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思川開発(南摩ダム)は全く無意味な事業
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思川開発事業の本体「南摩ダム」の定礎式が3月12日に次の記事のとおり、行われました。
しかし、この思川開発事業は全く無意味な事業ですので、その虚構の要点をお伝えします。
下野新聞報道
南摩ダム 本体工事本格化 24年度完成へ定礎式 鹿沼
(下野新聞2022.3.13 5:00 https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/564635
定礎式で儀式を行う関係者ら=12日午前11時15分、鹿沼市上南摩町
国土交通省が進める鹿沼市の思川開発事業(南摩ダム)で12日、定礎式が行われた。ダムの本体工事は2020年12月に開始し、掘削などが終了。今後は本体の建設を本格化させ、24年度末の完成を目指す。
同事業は、実施に向けて1969年に計画調査がスタート。調査以降、地元では住民による反対運動が続き、約20年前に水没予定地の住民の集団移転が始まった。その後、旧民主党政権下での事業一時凍結などの曲折を経て、2016年に継続が決まった。
定礎式は建設現場で行われ、福田富一(ふくだとみかず)知事や佐藤信(さとうしん)鹿沼市長、本県選出の国会議員ら関係者約120人が出席した。福田知事らがダムの掘削時に出た砂利を礎石の周りに盛るなどし、工事の安全を祈願した。
福田知事は「気候変動で水害が頻発する中、ダム建設が進むことは意義深い。治水、利水の両面から大いに力を発揮することを期待する」とあいさつした。
南摩ダムは思川支流の南摩川に建設し、付近の黒川と大芦川が地下トンネルで結ばれる。高さ86・5メートル、総貯水量は5100万立方メートルとなる予定。総事業費は約1850億円。
思川開発の虚構-1
まず、添付の資料「思川開発問題-1」をお読みいただきたいと存じます。
思川開発の目的は洪水調節、渇水時の補給、水道用水の開発ですが、そのうち、渇水時の補給は緊急性がなく、ダムの規模を大きくするための増量剤のようなものに過ぎません。
次に洪水調節に関しては、ダムをつくる南摩川は流域面積が非常に小さく(12.4㎢)、小川のような川ですから、その必要性はありません。
そして、水道用水の開発に関しては首都圏の各都市の水需要が減少傾向になっていますので、水源開発の必要性もありません。
このよう思川開発の目的はいずれも虚構のものになっているのです。
思川開発は実際には約1850億円という超巨額の公共事業を進めることだけを目的にした事業なのです。
思川開発の虚構-2
思川開発については地元の栃木市、下野市、壬生町の住民にとって看過できない問題があります。
栃木県は思川開発によって割り当てられた水源を無理矢理使うため、栃木市、下野市、壬生町にその水源を押し付けようとしています。
添付の資料「思川開発問題-2」をお読みいただきたいと存じます。
栃木県は地下水100%の栃木市、下野市、壬生町の水道水源を、地盤地下対策を理由にしてその約半分を思川開発の水に転換させようとしています。
3市町の住民はたまったものではありません。思川開発の水の押し付けで、今まで地下水100%であった水道水は河川水の混入で不味くなり、さらに料金も高くなります。
3市町では地盤沈下は進行しておらず、地盤沈下対策は思川開発を推進するための口実でしかありません。
3市町の住民にマイナス面しかもたらさないことが強行されつつあるのです。
愚かな思川開発(南摩ダム)に対して怒りの声を
このように全く無意味で、有害な思川開発(南摩ダム)の定礎式が3月12日に行われました。
3市町では地下水100%の水道水を守る運動が進められています。3月13日には下記の通り、地下水100%の水道を守るための集会が栃木市で開かれました。
みなさまもこの愚かな思川開発(南摩ダム)に対して怒りの声をあげていただければと思います。
川辺川ダムについての新聞記事
川辺川ダムについての新聞記事がありましたので、参考までに掲載します。
球磨川流域では川辺川ダム反対の運動が進められています。球磨川の自然を壊す川辺川ダムを何としても中止させたいです。
(いちからわかる!)熊本県の川辺川にダムができるんだね
(朝日新聞2022年1月20日 5時00分)
球磨川に「粘り強い堤防」 のり面保護し水害時の避難時間稼ぐ 国が整備検討
球磨川水系で国土交通省が「粘り強い堤防」の整備を検討しているという記事を掲載します。
「粘り強い堤防」(耐越水堤防)をきちんと導入すれば、球磨川水系では川辺川ダムは不要になると思います。
球磨川に「粘り強い堤防」 のり面保護し水害時の避難時間稼ぐ 国が整備検討
