などで 深刻な日照りが続いているが ほとんどが4大河川の堰から遠く離れていて 確保した水量11億7千万トンは役に立たない 政府は梨浦堰から水を引 いて使うとして 驪州に1029億ウォンを注ぎ込むなど 追加予算の投入を推進、論議が起きている
深刻な日照りが続いているが、4大河川事業で確保した11億7千万トンの水は今年も干ばつ対策に全く使われなかったことが分かった。政府は4大河川事業で確保した水資源を活用するとして、追加で数千億ウォンの揚水場、送水管路建設事業を推進中だ。
16日、気象庁によれば、今年に入って江原道の嶺東と嶺西、京畿道の降水量がそれぞれ例年の39%、64%、55%に過ぎず、これらの地域で深刻な日照りが続いている。 国内最大のダムである昭陽江(ソヤンガン)ダ ムと忠州(チュンジュ)ダムの貯水率もそれぞれ例年の64%、65%に過ぎない状況だ。
しかし当初から洪水と水不足に備えるとし貯めておいた4大河川の水資源は、今回の日照りにも全く使われていなかった。
国土部と農林畜産食品部、韓国水資源公社に確認したところ、4大河川事業で貯めておいた水は合計11億7千万トンに達するが、今回の日照り被害地域である嶺東と嶺西の山間部、京畿道北部などでは一滴も使用できていないことが分かった。 韓国
水資源公社のファン・ソンティム広報チーム長は「堰周辺の一部の地域では取水障害解消効果が現れたが、現在日照りが続いている地域は4大河川の堰から遠く離れていて、確保した水資源を活用できずにいる」と明らかにした。
今年の干ばつは江原道の嶺東と漢江(ハンガン)の上流地域である京畿道嶺西山間部が深刻だが、康川(カンチョン)堰、梨浦(イポ)堰、驪州(ヨジュ)堰などは全て漢江の中流に設置されている。通常、干ばつ被害は川の上流側で激しい。 同じく干ば
つが激しい漢江下流の京畿道の坡州(パジュ)地域も、これら3つの堰ではなく周辺の臨津江(イムジンガン)から水を引いて日照りに対処している。
当初、政府は4大河川事業で合計13億トンの水資源を確保すると明らかにしたが、実際に確保した水資源は合計11億7千万トンだ。 このうち6億5千万トンを使え、取水場や揚水場を利用して周辺 に供給できる水量は1億3千万トン程度だ。 しかしこの1億3千万トンも干ばつ地域から遠く離れているため全く使えていないのが実情だ。
これに先立って国務調整室4大河川調査評価委員会は、昨年12月に発表した「4大河川事業調査評価報告書」で「4大河川事業が実施された(周辺)地域では日照りが発生せず、4大河川事業で確保した用水を日照りに使った実績もない」と指摘して、「日照りの発生が憂慮される地域に(水資源を)供給できる送水管路および施設設置計画を樹立しなければならない」と勧告した。
このような調査評価委員会の指摘により、政府は4大河川の水資源を活用する方案に関する研究に着手した。 来年までの研究結果により4大河川の堰と日照り地域に数千億ウォン を投じて揚水場と送水管路が設置されるものと予想される。 漢江梨浦堰の水を引いて使うために、揚水場2カ所と送水管路5.8キロメートルを建設する京畿道驪州市ペクシン地区事業にはすでに1029億ウォンの事業費が投入されている。 1398億ウォ
ンをかけて康川堰の水を移す驪州市占東(チョムドン)地区事業は予備妥当性の検討段階だ。
干ばつ被害が頻繁な地域は、4大河川の堰から距離が遠いので、より多くの事業費がかかるものと予想される。 忠清南道百済(ペクチェ)堰と公州(コンジュ)堰の水を保寧(ポリョン) ダムに供給する事業を検討したが、水質と経済性などを理由に中断した経緯もある。
忠清南道水資源管理政策課のイ・ビョンヨン主務官は「百済堰と公州堰の水質が悪く、生活用水路として使いにくく、浄水場と送水管路などを設置するには1954億ウォンもかかるため経済性がなかった。 現在は水質の良い大清(テ
チョン)ダムの水を持って来て使う方案を推進中」と話した。
国会国土交通委員会のキム・サンヒ議員は「4大河川事業で干ばつ被害を解消するという政府の主張は嘘であることが明らかになった。 政府が今になって4大河川の水資源活用方案を用意して
いるのも、結局は誤った事業を正当化するための予算浪費に過ぎない。直ちに中断しなければならない」と話した。
世宗/キム・キュウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