(西日本新聞2021/12/29 6:00) https://www.nishinippon.co.jp/item/n/854642/
2020年7月の熊本豪雨で氾濫した球磨川水系(熊本県)の治水策を巡り、国土交通省が、大水害が起きても壊れにくい「粘り強い堤防」の整備を検討していることが分かった。熊本豪雨級の雨量があった場合、球磨川が再び氾濫する恐れがあることを前提に進める対策の一環。決壊までの住民の避難時間をできるだけ稼ぐためのハード整備で、全国的にも先進的な取り組みとなる。
堤防は通常、土砂を固めて造られる。粘り強い堤防は、河川から水が住宅側に氾濫した場合に備え、土でできている堤防ののり面を全面的にブロックなどで保護する。通常の堤防より崩れにくくなるため、決壊が起きた場合でも、住民が避難する時間を少しでも長く確保することができる。
国交省関係者によると、粘り強い堤防の整備は費用面の負担が大きいことなどから、球磨川流域では決壊時に甚大な被害が想定される区間が対象となる見通し。堤防ののり面を、アスファルトやブロック、遮水シートなどで保護する工法を検討する方針という。
崩れにくい堤防を巡っては、旧建設省が1990年代に「フロンティア堤防」として整備を計画した経緯がある。球磨川を含めた全国での計画は2002年に撤回され、筑後川など4河川で計13キロだけが整備された。コストに加え、維持管理や耐久性など技術面でも課題が多かった。
しかし、熊本豪雨では、熊本県人吉市で球磨川の堤防の右岸が幅約30メートル、左岸が幅10メートルにわたって決壊し、流域に大きな被害が出た。いずれも川からあふれた水が低地に流れた後、川に向かって逆流し、その勢いで堤防の土砂が削られたことが原因とみられている。
熊本豪雨を受けて国交省は今年12月、球磨川水系の治水の長期目標を定めた河川整備基本方針を変更した。流水型ダムや遊水地などを一体整備する「流域治水」を、長期間かけて進める方針だ。ただ、整備を終えた後も熊本豪雨級の洪水が起きれば、堤防が耐えられる最高水位を約60キロにわたって超えると試算されるため、粘り強い堤防が必要と判断したという。
粘り強い堤防は、2019年10月の台風19号で全国122カ所の堤防が河川氾濫に伴い決壊したことを受け、国交省の有識者検討会が20年8月、整備の必要性を打ち出した。台風19号で決壊した千曲川(長野県)で、のり面をブロックで覆う工法の試行的整備が進んでいる。 (御厨尚陽)
氾濫前提の対策重要
旧建設省OBで元土木研究所次長の石崎勝義さんの話 温暖化で水害の激甚化が進んでおり、今後は堤防を越える洪水の頻度が多くなる。川底の掘削など河川の水位を下げる事業を着実に実施しつつ、堤防からの氾濫を前提とした対策も進めていくことが重要だ。
ダム建設 疑問再燃 「山鳥坂」予定地変更 大洲 事業費膨張 工期も延長 安全性・効果 不安の声
国土交通省が愛媛県大洲市の肱川支流・河辺川に建設する予定の山鳥坂(やまとさか)ダムの予定地が変わり、事業費が470億円も増額になりました。そして、工期が2026年度から2032年度に変わりました。
その記事を掲載します。
この記事に書かれているように、以前から山鳥坂ダムの建設には反対の声がありましたが、今回の建設地変更を機に、ダムの存在自体に疑問を呈す声が改めてあがっています。
この際、ダム建設事業を中止すべきです。
ダム建設 疑問再燃 「山鳥坂」予定地変更 大洲 事業費膨張 工期も延長 安全性・効果 不安の声
国土交通省山鳥坂ダム工事事務所は20日、愛媛県大洲市の肱川支流・河辺川で進む同ダム建設事業について、建設予定地を約400メートル上流の位置に変更すると公表した。これまでの予定地周辺に大規模な地滑り対策が必要な岩盤があることが判明したためで、同事務所は、完成時期が当初予定の2026年度から32年度にずれ込み、総事業費も約470億円増の約1320億円になると見通す。以前から同ダム建設には反対の声があったが、今回の建設地変更を機に、ダムの存在自体に疑問を呈す声が改めてあがっている。
事務所によると、これまでの地盤調査で、建設予定地より上流の見の越地区(2カ所)と奥の山地区の計3カ所で、貯水位変動に対する地滑り対策が必要と確認。予定地の右岸側下流部の月野尾地区では、強度が不足する「ゆるみ岩盤」を確認していたが、掘削除去することでダム本体の施工は可能と推測していた。
球磨川治水の河川整備計画 人吉「50年に1度」対応 30年間の目標
12月13日に球磨川水系河川整備計画についての学識者懇談会が開かれました。その記事を掲載します。
河川整備計画案の目標流量は、人吉市の人吉地点で50年に1度の降雨時の毎秒7600㎥、八代市の横石地点で80年に1度の毎秒1万1200㎥となっています。
球磨川水系河川整備計画案は http://www.qsr.mlit.go.jp/yatusiro/site_files/file/bousai/gouukensho/gakusikikon/211213shiryou4.pdf に掲載されています。
なお、球磨川水系河川整備基本方針案の目標流量(基本高水流量)は人吉地点8200㎥/秒、横石地点1万1500㎥/秒です。https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/shaseishin/kasenbunkakai/shouiinkai/kihonhoushin/dai116kai/05_shiryou3_kumagawa_honbunsinkyu.pdf
いずれにせよ、流水型川辺川ダムの建設に向けて動こうとしていますが、何とかストップしたいものです。
球磨川治水、命と環境どう守る 「新たな流水型ダム」議論本格化
(西日本新聞2021/12/14 11:32)https://www.nishinippon.co.jp/item/n/846667/
球磨川の治水策を巡り、支流川辺川への「新たな流水型ダム」整備の議論が本格化している。課題は、蒲島郁夫知事が提示した「命と環境の両立」。13日の学識者懇談会(委員長・小松利光九州大名誉教授)で、国は具体案を示さなかったが、終了後の記者会見で小松委員長が私案を披露した。川の環境を再現した環境保全用トンネルを備えた「ハイブリッド型」だ。
流水型ダムは平時は水をためず、洪水時にだけ貯留する。この日の懇談会で国土交通省九州地方整備局は、今後30年間の球磨川整備の目標となる計画の骨子案を学識者に提示。流水型ダムの位置は旧川辺川ダム計画と同じ相良村とし、総貯水容量を約1億3千万トンと明記した。
完成すれば治水専用では国内最大。国、県、流域自治体でつくる流域治水協議会がまとめた流域治水プロジェクトには、可動式ゲートを設置して流量を調節する案が盛り込まれているが、現在はまだ調査・検討の段階だ。
一方、小松氏は「純粋な流水型ダムは環境に優しいが、自然放流方式で治水効率が悪く大型ダムには向かない」と指摘。「短所を補うには通常時は流水型、洪水時は貯留型のように人がゲートを操作する『ハイブリッド型』が適している」と提案する。
小松氏提案のハイブリッド型は、役割の異なる複数の可動式ゲートを備え、平時、中小洪水、大洪水の3パターンで使い分ける。ダム本体最下部の環境保全用トンネルは、川底に自然石を配し、太陽光代わりの照明を設置して自然環境を再現。ダムの上流と下流の河床を連続させ、魚の往来を妨げない構造を想定する。
環境保全用の脇には、中小洪水時に「流水型」の放流口となる治水専用トンネルを設置。大洪水時には環境保全、治水専用の両ゲートを閉じ、一時的に「貯留型」の治水機能を持たせ、放流ゲートで洪水調節を行う。計画を越える洪水の場合には自然に越流するゲートも設ける。
小松氏は「安全安心と豊かな川の恵みを守るため、知恵を絞りたい」と述べた。 (古川努)
球磨川治水の河川整備計画 人吉「50年に1度」対応 30年間の目標
球磨川水系の河川整備計画について議論した学識者懇談会の会合=13日、熊本市中央区
国土交通省は13日、昨年7月豪雨で甚大な被害が出た球磨川水系で策定する河川整備計画について、熊本県人吉市の基準点で「50年に1度」、八代市で「80年に1度」の大雨を安全に流せる治水対策とする目標を示した。支流の川辺川への流水型ダム建設が柱で、計画期間はおおむね30年。
今回の整備計画が完了しても、「数百年に1度」とされる7月豪雨と同規模の洪水では被害を完全には防げない。ただ、人吉市付近では堤防からの越水を、球磨村など中流域では家屋の浸水被害を防げるとしている。熊本市中央区で開いた球磨川水系の学識者懇談会の会合で説明した。
整備計画は、現在見直しを進めている長期的な河川整備基本方針に沿って当面の対策を具体化するもの。基本方針では、人吉市で80年に1度、八代市で100年に1度の大雨を想定している。
整備計画策定に当たっては気候変動を加味。降雨量を従来の1・1倍にして計算した。対策の目標とする流量は、人吉市の人吉地点で50年に1度の降雨時の毎秒7600トン、八代市の横石地点では80年に1度の毎秒1万1200トンとする。
整備計画に位置付ける新たなダムは、普段は水をためない流水型。旧川辺川ダム計画と同じ相良村四浦に本体の高さ107・5メートル、総貯水容量約1億3千万トンの同規模で建設する。
計画にはほかに、遊水地や河道掘削など今年3月に国や県がまとめた「流域治水プロジェクト」の対策を盛り込む。目標達成のため、新たに人吉市やその上流での河道拡幅や堤防整備なども追加。川下りやアユの生育など、河川の利用や環境との両立も図るとしている。(内田裕之)