城原川ダムの検証に関するパブコメへの意見の提出

佐賀県の直轄ダム「城原川ダム」は検証対象ダムの一つですが、最近まで検証作業の動きが表面化していませんでした。ところが、国交省九州地方整備局は去る5月18日に「関係地方公共団体からなる検討の場」を開き、検証作業を本格的に開始しました。

そして、城原川ダム+河道改修案と五つの治水代替案を示し、それらの案について5月19日~6月17日の期間で意見募集(パブリックコメント)を行っています。

城原川ダムの検証に係る検討に関する意見募集についてhttp://www.qsr.mlit.go.jp/n-kawa/kensyo/05-jyoubarugawa/pabukome(jyoubarugawa)/kensyo-pabukome-jyoubarugawa.html

城原川は筑後川の下流に流入する小さな支川で、流域面積はわずか64km2しかありません。この支川の中流部に城原川ダムをつくろうというのです。

当初のダム計画は洪水調節と水道用水の開発を兼ねた多目的の貯水型ダムでしたが、現在は治水専用の流水型ダム(穴あきダム)の計画になっています。

しかし、城原川は伝統的な治水対策「野越(のごし)」があります。近世初頭に佐賀藩家老の成富兵庫の手により設けられたものです。堤防の低い場所を作って越流させ、洪水を減勢させるもので、城原川では野越が治水対策として重要な役割を果たしてきました。

「城原川を考える会」が従前から指摘してきたとおり、野越の治水機能を極力活用すれば、城原川では洪水調節ダムは必要ありません。

ところが、国交省は治水目標流量を大きく設定し、一方で、河道の流下能力を過小評価するという常とう手段で、城原川ダムが必要だという虚構をつくり上げています。

この虚構を前提として、治水代替案をつくっているため、いずれの代替案も600億円以上の巨額の費用がかかることになっています。九州地方整備局はダム案の方がはるかに安上がりということで(ダム案の費用はまだ示されていませんが)、ダム案を選択することは目に見えています。

その虚構を明らかにするため、水源開発問題全国連絡会は、九州地方整備局への情報公開請求で治水関連データを入手し、解析を行いました。

入手データが十分ではないところがありますが、パブコメの期限が迫りましたので、下記の意見を提出しました。

意見       城原川ダムに関する意見(嶋津暉之) 127KB

別紙1   意見書の別紙1

別紙2  意見書の別紙2

別紙3 意見書の別紙3

その要点は次のとおりです。

① 城原川の治水計画の基本的前提となっている目標流量540㎥/秒はきわめて過大、河道目標流量(将来の流下能力)330㎥/秒は過小であるので、適正な値に是正し、城原川の伝統的な治水対策「野越」の治水効果を正しく評価すれは、城原川ダム無しで必要な治水安全度を十分に確保することが可能である。

② 流水型ダムは、大洪水時には閉塞して洪水調節機能を喪失する危険性があり、また、河川環境に多大な影響を与えるものであるので、建設してはならない。

なお、城原川ダム問題の経過と、「城原川を考える会」の機関誌「城原川だより」の最近号は水源連HP https://suigenren.jp/damlist/dammap/joubarugawadam/をご覧ください。

焦点:中国で供給過剰な水力発電、英独1年分の電力が無駄に(ロイター 2015年6月8日)

2015年6月8日
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中国の水力発電が供給過剰になっているという記事を掲載します。

焦点:中国で供給過剰な水力発電、英独1年分の電力が無駄に

(ロイター 2015年6月8日(月)17時22分配信) http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150608-00000069-reut-cn

(写真)6月7日、中国では不十分な計画と送電インフラの脆弱性の結果、英国とドイツの電力を1年分まかなえるほどの水力発電が無駄になる可能性がある。写真は河南省の小浪底ダムで2013年6月撮影(2015年 ロイター /China Daily)

[北京 7日 ロイター] – 火力発電への依存度を下げようとしている中国だが、不十分な計画と送電インフラの脆弱性の結果、英国とドイツの電力を1年分まかなえるほどの水力発電が無駄になる可能性がある。
しばしば論議の的となる中国のダム建設計画。同国の水力発電容量は昨年300ギガワット(GW)にまで増加した。業界幹部らによると、効率性や送電手段の確保より発電容量を重視する姿勢が供給過剰につながっているが、それらは文字通り水に流されているという。
水力発電は、火力発電を削減して再生可能エネルギーの比率を高めるという中国政府の取り組みで重要な要素となっている。中国は一次エネルギー消費に占める非化石エネルギーの割合を、現在の11%から2030年までに20%に拡大する目標を掲げている。
電力需要の伸びが減速していることもあり、火力発電所の稼働率は急低下し、クリーンエネルギーの比率が高まっている。
今年1─4月の総発電量がわずか0.2%増にとどまった一方、水力発電量は15.3%増えた。電源構成における水力発電の比率は2013年の16.9%から、昨年は17.3%に上昇した。
昨年の中国の電力生産は9440億キロワット時だったが、専門家たちはそれより多くの電力を生産することが可能だと指摘する。
同国の水力発電団体の副事務局長を務めるZhang Boting氏は、ロイターに対し「中国の現在の総発電量は年間で約1兆キロワット時だが、水力発電が十分活用されれば2.2兆キロワット時程度になるだろう」と語った。
水力発電の使用量が倍増すれば、年間で約5億トンの石炭使用を削減することができる。

中国国家能源局(NEA)のデータによると、今年1─4月に水力発電量が19.1%増加した四川省では昨年、送電インフラが整っていれば、さらに98億キロワット時の電力生産が可能だったという。
同省の河川の1つ、大渡河はそうした問題の象徴的存在となっている。開発業者は全体的な計画や環境をほとんど無視して多くのダムを建設するよう奨励された結果、多大な供給過剰を引き起こした。
<制度改革>
「失われた電力」は水力発電だけでなく、風力発電でも問題となっている。中国は先週、無駄が20%を超えている地域で新たな風力発電所の建設を禁止するガイドラインを発表した。
再生可能エネルギーを担当するNEAのShi Lishan氏は、先月開催された会議で「不要な風力や水力のような問題を解決するための方法を現在模索している」と語った。
長期に及ぶ建設期間を要するセクターでは需給の不均衡は当たり前のことだが、「制度改革」によって問題の解決は可能だと同氏は指摘した。
改革のなかには、国の送電網を介さず、企業が地元の発電所と直接契約を結び、電力が供給できるようにすることなどが含まれる。しかし、産業が未発達で地元の電力需要が弱い南西部の水力発電所の助けにはなりそうもない。
国有の送配電会社、国家電網の超高圧線は昨年、中国全土に1000億キロワット時の電力を送電した。だがこれは、中央政府が管理する三峡ダムのような発電所からの送電に限られている。大渡河を含むそれほど知られていないダムからの送電は足止めされがちとなる。
国家電網のZhang Zhengling氏は、大渡河のプロジェクトの多くは地元の電力需要が2桁成長することが見込まれて地方政府の承認を受けたが、需要の伸びはかなり減速していると語った。
2年前までは、小規模な発電所も国家電網の空いている送電容量を使うことが可能だったが、四川省に向家ダムや溪洛渡ダムのような大規模なダムが完成したので、それも今では利用できなくなったという。
Zhang氏はまた、「大きなダムは電力が無駄になるという問題はないが、大渡河のダムは中規模かそれ以下であるため、市場は四川省のなかに限られている」とし、中国の電力セクターは依然として国家によって計画されており、市場のニーズにもっと応える必要があると指摘した。
5大国有電力会社の1つである中国国電集団公司の幹部、Xie Changjun氏は、水力発電の経済学がさらなる投資を正当化するのを難しくしているとし、「中央政府が調整を改善し、送電する省と受電する省の経済的利益を調和させることを提案したい」と述べた。
(David Stanway記者、翻訳:伊藤典子、編集:宮井伸明)

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